怪童と街灯
「よし、あとはこのクルマに鍵をかけずに乗り込むだけだ。」
何やってんだ、僕は。うす暗い黄色で街を明かす街路灯に伴って、南国で僕のスマホをハッキングしようとした女子高生と一緒にこのボロいセダンを盗む?
「何か問題でも?」
「いっそスカートの下から兵器庫を取り出したら? そうすれば、僕は自分の顔をつねっても痛みを感じなくなるから」
「ナイスアイディア」
彼女はスカートの下からマイナスドライバーと…メトロノームの振り子の棒を取り出した。
「とてもイージーだわ」
車の盗難のベテランか?女の子が僕の後ろにくっついて、2人はセダンの運転席側のドアの窓に面して立っている。
「ふねをこぐことを想像してみ?常に交互に左右に動かすことから始まる。とてもスムーズで、とてもスローで、リズムに乗っている感覚があったら、ポップイット」
「パンプイット、アハ、ヤー」
「そして引っ張ること、引っ張って、もっと強く引っ張って」
「なんとかこつを見つけた。けど、こういうライフハックは決して欲しくない」
澄んでいている音がする金属スティックが何かを引き上げて、ドアが開けられた。厄介なメーカーだね。僕が自家用車を買うのなら絶対にこのメーカーの車を選べない。
「次にこのマイナスドライバーを持って、そこのあなに詰め込んで荒々しく動かして」
2人は各自に運転席側と助手席側のドアを開け、勝手に座っていた。
「あ、知っている?日本でマイナスドライバーを正当な理由なく持って歩いているだけで逮捕されるのだよ。」
「日本は海沿いの国だろう?私が狙われたら、マイナスドライバーでヤシの木を丸木舟に削り出して、丸木舟に乗って海へ逃げるわ」
上手くいけない。カギの原理くらい知っているよ。普通、マイナスドライバーを差し込でんで回すだけで開かないのだろう。僕はただ、お年頃の女の子と一緒にいたいだけだった。いけ好かない僕だ。
「あ、持っているのを忘れた」
彼女は自分の四次元ポケットからスペアキーを出した。
「持っているのかよ」
「そうだけど、たまに気分転換でもしたいのよね。ああ、ミントがほしくなる。私が案内するから、とりあえず南のコンビニに行って」
「もう無理。エッラーレ・フーマーヌム・エスト。東に自首しに行く」
「自首とはなんなんだ?うちの車だぞ」
「今までのはフラシュゲームのリアルパーソンバージョンをしただけ?」
「ナウ、その怪盗の指でハンドルを握って、私をコンビニまで送りなさい。あ、チョコレートアイスクリームも1つ奢って」
「…サメの竜巻が実在すればいいのに。」
やっぱ街路灯はくそ暗いのだ。車のヘッドライトより暗いのだ。