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アーヴィン攻撃とヒャンド防衛。

ポコは我慢強いのナノ

 <<ヒャンド防衛隊>>


 デコイ熾烈到着後、司令本部より第2種戦闘体制が発動されているにも関わらず、ヒャンド防衛隊内にはまったりとした空気が流れ、隊列が少し乱れたまま周回軌道を流していた。ここ数年、敵国から攻撃を受けた事が無いので緩み切っているのだろう。


 副官「態々デコイを装備してここに来るデルタって馬鹿なんですかね、それに第2種って意味わかんね(笑」

 艦長「お目付け役のつもりで発令したんだよ、奴ら(デルタ)にいいようにやられたている場合じゃない」


 駆逐艦の艦橋内ではデルタ軍そのものが気に食わないのか馬鹿にする言葉が飛び交っていた。稼働率が悪い艦隊を除籍されたのも要因と思うが、共食い整備を容認してきた自分たちの怠慢が招いたのだから言い訳にはならないだろう。そんな弛んだ連中とは違い、艦隊後方を航行中のデコイ熾烈からは紫色の殺気が漏れ出ていた。


 <<防衛隊後方・デコイ熾烈>>


「ヒャンド人は馬鹿ばかりで反吐が出るナノ」


 文句を言い放つ艦長兼パイロットのポコは腕を組み、何故か顰めっ面になっている。実は司令官と挨拶を交わし後方への進入許可が降りた。しかし犬族が単騎で乗り込んで来たと僚艦に情報が流れた途端、進路妨害はされるわロックオンレーダーを照射されたりと、執拗に嫌がらせを受けていた。


 <おいワンコ船長デコイが邪魔なんだよ、あっちに行け獣臭くてたまらんわ>


 ムカついていた駆逐艦の艦長が顔を歪ませ因縁をつけてきた。当たり前だが他国のそれも同盟軍に対しあってはならない言動だ。しかし切れる事なく冷静なポコは所属と階級を問うと、途端に顰めっ面に豹変した。


 <ヒャンド防衛隊所属セナトルフ少尉だ、艦長だが文句あるか>

 「デルタ第9艦隊所属ポ・コロン少尉だ。貴様は軍人としての礼儀も知らないのだな」


 作戦が始まる前「アイツらゼッテー差別する筈だから、後で俺がお仕置きするので我慢しとけ」とアーレイから言われていたので挑発するような言葉を口にはしない。


 <犬に礼儀なんていらんだろ、ほれほれお手してみろ>

 「話には聞いていたがここまで馬鹿だと清々しいな、時間の無駄ナノ〜」

 <なんだと、オイこら!>


 隠密行動中などと教える義理もなく、第9艦隊所属と伝えても変化がないし、無駄だと判断して通信を切った。因縁をつけてくる相手には一番有効だし、静かにしていれば規則を破ってまで邪魔はしないはずだ。たぶん・・・。


 <<数十秒後・・>>


 「コロン艦長、いちゃもんをつけた駆逐艦がこちらに向かってきます」

 「やっぱアイツ馬鹿ナノ、けどぶつかるのは困るから進路変更するナノ」


 出現予定時間はまだまだ先なので揉め事を避けなければならない。即断したポコは一旦距離を取る指示を出した。戦列を離れるのは頂けないが、熾烈にはブースターが装置されているので多少離れたとしても余裕なのだ。


 <<ヒャンド軍・駆逐艦>>


 「おい、あのデコイに当てようぜ!」

 「艦長大丈夫でしょうか?」

 「大丈夫だろあいつ犬だし、知らんけど」


 軍紀遵守など「何それ美味しいの」の状態だし、そもそもの民度も低いのでこのような考えに至るのだろう。開戦まで邪魔されるポコは災難としか言いようがなかった。


 ーー


 <<10:45アーヴィン王国・首都某所>>


 「ノロマ(第3艦隊)がやっと上がっていったか、予定より5分押しだな」


 各所に散らばったレジスタンス達は目立たぬように裏路地やカフェに入りその時を待っていた。手下の1人は第3艦隊が5分遅れで上がる姿を確認すると、ニヤリと笑いメレルに-5とだけ明記したメッセージを送る。その美味しすぎる情報は間髪入れずに主の元に送られる筈だ。


 ーー


 <<暴虐・艦橋>>


「さてと、やってみますか」


 キャプテンシートに座るフローレンスは少し落ち着きのない面持ちをしつつ姿勢を正し、緊張を紛らわせるためか軍帽を被り直すと作戦モニターを注視した。


 「メインエンジン起動、ジャンプコアアイドル、火器管制システムオンライン、主砲エネルギーバイパス解放」

 「姫様は流石に飲み込みが早いね〜(笑」


 矢継ぎ早に指示を出すフローレンスは艦長室で一息ついた後、指揮官としての緊急戦闘体制の指示を出してみないかと言われると「やります、やらせてみてください」と秒で答える。アーレイは緊急起動マニュアルのリンクを送るとものの数分で読み終え、艦橋に入り模擬を行っていた。

 

「今回ですとシーカーを飛ばしつつ業火級と連携して多点砲撃ですね」


 待機が暇すぎて始めた模擬訓練は思いのほか簡単に感じたのか、次の作戦行動についてまで語り始め満面の笑みを溢していた。なので「じゃあ、上で実際にぶっ放して貰おうかな」と振ってみると、当然のように首を横に振り「いえ、それは遠慮致します」とキッパリとした目で返されたよ。


 まぁ仕方ないか、命令を下せば人が簡単に死んでしまうしな・・。


 ほんの数ヶ月前まで王宮で平和に過ごしていたただの王女様が、殺戮命令など出せる訳も無く「それは俺の役目だから気にするな」と諌める言葉を流す。姫様はホッとした表情に変わりすみませんと小さく呟いた。


 ピン!


 そろそろ長距離亜空間通信が封鎖される時間に差し掛かろうとする頃、メレルからショートメッセージが送られて来る。良いか悪いかは分からないけど、まぁ見なきゃ始まらないと思い開封した。


 <第3-5m>

「成程、攻撃時間が伸びたな」


 余りにも短い電文だけど意味は十分に伝わった。これをジョナスが見ればニンマリと口角が上がるよねと想像したアーレイは思わずフフと笑う。


「あれれ何を想像してニヤけているのですか、ちゃんと私を想ってくださいね(笑」

「わわ、推しが強くなってるよ(汗」


 部屋での一件以来、王女としての役割ではなく、心から恋する気持ちに目覚めた彼女は素直に自分の欲望を曝け出していたよ。というか微笑む姫様は全く遠慮しなくなってきちゃった・・。


 まあ今回は長くなるから、無事終えたらお疲れさん会でも開かないとな。


 作戦が終了すればデルタに急ぎ戻りルドルフとの交渉が待っていて、姫様は付き従うと宣言しているものの、温室育ちの体力がどこまで持つかちょっと心配だったりする。取り敢えず全て終われば初陣を祝して慰労会でも開こうと考えていた。


 >

「お優しいですけどー、波乱の予感がします」

「ポコも連れて行くから大丈夫だろ」

「だといいですけどー(棒」

 >


 作戦が発動すると戦闘モードに変わり中空モニター上を飛び回ることなく、無駄口も叩かない設定の筈だが、ピョコンと飛び出たフェアリーはしたり顔をして消えていったよ・・。


 <<10:55・デコイ熾烈>>


 鈍足のデコイは駆逐艦に追いかけ回されたが、必死に逃げ回り接触することなく今に至る。嫌がらせが始まり20分ほど経つと流石に司令部から止めが入るものの「もう刺激するな」と言われ、最初の位置より更に後方に下げられてしまう。


「あの馬鹿、終わったら絶対あとで〆てやる(オコ」


 忠実に飼い主の命令を守ったポコの頭からは湯気が立ち上り、真っ赤な顔を見れば相当我慢したと一発でわかる。作戦が終了すれば間違いなくアーレイを介して文句を言ってもらうつもりだろう。


「コロン艦長、熾烈起動を行い戦闘態勢を発令致しましょうか」

「慌てすぎナノ、11:00に艦隊最後尾に向かった後ナノ」

「了解しました(汗」


 経験の浅い副官を尻目に適切に指示をだしたポコは、ゲームコントローラのような操縦桿を弄り、鈍牛デコイを艦隊後方に向かわせた。


 <<11:00・艦隊最後方>>


 隊列が乱れている防衛隊は隙間だらけで簡単に一直線に抜けれる場所を見つけ、デコイ熾烈はすんなりと適切な位置に入る。


「熾烈メインエンジン始動、主砲充填開始するナノ」

「ヒャンド指令本部に打電は如何しましょう」

「無視でいいナノ~」


 向かう先はヒャンドとアーヴィンの最短距離を結んだ防衛ライン外周部だ。戦闘体制が敷かれると、作戦用モニターには照準が映し出され室内灯はブルー一色に早変わりする。そしてポコがスロットレバーを容赦なく引くと強烈なGが発生してシートに押し付けられた。


「デコイ解除します」

「阻害エリアまで突撃ナノ」


 解除されたデコイはバラバラに四散してゆき、青白い火炎を撒き散らす熾烈が姿を現した。


 <<数分前・ヒャンド指令本部>>


「指令、デコイが艦隊後方に接近してきます」

「全くワンコは何がしたいのか良く分からんな、躾のなってない犬だな」


 デコイ熾烈が隊列後方にゆっくりと移動している時の事だ。緊張感のかけらも無い司令本部は目の前に迫る危機に気付かず、当然のように馬鹿話に花を咲かせていた。


 Ai「警告、艦隊後方に高エネルギー反応感知、デコイ破棄されました」

 「なんだと、おい犬!何をしている」

 「・・・」

 Ai「高速で移動中の艦船データ受信、業火級熾烈と判明」

 

 勿論ポコは返答などするつもりはない。代わりに無機質なAiが状況を淡々と伝え、訳がわからない司令官は狼狽え始め「アイツが勝手にやった事だ。何かあっても俺には関係ない」と既に逃げ口上を口にしていたよ。

 

 「司令、何故ここに業火級がいるのでしょうか」

 「俺だって熾烈を初めて見るくらいだ、全く訳が分からん」

 Ai「高速で接近する艦隊を感知、アラート発動推奨」


 まごまごしている間に状況は進み続け、長距離センサーがアーヴィン艦隊を捉えると、即座に戦闘用画面に切り替わり出現予定座標が示される。同時にその場所に向け一直線に爆進する熾烈の姿も映し出されていた。


 <<ヒャンド防衛隊・旗艦>>


 Ai「識別コード判明、第9艦隊所属熾烈」

 「なぜここに業火級が存在するのだ、訳わからん」


 長距離センサーが反応する少し前の事だ。防衛隊はデコイを追いかけ回した事で司令部にお叱りを受け静観していた。だが熾烈と判明した途端、意味が分からなくなった艦長は愕然とする。


「直下を通過しました。司令部の呼びかけを無視し続けています」

「全く何をしたいんだトチ狂ったのかワンコは(笑」


 全開で熾烈が爆走している方向を想像すれば、敵が来ると指揮官なら気がつくのが当然だが、ポコを下に見ていることで完全に見落としていた。とはいえ間も無くアーヴィン軍が姿を表す時刻なので戦いながら反省することになるだろう。


 Ai「高速で接近する艦隊を感知、アラート発動推奨」

 「防衛ライン外周部にジャンプアウト確認、アーヴィン艦隊出現、その数105」

 Ai「デルタ艦隊守備範囲にディスティア艦隊出現」

 「え゛っ、戦闘体制しかないとヤバいんじゃない?」


 突然出現した敵艦隊が映し出されたモニターを見て、やっと奇襲と理解したらしい。戦闘体制を発令しようとしたその時、熾烈の主砲が火を吹き、まるでノロマな亀さんだねと言わんばかりだ。


 <第9艦隊司令官アーレイだ、シールド阻害装置の解除を要求する。死にたくなければ早くしろ(ドヤ>

「わ、わわ、承知いたしました(汗」


 極点でまったりしていたアーレイはポコが突撃を始めたので頃合いと見計らい、シールド阻害解除を一方的に命令する。狼狽えていた指揮官は不敵な笑みを見て、直感的に全て仕組まれた事だと理解したのか素直に受諾した。これによって業火級はスキップジャンプを駆使して敵を撃破するはずだ。


 <<熾烈・艦橋>>


 Ai「進行方向にアーヴィン艦隊ジャンプアウトします」

「主砲発射ナノ!」


 爆進していた熾烈は敵が姿を現すか表さないかの微妙な間合いにも関わらず、目測で主砲発射を敢行する。放たれた赤い粒子は漆黒の闇から現れた艦影に吸い込まれていく。


「敵駆逐艦轟沈確認!2射目撃てます」

「暴虐の射線を交わしつつ戦艦のエンジンを狙うナノ」


 ジャンプアウト直後はシールド発生装置が立ち上がらず無防備状態だ。旗艦の先を進む駆逐艦は船底からエンジンに向け素粒子砲が斜めに貫くと、くの字に曲がりそのまま爆裂して霧散してゆく。


 ーー


 <<アーヴィン艦隊・旗艦>>


 Ai「正面に高エネルギー反応感知、緊張回避」

「えっ?」


 流れる星々が点に戻った瞬間、目の前には爆裂した駆逐艦の火炎が目に入り、何が起きたのかわからない司令官は呆然と立ちすくんでいた。


「駆逐艦ラーズ爆沈、戦艦ラファエル大破、戦線離脱!」

 Ai「業火級熾烈確認、緊急シールド展開完了」


 時間にして10秒も経たないうちに熾烈によって2隻沈められ、人間が状況判断するよりも先に自動でシールドが張られ、とりあえずの安全が確保された。


「熾烈だと嘘だうそだろ、各自自由砲撃で仕留めるのだ」


 ピー


 Ai「ロックオンレーダー照射されています」

 「司令砲撃来ます、総員対ショック態勢」


 ロックオンされ艦橋内には警告音が鳴り響き、次の獲物は自分達だと自覚する間も無く赤い閃光が着弾する。


 ズン!


「くっそどうなった、被害は」

「後部第一装甲板被弾、被害軽微」

「た、助かった・・(汗」


 熾烈が放った3射目は威力が弱かったのか強い衝撃しか伝わらず、何事も無かったように平穏が戻ってくる。シールドを張るまでは威力を落としても撃破できると判断したポコは連射を優先したに過ぎず、結果的に旗艦は命拾いしたことになり業火級本来の怖さを理解していた艦長の表情は引き攣っていた。


「指令、撤退しますかそれとも作戦続行でしょうか」

「続行だ、可変シールド前面強化、防衛隊に向け突進しつつ砲撃と対艦ミサイル発射」


 当初の目的を果たそうと勇敢にも突撃の指示をだす。まあ熾烈は一隻だけだし対応が遅い防衛隊は取るに足らない相手と判断したのだろう。しかしこれはアーレイの手のひらの上で踊る前段階でしかない。


 Ai「後方に敵戦艦出現、レッドアラート発令」

「か、艦長!真後ろに業火級出現、砲撃来ます!」

「なんだと!応戦するんだ」


 シールドを前面に強化したのであれば背後からの暴虐、業火、烈火、憤怒、強烈の砲撃は即、死を意味する。アーレイの術に堕ちたアーヴィン艦隊は無惨な姿を曝け出すに違いない。


「シルバースレッド、ワーウルフ、その他戦艦9隻が中破または大破」

 Ai「損害率10%を超えました」

「第9艦隊は動かないのじゃなかったのか、ああもうこれじゃやられ損だ」


 予期せぬ背後からの砲撃は効果覿面で、あと2回も浴びれば敗戦基準となる損害率30%越えは確実だ。冷静に判断しようと努力する司令官は攻撃続行か撤退の判断を迫られる中、先ほどとはけた違いの破壊力を直に感じ、ブワッと大粒の汗を滴らせる。


 Ai「ロックオンレーダー多方面に照射確認」

 「司令、熾烈による攻撃で戦艦の損害率が急上昇しています」

 「くっそこのまま進めば全滅しかねないが、ここが踏ん張りどころだ、対地ミサイル発射を急がせるんだ」


 中々優秀な司令官だ。暴虐らの砲撃、チョロチョロと動き回り被害を拡大させる熾烈に耐えながら、当初の目的を果たそうとしていた。しかし前後を挟まれている状態なので、予定より早めの離脱するしかないだろう。


 ーー


 <<アーヴィン王国軌道上・デルタ第6艦隊>>


 Ai「ジャンプ阻害の妨害はありません、15秒後予定座標にアウトします」

「楽しみで仕方ないな、全くアイツの情報には驚かされるわ(笑」


 間も無く到着の知らせが流れ緊張感が増す中、アーレイから届いたショートメッセージを眺めているジョナスは想像通り口角を上げていた。そしてデルタ第6艦隊は密集陣形を取らず、部隊を3つに再編成して効率的に空爆を行う予定だ。アーレイの情報を信じたジョナスが自ら描いた作戦でもある。


「ジョナス指令、間も無くジャンプアウトします」

「全艦よく聞け、割り振られた目標を完全撃破するんだ」


 流れる星が点に戻ると眼下にはアーヴィン王国が存在する大陸が見え、間違いなくメレルが仕事を完遂した結果だ。作戦用モニターには攻撃目標が赤いマーカーで示され、その殆どは発電所などの重要インフラ、武器庫など重要軍事施設も含まれている。ジョナスはアーレイ同様無駄な殺戮を好まない性格なので指令本部など人が密集している施設は除外していた。


 砲撃手「防衛浮遊砲台、太陽光発電システム、ジャンプ阻害装置に対し攻撃開始します」

 CIC「対地ミサイルロックオン完了、発射!」


 はやる気持ちを抑えつつ砲撃手は対応が遅れ、まだ火を噴かない防衛用浮遊砲台や、その他諸々の重要施設に狙いを定め撃破してゆく。そしてCICの技官達は攻撃シーケンスを黙々とこなし、セルハッチが開くと大量のミサイルが吐き出され標的に向かって極高速で飛んで行った。


 <<数分後・・>>


「うむ、大した反撃も無く順調だな」

「ジョナス指令、アーヴィン第3艦隊にも甚大な被害が出ています」


 突然の襲来で対応が遅れた事により軌道上にある防衛施設はことごとく破壊され、代役として上昇中の第3艦隊もそれにもれず反撃の機会を失い、クロスファイヤーに晒され駆逐艦などシールドが弱い船は当然耐え切れず地上へと逆戻りしていた。


 Ai「アーヴィン第3艦隊との接触まで残り5分」


 ジャンプを行い背後を取りたいが如何せん首都上空のジャンプ阻害エリアは健在でままならず、大気中はエンジン効率が悪く重力に逆らうため思うようにスピードが出せない中、歯がゆい思いをしている筈だ。


「副長、空爆の成功率はどれくらいだ」

「65%を超えた辺りで現在発射中のミサイルが着弾すれば82%は確実です。しかし次弾を撃つとなれば交戦は確実かと」


 デルタ軍が使用しているミサイル駆逐艦は、一隻あたり一度に約400〜500セル発射可能だ。ジョナスと副官が話している最中に2射目を始めたばかりで、3射目は奥の武器格納庫から運び出すことになり少々時間が必要になる。なので上がって来るアーヴィン軍と交える可能性が高くなっていた。


「戦果としては十分だ。特別に準備したアレを放って帰ろうじゃないか」

「本当に宜しいのでしょうか、確かにあれは直ぐに撃てますけど」

「あはは、これを兵器として使うなど俺しか思いつかないだろうな、損害が出る前に帰還するぞ」


 座席脇のコンソールを開いたジョナスはニヤリと笑いながら発射ボタンを押すと、上部甲板に据え付けられている数十発のミサイルが爆炎を上げながら地表に向け飛んでいくのだった。


 ーー


 <<ヒャンド防衛隊・旗艦>>


「敵砲撃開始しました!」

「全艦戦闘態勢だ!主砲発射しつつ扇形陣形に変更」


  熾烈の一撃で始まったヒャンド防衛戦は凄い速さで状況がコロコロと変わり、指揮官である男は緊張の余り滝のような汗を流していた。


「対艦ミサイル接近、その数2500」

「ひゃ、撃破だ撃破するのだ」


 今まで撃たれたことないミサイルの数を聞くと悲鳴のような情け無い声を上げる。本人的には頑張っているのだけれど、なんか微妙に頼りない。


 Ai「司令本部より迎撃ミサイル発射確認」

「いいよいいよ、そうそうその調子その調子」


 喋り方が変になり始めている司令官は恐怖で処理能力が崩壊したのだろう。これじゃ強かなアーレイとは組むどころの話ではない。実際この後に暴虐ら5隻がアーヴィン艦隊を追い立てている状況を知ると、ポカンと口を開けたまま少し意識が飛んだのは内緒です・・。


 ーー


 <<アーヴィン首都・防空管制室>>


 ヒャンド攻略部隊がジャンプを終えた直後、首都を守る管制室のモニターには緊急事態を知らせるアラートの文字が浮かび上がり、恒星圏内のジャンプ阻害エリアを示す範囲が赤く点滅していた。


 Ai「警告、ジャンプ阻害フィールド消失、大艦隊が急速接近中、第一次戦闘態勢推奨」

 指令官「はっ?なんだそれ」


 客観的判断をするAiは実に優秀だ。しかし首都を守る管制官達は訓練か何かと勘違いしているのか、はたまた現実と思えないのかレーダーマップを凝視して何か映るまで動かない。


 Ai「首都上空にデルタ艦隊出現、ミサイル発射確認、第3艦隊と交戦中、王民に対しシェルターへの移動命令推奨」


 空爆と判断したAiは状況を手短に伝えつつ、管制室の屋上にある外部カメラを上空に向け、デルタ第6艦隊の艦影と第3艦隊が砲撃を受けている映像を映し出す。一応シールドを張れたので体制を保つことは出来ているものの、上空からの攻撃に晒され艦隊戦までの道のりは相当厳しいと予想される。


 職員A「上空に艦隊が現れただと、嘘だろ首都空爆するつもりなのか・・」

 Ai「防空シールド消失、予備電源使用不能」

 職員B「シールドが消滅した終わりだ終わりだ」


 数千発のミサイルの軌道が映し出された直後、首都を守るシールド消失が伝えられると管制官たちからは悲痛の声が漏れ始めていた。


 司令官「戯言を並べている場合じゃない、狼狽えず急いで迎撃体制を取らないと大変なことになる」

 職員A「りょ、了解しました」


 最初の警告から2分弱も無駄に経過してしまい後手に回った管制室はパニックに陥っている。とりあえず迎撃シーケンスの手順を間違いながらやっとミサイルを上げていたが・・。


「うわぁ超極速ミサイルだ迎撃が間に合わない」

「何をやっているんだ、対空砲で対処するんだ」


 盾と矛の関係と同じで新型兵器には都度対応するのがベストで、それは業火級と既存の戦艦にも言える事だ。平和ボケしていたアーヴィン王国は更新を怠り今まさにそのつけを払うことになってしまう。迎撃するためミサイルは自己爆発を誘発するものの極速の弾頭は爆炎が広がる前に無情にも通り過ぎてゆく。


 Ai「飽和攻撃により約70%が着弾する可能性あり」

 「避難指示を急いで出すんだ、被害を少しでも抑えないと」


 迎撃用対空砲は降り注ぐ弾頭を懸命に落としはしているが何せ膨大な数の前には無力だし、首都中心部ではなく郊外の軍港や発電所を攻撃していることもありヒット率は悪くなる一方だ。次々に着弾して立ち上る黒煙を見た指揮官は無力感を感じつつ避難命令を出すしか無かった。

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