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強竜ロボ ジーレックス  作者: なろうスパーク
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第12話「最終四部作・第三章!アンチの驚異」

埼玉は、戦場と化していた。

メイディーンの大部隊に加え、ラッコン、ジェリーガ、スコルビアン、ヴェロッサといった決戦型のリリィナイト。

そして、アンジュリア、グラディエーター、メガッサー、ケルビムの、四天王専用機。

そして、本来は輸送の為に使われる、円盤。


バーサークインを除くキマシティウスの持てる全ての戦力が、アンチとの戦いに投入されていた。

埼玉狭しと戦うリリィナイト軍団は、これまで様々な星を侵略し、勝ち取ってきた戦力。

これなら、流石のアンチにも効果があるように思える。


だが。



『はいはい、頑張ってるねー頑張ってるねー』



直後、アンチから放たれた何本ものビームが、リリィナイト軍団に襲いかかった。

空を多い、地を埋め尽くすほど居たリリィナイト達は、その瞬間次々と破壊されてゆく。



『きゃああっ!』

『ごわあっ!』



四天王にも損害が出た。

ケルビムのシールドが破壊され、グラディエーターに至っては直撃を受ける。


だが、そのビームの中を掻い潜り、アンチに迫る一体のリリィナイトがあった。

シアラのアンジュリアだ。



『はああっ!!』



アンジュリアの剣が、アンチに向けて振り下ろされる。

アンチは、そのペンチのような手でそれを受け止め、両者の間に火花が散る。



『アンチ!私の質問に答えろ!!』

『はぁ?何で答えなきゃならねーんだよ』



アンチの物言いに苛立ちを感じながらも、シアラは必死に自分を律し、呼び掛ける。



『お前は何故宇宙を荒らす!』

『はぁ?侵略者がそれ言っちゃう?』

『何故惑星を滅ぼす!大義もなく!正義もなく!何故だッ!?』



シアラは、自分が侵略勢力であるキマシティウスにいる以上、その問いをかける資格はないのは知っていた。

だが、アンチによって滅ぼされた星の生き残りとして、それだけは言わなければならなくもあったのだ。



『………ハァ~っ』



シアラの問いに対し、面倒臭そうに、そしてわざとらしくため息をつくアンチ。

そして。



『理由なんて、無いけど?』

『は………?』



その答えに、シアラは唖然となった。

瞬間、その隙をつかれて、アンチはアンジュリアを蹴飛ばした。



『ぐうっ!?』



姿勢を建て直すアンジュリアを見下すように、アンチは言葉を続けた。



『たださぁ、君らが必死になってるのを叩き潰したり、生きたがってる奴らを踏みにじるのはたまらねーんだよ、ざまあみろって思えてな!』



それは、宇宙に生きる全ての生命への冒涜である。

侵略者の自覚のあるシアラから見ても、それは吐き気を催す程の邪悪である事は解った。



『き………さまァァァァァ!!』



そして、自分の故郷がそんな理由で滅ぼされた事への怒りを込めて、再びアンジュリアは剣を振るう。

シアラの身体を形成する、全ての細胞が叫んでいた。

こいつは、存在してはいけない存在だと。



『落ち着くでありますシアラ殿!』



だが、激昂したシアラの一撃は、アンジュリアとアンチの間を遮るかのように放たれたビームと、戦友の一声により未遂に終わった。

イザベラと、メガッサーだ。



『自分があのクソコテロボットの動きを止めるであります!その隙に、ガイストノヴァを!!』

『イザベラ!君は………』

『どうせ仲間がやられたんじゃ、司令塔の自分にやる事は一つでありますよ!』

『………頼む!』



涙を飲み、シアラはイザベラの提案を聞き入れた。



『行くでありますよ!うおおおっ!!』



メガッサーが、耳ビームを撃ちながらアンチに突撃する。

同時にアンジュリアは、翼を羽ばたかせてアンチの頭上に舞い上がる。



『アンジュリアソード、ボウモード!』



アンジュリアの手にした剣が、なんと弓のような形に変形し、廃熱の為に翼が大きく広がる。


と同時に、メガッサーがアンチにしがみつく。


アンジュリアが構えた弓に手をかけ、引くような動作を取る。

翼から廃熱に伴う赤い光が漏れると同時に、アンジュリアの手に光の矢が形成される。


アンチは、振り払うようにメガッサーのボディを叩き斬り、破壊されたメガッサーが落下する。

その間は秒にも満たなかったが、アンジュリア最大の武器を発動するには、十分だった。



『受けろ!ガイストノヴァ!!』



アンジュリアが手を離した瞬間、光の矢「ガイストノヴァ」が、アンチ向けて放たれ、着弾。

大爆発を起こした。


小さな光の矢に見えるのは、高密度に圧縮されたエネルギーの塊。

威力は、ジーレックスのプラズマブレスすら押し返す程。


爆発と衝撃波が広がる中、アンジュリアの翼が閉じる。


ガイストノヴァは、キマシティウス全体で見ても最強の部類に入るリリィナイトの武装。

お姉様専用機であるバーサークインでさえ、威力がありすぎるとして搭載を見送る程のもの。


………だが。



『俺が犠牲になるからその隙にってやつ?少年ヤングの漫画みたいだね、うん、いい台詞だ、感動的だ』



直後聞こえた、その人をバカにするような声を聞き、シアラは凍りついた。

仲間を、イザベラを犠牲にしても、そいつは。



『まあ、無意味なんだけど』



爆煙の向こうから洗われたのは、無傷のアンチ。

キマシティウスの誇る最強の武器ですら、アンチにダメージを与える事は出来ない。



『じゃ、こちらから………』



アンチがアンジュリアに攻撃を仕掛けようとしたその時、アンチに向けて飛来した無数の弾幕が、それを阻止した。



『ん?なんだ………』



鬱陶しそうに、弾幕の飛んで来た方向を向くアンチ。

そこには、鳳研究所から出撃したジーラプターの大編隊。

そして、アンチ向けてバスターキャノンを撃ちながら走るバスターロックスと、ミズメロディー。



『キマシティウスばかりにいい格好はさせませんわよ!』

「一時的な友よ!シェイクハンドは後デース!」



そうだ、この化物に立ち向かっているのは自分達だけではない。

ジーレックスという切り札もない状態でも、地球人は戦っている。

そんな物を見せられて、絶望している余裕は、シアラにはない。



『動ける機体は私に続けェッ!地球人に遅れを取るなァッ!!』



残存戦力を結集させ、シアラはアンチに突撃する。

地球とキマシティウスの挟み撃ちを受けているにも関わらず、アンチのその無機質なメーターのような目は、ぴくりとも動かなかった………。





………………






「うーむ………こりゃヤバそうだわい」



絶望的な戦況を前に、鳳博士は初めて、焦っていた。

アンチは、それまでのリリィナイトとは一桁も二桁も違う。

いや、リリィナイト「なんか」とは比べ物にならないと言うべきか。


現に、信じて送り出したジーラプター部隊も、キマシティウスの残存戦力共々、次々と撃破されている。


全滅するのも、時間の問題だった。



「ジジイ!」

「その声は………」



呼ばれ、振り向くと、そこに居たのは医務室で安静にしている筈の翔太朗。

まりんの肩を借りて立っている姿から見ても、怪我が回復していないのはよく解る。



「ジーレックスの修理は完了してるんだよな?!なら俺も出る!」

「翔太朗くん!そんな怪我をしているのに………!」

「皆が戦っているのに俺だけ何もしないなんて嫌だ!」



確かに、ジーレックスの修理は完了しているが、まりんの言う通り怪我人の翔太朗を戦わせる訳にはいかない。


しかしそれを聞いて、鳳博士はニヤリと笑う。

これこそまさに、スーパーロボット物ではお約束の「ロマン」だからだ。



「解った、ジーレックスを出す!」

「博士!?」



しかし、まりんは翔太朗を戦わせる事に納得がいかないのか、鳳博士に抗議の視線を向ける。



「それと今回は、まりん君にも出撃してもらう」

「えっ?私………?」



これはどういう事だろうか。

もう、出撃出来るロボットは残っていないハズなのに。



「まりん君、こんな事もあろうかと密かに開発していた物がある、今はそれに賭けるしかないのじゃよ!」



真剣な面持ちであるが、スーパーロボット伝統の「こんな事もあろうかと」が言えた事に、鳳博士は心を踊らせていた。





………………





はっきり言うと、相手にすらならなかった。

キマシティウスと鳳研究所の全戦力を結集しても、アンチの前では無力だった。



『まったく、なんでこんなに必死になれるかねぇ、どうせ勝てないのに』



撃破されたロボット達の残骸が転がる埼玉の町で、無傷のアンチは佇んでいる。


そして、彼が向いた先にあるのは、切断されたアンジュリアの頭部。

某悪魔の力を身につけたヒーローの漫画版の終盤、ヒロインが晒し首になるシーンがあるが、あれのようにリリィナイトの持っている槍の上に突き刺されていた。



『所でさ、シアラちゃんだっけ?君』



頭部………コックピットの中から自分を睨み付けるシアラに向かい、呼び掛けるアンチ。

シアラは、敵意を込めた目で、じっとアンチを睨み付けている。

ここまで追い詰められても、まだ戦う意思を捨てていないのだ。



『気が変わったんだけどさ、俺の所来ない?』

「………何だと?」

『そうすれば命は助けてあげるからさ!』



感情のない冷たいロボットの顔で、そう呼び掛けるアンチ。

自らの軍門に下れば、殺さないでいてやるというアンチの提案に、シアラは。



「………本当に、助けてくれるのか?」

『ああ、助けてやるよ』



メーターの目が、嘲笑っているようにも見えた。

シアラの決断は。



「………だが、断る」

『何?』

「誰が貴様のようなヤツの軍門に下るか、ばぁか」



地球で侮蔑を意味する、中指を立てる仕種と共に、シアラはアンチの提案をはね除けた。

実の所はわからないが、シアラにはアンチがヒクヒクと眉間を震わせているように見えた。



『………死にたいらしいな、お前』



アンチが、そのペンチのような腕にエネルギーを集中する。

あれを食らえば、ひとたまりもない。

恐らく、骨すら残らず蒸発する事だろう。


………キマシティウスとして、醜い男のいる地球で命を落とす事は、不名誉な物であるというのが、彼女達の価値観だ。


けれどもシアラは、地球で死ぬ事についても、悪くはないと考えていた。

この星の文化は気に入っていたし、特にコーヒーは大好きだ。

そして、何より。



「………弥生くん、逃げられたかなぁ」



脳裏に浮かぶのは、夜鷹弥生の事。

最後に思い浮かべるのが、よりによって男の事。

これでは、自分はキマシティウス失格だな。


そう自嘲しながら、シアラは最後の時を待った………。



………が、アンチのビームが、シアラを跡形もなく吹き飛ばす事は、無かった。



ボウゥッ!



直後、プラズマの炎がアンチに降りかかる。

突然の攻撃に、よろめくアンチ。



『何だ………?』



ズシン。

大地に響く、重く力強い一歩。



「………遅いんだよ、ヒーロー」



シアラがニヤリと笑う先で、それは近づくに連れて、その姿がはっきりと見えてくる。


そうだ、ヒーローはいた。

キマシティウスの暴虐に立ち向かい、アンチという悪意に鉄槌を下す、正義のヒーロー。


我等が地球の守り神にして、大衆から恨まれる、機械仕掛けの大怪獣。



GAEEEEEEEEEN!!



ジーレックスが、その大気を震わせる程の咆哮と共に、最終決戦に躍り出た。

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