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強竜ロボ ジーレックス  作者: なろうスパーク
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第5話「外圧!アメリカンヒーロー」

今日は日曜日。

この所、リリィナイトによる攻撃は無く、翔太朗とまりんは研究所に備え付けられたリラクゼーションルームにて、流行りのゲームで遊んでいた。



「そこだっ!行け!」

「あんっ!ダメダメダメぇっ!!」



互いの操作キャラクターをステージから落下させようとする、翔太朗とまりん。

こういうのは若い方が有利な事もあり、まりんの方が押されぎみだ。


………翔太朗も翔太朗で、まりんが慌てる度にばるんばるんと揺れるJカップの巨乳に、気を散らされないよう必死なのだが。



「………まりんさん」

「ん?なぁに?翔太朗くん」

「いやまりんさんって………平成の日本だから許されるキャラですよね」

「?」



頭に?マークを浮かべるまりん。

なるほど、巨乳で天然ドジっ子………つまる所、胸が大きくて頭の悪いまりんは、少なくとも令和の時代に出せば、非難を浴びるキャラクターだろう。


特に、アメリカの大作映画を引き合いに出され、コンプライアンスとポリティカルコネクトレスの視点から、バチクソに叩かれてるのは目に見えている。


つくづく、この作品の時代設定が平成でよかったと言えるだろう。


………そして、今回の話は、そんな「かの国」が絡んでくる話だ。



「大変じゃあああっ!!」



血相を変えて、鳳博士が飛び込んできた。

何があったのか?と振り向く翔太朗とまりん。



「ワシらの事がアメリカにバレた!」

「アメリカに?!何がだ!?」

「未成年を戦わせている事じゃああ!」

「一番面倒なやつじゃねーか!!」



そう、この世界においてもかの国の覇道とええかっこしいは相変わらず。

鳳博士が少年兵同然の事をしていると知れたら、何をしてくるか。


その、直後であった。

リラクゼーションルームの、研究所の外の方に向いた壁がズドオォン!!と吹き飛んだのは。



「うわっ!」

「き、来よったあ………!!」



震え上がる鳳博士の前で、土煙の向こうから、壁を破壊して研究所内部に侵入した「奴等」が姿を表す。



「HAHAHAHA!HAーッHAHAHAHA!」



わざとらしい高笑いと共に姿を現したのは、金髪にぴっちりスーツの二人組。

顔の特徴から、両方ともアメリカ人である事がわかる。


方や、ケツアゴの男。

戦いで鍛えられた………というよりは、魅せる為に鍛えたボディビルダーのような筋肉モリモリの身体を、青いタイツで包み、上から赤いブーツと手袋、ブーメランパンツを履き、マントを羽織っている。


方や、巨乳の女。

モデルを思わせる引き締まった身体をしているが、その乳房は大きく、また形がいい。

こちらは白いタイツで、その上から赤いブーツと手袋を履き、赤いマントをしている。


見たまんまで解る、アメコミのヒーローとそのサイドキックである。

彼等の名は。



「正義のヒーロー、キャプテンマッスル参上!」

「同じく、ミズメロディー、参上!」



マッスルポーズを取りながら名乗るヒーロー「キャプテンマッスル」と、セクシーポーズで名乗るそのサイドキック「ミズメロディー」。



「貴様か!子供をロボットに乗せて戦わせているという、悪の天才科学者は!」

「悪の以外の所以外は真実じゃ!」



彼等は、アメリカに数多く移籍しているヒーロー達の中でも、上位のランクに入るスーパーヒーロー。

アメリカが、子供を戦わせる鳳研究所の悪行に対して遣わせた、正義の使者である。



「だ、だいたい貴様らアメリカがキマシティウス対策をを日本に丸投げしとるからワシらが戦う羽目になっとるのじゃぞ!?」

「黙れ!悪の科学者め!このキャプテンマッスルの正義の拳で成敗してくれる!!」



キャプテンマッスルが、鳳博士を殴り飛ばそうとした、その時。



『緊急事態発生!リリィナイトが町で暴れています!』



丁度いい所に、キマシティウスの襲来を知らせる警報が。



「しょ、翔太朗!キマシティウスじゃ!ジーレックスで出撃するのじゃっ!」

「お、おうっ!」



戸惑いつつも、翔太朗はジーレックスでリリィナイトを迎撃に向かう。



「待て!話はまだ………」

「お前さんもじゃぞ?正義のヒーローが、リリィナイトの驚異に晒される人々を放っておいていいのか!?」



鳳博士に言われたキャプテンマッスルは、ハッとしたような表情を浮かべる。



「………よし、行くぞミズメロディー!町の人達が危ない!」

「ええ!」



そして、ミズメロディーを連れて、ジーレックスの後を追うように町へと向かった。

リラクゼーションルームに残された鳳博士は、ふうとため息をつく。



「どうにか、連中は撒いたわい………今の隙に、逃げる準備をせねばな」



リリィナイトにあのアメリカンヒーロー共の注意を引かせる作戦は成功した。

連中の脳が単純だった事を喜びつつ、翔太朗達を放って逃げようとする辺り、鳳博士である。





………………





ビルを壊さぬよう、大地を踏みしめながら目標の元へ進むジーレックス。

その眼前に、敵は姿を現した。



『ニーシッシッシ!ようやく来たでありますな!ジーレックス!』



対するは、キマシティウス四天王が一角。

制服の上から白衣を羽織り、髪をチャイナイズムを感じるお団子型にして、メガネをかけているという、鳳博士並みにあからさまな科学者である「イザベラ」。


彼女が円盤から操るのは、長い二本の触手が伸びたクラゲのような帽子型のユニットを被った、少女型のリリィナイト「ジェリーガ」。

イザベラ自身が開発・製造を行った、特注品だ。



『クラゲみたいな外見しやがって!その触手を引きちぎってやる!』

『やれる物ならやってみるでありますよ!ビリビリ痺れさせてやります!』



互いの外部スピーカーを使った煽り合いの後、ふわふわ浮いているジェリーガに向け、ジーレックスが突撃する。



GAEEEEEEEEEN!!



ジーレックスの爪と牙が、ジェリーガを引き裂こうとした。

その時。



「マッスルパァァァンチッ!!」

GAEEEEEEEEEN!?



ぼごおっ!


突如、右から飛来した衝撃が、ジーレックスを弾き飛ばした。

何事かと、倒れたジーレックスの中で翔太朗がモニターを見つめると、そこには。



「キャプテンマッスル!?」



そこに居たのは、マントを靡かせて空中に佇むキャプテンマッスル。

そう、ジーレックスを殴り飛ばしたのは、他でもないこいつだ。



『何のつもりだ!?俺は敵じゃない!』



敵は自分ではなくジェリーガじゃないのか。

翔太朗からの問いに、キャプテンマッスルは。



「君が戦わされているのは、そのロボットがあるからだ!安心しろ、私がそれを破壊して、君を戦いから解放してやる!」

『はあ!?』



キャプテンマッスルは、大人に戦わされている可哀想な子供を助けるつもりなのだが、どうやら周りが見えていないようだ。

この状況でジーレックスを破壊されるというのは、翔太朗からすれば救済でもなんでもなく、町からしてもジェリーガの驚異に晒される事に繋がる。



『なんだか知らんが、チャンスであります!行け!ジェリーガ!』



イザベラはこの機を逃すかと、ジェリーガの触手からビームを放ち、ジーレックスを攻撃する。



「さあ行くぞ!マッスルキィィィック!!」



キャプテンマッスルも、ジーレックスに対して必殺の飛び蹴り・マッスルキックを放つ。



GAEEEEEEEEEN!?

「うわあああっ!!」



ジェリーガとキャプテンマッスルからの一方的な攻撃に、反撃できず追い詰められてゆくジーレックス。


特にキャプテンマッスルは、無論ジーレックスと比べると小さく小回りが効く上に、ジーレックス並みのパワーで攻撃してくる。

アメリカで、ジーレックスのような巨大ロボットが作られない理由は、こんな超人がウジャウジャいるからだろう。



GAAAA………ッ!



苦しむような声をあげ、その場に倒れかかるジーレックス。



「トドメだ!マッスルスマァァァッシュ!!」



キャプテンマッスルは、その隙を逃がさない。

自身の最高必殺技である全力パンチを、ジーレックスに向けて叩き込もうとする。


だが。



………パッシィアッ!



マッスルスマッシュがジーレックスを破壊しようとした時、横から伸びた腕がキャプテンマッスルの腕を掴み、止めた。

その腕の主は。



「み、ミズメロディー!?」



なんと、キャプテンマッスルを止めたのは、彼のサイドキックであるミズメロディー。



「一体どういう事だ!?ミズメロディー!」



予想だにしない状況に狼狽えるキャプテンマッスル。

そんな彼に対して、ミズメロディーは。



「………うっさいヴァーカ」

「なッ!?」



まさかの暴言。

その直後、ミズメロディーはキャプテンマッスルを腕ごと振り上げ、投げ飛ばした。



「アウチッ!?」



投げ飛ばされたキャプテンマッスルは、そのままビルの屋上に激突。

まるで80~90年代のバトル漫画のように、屋上にクレーターを作った。



「………この際だから、もう我慢しない………否!」



いきなりの事に状況を飲み込めないキャプテンマッスル、そして翔太朗やイザベラの眼前で、ミズメロディーは己のコスチュームの胸に手をかける。

そして。



「我慢シマセーンッ!!」



急に、昔の日本のメディアに出ていたかのような、似非外国人のような口調になったかと思うと、なんと自分のコスチュームの胸元をビリッと破いた!

丸出しにこそならなかったものの、彼女の胸の谷間が露出する。



「な、なんのつもりだミズメロディー!?」

「FUCKING!お黙りデース!!」



突如、襲いくるミズメロディーに、狼狽えるキャプテンマッスル。

彼女の今の口調は、人種差別として禁止されている物だし、胸元を晒すのも性的消費を煽るとして禁止されている物。

ミズメロディーは、一体どうなってしまったのか。



「なんだか知らんが………反撃するなら今だ!」



そして、キャプテンマッスルの攻撃から解放された翔太朗は、ジェリーガの相手に集中できるようになった。

反撃は今だ。



「食らえ!ロケットクローーーッ!!」



ジーレックスが、ロケットクローを放つ。

飛来する強靭な爪は、ジェリーガの攻撃手段である頭部の触手を破壊する。



「トドメだ!プラズマブレェーースッ!!」

GAEEEEEEEEEN!!



トドメは、口から放つプラズマ熱線・プラズマブレス。

吐きかけられる高熱が、ジェリーガの美しいボディを融解させ、大爆発させる。



GAEEEEEEEEEN!



勝利したジーレックスの咆哮が、炎上するジェリーガの残骸を前に響いた。


そして、こちらの方も。



「もうこれ以上は我慢の限界デース!ユーのような筋肉ダルマの恋人のフリは疲れマシタ!」

「フリ?!俺達は愛を誓い合ったんじゃ………?!」

「それは社会的立場を守る為のカモフラージュデース!ワタシがLOVEなのは!ティーンズビューティフルボーイデース!!」

「子供を性的に見るだと?!嘘だと言ってくれミズメロディー!」

「ノーーッ!これはワタシの本音であり真実なのデース!!」



ミズメロディーは、罵倒を飛ばしながらキャプテンマッスルを殴り続ける。

自分との愛は偽りだっただの、自分が好きなのは未成年の少年だのと、次々と明かされる彼女の真実は、キャプテンマッスルの中のミズメロディーのイメージを音を立てて崩し、彼の心をズタズタに引き裂く。


そして、罵倒と暴論の果てに。



「本国のスポンサー共に言っといてくだサーイ………これがワタシの辞表デース!!」



どぐしゃあああっ!!


ミズメロディーの、全力を込めた一撃がキャプテンマッスルに叩き込まれた。

殴り飛ばされた、キャプテンマッスルのその筋肉モリモリの身体は、まるでモデルガンから放たれるBB弾丸のように飛び、三つのビルを貫通した後に、アスファルトに叩きつけられてようやく静止した。


こちらの戦いも、ようやく決着がついた………。





………………





ミズメロディー………本名「メロディー・スワン」は、アメリカの基準で言う小児性愛者だった。

もっと言えば、ショタコンだった。

10代の可愛らしい美少年が好きでたまらなかったのだ。


しかし日本と違い、二次元文化があまり市民権を得ておらず、さらには宗教と世間からは、それは「悪の犯罪者予備軍」として、社会的リンチの対象にされる物だった。

故に、彼女は自分を圧し殺し、好きでもない筋肉マッチョのキャプテンマッスルのサイドキック兼恋人をせざるを得なかった。

そうしないと、アメリカでは生きてはいけないからだ。

「○○デース!」と言うような、幼少期を日本で過ごした為についた「訛り」を封印したのも、その為だ。


そして、今回の鳳研究所への襲撃の際に、抑え込んでいた感情がついに爆発。

今回の結果に繋がった。


なお、メロディー=自国の元スーパーヒロインが小児性愛者であるというスキャンダルは、十分にこちらがアメリカ政府に不可侵条約を結ぶ為の「切り札」となった。

半場脅迫するような形で、今後アメリカが、鳳研究所の方針に口を出す事は無くなった。


………そして、実質アメリカから追放されたメロディーはというと。



「ショータロー!ヤヨイ!ハーワーユー!」

「おはようございます、メロディー先生」



翌日、大野学園に登校する翔太朗と弥生の前には、メガネをかけてシャツにスカートという、いかにも女教師な装いのメロディーの姿があった。


所属がアメリカから日本に変わっただけで、ヒーロー活動は続けるらしいが、新たに「大野学園の英語教師」という、世を忍ぶ仮の姿という日本での立場も手に入れた。


同時に、弥生や香織と同じく、ジーレックスの秘密を共有する仲間としての立場も。

………美女の仲間が出来てしまった香織は、若干警戒していたが。



「ウフフフフ………ティーンズビューティフルボーイ………ウフフフフ………」



メガネの奥で、学校の生徒達を吟味しながらじゅるりと微笑むメロディー。

教育者として大丈夫なのだろうかと思いながらも、実際に手は出さないならいいかとも思いながら、翔太朗は新しい仲間を歓迎するのであった。

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