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カオス。

飲み会がカオスな状態になります。

 <<夕方・スカイデッキ>>


 沖合のリーフへと長く伸びるガラス張りのスカイデッキは、このホテルの売りのひとつだ。足元にはカラフルな熱帯魚が泳ぎ回り、見て楽しむのには最高なのだが、日中にさんさんと降り注ぐ太陽が祟り、訪れようとは思えなかった。


 支配人「日が傾けば快適ですし、本日は見事に焼けると思われますので絶景を楽しんで下さい」


 日が傾き爽やかな海風が吹き始めた頃、勧められたアーレイ達はラフな格好に着替え、長く透明な廊下を歩いていた。ここにきた目的は雄大な夕景を楽しむためだ。


「この前はお忍びだったから来れなかったんだよ」

「そうなのですね、新婚旅行だったら手繋ぎして、最高の気分に浸れますね!」

「お仕事ナノ、不謹慎ナノ」


 浜焼きを堪能したことで機嫌を持ち直した姫様は、早速アーレイに寄り添いつつ未来予測を語り、鼻息荒いポコは実現させては成るものかと、反対側を纏わりついている。


「それにしても絶景ですわね」

「クーンとは違った美しさがあるね」


 大気成分なのか舞う塵が根本的に違うのか、カルネの夕日は血で染まるように真っ赤だ。ポコは見慣れているらしく平然としていたが、姫様は余りの壮大な風景に魅力されていた。


「ウフフ両手に花ですねアーレイ少佐」

「先日は助かりました、改めてお礼を申し上げます」

「ジャクリーヌ様お久しぶりナノ」


 女の子2人に挟まれながら夕景を堪能していると、颯爽とジャクリーヌが姿を現す。ポコの前では大将軍の対応でよろしくと言ってあるので、ひれ伏すことなく澄まし顔だ。


「初めましてジャクリーヌ様、デルタ王国第二王女フローレンスと申します。今後ともお見知り置きください」

「貴女がアーレイ少佐の右腕の方ですね、こちらこそ宜しくお願いします」


 姫様は由緒正しい王族なのでジャクリーヌは不遜な態度を取ることはない。背筋がピンと伸びた綺麗なカーテシーを披露されると、カルネ式の胸に手を当てる敬礼で返礼していた。


「急なお願いを聞いて頂き感謝しかありません」

「星団統一の為でしたら問題ありませんのよアーレイ少佐、さあ宴の時間ですよ」


 大将軍がオーナーのホテルといえども、オープンな場で極秘案件を口にするわけにもいかず、盗聴防止が施されている室内へと向かう。


 <<レストラン・ブルーブルー>>


「さぁ先に喉を潤してから食事にしましょう」


 食事の前に一息付きましょうといわれ、メインダイニングに併設されたデザートルームへと案内された。テーブルの上にはカラフルなアペダイザーが並び、キンキンに冷えたシュワシュワを一口飲むと胃袋に染み渡り、食欲が増してくるのが分かる。


「小さい蟹さんがカラカラに揚げてあるナノ、うまうまナノ」

「見て下さい、魚卵の生ですよ生!」


 アペタイザーを頂きながら話を進めようと思ったが、華やかな料理に目を奪われた2人が大はしゃぎしてしまう。揚げた蟹のバリバリ食感が堪らないポコは犬歯を剥き出しに次々と平らげ、生食に余り馴染みのないお姫様は慄きながらも、初めて食べるプチプチとした食感と、ねっとりとした旨さに舌鼓を打っていた。


「メインはこの後だから食べすぎるなよ(笑」


 2杯目はキリッとした飲み口の発泡性バスマティ(ほぼ日本酒)を頂いているアーレイは、ナッツを口に放り込み、それを区切りにしてジャクリーヌと向き合う。何を言わんとしているのか分かっている彼女は、ほんの少しだけ口角を上げた。


 「士官と共に貨物艦で入り、離脱は払い下げの戦艦を用いれば、秘密裏に出国可能です」


 乗ってきた輸送艦は軍港に停泊するため出国審査と荷物検査があり、アーレイ一行はもちろんのこと、ルドルフの家族を連れ出すには相当なリスクがある。対応策としてドッグを追い出され、沖合に停泊中の戦艦に秘密裏に乗船して出国するつもりだ。


「協力に感謝する次第です。誠に恐縮なのですがお願いがありまして・・」


 楽に出国できるものの、ジャンプ不能な戦艦でのんびり帰るわけにもいかず、ベクスターを持ち込むお願いをする。あの機体はカーゴモードにすればコンテナに収納できるので問題ないだろう。


「大量の食料と共に戦艦の格納庫に止め置くので問題ありません。後ほど操作権限を一時的に渡して下さい」

「承知しました。ポコ悪いけど先にダイニングに向かってくれるか」

「はいナノ待ってるナノ」


 一通りの説明が終わりを迎え、次は上級士官にしか話せない内容と理解したポコは素直に部屋を出る。姫様がいるので居るのでアイツ(ブラッド)の事は話せないが、前回のお礼と費用についての話をするつもりだ。しかし真剣な眼差しに豹変したジャクリーヌは何故かフローレンスと向き合う。


「貴女は何故アーレイ少佐と行動を共にしているのですか」

「もちろん近い将来、夫人に成るためで御座います!」

「こらぁ!」

「覚悟あっての発言と捉えますけど、その言葉に偽りは無いのですね」

「おーい、俺の話を聞け〜」

「全て承知の上での発言と捉えて頂いて結構です」


 強い者が上に立つのが慣わしのこの国は婚姻とて同じ扱いなので、ジャクリーヌはどれほどの信念があるかを問いてきたのだろう。そしてキッパリと断言する態度に好感を持ったのか笑みを溢し、彼女も思うことがあるのかアーレイの事は置き去りにしていた。


「こらこら勝手に話しを進めるなよ」

「だって私の夢なんですもん」

「アーレイ様どうか御容赦お願いします。確証を得たので夫人になられた暁には服従致します」


 うら若き王女を傍に置き、カルネまで連れて来る間柄となれば、将来の女王と捉えられてもおかしくはない。なのでジャクリーヌは敬意を表すが、それは先走り過ぎると思うアーレイは頭を抱えた。


 「ジャ、ジャクリーヌ様、まだ決まったことではありませんので、そのような態度は不要です(汗」

 「貴女様がそう仰るのでしたら王女様として接すると致しましょう」

 「そうして頂けると大変助かります(大汗」

 

 強気の発言をしたものの、黒の精霊の影響力の重大さに今になって気付いたフローレンスは焦りの色を隠せず、急にしおらしくなる。ポコが待ちぼうけしているのでアーレイは話を進めることにした。


 「潜入に使うステルスシャトルを手配してくれないか」

 「もちろんです、軍港到着前に士官と共に離脱して頂きます」


 同盟国の扱いで且つ、引き取りのための士官が来日するとなれば、入管はゆるゆるになるのだが、獣人は差別されることが多々あり、軍本部に降り立つのが関の山だったりする。アーレイ達は万全を期するためシャトルの影に隠れ、市街地上空へと向かう算段だ。


「今回はデルタの影との作戦になるが、子供を連れて帰るので、それなりの部屋を準備してもらえるか」

「畏まりました。ベクスターで離脱後はここに立ち寄りますよね♡」

「そうですねー、寄らせていただきますわ」


 話が早いのは助かるけど、きっと頭の中は想い人で埋め尽くされているのだろう。ハートが宿る瞳を見た瞬間、アーレイはジト目になり徐に席を立つとダイニングへと向かう。


 <<ブルーブルー・メインダイニング>>


 「うま!うまナノ!」

 「ここまでの海鮮尽くしは初めてかも(汗」


 テーブルに並べられた小鉢には雲丹の和え物、海鼠と思われる酢の物など、日本で言う八寸(前妻)が並び、ポコは何ら気にすることなくパクつき、西洋系の魚料理しか知らない姫様は、初めて見る異形な食べ物に驚きを隠せないでいる。


「今回は特別に珍味を多数ご用意しましたのよ、どれも美味しいので是非召し上がれ(笑」

「そ、それでは、ご相伴にあずからせて頂きます(汗」


 以前、嫌がるどころかパクパクと海鮮を食したアーレイに、感動すら覚えたジャクリーヌは美味しいものをもっと知って欲しいらしく、厳選したカルネ産の高級珍味を取り揃えていた。とはいえフローレンスにとっては未知の食べ物なので慄くばかりだ。


 あら臭みもないし、どれも手が込んでいてとても美味しいわ・・。


 初めて見る食材に目を奪われた姫様はおっかなびっくりしつつ、チャップを器用に使い食べ始め、口にあったのか結局平らげてしまう。


 「こちらは当ホテル自慢のお造りの盛り合わせになります」

 「おお今日は一段と凄いね、こりゃ酒が進みそうだ」


 前菜を食べ終えたタイミングで次の料理が運ばれてくる。大皿には伊勢海老によく似た大海老のお造りが豪快に盛られ、それを取り囲むように魚や貝の刺身が並び、アーレイ的にはとても美味しそうに感じていたが・・。


「ヤバいよ、全て生じゃないですか!それにまだ生きているし(涙目」

「新鮮な証拠ナノ、美味しそうナノ」


 ドーンと鎮座している海老の触覚がうねうねと動き、活け作りの青魚の尻尾がピクピクと震え、残酷と思えたフローレンスは途端に涙目になる。怖がるどころか早く味わいたいポコは、上官が手出しするのを待っている状態だ。なのでアーレイは「食で信頼を得るのも重要だぞ」と笑いながらタレに浸し口へと運ぶ。


「うんやっぱ生は最高だよ、カルネにきた甲斐がある。ほら食べてみれば」

「そ、そうですね、何事も経験ですよね(汗」

「食べた後にこれを飲むと、口の中の生臭さを解消してくれるから試してみて」


 日本人なら刺身を見れば間違い無く美味しいと感じるだろうけど、初体験の姫様の表情は引き攣っていた。とはいえ2人が食べ始めたので、遅れを取ってはなるものかと恐る恐る試す事に。


「想像していたより美味しいです。それにこのお酒との相性バッチリですね!」


 絶妙なぷりぷりとした食感を舌で楽しみ、口いっぱいに広がる甘味と極上の旨味を味わった姫様は、気がつけばニンマリと顔を綻ばせていた。そしてアーレイに言われた通りバスマティを口に含むと、後味がさらりと流れ次に向けて箸が進む。


「今日は緑を食べてみるナノ」

「あっ、よせそのまま食べるんじゃない」


 前回、敬遠していた付け添えを試そうとするポコは、お灸で使う百草のような緑色の塊を、あろうことかそのまま口にしてしまう。アーレイはそれはツンと鼻にくるアレ(山葵)と理解しているので、慌てて止めに入るが時すでに遅く、だんだんと表情が険しくなってきた。


「%☆€〆!プギャ、ヒーン」

「ポコ、吐き出すか酒で流し込め」


 チャレンジするのは構わないけどもう少し慎重になれよと思いつつ、アーレイはグラスを差し出す。鼻を押さえ涙目で七転八倒し始め、流石に笑うわけにもいかず落ち着くまで様子見だ。


 「これやばい超危険ナノ、テロナノ」

 「それはね刺身の臭みを和らげ、風味を立たせる付け添えだから少量でいいんだよ、災難だったな(笑」


 山葵を大量に食べて自爆のポコ、初めての食材に驚き慄きつつ舌鼓を打ち、表情をコロコロと変えたフローレンス。そのお陰で食事会は笑いが絶えることがなかった。豪快なお造りの後は焼き魚、天ぷらなどが続き、皆の胃袋を順調に満たしてくれる。


 <<デザートルーム>>


「皆様カルネの海鮮料理は満足できましたか」

「どの料理もとても美味しく頂きました。ありがとうございます」

「うまうまナノナノ、最高ナノ」

「贅の限りを尽くしていただき、感謝する次第です」


 食事は終わりを迎え別室にてデザートの水菓子を頂きながら、感想を述べつつ謝辞を送る。空腹が満たされ安らぎの時が訪れる筈だが、ジャクリーヌの瞳は何故か燃えていた。もう悪い予感しか思いつかないアーレイはこの後、上のラウンジ行きは決定だろうと予想してしまう。


「お腹も膨れましたし、難しい話の続きを致しましょう(笑」

「ポコは下のサロンでジャクリーヌ様の部下と飲んでるナノ(汗」


 阿吽の呼吸とはこう言うものなのかと呆れてしまうほど、ポコは素直にジャクリーヌに合わせていた。一部始終を側から見ていたアーレイは「目力全開の笑みを送れば、野生の直感で理解できるよな」と心の中で呟く・・。


 <<バー・トロピカルアイランド>>


「前回とは違う秘密のお部屋に案内しますね」


 会談の時は動線確保と警備を意識してか窓は塞がれ、貸切状態のラウンジにはSPが溢れていた。今宵はホールスタッフと客がまばらにいるので、歓待用の個室が二次会場らしい。


 こりゃ間違いなく絡んでくる流れだな。


 割と広々としたその部屋には重厚なソファとテーブル、数々の見事な調度品が置かれ、VIPを歓待する部屋だと一目でわかる。バラバラに座っても余裕のある広さなのだが、何故か2人は示し合わせたように両脇を固めていた。


「夜の祝杯をあげましょう」

「そうですね!まだまだ時間はありますからね」


 初見であるにも関わらず意気投合する2人は双丘を密着させてきた。あまりの積極性に呆れ、乾杯を終えると「何故に2人が密着するのか意味がわからない」とアーレイが述べると、今度は腕を絡め更に密着してくる始末だ。


「だって、やっとプライベートな時間になったのですよ〜」

「こんなに広い部屋なのに、なぜ密着して飲まなきゃならんのだ!」

「意地悪ですねアーレイ様、床の準備はできてますのよ♡」

「ええっー、私を差し置いてジャクリーヌ様と抜き差しならぬ関係ですか!」


 個室に入った途端に密着してくる2人は、相手が違えどこの先の関係を求めている。酔っ払ったお姫様はまた大胆になり始めているし、ブラッドと交じりたいジャクリーヌからは欲求不満の紫のオーラが漂い始めていた。


「勘違いさせるような事を言うなよ、無茶振りするなら望みは叶わないぞ」

「えぇぇ、楽しみにしていたのにぃ、ブラッド様をはよはよ♡」


 酒を一杯口にしただけでもうカオスな状況になりつつある。ジャクリーヌは発情してはぁはぁと息が艶っぽいし、待ちきれずブラッドの名前を出してしまう。


「ねぇ誰ですのブラッドって?」

「黒の精霊に頼まれてアレックス・ブラッドフォードって名前をつけた、ブラッドは愛称」

「それはそれですごいことですね、結局アーレイ様の立ち位置は」

「彼の能力を使える強くて変なやつ(笑」

「そうだったね、アーレイ様って強いよね(笑」


 あの森で出会っているので遅かれ早かれ名前は知れる。なので冗談混じりで教えると酔いが回ったお姫様はカラカラと笑い、発情中のジャクリーヌは先を急ぎたいのか、鼻息荒くギュッと抱きついてきた。


「もう焦らさないでよアーレイ様♡」

「確か君には婚約者がいた筈だぞ、完全に浮気だろ」


 妙齢の女性が遠く離れたブラッドに酔心するので、ちょっと不都合を感じ調べてみると、彼女には実力者の子息と婚約していることが判明した。恋路を邪魔する気など毛頭もないが流石に見逃せないので聞いてみたら、相手に不満があるらしくジャクリーヌの口がとがり始める。


「アバンチュールです!」

「いえジャクリーヌ様、それは浮気と言います」

「まぁどこをどう見ても完全に浮気だろうな」

「もう、ディスティア行きは無しです!」

「でた!我儘将軍パワー!!」

「何とでも言ってください、ブラッド様が現出しなければ協力しません!」


 にっちもさっちもいかなくなり、フローレンスの前にブラッドを呼び出す羽目になる。やれやれと思いつつもディスティアの案件はこれで大丈夫かなと考え「早く出てこいブラッド、出番だろ」と頭の中で呟く。すると正面のソファーの周辺が光り始め、黒い霧が出現すると同時に姿を現した。


「誰、だれよ、なんかヤクの売人みたいだね(笑」

「おい!以前森であった黒の精霊だぞ、売人とは失礼じゃないか」

「だってあの時はお子ちゃまだったし(笑」

「嗚呼〜お久しぶりですブラッドさま〜何をお飲みになりますの♡」


 現出したブラッドは全身ブラックコーデ決めていて、見た目がマフィアの若頭風というか輩みたいなので、フローレンスは酔った勢いもあり驚くどころか軽口を叩き、ジャクリーヌは目にも止まらぬ速さで移動すると、ぴったりと寄り添い双丘を押し付けていた。そして酒の席で役者が揃えば好き勝手に言い合いを始めてしまうのは必然だろう。皆の口が滑らかになってゆく・・。


「クー、いつものやつをダブルで」

「直ぐにお作りしますわブラッド様♡」

「あらまぁお熱いことで、羨ましい限りですわ」

「精霊王の相手が不倫女なんて、洒落にならんな」

「いやな色々訳があるのだアーレイ、婚約者が男色家でなクーが困っているのだ」

「そうなのですよアーレイ様、女の身体にピクリとも反応しません!」


 詳しい話を聞くと幼少期の頃、親同士が勝手に決めた婚約らしく、当人達もそれが未来の姿だと考えていた。だが序列争いの試合においてアレ()を潰され、治療の甲斐なく男色家にジョブチェンジすると女体には見向きもしなくなったらしい。


「マジかよ、じゃあジャクリーヌそいつには消えて貰うしかないな」

「そうですわね抹殺してくださいますか、ブラッド様と楽しみたいので」

「おーい勘違いしてるぞ、殺すなよ新たな婚約者を探すんだ!」

「それは嫌です、私はブラッド様の《《激》》《《し》》《《い》》が好みなのです」

「ソレシラネ、勝手にやれ(呆」


 知りたくもない情事のことを聞かされアホらしくなりソッポを向くと、フローレンスと見あってしまう。少しの間目線を合わせていたら、赤ら顔になりつつモジモジとし始め、艶かしい瞳を向けてきた。


「激しいって何ですか〜知らないので教え下さい」

「ちょ、ちょっとここじゃ話せない内容だから、知りたきゃ人気の無い所でな(汗」

「やっとその時が来たのですね、その激しくを是非今晩試してください!」

「おい、今まで何を聞いていたのかな?」

「よくわかんなーい、えへ(笑」

「嘘つけよ、床の作法は教え込まれているだろ」

「もう!」


 熱々ベッタリの2人に感化され開放的になっているお姫様は、下ネタに食いつき関係を迫って来た。反射的に拒否してことなきを得るが「試すのはいいが、初めてだと痛いだけだぞ」と喉元まで出がかっていたけど、流石に卑猥すぎると思い引っ込める。もし口が滑っていたら、有無も言わさず「是非是非お試しあれ」と迫ってくるに違いない。そんなアホなやり取りをしていると、正面に座る2人から生暖かい目線を送られていることに気がつく。


「あらあら、お姫様と王子様は青春って感じですわね(笑」

「あやつは美人王女を口説ける立場なのに手を出さん、朴念仁と思うほどだ」

「そうだそうだ!」


 会話が途切れお姫様は静かに酒を飲んでいたが、ジャクリーヌが燃料を投下しブラッドが皮肉を言うと、俄然やる気を取り戻してしまう。余計な再点火に「朴念仁とは何だよブラッド、余計なこというな」とアーレイが文句を付けるも、時すでに遅かった・・。


「アーレイさま、朴念仁でなければキスの続きを所望します」

「何故そうなる!」

「あらまあ王女様って積極的なのですね、私の婚約者なんてもう顔を見るのも嫌と言われたのに」

「だからそいつは見限って新たな婚約者を募れよ、2人ともわかっているだろうな今宵限りだ」

「嫌です、駄目です、貴方がいなければ、私は駄目になるのでこれからも続けます」

「実はな俺もお前が居なければグフォ・・」


 相思相愛はいいことだと思うが、曲がりなりにも精霊王とカルネの大将軍の組み合わせは、色んな意味で危険過ぎる。とは言え節度さえ持ってくれれば構わないので、アーレイはケジメを付けさせようと、何故がどこから持ち出したかはわからないが、巨大ハリセンでブラッドをしばいた。


「ゴラァ、ブラッドいい加減にせんかー、入れ込み過ぎるなよ」

「だって相思相愛だから許してよアーレイ、節度は持つからさ」

「そう言うのであれば勘弁してやる」

「ブラッドさまぁ、じゃあ私の部屋に行きましょう♡」

「そ、そうだね、照れるではないか(喜」

「うわぁ~凄いな~、性欲丸出しよね(笑」

「ゴラァ!フローレンスの前で発情するなつーの」

「だって久しぶりなんだもん。ではご機嫌よう」


 盛り上がる2人はもう待てないと言わんばかりに、そそくさと部屋を後にする。その後ろ姿を見てアーレイはとあることを思い出す。それは果てたブラッドが実体化を維持できない問題だ。


「ブラッド、毎回毎回覚めが悪いんだがどうにかならんのか」

「アーレイ、もう大丈夫だ。進化して精霊エネルギーに頼らずとしても実体化できる」

「そうか、じゃ適当に戻ってくればいい」


 つい最近まで精霊エネルギーを使い果たすと、アーレイに頼らなければならなかったが、やっとブラッドの進化が追いつき実体化の問題が解決したらしい。これでもう目覚めにジャクリーヌの裸体を見なくて済むだろう。懸案事項がクリアされ去り行く2人を生暖かい目で見送る。


「ねぇねぇアーレイ様〜ちょっと良いですか〜」

「んっ、どうしたフローレンス」

「しよ!」

「君はスタンで眠らせるから!」

「ひっどーい」

「もう知らんがな、本日は解散!」


 酔っ払い姫は更に大胆になり、これ以上は手に負えないと判断したアーレイは、ゆっくりと立ち上がり出口へと向かう。追いかけるように部屋を出たフローレンスは顔を覗かせ「私の本気は伝わりましたか」と笑いながら問いかけてきた。


 追い詰められているのは俺の方かもな。


 この時アーレイは危うく「伝わっているよ、後は俺が応えるだけだね」と言いそうになり慌てて目線を外す。彼女を受け入れてもいいと思った自分が恥ずかしくなってしまったのだ。歩きながら覗き込む姫様は笑みをこぼし返答を待つが、無視して歩くだけで精一杯だったりする。


 うふふ、顔に出てますよアーレイさま。


 少しの表情の変化を汲みとる王女ならではの能力に長けているフローレンスは、アーレイの心情を見事なまでに見抜いていた・・。

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