第45話 わたしの・だいすきな・ひと
「ぁ――――きゃふ、ァ……ッッ!!!?」
「ははぁっ……! 早速聞いたことのない高い声だ。やっぱり感じてたんじゃないか……!」
「ち、ひッ……!!?」
鼓動が早くなる。
頬が上気し、呼吸が乱れる。
目が潤み、下半身が――――布の上からこすり続けられている秘所が熱くて、熱くて。
「――はは。はは……オイ。腰動いてんぞ」
「ちがッ……やめろッ……!!!」
快感に歯を食いしばるレピア。
「ッッ!!? 違うッッ!!!」
否。
不快感に歯を食いしばるレピア。
しかし体はもはや意識が朦朧とするほどの熱に包まれ、意思とは関係なく指でいじくられる腰には力が入り、力むまいとすればするほどもじもじと、まるで、求めるように――
(これが悪魔の――夢魔の王インキュバスのっ、魔眼……!!!)
「認めちまえよ。気持ちいいんだろ? もっとして欲しくてたまらないんだろ?」
「死ねッ……!!」
「仕方ないさ。好きな男を想えば誰だって自分を慰めくらいするんだ。俺はただそれを手伝ってやろうというだけ。お前にもっとシアワセになって欲しいだけだ」
「耳元でッっッっ、ささやくな……!!!」
気持ち良い。
「ッ違うッッ!!!!!」
否。
気持ち悪い。
「違わないね。こんなにココ熱くしといて何の説得力もねえよ。なあ!?」
「ああぁあッッ!!!? やぁ、ぁ……!!!」
擦る指が増える。
二本の指が秘所を、布の上を、突起を、無遠慮に、はさむように――
「あーん」
「はぁッ……っッ!!?」
ヨハインが。
レピアの胸に、下着の上から吸い付き――唇で乳首をいじくる。
「んはァ……この汗と甘ったるい臭い、いい声……最高だぜレピア。鳴け。もっと鳴けメスッ!!」
「ぎっ……!! こ、の――」
「オレヲミロ」
「――――」
見る。
何のためらいもなく、従ってしまう。
「――――う、そ」
やっと気付く。
レピア・ソプラノカラーは――――この女はもう、何一つこの男の命令に逆らえなくなっていることに。
「俺ニ身ヲ委ネロ。辛い思いばかりしてきたろ。だから――今だけは何もかも忘れちまえ。レピア」
「ぁっ……ぁああぁああああああッッッ!!!!?」
レピアがより目を縁取る桃色の光を強くさせ、びくん、びくんと体をのけぞらせる。
感情のない涙が流れ、口の中が知らない粘りけで満たされ、乳首は下着に擦れじんじんと痛み、濡れたナカに欲しくて欲しくて欲し
「違うぅぅうううッッ!!!!」
否。
否?
何が?
欲しいことが?
濡れていることが?
乳首が?
粘りけが?
涙が?
(――――違う。アタシは――!!!)
「あぁ。やっと見えてきた。――そうか。きっかけはあのプールなのか」
「ッッ!!!?」
「プールの中で夢生を抱きしめる風。彼女を心で追い詰めた笠木に怒り、心から彼女を救った夢生の気持ちを理解し、すべての想いを乗せて夢生を抱き締めた風。お前は確信したんだな。夢生と風が結ばれることを」
(何――こいつどうしてそんなっ、)
「流れてくる。伝わってくるぞレピア、そのときのお前の気持ちが。お前の戸惑いが。そうか、そのときから夢生の動きや気持ちが全部ぜんぶ気になったと。ほんとはとっくに自分の気持ちの変化にも気付いていたと。認めたくなかっただけだと」
「だまれ黙れだまってッ、」
「あぁ……なんてことだレピア。お前の心はねじ切れそうだ。……おぉ!? おっほほお、なんてこった、やるじゃないかレピア。まさか食べかけのキャンディを夢生の口に!? これはとんでもないアプローチだ、」
「お願いだからやめてよッッ!!!!」
顔をうつむかせたレピアの頬を、感情のある涙が伝う。
聞きたくない言葉が、押し隠していた心が――悪魔の口から全部ぜんぶぜんぶ、みんなさらけ出されていく。
少女の体を犯す恋堕が、心までも犯し尽くしていく――――
「ハァ……あのさあ。これで『アタシは二人を応援するキューピッド』とか無理あるでしょ。w 何がキューピッドだよ。天使の特権でたまたま行けるだけの夢生の部屋で、風の見てない所で夢生にクソほど直接的なアプローチして……ズルい女だお前は。女。女。女女女女おんな!! お前はキューピッドなんかじゃない。ただの欲に支配されたメスじゃねえか。後先考えず、肝心な所で感情でしか物事を考えない典型的なメス。そんなことだから下界に落とされるんだお前は」
「……わたし、は……女……」
「ああ。汚い汚いただの女だ――そんな女に『神性』だとか。ふさわしくないよな?」
「あうっ!?――――ぁ、」
ヨハインが。
レピアの前髪をつかみ、涙に濡れた顔を上げさせる。
「おしおきだ」
「ぁあ…………ああぁぁあ……ッッ!!!!」
魔眼を見つめる。
魔眼を見つめる。
堕ちていく。
天使の目が光を――――その「神性」を、失っていく。
「あぁ……あぅぁ……」
「…………知りたいか? お前が夢生を手に入れる方法を」
「!!!!!!」
レピアの顔に生気が戻る。
レピアは風を殺そうと決意した。
「!!!ダメだめだめぇええぇえッッッ!!!!!」
「なんで?? それしかないだろぉだって。夢生は風が好きなんだ。それなら風を事故なり何なりにかこつけて殺せば、その後夢生が立ち直るまで励まし続ければお前の勝ちは確実じゃないか!?」
「違う違う違うッッ!!」
「違わない違わない違わないッッ!! 殺せ。殺せ風を。好きなんだろ夢生が!! 抑え切れないんだろだって気持ちを!? 自分のよだれまみれのキャンディを夢生の口に押し込むくらい欲しいんだろアイツが!!!!」
「やめてやめてやめてやめてやめてやめてっっ、」
「風もサクラも誰も彼も!!!! 夢生に言い寄るオンナはみんな殺しちまえ!!!!!」
「だってそんなわたしを夢生は好きにならないじゃんッッ!!!!!!」
絶叫し、恥も外聞もなくレピアが泣き叫び始める。
「あぁぁああ……!!! あぁぁ゛あぁぁあああ……ッ!!!!」
「………………レピア、」
ヨハインが、レピアのあごを手でつかみ――彼女の目を、真摯に見つめる。
「かわいそうに。お前はこんなに傷付いてるのに、雛神夢生は平気な顔で紀澄風と幸せになろうとしている。お前にどれだけの傷を与えたかも知らないで……」
「……ヨハイン……」
「辛かったよな。苦しかったよな。誰かに話したかったよな。ちゃんと叱って、諦めさせて欲しかったよな。そんな人が欲しかったんだよな」
「……うん……」
「俺ニ乗リ換エロ」
「っ……!」
ヨハインがレピアを見つめる。
レピアがヨハインを見つめる。
二人の目が、近付いていく。
「俺はお前が好きだ、レピア。俺ならお前に嫌な思いなんてさせない。俺が幸せにしてやる。女として生まれた悦びを、身体にも心にもイヤというほど刻み込んでやる」
「……ぁ。ぁ、」
「仕返ししてやるんだ、夢生に。ずっとお前を宙ぶらりんでほったらかしにしたアイツに。悪い提案じゃないだろ、だってお前は――――――俺のことも好きなんだから」
「……ヨハイン……!」
感情のある涙が、レピアの頬を伝う。
うっとりとした目が、桃色に輝く。
ヨハインは邪悪に笑ってレピアのブラを爪で真ん中から切り落とし、空いた手で下着の紐を優しく解き落とし――――レピアを一糸まとわぬ姿にする。
二人の唇が、近付いていく。
「好きだ。レピア」
「わたしm――」
〝僕の天使を――――バカにするなあッッ!!!!!〟
「――わ。わたし、は」
「……………………」
顔をかたむけ。
一瞬止まったレピアの頭を、後ろから抱くようにして。
ヨハインはレピアに、深く口付けた。
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ストーリーを読み間違えていたって構いません。
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なので完結前でもエンリョせず。
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