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Run away!4

彼と私の恋人事情。

作者: 貴幸

いけない恋だと知っていても突き通した彼女のお話。


彼と私の恋人事情。











中学一年生、私は恋をした。



あってはならない恋をした。









今日は小学校から中学生になり、初めて中学校へときた。

周りより早く学校にきた私はさっそく一年生用玄関前にはられたクラス発表の紙を眺め始める。

一組、二組、三組…ツラツラと眺めて六組まできた。


「あ。」


あった。

七組の36番、北上志保。

隣で同じく、あった、と言う声が聞こえる。

少し中声の男の声だ。

どうやら同じクラスのようだ、挨拶をしておこうと振り向くと茶髪、そして制服などきていなくワイシャツに水色のパーカーをきてきていた。

ふ、不良…

しかし目が水色だ、もしかしたら外国の人…?


「あ、同じクラスの子だよね?よろしく、僕時人って言うんだ。」


しかし口から出たのはカタコトではなく饒舌な日本語。


「帰国子女…?」


「ぼ、僕男だし親がクォーターでさ、だから根っからの日本人だよ、ところで名前は?」


クォーター、クォーターってどんな意味なんだろう、後で調べよう。


「私は、北上志保…。」


名前を言い終えると志保ちゃんね、と確認された。

そして優しく微笑みかけてきた。


「志保ちゃん、これからよろしく。」


これが私と時人、お互い知るはずもない兄妹の初めての出会いだった。











それから時人と私は一気に仲良くなり、六月十日時の日の話をしていた時に私が勇気をだして告白した。


こたえは、イエスだった。





「おとうさん、聞いて!私彼氏ができたの!」


新聞を優雅に読む父に自慢気に話をし始める。

私は父が大好きだ。

だから隠し事など一切しない。

四ヶ月も父に隠し事をしたのは初めてだ。

ついに恋人がいると言った。

そういえば時人となんとなく似てるところがある気がする。

きっと時人とあえばすごい気があうのだろう。


「へぇ、よかったな、名前はなんて言うんだ?」


「高島時人くんって言うの!」


「え?」


父からどす黒い、今まで一度も聞いたことのないような声がでた。

え?なに?私なにかしたのかしら?

笑顔を絶やしたことのない父の顔を覗けない。

今のぞいたら黒い、黒い顔が見えてしまいそう。


「ぁ、ぁの…」


声がうまくでない、震えてしまった。

せっかく彼氏ができて、喜んでくれると思ったのに。

振り向いた父は少し青ざめていた。


「志保、よくきけ。…高島時人は、」




「____________。」












一晩中、呆然としていた。

泣くことも、怒る気力もない。

ただ、父に言われた事だけが頭に残る。


『高島時人は俺の不倫相手の子供だ。』


不倫をしていた。

子供もうんでいた。

しかも同じ中学校に入ってしまって、同じクラスになってしまって、私は恋をしてしまった。

つまり、私は兄と言える人間に恋をしてしまったのだ。

許されない。

恋をできない。

ただその事実がずっと頭を駆け巡ってる。


「どうしよう…」



諦めようとした私の心は、まだ時人が好きだった。










一日学校を休んだが、気分はよくならなかった。

ただ朝起きると一着のメールが入っていた、時人だ。


『風邪、大丈夫?無理せず早くなおしてね。』


私は単純なのか、すぐに制服をきて朝ごはんも食べずに学校へと向かった。








「時人、」


後ろからその曲がった背中をたたく。

わっ、と声をあげてそのままこけた。


「志保ちゃん!」


相変わらずちゃんづけ。

恋人になったからちゃんはやめてって言ったのに。


「風邪、なおっちゃったー!」


そのまま自分から抱きつく。

冷たい。

まるで体温を感じないしすぐに折れてしまいそうだ。

今彼はどんな顔をしてるんだろう、私の心臓はバクバクと動いているのに彼の心臓はトクトクと正常に動いている。


「路上だよ、こうゆうことは後でね。」


剥がされた身体は後でねという言葉に顔が熱くなる。

つまり、今日は部屋に行っても良いということだろうか?


「時人、具合悪い?」


いつもより顔が青ざめてる。

そりゃあ具合が悪い時に抱きつかれたら嫌なものかもしれない。


「いや、大丈夫だよ、行こう。」


手をつなごうと私が差し出した手は見事にスルーされた。


授業中いろんなことが頭を駆け巡り続ける中、ある不満が浮かんだ。

もしかしたら時人は私が妹だと知っているのではないだろうか。

そうだとしたら、時人はそのまま私と恋人でいるつもりなの?

結婚もできないのに?

じっと斜め後ろの席から眺めていると笑顔から動かない時人の顔は、確かに私の父によく似ている事に気づいた。










放課後、家に連れて来られた。

誰も、いない。

きっと数年前まで父がいた家。


「部屋、綺麗ね。」


「う、うん…」


やっぱり時人は少し体調が悪そうだ。

何かに怯えているみたいで。


「時人…」


怯えないで、というように私は隣に座っている時人の胸に手をおいた。

目が合う。


「…時人の不安、私が取り除いあげれることはできないかな。」


そのまま、手を下へと蔦らせていく。


「志保ちゃん、いいの?」


それは、兄妹としての意味?

それとも、恋人としての?


私はそんなの気にしないわ。

あなたが私のものだって言うことをちゃんと実感したいの。



「好きよ、時人。」



その言葉が引き金にになったかのように時人に押し倒される。

ただ、されるがままに私は声をあげていったのだった。


あぁ、そういえば時人から私に、好きって言ってもらったことってあったっけ…?

そんなことを考えていたような、いなかったような。














事が起こってから、更に数ヶ月がたった。

時人とあって一年になる。

ここまで付き合ってきて知ったのは時人の母はおそらくいないことと、私と兄妹関係にあることを知らないことだ。

何も、何も話さなければ私たちはずっと恋人でいれる。

でも、それにも限界がある。

精神的に苦痛と化してきた。

デートをするたび、時人と繋がるたび、先には暗闇しかない悔しさに怯える。

そして私は、勇気をだして時人に言おうと決心した。

全部。

時人は優しい。

だから、きっとばらしても今の関係を続けてくれる。

きっと、生涯兄妹関係だとしても愛してくれる。

大丈夫、時人なら全て受け入れてくれる、きっと大丈夫。


「あ、時人、今度私の家おいでよ、お母さんとお父さんが会いたいって言ってた。」














どうしてこうなったんだろうと私は心の中で何回もつぶやく。


ただ、ただ純粋に時人が好きだったのに。


やっぱりダメなの?ダメなの??



時人の手に込める力はさらに強くなる。

意識が朦朧としてきた。

限りなくかすれた声で、なんとかその言葉を言う。






「大、好き…」





あぁ、そういえば時人から私に、好きって、一度も、言って、もらえて、な、い。


視界は暗闇に染まった。

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