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前世から結ばれていた二人のせいで悪役になった令嬢は、記憶喪失になって救われる  作者: 予炉
第一章 捨てられた悪役令嬢は、誰にも救われない
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第十五話 来世でも

 

「そんなに緊張する必要あるか?」


 ルカスが呆れたように言う。


 王都の大通り。


 婚約発表を終えたばかりの二人は、揃って街を歩いていた。


 セシリアはそわそわと辺りを見回している。


「だ、だって! ルカス様と一緒に宝石店なんて……!」


「婚約者なんだから普通だろ」


「普通じゃないです!」


 真っ赤になりながら反論するセシリアに、ルカスは小さく笑った。


 最近の彼はよく笑う。


 昔から彼を知る人間が見れば驚くほどに。


「贈り物くらいさせろ」


 ぶっきらぼうな言い方。


 でも耳が少し赤い。


 セシリアは嬉しくなって、思わず頬を緩めた。


 婚約発表後の王都は華やかだった。


「おめでとうございます!」


 街でも声を掛けられる。


 セシリアはその度に照れながら頭を下げ、ルカスは少し面倒そうにしながらも彼女の歩幅へ合わせて歩いた。


 幸せだった。


 夢みたいに。


「……あっ」


 ふと、セシリアの目が屋台へ向く。


 可愛らしい焼き菓子が並んでいた。


「見てきてもいいですか?」


「すぐ戻れよ」


「はい!」


 セシリアはぱたぱたと駆けていく。


 その後ろ姿を見送りながら、ルカスは苦笑した。


 本当に目が離せない。







 数分後。


 焼き菓子を見終えたセシリアは、ふと周囲を見回した。


「あれ……?」


 ルカスがいない。


 さっきまでいた通りへ戻る。


 でも人通りが多くて見つからない。


「うぅ……」


 少し不安になっていると。


「お嬢さん」


 突然、低い声がした。


 振り返る。


 路地の端。


 古びた布を被った占い師らしき人物が座っていた。


「恋をしている顔だねぇ」


「えっ!?」


 セシリアが一瞬で赤くなる。


 占い師はくつくつ笑った。


「銀髪の恋人だろう?」


「な、なんでわかったんですか!?」


「見えるからさ」


 怪しい。


 とても怪しい。


 しかし、素直なセシリアは信じかけた。


 占い師は細めた目で彼女を見た。


「お前さんたち、前世からの縁だよ」


「前世?」


「添い遂げられなかった恋人同士だ」


 セシリアの目が丸くなる。


 占い師は静かに続けた。


「前世では結ばれずに終わった。だから死の間際に誓ったのさ。“来世では幸せになろう”ってな」


 風が吹く。


 その言葉は、不思議なくらい胸へ落ちてきた。


「……っ」


 セシリアの胸が熱くなる。


 前世。


 来世。


 そんなの、おとぎ話みたいなのに。


 でも、すごく嬉しかった。


「じゃあ、私たち……」


「強く結ばれてるよ」


 占い師が笑う。


「誰にも切れないくらいにな」


 セシリアの頬がぱっと赤くなった。


 その時。


「セシリア」


 聞き慣れた声。


 振り返ると、少し険しい顔をしたルカスが立っていた。


「勝手にいなくなるな」


「す、すみません!」


 でもセシリアは怒られるより先に、嬉しさが勝った。


「ルカス様、聞いてください!」


 腕を掴む。


 ルカスが目を瞬かせた。


「私たち、前世で恋人同士だったらしいです!」


「……は?」


「添い遂げられなかったんですって! でも来世では幸せになろうって約束したんですって!」


 きらきらした目。


 完全に信じている。


 ルカスは一瞬呆然としたあと、小さくため息を吐いた。


「占い師の話だろ」


「でも素敵じゃないですか!」


 セシリアは本当に嬉しそうだった。


 まるで宝物を見つけたみたいに。


 ルカスはそんな彼女を見下ろす。


 そして。


「……そうかもな」


 小さく呟いた。


「え?」


「いや」


 ルカスはそっとセシリアの手を取る。


「行くぞ」


「はい!」


 セシリアは嬉しそうに笑った。


 その笑顔を見ながら、ルカスはふと思う。


 もし本当に前世があるなら。


 もし本当に来世があるなら。


 今度こそ絶対に、


 この手を離したくない

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