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勇者クレナイの英雄譚

非常に短いですが勇者編のエピローグのようなものです。

 勇者になるか

 とあの人が言って

 初めて自分は本当の『勇者』になったと思うんだ



「魔族と共謀していた皇国の皇帝一族を討伐した勇者クレナイを盛大にたたえよ!」

 歓声が起こる。完全に隠蔽の術をかけていないものとしている私に視線が向くことは無く皆の目が魔族と共謀していた悪の皇帝一族の野望を見抜き打倒した勇者クレナイに向けられていた。

 隠蔽しているはずなのに姿は見えなくても隣にいるのが分かっているのか妬ましそうに睨んでくるクレナイから視線を逸らし、馬車から民衆を眺めていた。



 自分が最後はやらないと勇者と認められるわけがないから、と殺すのは私がやろうか、と言った私に首を振って皇帝と真八魔将4人を首を切ったクレナイ。良く考えてみたら殺人童貞のわけが無かったのでいらぬ心配をしていたのか。酷い弱体化で俺が倒したわけじゃなくて実質お前が倒したようなものじゃないか、と少し睨みながら言ったクレナイに私が倒したとしてもそれでも勇者になるのは私ではなくお前がなるしかないのだ、と言って勇者の功績を押し付けたのだ。勇者扱いなんてされたらレンネベルンが飛んでくる気がしてならない。



 結局今回の事件は勇者クレナイと取るに足らない従者一名による邪悪なる皇帝と八魔将と名乗る強力な魔物の討伐という形になった。被害にあった皇国の敵国だったクラチャウダーは皇国の野望を阻止した事と皇族の全滅による弱体化に酷く感謝していたが私もクレナイも過剰な祝い事は嫌っていたので多額の報奨金を貰って認識阻害と隠蔽術で人々の目から逃げながら街を歩きわたり、クラチャウダーを出た。

「まあ前座が長かったが勇者クレナイの冒険譚はここから始まるさ。頑張れよ」

「いや、お前も」

「はは、数十年前とはいえ手配を喰らってる身だからな。勇者様に指名手配犯がついていてはけちがつくさ。また縁があれば会うだろう」

「別にそれなら勇者にならなくても……」

「勇者になれ」

「え」

「その先に多分私はいるだろう」

「え」

「名前を名乗っていなかったな」

 認識阻害と隠蔽術を解いた。

「私の名は」



 ある時レンネベルン本家は異世界から来たという勇者を夫に迎えたという。そして子供が生まれ、後継ぎが出来て、一族の決まりである破壊の神に挑むときがやってきた。慣習通り妻が旅に出ようと支度を始めた時、勇者が言った。

「今回だけは男である私が行こう」

 勇者はレンネベルンの先祖同様帰ってこなかった。


あらすじ詐欺。ぼっちと言えない状態になった気がしないでもないです。ただ、誰かが何年もずっと一緒にいるという事はありません。

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