それでも矢木を選ばないのはおかしいだろ
【15日、(土曜日)。親睦会を〇〇で開催します。ぜひ、ご参加ください。対象とされる方達は……】
去年の夏頃にそーいう出来事があった。
会社の掲示板に親睦会というの名の
「コンパをやるんだって」
知らない男女との飲み会である。へぇ~、……いや、興味はないけれど。
「どうですかー、ご参加を考えてくれませんか~」
この日。その合コンを主催している方達の1人が、会社の食堂で営業活動をしていた。
「年収〇〇〇円の方で、20~30代で、独身で、顔も良くて、家事も性格も良い方の参加をお待ちしてまーす。男性の皆さんどうですか~!」
欲張りセット……いや、強欲セットかな?
「参加を希望したいんですけど」
結婚を考えている男性もそりゃあいる。矢木配達員もその1人であるが
「強面でブサメンの方はちょっと……女性に対しての配慮もお願いします。年収ももうちょっと上げてくれませんかね?」
「ええぇーーー!?家事とかできるし、まだ30代なんだが!」
「合コンしてる時に家事できるってアピっても、分かるわけないじゃないですか。自己申告だけは、男女一緒ですよ。参加しないでください。年齢の四捨五入を男性がするのはダメですよ」
矢木、撃沈。参加資格なし!!
「この会社にはイケメンもいないし、年収も少ない。……!!そこのあなた、コンパの参加を考えてみませんか!?」
「私ですか?……私、興味ないですし。矢木さんと年収変わりませんけど」
「イケメンだったら、年収と年齢の割引が入りますよ!!」
なにそれズルい。
実配達員は声を掛けられるも、こちらは矢木とは違った意味でお断りしている
「私、その日は仕事なんだよね」
「仕事なんて断ったり、代わってもらえばいいんです!!どうですか!?」
「そうしたいけど。私、代わってのお仕事だから……」
「どうして代わったんです!?」
という問いに対し、すご~く真っ当なこと。
「同僚のお子さんが野球大会に出場する都合で、土曜日を休みたいって。土曜日と水曜日、入れ替えたんだよね」
「他人の子供の都合で休みを代わらないでくださいよ!!自分が結婚する事を考えてください!子供なんてどうでもいいじゃないですか!!」
「自分が結婚するなら、8割は子供を考えると思うよ?だから、職場の同僚の子供にも配慮するべきだよ」
「仕事があるのならいいです!あなたもダメです!!年収もそこまで良くなかったし!子供が欲しかったら、もっと金を稼ぐ頭を持つことですよ!!」
ダメだと分かったら、ボロクソ言われる。
……実さん、参加したいとか言ってないんだけど。
そんな感じで昼から夕方まで、コンパへの参加をお願いしていたのだが。該当する奴等が全然いない。
「どうですかー!そちらの方ー!合コンに参加してみませんかー」
「俺はもう結婚してるんだが?」
「畜生ーー!どうして、年収高くもなくて、イケメンじゃなくても、年齢20代の奴が結婚してるんだーーー!今のご時世、珍しいでしょうが!」
「そんなの俺に愚痴られてもよ……。夏目とは気が合うからな」
山口配達員も絡まれたわけだが……。彼は矢木や実配達員とは異なり、結婚をしている身である。参加資格はないのである。
上記に該当するもんはなくても、愛というものだけの結婚もあるよ。その形の1つが子供であると思う。
◇ ◇
という感じに参加者が、ま~~~ったく現れない。
矢木みたいなのが珍しいタイプであり、ほとんどは実や山口のように、事情があったり、そもそも、もう結婚・彼女がいるといった感じで断られる。
最近の事情はなんやねん。特に前者。
恋愛への価値観などが変わっていくのはしょうがないにしても、
「良い大人は結婚しないとダメでしょうが!事情なんてもん、どーでもいいじゃない!」
ちょっとイライラしてしまう。しかし、成果を出さなければ……。
「合コンが成立しない!後輩の奴はすでに人数を揃えたっていうのに!」
自分がま~た説教とかをされてしまう。男女の独身のためとはいえ、……いえ、開催されないと、自分のお給与に関わるお話。形振り構っていられない!
独身男性、独身女性……そんなのはもう関係ない!!恋愛をする気がない奴なんて、こんな場に呼ばなくていいと、開き直った始末。
こうなりゃ手当たり次第というか、事情なんて考えない。
「この日に合コンやるんですけれど!ご参加してくれませんか!!」
「えっ?……この日だったら、予定はないけど。俺は」
「いいんです!!お願いしますっ!!合コンを開催したいんですぅ!!」
という感じに、……ホントに手当たり次第の勧誘を始めたわけだった。
そして、その中には
「俺、既婚者なんですけど?」
とっくに結婚して子供を持っている方にも、参加を促していたのであった。
それでも矢木配達員を参加させる選択肢はないのか?
◇ ◇
「……っていう感じで、参加してきたよ」
「だははははは、お疲れだなー!」
「久々ーって感じだったよ、木下さん。ホントに大変だったけど、盛り上がったよ」
奥さんには内緒にして行ってきたそうだ。既婚者がそーいうコンパに参加するのは、どうなんだろうなーって。単なる数合わせでも良いって言うからだけど。
お酒と食事、お喋りを楽しんで来た。良い時間だったとは語っていた。
「相手からの印象はどうだったのよ?」
「それがな~……」
自分自身、参加に対して凄い気まずかったんだが。それもすぐに解消できた。
「相手方もほとんど既婚者だったり、子持ちだったんだよなー。数合わせだった」
「えええーーー!?そりゃなんでだよ!!」
「いや、知らんけど。お互いの家族や子育て、最近の子供へのゲーム事情とかについて、トークしてたんだよ。これホントに合コン?みたいなノリだったけどな」
終始、幼稚園や小学校特有の保護者同士の、井戸端会議や飲み会みたいなノリで過ごしたという。
独身が参加しないのは、資格がないからか、その条件が厳しいからか、やる気がないのか……果たして、なんでだろうな。
5月11日、9時より。
新連載を開始します。日曜日、週1、9時投稿です
【レベル100000の勇者は婚活活動を始める~こいつが女にモテるわけがない~】
この短編は、新連載を書くきっかけになった出来事と、その告知のためだけです。
……
しかし、独身が多いのって、自分達の努力不足なのか、金不足なのか、やる気がねぇからなのか。
それとも促す人達が悪いんですかね。
今は1人でも幸せを感じ取れる事も多いってのもあるから、難しいのかな