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科学の極み! (連載版)  作者: 芝高ゆかや
4章 選ばれし騎士と魔術師の子孫
31/60

31 はじまりのパトロナスからの手紙

 キリュウの身分確認が終わり、3人は、中央塔の大型魔法陣のある部屋へ向かった。


「トアリー、キリュウ、この魔法陣を見てください」


 白い大理石で覆われた部屋の床には、大型魔法陣が青白く光っている。しかし、常に発光しているはずの文字が、所々発光していない。


「昨日の夕方、突然この部屋の扉から光が漏れたという連絡を受けたので、駆けつけてみたら、このようになってました」


 フレイリアは、魔法陣の横を通り抜け、祭壇へ向かい、手紙を手にした。


「そして、はじまりのパトロナスからと思われる手紙が……、『選ばれし騎士』と宛名には書かれています。この手紙をいつも通りの方法で白い部屋に送ろうとしたのですが、おかしなことに送れなかったのです……」


 トアリーが、フレイリアから手紙を受け取ると、その場で手紙を開き、読み始めた。キリュウも隣りに立ち、横から覗き込む。


「『侵入せし者をつかまえよ。しばらく眠りにつくため、代理に任せる。眠りから目覚めさせたければ、魔法陣から読み解き、我の元へ来たれ。』……って、暗号かよっ!?」


 キリュウがはじまりのパトロナスからの手紙にツッコミを入れる。


「……謎解きしないとダメですね」


 フレイリアが呟きながら、考え込んだ。トアリーは、手紙を封筒に入れ、制服の内側にしまった。


「魔法陣は、この大型魔法陣のことだと思うのですが……」


 トアリーが魔法陣に近づき、全体を見る。キリュウも眺めていると、あることに気がつく。



 ―――この魔法陣って、たしか中央広場のシールドと、中央塔から中央広場までを繋ぐ地下道、それと移動型魔法陣をいっぺんに管理してるハズだけど……。発光していない文字は、その文字に該当する機能が機能していないってことか……。これがワザとそうしたってなると……。



 キリュウが祭壇の所へ行き、便箋を1枚出し、ペンをとって書き始めた。トアリーとフレイリアも祭壇の所に来て、覗き込む。


「……これって、中央塔のこの部屋の入口と中央広場の噴水、それを繋ぐ地下道の場所を示す文字ですよね?そして、この文字は、『繋がる』という意味……」

 フレイリアがトアリーにも判りやすいように文字の意味を説明していく。


「……ということは、今、ここの部屋と地下道と中央広場の噴水は、繋がっていないってことですね」


 トアリーの推測に、キリュウとフレイリアが頷いた。


「たぶん侵入者が、地下道に入り込んだんだ。だから、はじまりのパトロナスは、中央塔と中央広場の繋がりを遮断した。地下道に入るためには……」


 キリュウが自分の考えを口にし、さらに便箋に走り書きしていく。


「これは『防ぐ』という文字ですね、あと……『いにしえ』、『商業』……? キリュウ、これ合ってますか?」


 フレイリアが、「商業」という文字で、怪訝な表情を浮かべた。魔法陣とは関係ない場所を示す文字をキリュウが書いたため、写し間違えたのではないかと疑った。


「合ってますよ、ほら、あそこの文字」


 キリュウが手にしているペンで指した。


「……確かに、同じ文字ですね」


 トアリーが魔法陣と便箋に書いてあるキリュウの字を見比べて、確認した。


「商業地区の店でも、ホワイトレイク建国時からある店に地下道への入口があるってことだと思います」


 キリュウがペンを引き出しに入れ、便箋をヒラヒラさせて乾かしながら言った。


「ホワイトレイク建国時からある店ってかなり絞られますね。たしか……レイトーリア魔法学院の図書館の持ち出し禁止図書に、そういった文献があるはずです」


 フレイリアが、文献について記憶をたどり、思い出す。


「それじゃあ、レイトーリアへ……」


 キリュウが祭壇から離れたところで、フレイリアに、キリュウ!、と呼び止められた。


「……なんですか?」


「その……非常に言いにくいのですが……服を制服に着替えてください」


「へっ?」


 フレイリアに言われ、キリュウが自分の服を見た。どこも異常は見られない。


「……確かに、フレイリア様のいう通り、着替えた方がいいですね。このままだと、またキリュウは身分確認とか言われそうですから」


「えーっと……それって制服を着ないと、全くボクがナイトに見えないってこと?」


 キリュウがそう言うと、トアリーとフレイリアが顔を見合わせ、首を縦に深く頷いた。


*****


 キリュウと、トアリー、フレイリアの3人が、フレイリアの研究部屋に入ると、そこにはロイがいた。


「あれ……、ロイ!? なんでここに?」


「キリュウ! 久しぶりだな、今、フレイリア様のナイト候補者なんだ」


 驚いたキリュウに対して、ロイが答えた。


「じゃあ、親子で中央塔に?」


「そうなるな。……っていうか、キリュウに言いたいことがあるっ!」


 近況報告もそこそこに、ロイがキリュウに詰め寄った。



 ――― フレイリア様だけでなく、ロイまでっ!? 心あたりがあり過ぎて、どの件で責められているのか、わかんねぇっ!



 キリュウが、じりじりと後退りする。


「この間、処分予定の瓶じゃなくて、その隣りのところから瓶を持っていっただろうっ!」


「えぇっ! あれって、コレクション用だった? ……確か同じのが3本あったような?」


 ロイは、酒瓶コレクターだ。キリュウが雷蔵のために、ある酒を小分けして持ち帰るための瓶として、もらったのだが、その瓶が持っていってはいけないものだったらしい。


「同じのが3本あって当たり前だよ。永久保存用、永久保存用の予備、そして閲覧用!」


「はっ!?お 前、あのコレクション、全部3本ずつあるのかっ!? ……っていうかどうやって収納してるんだよ」


「コレクターをなめんな。収納技術は、職人レベルだ! ……まぁ、まだ収集可能品だったから許すけど」


 キリュウとロイのやり取りをトアリーとフレイリアが半眼で呆れながら見ている。


「ロイ、キリュウを部屋に案内してください」 


「はい、フレイリア様。キリュウ、こっち」


 ロイの案内でキリュウは中央塔の寮へと向かった。



*****



「ここが、キリュウが使う予定だった部屋」


 部屋の前に立ち、ロイが言った。


「え?もうここにはいないのに、なんでボク用の部屋が?」


「誰かさんが前倒しで就任式して、しかもその日にいなくなるから、準備してたのに全然間に合わなかったみたいで、そのまま放置だよ。なので、いづれ私が使う予定になってる。」


「そっか」


 ロイが部屋に入り、クローゼットからナイト用の制服を取り出し、ベッドの上に置いた。


「あぁ、このマント、重くなるし、動きづらいからいらないんだけど……」


「……いかにもキリュウらしいな。でも、中央塔のナイトはマント必須だから、ちゃんと着ろよ?」


 ロイは、そう言うと、じゃあな! 先に戻る、と部屋から出て行った。

 キリュウが、中央塔のナイトの制服に着替えたところで、堀田に定期連絡を入れることにした。行動の早い堀田だから、もしかしたら、何らかの情報を得ているかもしれない。

 キリュウは、サークルピアスをスライドさせた。


「堀田さん?」


『霧生君、ちょうど良かった! メインシステムからの情報は?』


 こちらが聞きたいことがあって呼び出したのに、何故か堀田に全部持っていかれた。


「中央塔と中央広場を繋ぐ地下道の三ヶ所を遮断して通れないようになってる。あと、地下道への入口が商業地区にあるから、今からそれを割り出すために調べるとこ」


 キリュウが、一気に「はじまりのパトロナス」と呼ばれるメインシステムからのメッセージを、堀田に伝えた。


『そう、じゃあ、クラッキングした奴は地下道にとりあえず閉じ込められてるのね。でも、あっちは、このまま静かにはしてないだろうから急いでね』


「了解。で、そっちは?」


 いつも通りに急かされ、とりあえず返事をしておく。


『現場は押さえたわ。それと、前人未到地域研究会のメンバーに、"影時零"がいた。あと……このことは、霧生君には言うけど、永久ちゃんには言わない方がいいかも』


「もしかして、貝野原さん?」


『……知ってるの?』


「うん、昨日会った。同じサークルのようなこと言ってたから」


『この2人は、別のサークルも一緒で、掛け持ちしてるのよ。だいたいは、その別のサークルからメンバーを引っ張ってきてるみたいね。それと、現場の資料は、ホワイトレイク建国当時と、それから60年ぐらいの情報を元にして作られてた。おそらく"影時零"の親戚同士が、しばらく情報のやりとりをしていたみたいね』


「クラッキングして何をしたいんだ?」


『目的についての手掛かりは、なかったわ。それで、もしかしたら、永久ちゃんの友達にそっちで会うかもしれないから……、まぁ、言うまでもないけど、永久ちゃんのフォローしてあげて』


「わかった。こっちに来てるのは、2人だけ?」


『えぇ、他のメンバーの所在は確認がとれたから、所在不明はその2人だけ』


「了解」


 堀田との通信を終えたキリュウは、部屋をあとにし、トアリーの元へ急いだ。

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