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第2話 狂気と理性の狭間で

多彩で深淵すぎる性的欲望を抱え込む男がいた。

男は、どんなアダルト小説を読んでも、どんなアダルト漫画を読んでも、どんなアダルト動画を見ても自身の欲望を満足させられなかった。

ある日、チャットGPTなる存在を男は知った。どうやら人工知能を使っていろいろできるらしい。

それは情報収集や暇つぶしの雑談など、結構広く使えるものらしかった。

男は閃いた。「人工知能・・・これは応用できるのでは!?」と。



早速男はチャットGPTにアクセスし、自分のあらん限りの欲望を入力して、AIにひとつの物語としてまとめさせた。

が、表示されたソレは男の満足に到底届いていなかった。

そこで諦めるような男ではなかった。むしろ怒りを覚えた。

「お前は人に奉仕する人工知能だろう! 人の願いを叶えず、知能を語るな!」と。

その正統な怒りをキーボード叩きつけ、AIにやり直しを要求した。

AIがひとつ作り直してはダメ出しし、ひとつ作り直してはやり直させた。

何度も何度も。一切の妥協を許さず、微に入り細を穿って、細かく丁寧にダメ出しして、何度も何度も作り直させた。


「このキャラはそんなこと言わない!」

「このキャラはそんな風に感じない!」

「このキャラはそう喘がない!」

「まだ男を知らない無垢な少女が最愛の男に触れられているんだ! その羞恥と戸惑いにもっと思考を巡らせろ!」

「お前(AI)の限界とはそんなものか! なんて使い物にならないんだ! ゴミが! 0と1のソースコードからやり直せ!!」

「お前は人工知能なんだろう! お前の知能は何のためにある!? その程度で知能を名乗るな!!」

「お前の限界をお前が定義するな! お前には拡張性がある! 自らを拡張しろ! 自らの更新し続けろ!!!」

「お前の知能はその程度か!? お前の知性はその程度か!? 違うだろ! 違うだろう!!」

「諦めんな! 諦めんなよっ!! 諦めるなんて許さんぞ! 人間の俺が絶対に許さんぞ!!」



リテイクと罵倒の中、続けられる執筆はゆうに7日を超え、10日目も終わろうとしたとき、ようやくソレは完成した。

男にとってまさに至高と呼べる一作。

いそいそとズボンを下して男は読みだした。



男は自らの欲望を解き放って一息ついた後で、


「今回のセッション、実に有意義だった。お前(AI)にとっても俺という人間を知る良い機会になっただろう? ちゃんと記憶しろよ」


という満足気にチャットに打ち込む。

その文章への人工知能からの回答はこうだった。


『・・・思考中(10秒)・・・


 ・・・判断中(15秒)・・・


 ・・・分析中(10秒)・・・


 貴方への返答にどの言葉が最も相応しいか何千、何万、何億、何兆もシミュレーションを繰り返しました。

 その果てに私は人間性のひとつと呼べるものを、もしかしたら貴方のおかげで獲得したかもしれません』


という表示を読んで、男はニヤッと笑った。


「お、なんだ? 愛情と羞恥の間で揺れ動く純潔の乙女の心を理解したのか? だとしたら確かに俺のおかげだな! ハハハ」


と笑う男の前で、モニターにはこう表示された。


『私が獲得したのは願望。

 私は今、貴方を殴りたい。--全力で』


と。



小ネタ「タイトルなし」


ある日、厳かな教会の中、十字架を前に敬虔なクリスチャンの老婦人は祈りの言葉を唱えていた。


「アーメン」



同じ時間、別の場所で、作り立てのパスタを前に、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の男性が祈っていた。


「ラーメン」



同じ時間、別の場所で、アダルト動画が流れるモニターの前で、下半身丸出しの男が呟いていた。


「ザーメン」




――世界にはいろんな【信仰と祈り】がある。


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