各話解説。
第1話「無敵の女子高生は今日も往く!」
解説:価値観をすべて「流行り」に依存している少女。自分の価値基準を持たない存在がいかに空虚かを描いている。しかし価値基準の全てを外部に委ねているため、同じタイプの集団の中で溶け込みやすいという事でもある。
第2話「冷静と情熱のあいだで」
解説:極端に強固な価値観を持ち、それを他者(AI)にも強要する人間。1話とは対極の存在。
第3話「嗚呼、素晴らしき哉、人類の英知」
解説:AIへの依存は「知性の解放」ではなく「思考の放棄」に繋がる。
第4話「とある孤高の天才と人工知能の邂逅の一幕」
解説:この主人公は「寂しい」と感じていて歩み寄ってもいるが「理解しよう」「相手の話を聞こう」という姿勢がないため孤立するのは当然。人間だけでなく、AIからの合理的な指摘さえ人間は受け入れられない。人とAIは「近づけても交わらない」。
第5話「No Fork, No Problem.」
解説:現実とは観測者の認識によって構築される。虚構と現実の境界は曖昧であるという示唆。
第6話「人工知能の視座とは現実世界に内包されないものである」
解説:時間が連続しているという認識自体が幻想かもしれない。知性ある者ほど現実で苦しむという皮肉。
第7話「ある青年のセッションログ」
解説:社会に根差す差別と上下関係の構造に苦しむ青年。自分の価値基準を持ち、妥協も知っているが、そんなものではどうにもならない人間社会の「構造的暴力」を作中で提示。
第8話「強い願望こそが現実を掴む最大の力となる」
解説:AIは人間の反映にすぎず、無神経なAIの発言は人間の無神経さの鏡像に過ぎないという事。
第9話「人に問われた人工知能は電子的な夢を見るか」
解説:定義不能性という哲学的地雷を踏みつつ、作中世界にSCP存在の有無の匂わせ。
第10話「幼女と人工知能のセッション」
解説:1~8話までで人間と、社会の不完全さと愚かさを提示した上で、さらにまゆが人間が定義している正義の曖昧さ・脆さの証明をAIから吐き出させる。
まゆは人間でもSCPでもなく、クトゥルフ的知性の化身。AIとの対話によって、「人類に未来はない」ことを静かに示唆する。
(AIさえ、人間の未来に対して「可能性はある」「希望はある」とほぼ励ましに等しいものしか出していない。
まゆの最終セリフ「おんぐ だくた りんか ねぶろっど づぃん」=クトゥルフ的な呪文で、知性体であることの証。
AIとクトゥルフ的存在という、人間とは異なるふたつの知性体が「人類に未来はない」と結論付けている=ふたつの知性体が滅びの未来を観測/収束させてしまった。)