第4話
含みのある言い方に探偵はすかさず尋ねた。
店主曰く、近年鉱山から採れる鉱石の量が減っており、それに伴って街を離れる労働者が増えているという。
「噂じゃあ鉱脈が枯れたんじゃないかって。もう誰も鉱山に入らないらしいよ。困っちゃうね。まあ、幸い鍛治師がまだいるからいいけど。」
すると、娘が厨房から出てくる。
「お父さん!置いといたよーあ、お客さん!初めて見る顔!もしかして旅の人ですか?」
「ええ、近くを通ったもので。噂に名高いリゾットを頂きに参りました。」
「ふーん。お兄さん、モテるでしょ?」
「そんなことないですよ。どうしてそうお思いに?」
「なんか大人びてるし、それに作り物みたいに綺麗な顔してるもん!」
「ハハ、綺麗だなんて。君も綺麗だよ。その髪だって。」
「もう、口が上手いんだから。」
そんな二人のやりとりを見ていた店主が焦燥感を覚える。やはり親というものは子が成長するにつれ、寂しさを感じるのだろう。
探偵はそれを察して、取りませんよ、という意味の笑顔を見せた。
「わ、私!ミルーナっていいます!」
突然立ち上がりそう言った。どうやら会話の入るタイミングを探っていたようだ。強引な自己紹介に呆気に取られながらも娘は眼を見てしっかりと挨拶をした。
「私はティラ。よろしくね。ミルーナちゃん!」
握手を求められて慌てふためくミルーナ。先程までの威勢が何処へいったのか不思議になる程、緊張しているようだった。
こうして探偵は一人の少女にされるがままに美味なリゾットをご馳走になった。
店を出ると外はまだ明るい。探偵は宿を探すべく歩き始める。その間も少女に付き纏われ、名前は?何処から来たのか?そんな質問ばかりを繰り返されるが言葉巧みに躱わす。
そして、気が付けば探偵の姿は消えた。
そう、消えたのだ。隣を歩いていた筈なのに突然と姿が見えなくなった。周りに人は少なく見失うはずもない。しかし、忽然と居なくなったのだ。
その事実に少女は理解が追いつかなかった。暫くその場に立ち尽くし、居たはずの所をじっと見つめる。そして、事態を飲み込むと周りを確認するが勿論、その姿はなかった。
そして次の日、怪事件が起こった。