第二十一話 ごめんなさい
山小屋の中は薄暗かった。
古びた木の匂い。
窓の隙間から吹き込む冷たい風が、部屋の空気を揺らしている。
上の方にある小さな窓が開いていた。
夕暮れの赤い光がそこから細く差し込んでいる。
セシリアは不安げに辺りを見回したあと、再びシャルロットへ視線を戻した。
やはり様子がおかしい。
顔色が悪いなんてものじゃない。
真っ青だった。
今にも倒れてしまいそうで、立っているのすら無理をしているように見える。
「シャルロット様……大丈夫ですか……? 顔が、真っ青です」
セシリアが恐る恐る声を掛ける。
その瞬間、シャルロットの肩がびくりと震えた。
「……っ」
荒い呼吸。
何かを耐えるみたいに唇を噛む。
そして次の瞬間。
「っ……!」
ふらついたシャルロットが、ほとんど倒れ込むようにセシリアへ掴みかかってきた。
「きゃっ……!」
肩を強く掴まれる。
細い指なのに、震えるほど力が入っていた。
「ちょっ、大丈夫ですか!?」
セシリアは慌てて支えようとする。
近くで見るシャルロットは、本当に酷い状態だった。
息が浅い。
身体も熱い。
何より。
青い瞳が酷く揺れている。
怯えているみたいに。
「ご、ごめ……」
シャルロットが掠れた声を漏らす。
「え……?」
「ごめ、なさい……」
ぽろり、と涙が落ちた。
セシリアは息を呑む。
シャルロットが泣いている。
あの、誰より気高かったシャルロットが。
「ほん、と……うに……」
声が震える。
まるで壊れそうだった。
セシリアは混乱する。
何が起きているのかわからない。
でも、この人は今、普通じゃない。
「シャルロット様、とりあえず座りましょう……? ね?」
セシリアが優しく言う。
その時だった。
シャルロットの表情が、ぐしゃりと歪んだ。
「……っ!」
震える手が、ゆっくり動く。
服の奥へ。
そして。
どこからか、銀色のナイフを取り出した。
「――えっ?」
セシリアの顔から血の気が引く。
シャルロットの手が震えている。
ナイフの切っ先も定まっていない。
まるで本人すら、どうすればいいかわからないみたいだった。
「シャルロット様……?」
後ずさる。
怖い。
怖いのに。
シャルロットの方がもっと怯えて見えた。
「ごめ、なさ……」
泣きそうな声。
「わた、し……」
ナイフを持つ手が激しく震える。
「っ、やめ――」
セシリアの喉が引き攣る。
逃げなきゃ。
そう思うのに足が動かない。
「た、助け――」




