第6話 ギャル・寝床・確保
今日も銃声。
そんなわけで、灰田愛第七高校宿直室を寝床にしていた不良達は、いきなり二挺拳銃を構えたトリガーハッピー金髪乱射魔ギャルの襲撃を受け、見事宿直室のドアごと廊下へと叩き出された。
「うし、寝床確保♡」
「……………………」
「畳敷きの部屋なのは、まーあとでアタシ好みに改造するとして。やるじゃんむー、宿直室乗っ取りはナイスアイデア♡」
「そ、そりゃどうも……」
吹っ飛び頭から廊下の壁に激突、のびている三人の上級生を少し申し訳なさそうに眺めながら、雛神夢生は頭をぶんぶんと振り、眉をつりあげて目の前の――今まさに新しいロリポップキャンディを舌の上に乗せたギャル天使、レピア・ソプラノカラーを睨んだ。
「あん? 何よ怒った顔して」
「昨日約束したよね、『もう銃は撃たない』って! 僕も君も困ったことにしかならないって話し合ったでしょ!?」
「えー、んな話したっけ? 恋バナしかしてないような~?」
「ミリもしてないよそんな話!! 昨日は僕と君の約束事と『設定』について擦り合わせただけだろ!」
「もーうっさいなー、マジメンディーなんだけど。アタシがいくら撃とうがあんたには関係なくない?」
「君は僕のために戦ってくれてる『設定』なんだろ!? つまり君の発砲は僕の素行にも響くの!! これで僕が停学とか退学にでもなって風ちゃ――じゃなくて紀澄さんから離れることになったら、君ホントに実家に帰れなくなっちゃうんだよ!?」
「む! う、それは……うぅ~っ、チビむーのくせにウマいこと言うわね」
「チビって言わないで頭をグリグリしないで(その体で近付かないで!!!!!)!」
「あーわかったわかった。これからずっとその調子で絡まれたらマジサガるからわかった。もう撃たない、これでいい?」
「い。いいです。分かってくれれば」
「は~~~~~~。天下界に降りてきた理由の九割がツブれたんですけど」
「僕のこと一割なの……? いや別にいいけど……そんなんで家帰れるの?」
「いやでも、この一割はマジだよ。あんなエセ地味子のどこがいいのかはぜんっぜん分かんないけど、あんたの気持ちもマジらしいのは分かったし。ちゃんと最後まで面倒見てやるから、このレピアちゃんに任せなさいって。とりま風紀委員に所属する所から! さあ地味子探そ!」
「いや、だから僕は――まあいいや。ともかくここは早く離れよう」
「なんで? この廊下もこれから一生アタシの庭なのに」
「君ホントその強気どこから来るの……? じゃなくてっ、ここは本来『生徒会』の領地なんだよ!」
「領地?……あー、なる。言ってたねンなこと」
「そう。だからいつまでもこんな所にいたら無用な火種になりかねないし、紀澄さんや風紀の人にも迷惑――」
「ど、どうした相葉ッ、鈴見、森岡! 宿直室どうしたっ、誰にやられた!!」
野太い声。
夢生達が離れようとしていた宿直室、そこでのびている三人の不良達に駆け寄ったのは――見るからにガタイのいい、高身長の男子生徒。の群れ。
「――が、かか……る……」
「遅かったねー♡」
(なんでそんな楽しそうにしてるのさっ!!)
「声ちっさ聞こえないんですけどw いや、そりゃ避けられる争いなら避けたいけど――――避けられない争いなら大歓迎だから、アタシ。ここのやつらもちょっち面白いし」
「面白いって――」
「おー、二挺拳銃のキンパツ女。あんたかよ、陸奥のヤツやったの」
軽薄そうな声と共に現れた、先の男より更に精悍で長身の――優男風の男子。
夢生が心臓を掴まれたような声で顔を青ざめさせる。
「生徒会幹部……ボクシング部部長のっ、佐土原先輩……!!」
「……ボクシング。へーぇ」
「会いたかったぜ。レピア・ソプラノカラー」