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接吻の記憶。

キスした事が・・・。

 <<フローレンスの自室>>


 謁見を終えたフローレンスはアーレイとのランチの約束をして別れ、モジュール交換のため自室へ戻っていた。


「姫様少しお疲れのようですね、リラックス効果があるお茶を淹れましょう」

「ありがとうグリゼル、謁見される側は緊張しますね」


 逆の立場に立てば見える風景が変わり責任の取り方も変わって来るので、謁見に慣れている彼女とはいえそれなりに緊張したのだろう。グリゼルが淹れたお茶を一口飲むと暖かさが染み渡り、強張っていた心をほぐしてくれる。そして程なくするとタブレットと小さな箱を持った侍女が現れた。


「姫様こちらが新しいモジュールになります。設定を引継ぎますのでお預かりします」

「それではお願いしますね」


 3星団のほぼ全ての人達は多目的支援装置であるモジュールを装置している。王族や大統領などの要職に就いている方々は、常に最新式を使うのが通例なので定期的に交換を行うのだ。


「姫様、振り返り動画は如何なされますか」

「取り敢えず先週から本日分を残して下さい」


 この振り返り動画なる物は覚醒している間の録画を行い、言動や作法に問題がないか振り返る機能なのだが、それは酩酊していても途切れることはない。となれば必然的に昨晩の事も録画してあるということだけど・・。


 アーレイ様とのランチは何にしようかな〜楽しみだな〜。


 作法や言葉使いに関して非の打ちどころが無い姫様は、余程の事が無い限り振り返るのは稀だし、既にアーレイとの会食を心待ちにしているらしく、この機能については忘却の彼方だ。けどいつしか思い出して見返せば顔から火を噴くのは間違いないだろう。


 <<昼食後・作戦本部サロン>>


「本部の飯はもう飽きちゃったよ」

「致し方ありません、お出かけ出来ないのですから」


 作戦本部のダイニングは美味しいと評判なのだが、外出が憚られているアーレイの食事事情は本部又は技研しか選択肢が無く、メニューをコンプしているので飽きていた。出前は出来なくはないが安全検査で温かい物は冷めるし、麺類は伸びてしまうので頼むのは諦めていたりする。


「昨晩、美味しいもの食べたからどうしても比べちゃうんだよね~(笑」

「もう一度お聞きしますけど、昨晩は本当に失礼な事していませんよね」


 昨晩の言葉がヒットしたのかフローレンスは再度確認してくる。まあそれだけ不覚を取ったと言う事だろうけど、アーレイ的には思い出すまで隠すつもりだ。


「色々お話しただけだよ、まぁ酒が強いのは認めるわ(笑」

「あのですね、私って酔っぱらうと凄く大胆になるみたいなんです」


 下着の乱れもないしアーレイは手出しするような人じゃないけど、目が覚めたら真横にいて、懸命に思い出そうとしてもあやふやで、頭の中がモヤモヤして耐え切れなくなったらしい。


 「まー確かに開錠して部屋に入ったり、抱きつかれたりはしたけど気にしないで」

 「アーレイ様の前で醜態を晒してなければ良いのですが・・」


 取り敢えずキスした事だけを隠し事実だけを話すと、悩ましい面持ちをしながらもとりあえず納得してくれた。だがいつかは振り返り動画の事に気がついてしまうだろう。


 >

「隠すのは優しさですか、意地悪でしょうか?」

「俺から言われたら最悪で恥ずかしい思いをするだろ、だが何故知っている」

「電源オーフ!」

「こら!」

 >


 落ちた落ちたと言って結局は落ちずに覗き見してやがるこのAiは、嬉々として飛び回り感情豊かだ。


 >

「リセットしようかな」

「わたしはぜんりょうなAiでーす(棒」

 >


 ムカつくのでリセットしようかなと考えたら膨れっ面で抗議して来たわ。めんどくさいのでベクスターに乗るまでモジュールを外したよ。


 --


 <<惑星メコン・周回軌道上>>


 カルネ共和国の認証コードを持つベクスターは軍登録していないこともあり、クロウ星団の民間航路を何ら問題もなく航行したのち、惑星メコンの恒星圏内へと入る。


 <カルネコントロールDMV230ベクスターコードを確認、地上へ降下許可をだす>

「サンキューコントロール、これより大気圏突入するDMV230ベクスター」


 最近ポコに任せきりだったので今回はアーレイが操縦を握る。管制室とのやり取りを終えたベクスターは突入用シールドを下ろし、地上へと降下し始めた。


 <<カルネ共和国・アイランドホテル上空>>


「到着ナノ海に行くナノ」

「なんて綺麗なの、ずっと見てられるわ」


 眼下に広がるマリンブルーと純白の砂浜を見て心躍らずにはいられない。尻尾をパタパタするポコは海に入りたいと訴え、フローレンスは初めて見る絶景に遊覧飛行を所望する。かくしてベクスターは可変翼を広げ、大きく旋回しながら着陸スポットへと向かう。


 「オーナーは夕方にお戻りの予定ですので、それまで自由にお寛ぎください」


 裏手の格納庫にベクスターを隠しタラップを降りると支配人が現れ、エントランスに案内されつつ自由に過ごせと言われると・・・。


「アーレイ様、到着は夕方ですって!一緒に泳ぎましょう」

「泳ぐナノ遊ぶナノ」


 南国リゾートといえば海しかないだろう。アーレイ的にはのんびりとシュワシュワ片手に有意義な時間を過ごしたいと考えているものの、若い2人は既に遊び心全開だ。


 「俺的にはとりまシュワシュワを飲みたいなー」  

 「一瞬に遊ぶナノ、お酒飲むと海に入れないナノ」


 心地よい南国の風に触れ、気分が盛り上がったニッコリ笑顔の姫様と、ヤル気に満ちたポコに両脇を固められ、シュワシュワを頼む前に海辺に向かうことが決定されてしまう。


「アーレイ様、当ホテルは自由に獲物を獲ってもかまいません」


 着替えを済ませビーチにでると支配人が何故か銛と水中メガネを持って現れた。要するに好きなだけ魚介類を狩るのもこのホテルの特徴らしい。野生の血が騒ぐだろうとスク水姿のポコに器具を渡す。


「ウガァ〜、食材をゲットするのだ!」


 昼飯の浜焼きの食材を求め狩猟本能全開で魚を獲り始め、順調に数を重ねて行く。調子に乗るポコはリーフに場所を移し更なる大物を狙い始めたが・・。


「プギャー、痛いナノー(涙」


 よせばいいのに大きな蟹を見つけ捕獲に挑むと、反撃を喰らい鼻の頭をハサミで摘まれ悶絶してしまう。


「あはは、蟹が本気だしたよ」

「アーレイ様、どうです完璧でしょ♪」


 ジタバタ暴れるポコを見て笑い転げていると、ビキニ姿のフローレンスが現れ腰に手を当てポーズを決めていた。一応フリル付きのトップとスカートをお召しになり控えめではあるものの、安易に王族が素肌を晒すのは如何なものかと思うが、羞恥心より気を引くことを念頭に入れているらしい。

 

「エロというより完璧という言葉しか出てきませんねー(棒」

「そこは魅力的と言うのですよ、こんなに完璧なのに子供って言いたいのですか」


 ドヤるのも頷けるほどの白く透き通る肌、余分な贅肉がないスレンダーボディ、ツンと上向く程よい大きさの双丘との組み合わせは反則級だろう。強いて言えばヒップ周りの肉付きが少々足りないとは思うけど、しげしげと見るわけにもいかず目線を逸らす。


 「姫様は凄く早熟ですねー」

 「青い果実は今だけですからね、お早めにお召し上がりください♡」

 「こらこら、何を言っているのかな」


 好みの女性に面と向かって誘われたら今直ぐにでも手を取るか、人気のないところで抱きしめて情熱を確かめあうのが普通だろう。グイグイと推してくる事に恥ずかしさを覚えたアーレイは踵を返すと波打ち際に急ぎ、心情を見抜いた姫様は顔を綻ばせ双丘を揺らし後に続く。


 <<数十分後・・>>


 「いっぱい獲って疲れたナノ、トロピカル飲むナノ」

 「それイイネ、シュワシュワ飲みたいから上がろうか」

 「少し寒くなったので日に当たりますね」


 大量の獲物を狩り終えたポコは疲れ果て冷たい飲み物をご所望だ。シュワシュワを飲みたいアーレイはこれ幸いと便乗して海から上がり併設する渚のバーへと向かう。フローレンスは冷えた体を温めるためにビーチチェアで寛ぎ始める。


 「ウフフ、ポコは楽しそうに飲んでるわね、あっそうだ覚えてなければ確認すればいいじゃないのよ」


 アーレイの隣で満面の笑みを浮かべピンク色のカクテルをチューチューと美味しそうに飲んでいるポコを、生暖かな目で見ていたフローレンスは昨晩バーで大胆に密着していた時の事を思い出す。それが切っ掛けになり曖昧な記憶を埋めるため振り返りのアイコンを開いた。


「ポコちゃん爆睡してましたね、い〜やんわたし大胆ね、けどここはまだ覚えているわ(恥」


 早送りをしながら記憶の擦り合わせを行えばたちまち鮮明に蘇り、積極的に振る舞う自分の態度に恥ずかしさを覚えたのか、反射的にイヤンイヤンと身を捩らせていた。


「姫様なんか変ナノ、壊れたナノ?」

「何か思い出して恥ずかしがっているように見えるな」


 勘のいいアーレイさんはアーレイワークスで絶賛開発中のモジュールを制作するにあたり、色々調べたので当然振り返り機能の事を知っている。なので顔を真っ赤にして恥ずかしさを表現しているとなれば、昨晩の出来事を確認していると想像するのは容易い。


 真っ赤な顔して、しどろもどろになったらビンゴだわ。


 記憶が曖昧なままでもその時の映像を見てしまったら、欠損していた断片がつながり思い出すのは確実なので今は静かに待つことにする。そして再生動画は佳境を迎えつつあった・・。


「怖くて辛くてアーレイ様の部屋に行って、それからって・・」


 いわゆるPTSD状態に陥ったフローレンスは不安から逃げ出すためにアーレイの部屋に侵入した後、ベッドにペッタン座りをすると安堵感が湧き、酔いも手伝いこの辺りから記憶が曖昧になり始めていた。


 「やだ、絡み始めちゃたよ、えぇぇ〜いまわたしアーレイ様に無理やりキスしちゃた(大汗」


 王族にとってのファーストキスは婚姻承諾の証と言われ、姫様は願望が叶い嬉しい反面、不意を突くのは卑怯とされているので自責の念の方が勝り、頭の中には反省という文字が流れ始める。


 うわぁ〜、大胆なんてもんじゃ無いし完全に駄目な子だよ、どうしよう。


 振り返り動画を見たことで奥底に眠る記憶と感情が蘇ったフローレンスの瞳の色は焦りへと変わる。居てもたってもいられなくなり、顔を赤らめ彼の気配がする方にゆっくりと首を回す。


「ククク」

「ああもう、意地悪ですよアーレイ様」


 手で口を隠し失笑するしたり顔のアーレイと目線が合うと、昨晩の出来事を隠していたと嫌でもわかってしまう。態度で事実を知った彼女は怒りより恥ずかしさが湧き上がる。


 やだやだ、恥ずかしいけどちゃんと謝らないと。


 立ち上がった姫様は今にも爆発しそうな勢いで顔を真っ赤に染めながら、アーレイの下に近づいてきた。


「思い出せたらそれでいいんじゃない、失態は誰にでもあるよ」

「そうですねー(棒」


 隣にポコがいるし同意の上での接吻ではないので、公にできない姫様は頬を膨らませご機嫌斜めだ。因みにポコは2杯目を楽しんでいて会話には加わってなかったりする。


「機嫌直してよレン」

「ひゃー、そそ、その呼び名はやめて〜恥ずかし〜」

「どうしたナノ、呼ばれて恥ずかしいってなんナノ」

「何でもないの、私が悪いだけだから気にしないで(汗」


 とりあえずこの場を乗り切るには有耶無耶するに限るので、ポコの前で愛称で呼んでみると、恥ずかしさが倍増したのか狙い通りしどろもどろになる。


 これ以上恥をかかせるのは悪手だな。


 接吻したので結婚してとは言わないし、顔を真っ赤にしつつ俯き反省の念も感じたので、茶化すより昨晩の事をちゃんと話した方が良きと考えた。


「あっちで話そうか」

「うん」


 真面目な性格のフローレンスは言い訳はせず謝罪したいのか真剣な眼差しへと変わり、少し俯きながら後を歩くその姿は先生に怒られる前の生徒のようだ。


「ここならゆっくり話せるかな」

「・・・」


 南国の開放的な風景と白いテーブルとカラフルなビーチパラソルの組み合わせはリゾート感満載だけど、今の彼女には灰色に写っているに違いない。「無かった事には出来ないから困っているんだろ」と、手始めにアーレイが声をかけるとゆっくりと顔を上げる。


「やっぱり卑怯ですよね、ごめんなさい・・けど」

「気にして無いよ、だが何か言いたそうだね、俺にどうしろと」


 反省の態度を見せながらもキスしたことを認めて貰いたいのか、言い終えると恨めしそうな表情になる。そりゃ無理矢理でも触れた事実は覆らないし、やっぱり正式に口付けしたいらしく俯きながら「恥ずかしすぎて言えません」と小さな声で呟いた。


「恥ずかしすぎってキスしてって事でしょ、だが断る!」

「ですよねー」

「けど心の拠り所にしてもいいよ(笑」

「はう!しっかり覚えているし恥ずかしいよ(恥」


 攻めるが故の大胆さが元で黒歴史になりかけ、やっちまったと再認識したフローレンスは涙目に変わる。アーレイ的には面白くて仕方がなく、弄りたくなったのか立ち上がり彼女の隣へと移動すると「続きがあるんだよ聞きたい」と囁く。


「えっ、まだ何かやらかしたのでしょうか」

「大きな声じゃ言えないからね」

「うひゃ!」


 そしてアーレイは囁く仕草をしつつ、耳打ちするように近づくと頬に軽くチュとキスをした。要するにお返しだ。


「昨日のお返しだよ」

「もう!不意打ちです!」

「ウワッ、ペッ!」


 突然の事に驚いたフローレンスは反射的に立ち上がりプンスカと怒りつつも顔を赤らめ、恥ずかしさが混じる変顔をしながらアーレイに砂を掛けるのだった。

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