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昭烈異聞録シリーズ

昭烈異聞録特別編 世紀末雑魚様への寄贈作品『北郷一刀が出ない真の理由』

作者: 不識庵・裏

 これは、既に先日退会されてしまいましたが、『世紀末雑魚』様に一昨年メール上でお送りした物です。


 原文では流石に読み辛かったので、少しばかり手直ししております。(苦笑




 『北郷一刀の出番が無い真の理由』




「本当に俺の出番は無いのか?俺の知らない連中が華琳や蓮華に桃香とヨロシクやっているのに…… 」




 この作品において北郷一刀は出番ナシ。従って蚊帳の外で彼は己の不遇を嘆いていた。




「諦めな、『(ぺー)の字』 」




 行き成り一刀の隣にスポットライトが当たると、そこには一人の男が立っていた。男の背丈は一刀より高く、人懐っこそうな顔に長い耳、綺麗に揃えた口ひげと程好く伸ばした顎ひげが彼の特徴だ。




「うをっ、アンタ誰だよ! 」




 見ず知らずの男に行き成り声をかけられ、更に馴れ馴れしく自分の姓『北郷』を略したかのような『(ペー)の字』と呼ばれ、一刀は不快感をあらわにした。




「誰だぁ?そうさなぁ……別の世界の俺ァ夢見がちで足元見てネェ、暗愚な胸のでかいしか取り得のネェ姉ちゃんみてぇだぜ。俺ァあんなに常識知らずだったかネェ…… 」




 男はニヤリと笑い一刀を見る、すると、たちまち彼の顔には驚愕の表情が浮かび上がる。




「全く、兄者とワシといい、あっちの世界では可也改竄されてる様だな。ワシなんか美髪公なんて呼ばれておるし、ただ髪が長く胸がでかいだけでやきもち焼きの堅物小娘にされておる。甚だ迷惑な話だ 」




 今度はその耳の長い男の隣に別のスポットライトが当たると、身の丈九尺は越える大男が立っていた。(なつめ)の様な赤ら顔に、長く伸ばした髭が彼の特徴だ。一刀はその男の人物を確認すると、更に驚き息を呑む。



「チョッと待った!兄者達はまだ良いだろうが!! 俺様なんかチンチクリンの幼女だぞ!!何が悲しくって『突撃粉砕勝利なのだー! 』って叫ばなくっちゃならねぇんだよ!! 俺ァあそこまで馬鹿じゃないぜ!! 」




 長い耳の男と髭の大男の前にスポットライトが当たると、今度は別の人物が現れた。男の背丈は八尺くらいで、巌を思わせる筋肉の塊の様な体格に、いかつい顔に虎の様な髭、そして雷の様な大声でわめき散らしている。一刀はその男の叫びに耳をやられたのか、両耳を手で押さえ、その場にうずくまってしまった。




「これに関しては私も皆様方と同感ですな。私なんぞ『はわわ~』とか、『でしゅ』とか、余りにも情け無い幼女になっております……。私らしく描写されていた場面はありましたが、アレが私かと思うといやはや情け無い…… 」




「私等は※筍絲(スンシー)好きで、蝶を模した仮面をつける狂人にされております。長坂で幼君をお救いし、粉骨砕身お支え致しましたのに、この扱いは余りにも酷いと言うものです…… 」

(※:中国では麻竹の食用加工品をそう呼びます)




「ワシなんか子連れ未亡人じゃ、オマケに男日照りにされとるんじゃぞ!! 」




「俺はお漏らしじゃない!!あそこまで短絡な猪武者じゃないぞ!! 」




「私は悪戯好きではないのだがな……。それと“たんぽぽ”って……あんな名前にしなくても良いじゃないか!! 」




「オレなんぞ『あわわ~』ばっかだぜ?オマケに何でこの目の前の腑抜け匹夫に惚れなくっちゃならないんだ? 」




 次の瞬間、次々とスポットライトが一刀の周囲に当てられると、そこには様々な人物が立っていた。何れも一刀には見覚えのある人物ばかりだ。彼らの共通点は殺気の篭った目で自分を睨んでいる事だ。




「ま、まさかアンタ等……『本物』? 」




「そ、俺ァ劉玄徳だ 」




「わしは関雲長 」




「オイラは張益徳! 」




「私は諸葛孔明 」




「某は趙子龍 」




「ワシは黄漢升 」




「俺は馬孟起だ! 」




「私は馬岱 」




「オレは龐士元。よろしくな 」




 一刀の前に姿を現した『本物』の蜀漢照烈帝を始めとした、五虎将軍と馬岱に臥竜鳳雛。彼らの名乗り上げとは裏腹に自分に向けられてくる強烈な殺気に、思わず一刀は腰を抜かしその場にへたり込んでしまった。




「で、そ、その『本物』の皆さんが、な、なんでここに? 」



 かろうじて、喉の奥から声を振り絞り出す一刀であったが、彼の体はカタカタと小刻みに震えていた。



「あぁん?決まってんだろうがよ!出番がネェと寝言ほざいてる北の字にちぃと灸を据えにやってきたのよ!! 」




 流石に元は侠を率いていたのか、その筋の者が持つ口調で声高に叫び、おっそろしい雰囲気を滲ませながら一刀に詰め寄る玄徳。彼の両手には旗揚げ時から愛用している雌雄一対の剣が握られている。




「お主、『天の御使い』と称しただけでなく、大勢の女達への狼藉悪戯三昧……挙句の果てに別世界のわしを散々からかってくれたな?それだけでも万死に値する! 」




 中てられただけで即死しそうな闘気を発する雲長。彼の両腕には重さ八十二斤の青龍偃月刀が握られている。




「ケッ、何でこんな軟弱野郎に別世界のオイラが『お兄ちゃぁ~~~ん!』って言わなくっちゃならねぇんだよ!! あーーー!! 考えただけで腹が立つぜ!! 」




 猛獣の大牙を思わせるような犬歯を口の中からちらつかせながら、怒声と言う名の激雷を落とす益徳。彼の両腕に抱かれた一丈八尺の蛇矛が獲物を捕らえんとその刃を煌かせている。




「覚悟して貰いましょうか? 私個人は貴方に恨みはありませんが、女達に対してヘラヘラするその態度は好きになれませんので…… 」




 白銀の鎧を煌かせ、鎧と同じ白銀の槍を構える子龍。




「仮にお主がワシの孫じゃったら、十年程山奥に閉じ込めて性根をきたえさせたいとこじゃがのう……。これも主命じゃ、悪く思うな。まぁワシも子龍殿と同じく主は好きになれぬ 」




 飛将軍の由縁となった名将李広よろしく、弓を番え心の臓を正確に射抜かんとする漢升。




「貴様……。良くも別の世界と言えども散々俺をおちょくって小便を漏らさせてくれたな!? 士丈夫にとってこれほどの屈辱は無い!! 原形が判らぬほど細切れにしてくれん!! 」




 剛槍を握り締め、怒りの炎を燃やす孟起。




「私は孟起殿ほど、貴方に恨みはありませんがね。ですが、矢張り孟起殿の仇は私の仇……覚悟してもらいましょう 」




 軽蔑の眼差しで一刀を睨み、朴刀を突きつける馬岱。




「逃げようとしても無駄です……既に貴方は我らの掌中 」




「ま、これも自業自得と思って諦めるんだな 」




 冷めた目で一刀を見下ろす孔明と士元。




「おっと、そうだ……孟徳の野郎と仲謀の坊ちゃんからオメェさんに伝言あるんだった。『次は我らの責め苦を受けろ』『※宮刑に処し、戦場で兵どもの慰み物にしてやる』ってなぁ……。覚悟しろい!北の字!! 」

(※去勢刑で、去勢の後、賤しい身分に落とすことを指す)




 玄徳が剣の背で肩をトントンと叩きながら、漢にとってある意味の死刑宣告をすると、一刀は恐怖の表情を浮かべ、その場から脱兎の如く逃走し始めた。




「じょ、冗談じゃない!!こんなとこで人生終わってたまるかよ~~~~!!! 」




「待ちゃあがれ! お前ら、北の字を追うぞ!!! 」




「「「「「「「「応!! 」」」」」」」」




 かくして、北郷一刀は己の尊厳と命を護る為に逃走の日々を始めた。この後一刀はどうなったのか?それは誰も知らない……。だが、恐らくではあるがこの「恋姫†BASARA学園物語」という作品に彼が出なかった最大の理由はこれであろう……




~~~終劇~~~




 玄徳こと、劉備の口調は「蒼天航路」を真似てみたものと、彼は侠(いわゆる若いヤクザ者)を率いていたらしいので、それを率いる親分っぽい物にしてみました。違和感を感じられたのならゴメンなさい。



それ以外の人物の台詞は、コーエー『三国志』物をイメージしてみました。


 この短編ですが、前書きにも書きましたが先日退会された『世紀末雑魚』様に送った物なのです。私は彼の書いた『恋姫†BASARA学園』と言う作品の雰囲気が結構好きだったので、『恋姫†BASARA学園』に登場しなかった、元来の主人公『一刀』がでない理由を勝手にでっち上げたお話を書いて送りました。(苦笑


 思えば、これは『照烈異聞録』の雛形になったんじゃないのかなって思っています。


 再び、世紀末雑魚様が戻ってくる事を信じ、本人に無許可ではありますが投稿しようと思い至り、今回載せちゃいました。(苦笑


 それでは、また~! 次回は『照烈異聞録』本編でお会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
[良い点] どうも初めまして、僕の名前はヌァザと言います。 アナザーストーリー『北郷一刀が出ない真の理由』、しっかり読ませていただきました! 確かに某SSでの出番が皆無だなんて一刀にはさすがに同情しま…
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