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直前。

出撃しました。

 <<アーヴィン王国首都・某所>>


 「ここは警備範囲外だから撤退の時間的余裕がある」

 「王宮まで5キロ弱かしら、それなら間違いなく全弾て撃てそうね」


 作戦が発動する数日前、まだ薄暗い時間帯にメレルの案内で、アーヴィン王宮が見渡せる解体を待つビルの屋上へとやってきていた。デジタルスコープを覗くアデリーナは距離的に全く問題ないのかニヤリと口角を上げる。


 「テストはうまく行ったが本当に大丈夫か、結構遠方だぞ」


 地球の凄腕スナイパーなら3キロちょっとが限界だが、アデリーナはカルネから送られてきたライフルを昨日試し撃ちをして、この距離なら問題無いと確信していた。


 「うふふ、このバイポッドとスコープがあれば無敵よん」


 受け取った装備には衝撃振動吸収バイポッド、超高倍率自動エイム搭載デジタルスコープと射程距離5キロ以上を誇る極悪な弾丸が含まれ、一昨日のテストで4キロ先の的に軽々と命中させていた。もちろんライフルは電磁加速器の機能が付与された高性能だから出せた結果だ。


「まぁ非合法の装備だからな、けどなんてものを送って来たんだよ(汗」


 説明書の最後に「使う使わないに限らず、撤退の際に全ての装備を完全破壊すること」と明記されていた。要するに世に出せば星団法違反に問われかねない試作品という事だ。気を利かせたジャクリーヌがアーレイの為に揃えたらしい。


「そもそも私達のミッション事自体がギリギリよん、(アーレイ)の思惑は分からないけど、このミッションは必然なのよ」

「今回は脅しだけらしいがよく分からん。俺たちゃ頑張るだけだ」


 命令はシンプルで作戦発動後「国王の側近が獲物」とだけ明記してある。兵士のアデリーナは何ら疑問を持たずにスナイプするが、補佐のメレルは真意が掴めず難しい顔をしていた。とはいえ任務を遂行するには余計な事を知らない方がいいし、もし捕まって記憶を覗かれたとしても何も知らないのでアーレイの思惑はわからないだろう。


 アーレイ「腰巾着に(オーランド)は引いてもらわないと、なにも始まらないんだよな」


 少し前の事、自室で青写真を描いていたアーレイはオーランドの事を入念に調べ上げ、会ってもいないのにも関わらず星団統一の為には排除が必要だと決めていた。


 ーー


 <<ヒャンド共和国・防衛ライン付近>>


 Ai「ヒャンド防衛ラインにまも無くジャンプアウト」


 無機質な音声で到着が告げられると作戦モニターにはヒャンド恒星圏内のマップが映し出され、15万トン級の駆逐艦がジャンプ阻害エリア付近に姿を現す。それはもちろん偽装した熾烈だ。


「コロン艦長、敵影なしオールグリーン。このデコイのジャンプコアは強力ですね」

「熾烈は足が短いナノ、だから助かるナノ」


 業火級の足の短さはデコイに搭載したジャンプコアで補っている。常識的に搭載することは無いが、今回の作戦のためにアーレイが特別に作り上げていた。


「ヒャンド司令本部から入電、所属と目的を伝えよとのことです」

「これより予定通り試験行動に移ると司令室に返答するナノ」


 ヒャンド司令本部に対しデコイの性能試験と防衛隊の視察という作戦を流していた。熾烈を防衛隊に紛れ込ませるのはもちろん、デルタ駐屯部隊の目が届かなくなると途端に気を緩めるとの報告が散見されたので、お目付け役を兼ねて送り込んだのだ。


 <<宇宙ステーション・司令本部>>


 ディスティアの侵攻を防ぐために隕石を用いて要塞化した宇宙ステーションをデルタが建設を行い、周囲30キロにも及ぶ巨大な建造物には人工重力が施され、司令室の約半分の機能が集約されている。この強固な防衛装置はヒャンドの守り神と呼ばれていた・・。


 「指令、事前連絡があったデルタ軍の艦船が到着しました。通信士の話だと艦長は犬族の女らしいですよ」

 「デコイの実証実験だろデルタも良くわからない事するし、動物が艦長を務めるのか、デルタも人材不足なのかな(笑」


 ヒャンド人のルーツはフェデラリー共和国で突如派生した異物のような存在の人間族で、副官と司令官は特徴的な平たい顔をしている。怠ける事が大好きな彼らは重労働を極端に嫌い、第一次産業の殆どは獣人が担っていた。そのため亜人種を差別する傾向が強く、総司令官という上に立つ者があろう事か差別発言を当たり前のように吐き出す。くだらない理由でポコがトラブルに巻き込まれなければ良いのだが・・。


 ーー


 <<デルタ防衛ライン外周部・暴虐艦橋>>


「やっぱり戦艦に乗り込むとすごく緊張しますね、ちょっと怖いかな・・」

「だからやめろと言ったのに・・・(ジト目」


 士官宿舎を出たアーレイとフローレンスはベクスターに乗り込むと、第9艦隊が待機している合流地点まで急ぎ向かい暴虐に乗船する。艦橋に入ったフローレンスは死地に赴くと想像しただけで、恐怖心がぶり返し顔が青ざめていた。


「アーレイ指令、支援艦の準備ができました」

「はて今回の作戦は俺が司令官になるんだっけ?」

「何を今更言っているのですか、今回はエルフォードではなく暴虐が旗艦になりますよ(呆」

「そっか~じゃあ頑張らないとな~」


 第6艦隊のアーヴィン攻撃こそが本命とアーレイは捉えているが、司令本部は後詰めに入る第9艦隊の方が激戦になるし、立案者だから暴虐を旗艦にしたらしい。当の本人は拘らない性格なのですごく適当だ。やり取りを聞いたフローレンスは惚けるその態度を見て緊張がとけたのか、クスッと笑みを溢す。


「うふふアーレイ様、出発準備完了です。ところで滞在許可はどうやって説明したのでしょうか」

「極点の電離層を調べ温暖化の研究だと言ったら、あいつら途端に興味を失いやがったよ(笑」

「凄く単純で相変わらず現金ですね。残念国と言われるだけはあります」


 地道な努力を嫌うヒャンドの対応を思い出したアーレイは苦笑い、フローレンスはその様子が手に取るようにわかるのか呆れた遠い目をしていたよ。


「そもそも努力って言葉を知らんからガッカリ国なんだよ、君に言われるようじゃだめだな。さあ行こうそんな事はどうでもいいわ」


 暴虐も出来ればデコイの方が効率的なのだが時間的に間に合わず、極点という影響のない地表からのジャンプで対応するつもりだ。業火級4隻と暴虐は支援艦に搭載され漆黒の海へと消えていく。


 <<惑星ディーン・北極点>>


「何でこの配置なのでしょうか、整列しないのですね」

「ああこれね、もし探査されても基地っぽく見えるでしょ、整列したら戦艦ってわかちゃうじゃん」


 支援から発艦後、地表へと降下した暴虐を含む5隻の戦艦を上空から見れば、南極基地を思わせるEの文字型で並んでいる。ここには敵の諜報部もいないので不要なのだけど念を入れて並んでみた。要するにアーレイの遊び心ってやつだ。


「外は晴れていても超極寒ですよね、一度体験してみたいです」


 モニターには白一色の地表と抜けるような群青色の空が広がり、白夜と相まってとても神秘的な光景だ。その絶景を自分の目で確かめたくなったフローレンスは、極寒冷地用の防寒服を引っ張り出していた。


「素手で手すりを触るとベロンと皮が剥けるほど寒いぞ、それでも良いなら外に出てみようか」

「さぁさぁ早く行きましょう(喜」


 この地域は気候変動装置の範囲外なので外気温はマイナス70度を下回り、大きく深呼吸をすれば肺が悲鳴をあげるに違いない。だが好奇心が勝るフローレンスは行く気満々なのか防寒着の袖を早く通せと言わんばかりに広げていたよ。その笑顔を見ればきっと2人っきりになりたい願望も混じっていると思わずにはいられない。


 <<暴虐・艦外>>


「うわぁ〜想像以上に寒いですね!見てくださいタオルがパッリッパッリです(喜」


 極寒地のテレビレポートでよく見る濡れた布がカチンコチンに固まるのを再現をしたかったのか、艦外に出た途端タオルを取り出すとグルグルと回していた。童心に帰ったようにも見えなくもないけど、きっと彼女は嫌な事を忘れようと必死なのかなと考えてしまう。


「あはは楽しんでいるね、薄暗くなればオーロラが見える筈だよ」

「2人っきりでみるオーロラって神秘的ですね〜満喫したいから手をつなぎましょ」


 神秘的な情景の中、寄り添い恋人繋ぎをしてロマンチックな気分に浸りたいのだろうか、無理目な注文をしてきた。というか早く恋人同士に昇華させたい思惑が駄々漏れだ。


「あのな作戦行動中だからモニターで監視しているぞ、噂に耐えられる強心臓持ちなら構わないけどな」

「え゛っ、そ、そうですよね、それはキツいです(汗」


 残念ながら作戦行動中に士官が艦外に出れば万が一を想定してモニターしている。そんな状況の中で手を繋げば、箝口令を引いたところで色恋沙汰などは漏れ出てしまうだろう。翌週の週刊誌の一面を想像したフローレンスは目論見が外れ肩を落とす。


「スキャンダルお嫌いでしょ、それじゃこのままだね〜(棒」

「もう!・・あっ綺麗ですオーロラ」


 白夜の空一面に広がる色とりどりのオーロラ達を見れば、誰しも感動することだろう。あまりの美しさに呆然とするフローレンスは束の間の感動を覚え、いつしか不安が消え去っていた。


「オーロラに願い託すと望みが叶えられると言いますよね、私の願いを聞きたいですか」

「人に喋ると叶わないかもよ〜(棒」

「もう、意地悪ね」


 振り切れたお姫様の推しは留まることを知らない。初めて会った時の奥ゆかしさは何処に行ってしまったのかと考えつつ、プッと頬を膨らませ笑顔を溢す表情を見られたく無いのでアーレイは防寒服のフードを引っ張る。


 ーー


 <<アーヴィン王国・レジスタンスの隠れ家>>


「メレルのお頭、指定された場所に爆弾のセットが完了しました。チョロいもんです」


 カルネ国からの特別便で湾岸倉庫に運び込まれた大量の爆薬などは、メレルの手下が分担して持ち帰り作戦が発動されると、わずか数時間で通信アンテナに偽装してあるシールド発生装置に設置を完了していた。

 

 「平和ボケにも程があるな」


 星団戦争が勃発した数百年の間、一度も侵攻を受けたことの無いアーヴィン王国はディスティアとは違い、防空に関する危機感が欠如しているのか警備はユルユルだ。予算削減の為に警備ドロイドすら配置せず、警報装置の類も旧式過ぎていとも簡単に無力化される始末だ。


 「変電所も楽勝でしたぜ、犬すら(警備用ドロイド)いませんでした」

 「陽動作戦が上手く機能したな、後はスイッチを押すだけだ」


 散発的にレジスタンスが襲撃を繰り返し、守備隊は発電所が狙われると考え変電所の警備を回して対応していた。ここまで極振りする理由はAiに相談した結果、変電施設の地上部が破壊されたとしても本体に影響せず、数時間で復旧が可能との結果を元に動いていたのだ・・。


「お頭、送信所はEMP()攻撃ですよね、そのミサイルは最新式ですよねどこから入手したんですか」

「これは頼りになる俺の友人が送ってくれたんだぜ、これで阻害装置(ジャンプ)をボカンだ(ドヤ」


 自慢したくなるのは仕方がない、このミサイルはアーヴィン製のシリアル無し、EMP攻撃用の弾頭がセットになっている最新式だ。ジャクリーヌがどうやって入手したかは不明だが、間違いなく製造工場に協力者が存在しているのは間違いはない。因みにこの兵器は強力すぎる為、軌道上からの空爆は禁止されている。


「これは携帯型とはいえ超強力なんですよね」

「強力でも花火を打ち上げないと作戦は失敗するから、お前らしっかりやるんだぞ」


 レジスタンスに課せられたもう一つのミッションはジャンプ阻害装置のエネルギーを供給する送電所の破壊だ。建屋自体は地下貫通型爆弾(バンカーバスター)を用いないと、どうしようもないくらい強固な作りだが、大型パラボラアンテナが鎮座しているので至近距離でのEMP攻撃には無力だったりする。とはいえバックアップがあるので無力化できるのは精々十数分程度だろう。


 「ガッテン承知です、それじゃ(かしら)配置につきますぜ」


 爆破スイッチと携帯型ミサイルを携えたレジスタンス達はガツンと拳を合わせ気合いをいれ、秘密の通路に入り方々に散らばってゆく。


 「指示書を送ったら俺も行かないとな」


 入手したアーヴィン軍の最新情報をアーレイに送ったメレルは、アデリーナが使うライフルケースをポンポンと叩くと、小脇に抱えシャトルへと乗り込んでゆく。


 ※=EMPとは電磁パルスを利用して電子機器を破壊する武器。ヒャンドで起きたBMテロと呼ばれた攻撃と発生原理は異なるが効果は同じ。


 ーー


 <<暴虐・艦外>>


 <とんでもないもの送りつけたのに、外にいるんだってな>

「業務用冷凍庫より確実に寒いぞ、いまさオーロラを見ているのさ」


 敵が撤退行動に入るまで出番が無いクリスはアーレイが送ったとある資料に目を通すと急いで連絡を入れてくる。とりあえず茶化すため白夜とオーロラの絶景と真っ黒な船体を織り交ぜた映像を送ってみた。


 <こりゃ凄い映像だね、お前ロマンチストだっけ、あらら姫様とデート中か(笑>

「おいおいデートとは人聞きの悪い事いうなよ、何事も経験だろ」


 常に2人の関係性を報告しなければならないクリスは、実は姫様の片想いのことをジェフには内緒にしているものの、2人仲良く映り込んでいたので冷やかしでデートと表現したらしい。そして当の本人が即座に否定すると・・。


「もう・・・」


 リンクを開いていたフローレンスはアーレイの言いように拗ねたのか俯き袖を引っ張る。本人的には距離が近づいたと思っていたが、振り出しに戻った気分になっているのだろう。


 そう拗ねるなよ、俺もしがらみがあるから辛いんだよ。


 彼女の気持ちは痛いほど分かってはいるものの言葉に出して慰めるわけにもいかず、かと言って手は握る事は憚られ悶々とする中、会話を続けるしかなかった。


 <情報の精度が凄すぎてもう笑うしか無いわ、これじゃ諜報部の面目丸潰れだな(笑>

「こんな無謀な作戦は正確な情報がないと組めないよ、これ見たら(ジョナス)勝手に出撃してくれるかな」

 <まぁ彼ならそうするかもしれんが一応連絡は入れておけよ、俺の出番は11:30分位かな>


 発動前の現物を見るのは初めてのクリスは少し興奮気味だ。地上から上がって来る第3艦隊、攻撃部隊の出撃時間が明記されているので当然と言えば当然だろう。攻撃時間は極秘扱いなのか明記されていないものの逆算すると11時すぎと簡単に予想できていた。


「混戦にはなるだろうけど30分ほどで撤退するはずだ」

 <了解、向こうで会おう>

「・・・(ジト目」


 最終確認を済ましクリスとの通話を終え、俯いたままのフローレンスの顔を覗き込むと超ジト目で且つ膨れっ面に変身していたよ・・。


 <<暴虐・艦長室>>


「あー寒かったけどすんごく楽しかったですね~、最後にお姫様抱っこして頂き感謝する所存です(喜」


 ふくれっ面のまま飽きるまでオーロラを満喫した後、暴虐に戻ろうと先に階段を歩いていたフローレンスは足を滑らせ、受け止めたアーレイは必然的にお姫様抱っこをしてしまう。いつかはこうして貰いたいという願望が叶った姫様は先ほどまでの不機嫌が消し飛び上機嫌だ。


「そうですね~怪我がなくてよかったですね~(棒」


 勿論、一部始終モニターされているので艦内に入れば「流石ですね」と褒められ、アーレイは小っ恥ずかしい思いをしてしまうのだった・・。


 ーー


 <<第6艦隊・旗艦艦橋内>>


 「ジョナス司令、損害率が5.7%に下がりました」

 「司令、作戦成功率が99%に変わりました」


 少し前の時間、出撃時間が定まらない中、侃侃諤諤と議論の最中に1通の電文が舞い込んでくる。もちろんそれはアーレイから齎された情報で、直後旗艦の艦橋内は蜂の巣を突いたように慌ただしくなっていた。


「司令!本当に防衛ラインの中にアウトできるのでしょうか」

「副長慌てるな、綿密な計算と冷静な行動をすれば良い」

「わかりました。ですが本当に信じて宜しいのでしょうか」


 副官が懐疑的になるのは当然だろう。クリスですらちょっと慌てて連絡を入れたくらいだ。しかし待てど暮らせどアーレイから音沙汰が無いので、不安な顔をするのは致し方ない。


「装備も攻撃微方法も俺任せだから気持ちはわかるが、まぁ待て奴は信じるに値するそのうち顔を出す」

「ジョナス准将、アーレイ少佐から入電です」

「ほら見ろ、ちゃんと来たじゃないか」


 艦長室に入り姫様の戯言を聞いて一息ついたのだろうか、微妙な面持ちのアーレイがモニターに映る。


 <アーレイです、出撃時間はお任せします!>

「ガハハ、やっぱりそうきたか!うちの連中がなんとかするから大丈夫だ!」


 開口一番ペコリと頭を下げるその潔さに男気を感じたジョナスは豪快に笑う。逆に聞いている士官達は困惑していた。どうやら大物同士にしか分からない信頼感が読めないらしい。


「アーレイ少佐は何であんなに適当なんですか、それなりに戦果を上げていますけど」

「ああ見えて常識に囚われず、冷静沈着で強かなんだよ彼は」


 見立ては間違い無く老兵ジョナスの分析は中々なものだ。しかし見た目と態度と実績が結びつかない士官らは「上に立つものは違うのですね」と言葉を濁していたよ。


 ーー


 <<アーヴィン王国首都ビル解体現場>>


 「ふう、人力で垂直に登るのは疲れるわね」

 「帰りはカイトだから頑張るしか無い」


 解体現場の屋上に設置してあるクレーンの垂直階段を登っているのは、ライフルケースを背負うアデリーナと大きなリュックを携えたメレルだ。


 「これ使えば銃声も聞こえないから10発は撃てるわね」

 「そのための防音室を今から組み立てます」


 狭い操作室なら目立たないし防音シートの効果も抜群なのと、例え発見されてもカイトを使えば容易に離脱できるので狙撃場所を変えたらしい。そして踊り場まで上がると、手慣れた手つきでメレルは簡易フレームを広げ始め防音幕を被せた。アデリーナはケースを開け、バラバラになっているライフルを手際よく組み立ていく。


「あらジャスティン王子かしら、朝からお盛んね♡」

「何をみているですか、覗き魔ですね(汗」


 組み立てが終わり早速索敵を始めると第1王子の部屋の窓際で、規則正しい動きをする立ち姿の人影を発見したらしい。要は後ろから攻めている最中で、覗き魔呼ばわりされたアデリーナの眉がピクンと動く。


「何よ、あんた〆るわよ」

「〆たら我が(アーレイ)に報告しよっと(笑」

「や、やめてよ〜メレルちゃん、もうアンタも見てみなさいよ」


 馬鹿話をしつつジャスティンの部屋を覗いたメレルは、窓に張り付いてよがる女の頭にある、特徴的なアクセサリーに気がつき「もしやお相手はメイドですよね」と呟く・・。


「独身だし若いしね、朝のモッコリ見て欲情したんじゃ無いの(笑」

「絶対に玉の輿狙いだよね」

「うふふ、その玉抜いちゃう?絶好のチャンスよん」

「・・・」


 心の中でその玉じゃ絶対ない、王の玉だと叫ぶメレルさんでした。


 ーー


 <<アーヴィン王立宇宙軍・ヒャンド攻撃艦隊出撃直前>>


「艦長、第2艦隊の出撃準備が完了したとのことです」


 今回ヒャンド攻撃に参加するのはアーヴィン主力艦隊となる第1、2艦隊だ。火力的にはディスティア製で採用されているのと同じ|《※》カイザー級を主軸に駆逐艦などを含む約100隻で構成されている。旗艦に関しては総排水量規制とご機嫌伺いのため50万トン級の採用は見送られていた。


 ※=カイザー級。十数年前に就航した標準とされている20万トンの排水量の通常型戦艦。抜群の破壊力を持つ700ミリ系素粒子砲を16門を実装出来ることから反星団最強の主力艦と目されエルフォード級と互角とされている。近年業火級に対応するために次期主力艦としてアダマン級を急遽開発したが結果は知っての通りだ。


「何年振りなんだヒャンド攻略に出向くのは、是が非でも成功に導かなければならない」

「そうですね艦長、それでは作戦要領を解禁してください」


 デルタ諜報部を欺くため出航して既に6日、やっとその時が来たと思った艦長は封印されていた指示書を開示する。そこには出航後の詳細な時間が記されていた。


 >>

 ディスティア軍と11:05にヒャンど防衛ラインにて合流

 攻撃開始時間11:07

 作戦終了予定11:35

 無闇な混戦は避け、気候変動装置の破壊を最優先とする。

 >>


 入手した情報には含まれていないがクリスが逆算した撤退時刻とほぼ同じで、奴らは一気に攻め入ってミサイルをぶっ放して帰るつもりだ。


「艦長、今回はデルタ第9艦隊は現れませんか、大丈夫でしょうか」

「奴は捕虜交換に携わっていて、艦隊は業火級を除いて訓練中だから出てこないとの情報だ。だから安心していい」


 第9艦隊はヒャンド駐留第3艦隊のためにドッグを貸す体で離れ、業火級は静止軌道上で支援艦内で整備しつつ第7艦隊と軍事演習に参加すると嘘の情報を流してある。アーレイは捕虜交渉に関する日時日程をディスティアに送ったので疑われることは無い。しかしルドルフは絶妙な時間にデルタに到着するので数時間は待ちぼうけを食らう事になる筈だ。


駐留部隊(第4艦隊)はディスティアが対処しますけど、気付いて駆けつけて来ませんか」

「心配するな通信阻害もするし、ポンコツヒャンド軍を蹴散らした後にミサイルぶっ放せばお終いだぞ、気がついた頃には全て終わっている」


 アーヴィン軍はヒャンド防衛隊と対峙しつつ空爆を行い、ディスティア軍は駐留するデルタ第4艦隊の引き付け役だ。無力化の観点ならアーレイと同様だが決定的に違うのは無闇な殺戮を行わない点だったりする。


「艦長、今回ヒャンド攻略ができたら歴史に名が残りますね」

「絶好の機会が舞い込んできたから落とせるぞ、ヒャンド防衛軍など取るに足らん」


 艦長がいう絶好の機会とはデルタ第3艦隊が不在なのと稼働率が異常に悪いヒャンド艦隊のことだ。長年に渡り稼働率を改善せず放置したセミョーンはジェフの怒りを買い、約35%を第9艦隊に割り振る事になり総数が少なくなってチャンスと思ったのだろう。


 アーレイ「Aiは悪意を読めないからチャンスと判断するんだよね・・」


 数字上は手薄になり少しでもバランスが崩れたらAiは攻め入る好気と判断すると読んだアーレイは、第3艦隊の代替えを送らず様子見したいと総司令官のファルコナーに直訴して罠を仕掛け、その甲斐あってディスティア司令本部はまんまと嵌っていた。

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