NSA(Nothing Special Ahead)へようこそ
「ちょっとやばいなぁ…」
僕が引き続いて運営したサイトは、最近になって、ネットワークトラフィックがものすごく増えていた。おかけ様で、サーバー代が倍増した。
同好会レベルのサイトで、使う言語もぐにゃぐにゃ語と、英語でのサイトと間違えにくいのに、なぜこんなにトラフィックが増えているのね。詳しい状況を知らない人から見たら、まるで個人ブログをユー〇ューブとのように運営している天才に見えるのかも。
「あ、やっちゃった」
招かれざる飛び入り客が僕のパソコンを勝手に使っている。
初対面で奢ったマックが美味しかったか、香港でのただのヤドが欲しくてしつこくおしてきたか。何故か彼女と友達未満のような関係になった。待って、放課後デイサービスじゃないから、深圳に帰れよ。戸籍が深圳であった人が香港に自由に出入りできるなんて、笑止千万だ。
どうやら彼女が海賊版マンガサイトから右クリックして保存した画像をZIPファイルとリネームしたらしい。
「待って、どうして開けられるんだ?」
「私に聞かれても、これはあなたのサイトでしょ?」
解凍したら、機密情報とタグ付けされたファイルがあった。
「National Security Agencyって何?」
こんな時に天然ボケしても、へんうんざりするよ。
「アメリカ国家安全保障局。勝手に道具扱いされたかも。…ファイルをパックして再アップロードしたのか、でも、サーバーがウクライナにあるから、現地を見に行けないなぁ」
「わくわく♪」
「マンガの人物を真似するならコミックショーでやってな」
「今日の晩御飯、何?」
「予算による。金出せ。ただ喰いさせたいなら、八號風球がつけられることだけにするぞ」
「台風休みがなくでも、今は夏休みだぜ」
「あんた、こうしてのんびりとしていて、高考はどうする気?」
中国全国高卒統一試験、通称「高考」。毎年数百万人の高卒学生が一つのテストで大学が決まる、まさに人生一大事だ。
「そんなの、見計らってする」
能天気な女の子がパソコン前のオフィスチェアから立ち上がって、エアコンの吹き出し口に近づいてしゃべって、可笑しいロボットの真似をしていた。
「汚したら、あんたを窓から投げ出すぞ」
「ほんまに?35階だよ。高所から物を落とす行為はマナー違反だ」
「マナー違反の集大成したやつを投げ捨てるのはマナー違反か?テセウスの船はパーツが全て置き換えられたら同じ船か?哲学的問題で、道徳的に問題はないんだ」
「それはすごい…けど、どこから話が変わっていると思わない?」
「ホントにうんざりする。あんたの晩御飯はこれ、金貨チョコレート1個だ」
「それは虐待だ!」
「へぇー、養子縁組も結びたい?それとも、自分がシュガーダディーと同棲することを認めていた?」
「認めてもいいけど…冷蔵庫のミルクティーはもう飲み飽きた。ウーロン茶くれいにも変え」