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強竜ロボ ジーレックス  作者: なろうスパーク
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第1話「苦労!ヒーローの裏側」

平成50年。


日本は、突如として宇宙から飛来した侵略勢力・宇宙女学院キマシティウスの「お前達男って、醜くないか?」という一言と共に、侵略戦争を仕掛けられた。


何故、アメリカや中国ではなく日本なのかは疑問だったが、一番国土が小さい為に侵略し易いと思われたのが理由だった。

ようは、他の大国を攻撃する前の第一歩という訳だ。


連日、市民団体のデモによって防衛の為の予算と戦力を削がれている日本に彼女等に対抗する程の力は無く、このまま日本はキマシティウスの魔の手に落ちるかと思われた。


だが、日本には平和を守るヒーローが居た………。

居た………の、だが。





………………





ここは、埼玉県川越市にある「鳳研究所(おおとりけんきゅうしょ)」。

国民の血税を使って作られた、その古き良きスーパーロボットの基地とも言えるその奇妙な研究施設は、個人が税金を好きに使っているというだけで、全国の日本国民の皆様から憎悪と怒りを向けられている。


同時にそこは、地球をキマシティウスから守る砦でもあるのだ。



「ひぇっひぇっひぇっ、なあ、いいじゃろう?」



そんな鳳研究所の地下。

格納庫にて、今まさに現代のコンプライアンスに真っ向から喧嘩を売る行為………つまる所のセクハラが繰り広げられようとしていた。


このハゲ頭にぐるぐる眼鏡、白衣といういかにもな博士な男の名は「鳳長介(おおとり・ちょうすけ)」。

年齢79歳。

とっくに引退するべきなのに、己の聡明な脳味噌と発明品の印税、そして何故か握っている国家重役達の弱みを盾に、この研究所という名の城で好き勝手やっている、天才科学者という名のマッドサイエンティストである。



「何を嫌がるのだ?ただ、これを着てくれるだけでいいのだよ、朝比奈くん………」

「い、嫌ですよぅ、博士………」



そんな鳳博士に言い寄られて、怯えているのはこの、「朝比奈まりん」。

年齢は19歳。性別は女性。

この研究所に所属する、パイロットの一人だ。


何のパイロットかは後で語るとして、彼女の最大の特徴としては、そのJカップの巨乳………否、爆乳だろう。

生活に支障が出ると言われているが、そこはフィクション。


白衣を着ているが、それでも隠し切れていない。

優しそうな顔と、アッシュブラウンの髪も相まって、どこぞの憂鬱に登場する未来人のような印象を与える。

性格も、大体そんな感じだ。



「いや、ほんと、これを着るだけでええんじゃよ………スーパーロボットといえば、こんなせくちーなパイロットスーツというのがお約束じゃろう?」



そんなまりんに対して、鳳博士が着ろと迫っているパイロットスーツ。


パイロットスーツというには、パイロットの安全を守る事など1ミリも意識していないような、薄い………ぴっちりとしたスーツ。

特に胸が強調されるような、なんというか、ケイ素生命体と戦う某ロボットエロゲに出てくるスーツのようなアレである。


そんな物を、Jカップのまりんが着たならどうなるか。

鳳博士自体はそっちの方は既に枯れ果てているのだが、その表情には迫真を感じる物がある。



「ふふふふ、ふ、ワシは所長じゃぞ?ワシの権限で君の給料を………」



そこまでしてぴっちりスーツを着せたいのか、鳳博士が所長の権限を持ち出そうとした、その時。



「ナチュラルにパワハラしてんじゃねえクソジジィィーーーーッッ!!」

「たわばァァァ!!」



横から飛んできた飛び蹴りが、鳳博士を蹴り飛ばす形でまりんを救った。



「ったく油断も隙もありゃしねえ………大丈夫か、まりんさん」

「あ、ありがとう、翔太朗くん」



彼の名は「鳳翔太朗(おおとり・しょうたろう)」。

年齢は14歳。性別は男性。

赤いメッシュの入ったツンツンした黒髪に、小さな身体を包む学ランから解る通り、彼はこの物語の主人公。


そして、今地球をキマシティウスから守っている、スーパーロボットのパイロットでもあり、鳳の姓から解る通り、鳳博士の孫なのだ。



「ぐふふ………流石は我が孫じゃわい」



何事も無かったかのように立ち上がる鳳博士。

79歳のお年寄りに飛び蹴りを食らわせて無事な筈はないが、そこはフィクション。

鳳博士はピンピンしている。



「ったく、こんなクソジジィが地球の平和を守るロボット作ってるなんざ、一般市民が知ったらどうなるか………」



皮肉るように、翔太朗は格納庫に立つ、そのロボットを見上げる。


「ジーレックス」と名付けられたそれは、鳳博士が10年の歳月をかけて極秘裏に作り上げた、翔太朗をパイロットとするスーパーロボット。

本来ならテストパイロットをしていたまりんが乗るべきだが、鳳博士が翔太朗を正式パイロットにしてしまった。


が、初心者である翔太朗でも難なく運用できる辺り、その性能はかなりの物だ。

キマシティウスの襲来が無かったら何に使うつもりだったのだと言いたくなるが、キマシティウスのリリィナイトに対抗できる為、今の地球をキマシティウスから守っている唯一の存在でもある。



「そもそもなんで怪獣型なんだよ!もっと王道スーパーロボットな外見にすりゃ良かったじゃねーか!」

「何を言うかッ!この怪獣スタイルが一番かっこええんじゃ!これがロマンじゃよッ!」



そして………一番の問題は、その外見である。


スーパーロボットと聞いて想像するのは、人間のボディビルダーのような均等の取れた逞しい姿だろう。


しかし、ジーレックスは違った。

「レックス」という名前から解る通り、その機体は鋭い爪と牙、太い尻尾を持った、カンガルーのような体型。

言ってみれば、昔の恐竜の復元図や某怪獣王から続く王動的なスタイルの、陸生肉食恐竜型怪獣のような姿をしていたのだ。


これは、一概に鳳博士の趣味による物なのだが、この市民感情を一切考えない独善的なスタイルは、マイナスの方向に働いてしまっている。

外見が怪獣で、天使のようなリリィナイトと戦っているのだ。

おまけにこの姿なので、戦闘スタイルも噛むわ引っ掻くわ尻尾だわのザ・ケダモノ・スタイル。


理屈ではあっちが敵と解っていても、これでは怪獣と巨大ヒーローに見えてしまう。


おまけに、ジーレックスの動力はあろう事か原子力。

よりによって日本で、原子力をエネルギーにするロボットを建造しようと考えた鳳博士は、勇気があるというか、バカというか。


そんなこんなで、ジーレックスの市民からの印象は最悪のそれ。

リリィナイトが町を破壊する事よりも、ジーレックスが間違えてビルに擦った程度の事が大々的にニュースになってしまう。

今日も、ワイドショーでは市民の声と称したやらせにより「ヒーローの戦い方じゃない」と、某ツシマのような文句を言われてしまっている。



「それに何で俺がパイロットなんだよ!?未成年を当然のように侵略者と戦わせるとか正気かてめぇっ!」

「バーロー!スーパーロボットのパイロットは少年と決まっとるんじゃ!マ○ンガーZもガン○ムも!」

「それは今のコンプライアンス的にアウトだつってんだよ!そのガ○ダムですら鉄○で少年兵と変わらないって言ったよーなモンだからな!」

「止まるんじゃねぇぞ………」

「ネットミームで誤魔化すな!!」



一番の問題は、未成年である翔太朗をパイロットとしている事だ。

スーパーロボットに肩まで浸かっている読者諸君には分かりにくいだろうが、子供をロボットに乗せて戦わせるのは、いわば少年兵と変わらない。

執筆時(2020年の情報です)のロボットアニメでも、そこが突っ込まれ始めている。


ジーレックスの周りの事は国家機密という訳で伏せられてはいるが、もし何らかの理由で流出した場合、ここが世間のら一番叩かれるであろう事は決定的に明らかである。



「そうは言うが、それに足りるだけの対価は支払っとるじゃろう?」

「そうだけどさぁ………」



が、ただ子供を戦場に出す鳳博士ではない。

それだけでは反感を抱かれ、それこそ○血の大人達のように薬を盛られて銃殺されるのは目に見えている。


現に翔太朗やまりんには、お小遣いの名義で莫大な報酬を支払っている。

それこそ、後の人生を働かなくても生きていけるぐらいに。


そんな大金どこにと思うが、曰くジーレックスを作る際に握った色々な組織や政治家の弱みを握って吸い上げているとの事。

ほんと、この老人は何者なのか。



「じゃからまりん君にはこのエロコスを………」

「それとこれとは別問題じゃァァァ!!」



だが、それで嫌がるまりんにスケベパイスーを着せる事は、翔太朗の正義感と、身内に悪事を重ねられたら自分も危ないという防衛本能が許さない。

再び、鳳博士に蹴りが飛ぶ。



「な、何をするんじゃ!ロボット物においてスケベパイスーもロマンなんじゃぞ!!」

「だからそれも今のコンプライアンス的にアウトだつってんだよボケがァァァ!!」



格納庫に鎮座するジーレックスは、そんな産みの親の愚行と、パイロット達の苦悩を、哀れむように見つめていた………。





………………





………さて、ここまで書いて解る通り、これは王道熱血スーパーロボット物、ではない。


そんな王道スーパーロボットを信奉する大人げない老科学者と、

そんな老科学者に振り回されるパイロット達。

そして、変な敵や、それを振り撒くやっぱり変な人達の、


血と、汗と、涙と、風刺とメタネタを溜め込んだ、自分をスーパーロボット小説だと思い込んでる、ギャグ小説である………。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは間違いなく不条理ギャグ。 [気になる点] ただ不条理ギャグを貫くにはやはり遠慮というかブレーキとコンプライアンス意識が高すぎていまひとつ突き抜けてない感覚を覚える [一言] ただここ…
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