おたまじゃくし
末っ子おたまじゃくしは気がついた。
「なんだか自分に知らないものが生えている」
つるりとした真っ黒ボディが自慢なのに、なんだか横からぽこりと知らないものが生えている。
「病気かな?」
おたまじゃくしは不安になった。
「楽しく水の中を泳いでいただけなのに、どうしてこうなったのだろう?」
おたまじゃくしはこの不思議な体の変化を伝えるために、兄弟の元へ泳いだ。
「ねぇねぇ」
「どうしたんだい、末っ子よ」
「なんだか変なものが体から生えているんだ」
兄弟はふむと末っ子の体を見て、そして嬉しそうに言った。
「それは手と足さ。おめでとう、ひとつ大人になったね」
兄弟は末っ子おたまじゃくしをお祝いした。しかし末っ子おたまじゃくしは不満だった。
「手と足なんて気持ちが悪い。ボクはこれからもおたまじゃくしのままで、この川の中を泳ぎたい」
末っ子がそう言うと、兄弟はこう言った。
「確かに自分の体に急に変化が起こるのはとても不安になる。でも、その手足があれば別の川に行って新しい景色を見ることも、大切な相手に出会うこともできるようになるんだ」
「でも…」
「忘れないでくれ。大人になって泳ぎ方が変わっても、泳げる川が増えたとしても、末っ子は末っ子。ボクにとっても君にとっても、唯一無二の大切な末っ子なんだ」
末っ子おたまじゃくしは考えた。新しい川の中で、大人になった体で楽しく泳ぐ姿を考えた。
「やっぱり新しい体になるのは怖い」
それでもやっぱり、
「ボクはカエルになってもいっぱい泳ぎたい」
体に知らないものが生えてくることはきっと怖いけど、変わらないものもいっぱいある。それは思春期に限らず、みなさんに当てはまると思います。
さて、皆さんは将来どんな人になりたいですか?