少し休んでいい
若い頃はクレイジーだったことを、老後に思い出すだろう。もし戦争がなかったら、私は退屈でオフィスデスクにもたれかかってパソコンの画面をじーっと見て、無目的なサラリーマン生活を続けていただろうか?
この旅団は経験豊富な兵士ばかりで、戦争が彼らを蝕み始めているのは明らかだった。 私よりずっと年上の男性が、「夢の中で戦うようになった 」でも言った。
敵が我が大隊の司令部を破壊したという噂がある。彼らがこの地域を制圧したという噂もある。 戦術核兵器を発射しようとしているという噂でさえある。すべてでたらめだ。これらのデマは軍内で急速に広まっている。
大隊長が負傷しただけでなく、死んだという噂もある。これは本当だ。
窓のない黄色いバスが基地の隣に停まっていた。 バスのあちこちに榴散弾の跡があった。遠くから音楽が流れていて、何世紀も前の曲のように感じられた。
戦死者や負傷者の遺品がたくさん残っているから備品を物色することと命令された。バスの中に入った。
戦争の残酷さには慣れている。だが、床に散乱しているアラビア語で翻訳されたマンガのプリントの欠片を見た瞬間、まるで子供の頃、まちかどのコミック書店に連れ戻された気分でもした。著作権なんかの概念がなかった時代にタイムリッフしたい。A4の紙のプリントが集まっただけで、マンガと呼ばれる時に戻りたい。
そのほかに、祈祷用の本、汚れたタオル、ラップの歌詞が書かれたノート、両親への手紙などがあった。そう言えば昨日、基地で空を見て母に誕生日のお祝いを言うのを忘れてしまった。 時間という概念がもうなくなってきた。
そのキャラクターはどうして、次のコマでハマーを持ち出した?そんなのはどうてもいい。
僕は中隊長にどこで寝ればいいのか尋ねた。 ミサイル攻撃の可能性を考えると、今は基地に泊まることは許されなかった。 「好きなところへ行きなさい。 洞窟でもホテルでも、どこでもいい。 金曜日の呼び出しに遅れないようなら」
僕はバスに入り、マンガの欠片を集まって、復元してみた。
「イタダキマス」
日本の人の、いいものを味わう前の決まり言葉のようだ。
アラビア語がわからない?そんなのはどうてもいい。絵が伝わってくるから。
初めて音楽フェスティバルに行ったと同じ感じだった。音響が強く響く、花火が燃え盛るショーの最前列のチケットを手に入れたような気分がした。ホットココアでも飲んだように落ち着く。
でも、この先、こんなチャンスがないことは分かっている。
「ゴチソウサマ」