表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋のキューピッド、あの人を撃ちまくれ  作者: はっとりおきな
最終章 好き
40/63

第40話 雛神・夢生の・正体



 撃たれた夢生むうが体をくの字におり、



「ぬッ!? ぐ、ァ……ッ!?」



 ヨハイン・リフュースが、うめき声をあげた。



(! あの男――魔物まで悲鳴を!?)

「がッ、ア゛……そうかッ、クソッ!」



 ヨハインが目を光らせる。



 夢生むうは声もなく地にかたむき――すべり込んだふうに抱きとめられた。

 ヨハインがそれをにらみつける。



「むーくんっ!」

「ぁ……ふう、ちゃん」

「っ、よかった、もう意識――」

「ッ――逃がさんぞメスッ!」

「!」

「くそ、今ので弾切たまぎれ――――」



 銃を構えて歯噛はがみしていたレピアが――途中で言葉を切り、叫んだ。



「――二人連れて逃げろ変態(・・)ッ! こいつはアタシがやる!!」

『ッ!!?』



 言葉の意味を理解できなかった風を。



 目を覚ましていた霧洩きりえサクラがつかみ引っ張り、屋上を飛び降りる(・・・・・・・・)



「っな、」

紀澄きすみ。そのまま彼をつかんでいて」

「ッッ――レピアっっ!?」



 風に抱かれた夢生の視界で。



 ただ一人屋上に残されたレピアが、フェンスの向こうへ消えていく。



「レピアッッッ!!!!!!!」

「大丈夫だって。あんたを幸せにするのが――アタシの役目だから」



 切なげに笑い。



 レピアは夢生から、はなれていった。


◆    ◆


霧洩きりえサクラは、校舎からはみ出ていた(・・・・・・・・・・)ロングソードの柄に片(・・・・・・・・・・)手でつかまった(・・・・・・・)



「がはッ――! 先、輩――」

「……ごめん。手伝えない、なんとかして」

「ふわふッッ??!??!? ふふふふーちゃ、あの、むねがっ」

「――むーくん、体を小さくして。私の胸に顔を近付けて」

「え゛ぇ゛え゛っ――……――こ、こう!?」



 風の腕の中でお姫様だっこで抱えられた夢生が、ぷむ、と恐るおそる彼女のひかえめな、でもしっかりある胸に顔をうずめ、ひざをなるべく自分の胸へと寄せる。



「――胸に顔をうずめて(・・・・)とは言ってないんだけど」

「っ?!?!?!? ああいやその間違っ」

「このえっ、」

「え――」

「っちっっ!!!」



 風が右手で夢生の制服のえりをつかみ、左手の平でしりを支え――――練気れんきにて強化された腕力わんりょくで、校舎の開いたまど目がけて投げ飛ばした。



「うぃいぃぃいいぃいっ!!?!???!」



 体を縮こまらせていたのが幸い。



 夢生の体は無事窓枠(まどわく)にぶつからず通り抜け、教室のドアの鉄の柱に激突したのち落ちてバケツに顔を突っ込んだ。



「ぼぎょびこぺ?!??!」

「……ナイスショット?」

「のちホールインワン」

「ぼ、ぼく腕おれてるんですけど……。。 。」

「スケベは制裁。ホラ立って、むーくん」



 ほぼ同時に窓から自力で校舎へ入ってきた風とサクラ。

 夢生は風に起こされ、肩を貸される。



 屋上から、轟音ごうおん



「――風ちゃん霧洩きりえ先輩。戻りましょう」

「彼とついてきて。紀澄きすみ

「……はい」

「戻ってよ風ちゃんッッ!!!」

「落ち着いてむーくんッッ!!!」

「!」

「今の私達じゃアレに勝てないッ!――倒し方が解らない(・・・・・・・・)ッ」

「それはレピアも一緒だよッ!!!!」

「違うわ」



サクラが静かな声で夢生に言う。



「彼女は天使。悪魔の唯一の天敵(・・・・・)

「――!!」

「天使は『アタシがやる』と言った。彼女にけて。でもその間、私達も態勢たいせいを立て直す」

「…………レピアっ……!!」

「…………先輩。行先は」

「……アレの言葉が正しければ。ここは間もなく『魔』の巣窟そうくつになる」

「!」

「でも一つだけ――絶対に侵入しんにゅうされない場所があるの」

「……準備がてら、色々聞かせてもらいますから」

「ええ。でもその前に、寄るところがある。手伝って」


◆    ◆


 戻ってきたのは、天羽あもう失禁しっきんし倒れている生徒会室だった。



 換気扇かんきせんを全開にし、かろうじて無事だったアルミの引き戸を閉める。

 サクラが鍵を閉めると――途端とたんに部屋を囲うかべの内側に一枚、き通った赤黒い光のかべが張られた。



「これは……結界けっかい

「ええ」

「……先輩。これ、どこに置けば」

「適当に。使い捨てだけどそう壊れたりしないから」



 風とサクラが、持てるだけ持っていたいっぱいの鉄剣てっけんを床に置く。

 廊下に散らばっていたものを、かき集めてきたのだ。



「……体、大丈夫なんですか。笠木かさきに撃たれて――」

「下着と制服。防弾性ぼうだんせいがあるから」

「……すごいですね、色々と」

祓魔師(エクソシスト)の間で、ずっと続いてること。――座って。とにかく今は休んで」

「ありがとうございます。――むーくんも座って。少しでも休もう」

「………………」



 無言で、風が示してくれたパイプ椅子いすに腰かける夢生。

 彼は鉄剣てっけんをひとつも持ってこなかった。



 持つだけで手が焼けるから、持つことさえできなかった。



「……先輩。この結界って」

「ええ。魔法陣まほうじんじくに、内と外を完全に遮断しゃだんする――アレが準備していた結界も、恐らく同じ」

「ふす――いいや違う、魔物。あの魔物、魔法陣まほうじんなんていつ――」

「私達の戦闘の間、でしょうね」

「……なんてこと」

祓魔師(エクソシスト)、失格だわ。『魔』の族長ぞくちょうかく一角いっかくが近くにいながら、気付くことができなかったなんて……欠陥けっかんにも、ほどがある」

「フォローには、ならないかもしれませんが。アレは十八年もこの国に潜伏せんぷくしていたと言ってました」

「それは聞いていた、けれど……」

「あなただけじゃない、多くの退魔たいまがアレを見逃していた。アレの隠れんぼ(・・・・)が上手かったと考えるべきです――――先輩。アレは一体何なんですか? 私は――」



 風が、胸元をぐしゃりとつかむ。



「私はもう、手遅れ(・・・)なんですか……!?」

「……夢魔むま。要するに、サキュバスやインキュバスと呼ばれる者達。他者をその魅力みりょくで狂わせ、操り、魅了みりょうし――悪魔の子を孕ませる(・・・・・・・・・)、魔物」

はらませる――先輩それはッ、」

「大丈夫。あの女は天使。夢魔むまの王とはいっても所詮しょせんいち魔物の族長ぞくちょう程度ていど、神に直接(つく)られた生命である天使とは格が違う(・・・・)。恐らくアレは、彼女にれることすらできないはず」

「そんなにも……」

「そう。だからあり得ないの。彼があの女に触れるは(・・・・・・・・・・)ずない(・・・)

「!!」



 風とサクラの目が――――夢生を見る。



「で――でも先輩、それじゃ雛神ひながみ君は一体っ、」

「彼は何故だかにおいが薄かった(・・・・・・・・)。だから近くでいでも、なかなか確信が持てなかった」

「……『()の気配が薄い(・・・・・・)と?」

「『魔』が薄く、天使にもさわれる夢魔……可能性は一つだわ。彼が、純血の夢魔ではない(・・・・・・・・・)ということ」

「……霧洩先輩。雛神ひながみ君は――」

「『半魔はんま』。異種族いしゅぞく交配こうはいにより生まれ落ちる、半純血はんじゅんけつ禁忌きんきの子」

「……人間とインキュバスの、混血ハーフ……!!!?」


ここまでお読みいただきありがとうございます。


「面白い」

「続きが読みたい」

「なんじゃこの話ィ!?」と思っていただけた方は、


画面下の【いいねボタン】【いちばん右の★】をクリックしていただけると、

とても嬉しいです!

投稿ペースも書く速さも早くなります(ホント


感想やレビューもドシドシお待ちしてます。

ヒトコトだけでも、「つまらない」という言葉でも、

ストーリーを読み間違えていたって構いません。

どんな感想も、いただけるだけでスゴくうれしいのです。


なので完結前でもエンリョせず。

あなたのヒトコトが私の原動力になります!


どうぞよろしくお願いします!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ