表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋のキューピッド、あの人を撃ちまくれ  作者: はっとりおきな
第2章 はじめの1歩はその衝動で
8/63

第8話 陰陽・太極・す

「……え?」



 絶望に押し潰されかけていた夢生むうの心臓が跳ねる。

 何が起こったか解らない少年を置き、天使は笑う。



「アタシさ。外見と口だけで自分を語るイキり野郎が一番嫌いなタイプなの」

「ハ。生き様で語れって? あんた、もしかしてそのナリで誰とも付き合ったことない? 内面なんてキッカケ作ってからしか見えないぞ。そんだけ美人なのにいつまで頭ん中で恋愛してんだよ。いいからダマされたと思って――」

「ブーメラン。ブッ刺さってっけどそのお花畑なアタマで理解できてる? 内面は付き合ってみないと分からない、その通り――――だから汚い内面が合って数分でにじみ出てるお前は『おととい来い』っつってんの♡ アタシをナメてむーをサゲて、そうしねーと自分の価値を示せないクソダサい男。あんたみたいのがウヨウヨしてる『ハキダメ』なんかに、このアタシを誘わないでくれる? キモすぎるってw」

「………………だから嫌いなんだよな。言葉も相手も選べねーバカ女ってのはよォッッ、」

「レピ――」



 ドダン、と遠くから大きな音。

 一斉に振り返る一同。



 そこに倒れていたのは――ズレて割れたサングラスを辛うじてかけている、一人の男子生徒。



「み――美樹本みきもと先輩っ!?」

「階段から落ちてきたのか、今……?」

「待てよっ、美樹本みきもと先輩って確か、風紀派のノドモトの領地をブンりにいくって――」

「どうやら――」



 タン、タンと足音。

 階段を、りんとした圧を放ちながら楚々(そそ)と降りてきたのは、



「――またあなた達に助けられたみたいね」

紀澄きすみさんっ!!」

「チッ、エセ地味子じみこ……」

「ちょっと待てやコラァッ!」「まだ終わってねぇぞガキィッ!」「女にナメられっぱなしでいられっかよ!」



 紀澄きすみふうを追い、ドタドタと階段を降りてくる不良の群れ。

 ふうは彼らを全く意に介することなく夢生むうを、その向こうにいるレピアを見る。



「ありがとう、雛神ひながみ君。そしてそっちのレピア・ソプラノカラー」

「おいいつまでアタシだけフルネーム呼びすんのよやめろ」

「あ、あの……僕らは別に、」

「大丈夫。無理に風紀に入ってほしいとは言わないから」

「!」

「言ったでしょう。あなたは大切な灰田愛の生徒――私が必ず守るって」

「……紀澄きすみさん」

「なにシカトこいてんだこのクソ女ァ――ぁ!?」

『!!』



 背後から風に襲い掛かろうとした不良。



 が、尻餅しりもちをついて、倒れた。



「あ……あれ、俺今、なんで倒れて、」



 不良が目の前を見上げる。

 そこには、いつの間にか不良の目と鼻の先の近さまで接近していた紀澄風。

 レピアが目を細める。



(地味子のやつ――今、瞬時に距離を詰めて男に襲いかかる体勢を作らせなかった――!)

「こいついつの間に――こんな所まで……!!」

「美樹本先輩は倒れました。決着はついたんです、先輩方。これ以上、皆さんとの荒事は避けたい。どうか退いてください」

「関係ねぇ――部長一方的にやられて黙ってられっかってんだよッ! 囲め囲めッ!!」

「紀澄さんッ――――」



 ――――雛神夢生は思い出す。

 レピア・ソプラノカラーが昨日、生徒会幹部の陸奥の取り巻きに囲まれた時のことを。



 宙を舞う男子生徒。

夢生の横を吹き飛び、地に倒れ伏す不良達。



それと全く同じ光景が、今目の前で展開されたからである。



「ごゲッ!?」「が!??!」「づ、ォゴ……!」



 ある者は窓を、壁をヒビ割れさせ、またある者は顔から床に突っ込んで夢生の横を滑り。

 十人にも及ぼう数の不良達が吹き飛び――吹き飛ばした紀澄風は、先程と変わらぬ平静な目で、立ちすくむその他の不良達を一瞥いちべつした。



「まだやりますか?」



「なッ――ど、どうなってんだよこの女ァっっ、」「美樹本さんがポンポン投げられてたのは手品じゃなかったってのか!?」「いや手品はねーだろ」「バケモンかよこいつっっ!」



(紀澄さん、すごい……でもあんな体格差の男子をどうやって? 全く力を使ったようには見えなかったのに――)

「…………合気あいき柔術じゅうじゅつってこと?」

「へ?」



 ポツリとこぼされたレピアの言葉。

 振り向いた夢生が見た彼女の目は好戦的な光を帯び、風に向けられていた。

 風も応じ、視線を合わせる。



「――そう。そんなの(・・・・)わかるのね、レピア・ソプラノカラー」

「フルネームやめろっつってんのに! ハァ~マジ嫌いだわお前」

「ええ、私もあなたのことは嫌い」

「紀澄さん!??」

「だけど。好みのタイプ(・・・・・・)は合いそうね」

「!――――はン」

「……ここまで人をコケにしといて無事で済むと思うなよ。テメエらぁぁあああああッ!!」

「! っレピア後ろッ!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ