始まりと、心の距離。
2面作戦発動と、とある問題が巻き起こっていた。
<<デルタ時間5:03・アーレイの私室>>
りんりんりんりん♪
<おーいアーレイ寝ているのか?>
「・・・(黙」
東の空が白くなり始め小鳥達が囀り始める頃、アーレイのスマホにメレルの顔写真が浮かび上がり、オンライン設定にしてあるのでそのまま音声が流れ始めた。直接モジュールに繋がり脳を刺激するので飛び起きる筈だが、なぜか枕を抱いているアーレイはまだ寝足りないのか、全然ぴくりとも反応しない。
<こら!緊急連絡だぞ!>
「んっ?・・・おおどうしたメレル、あっ遂に始まるのか・・」
寝惚け眼のアーレイは緊急連絡と理解するまで少し時間がかかってしまうが、メレルの荒い声を聞き、言わずともアーヴィン空爆が始まったと即座に理解した。
とりあえずクリスに連絡を入れて次は第6のジョナスだな。
眠気を覚ますため顔を洗いつつアーヴィンの情報を聞き、同時にモジュールを使いクリスに連絡を入れ始めていた。しかしまだ寝入っているのかビジー状態のままなので、応答があるまで詳細を聞くことにした。
<今回は運がいいな、本星防衛隊が整備と休暇で地上降下した後に、第3艦隊が入れ替わりで発艦するぞ>
現在のアーヴィン艦隊の総数は約150隻ほどで、本土防衛隊は星団法に抵触しない警備艇を所有している。情報によると防衛隊を地上に降ろす代わりに第3艦隊がその任務を担うと発表されたらしいが、メレル曰く緊急対応というのが真実との事だ。
「んっ?あーなるほど全艦隊が姿を消すと動きを読まれるから偽装するのか、となれば数分は攻撃し放題だな(笑」
第3艦隊が本星警備に着けば空爆の難易度が上がると思われるが、入れ替わりの僅か数分に隙が出来るという事だ。短い時間ではあるけどチャンス到来とアーレイは捉える。
<そのわずかな隙ができる数分間に、デルタ艦隊はちゃんと周回軌道に乗れるのか>
大規模攻撃が初のメレルは当然艦隊戦の経験など無比だ。従って50数隻の戦艦が寸分の誤差無く上空に現れること自体信じられないらしい。そんな事は織り込み済みのアーレイは不安を払しょくしようと「ちゃんと連携さえ取れれば問題ないし、送り込むのは冷静な猛者だ。それじゃ頼んだぞ君がカギだ」とエールを送ってみた。
<勿論だ任せてくれアーレイ、俺はキッチリと仕事をこなす>
まぁ細かい事は任せろの意味を込めたので、言葉を聞いたメレルは不安が消え去ったのか力強い返事を返して来た。会話を終え次はクリスを叩き起こすことなるが・・。
<おはよーアーレイ、忙しくなるな、とりま9はエリア外に移動させたよ(笑>
この男、起きて早々アーレイが通話中と分かるとリンクしたまま黙ってやり取りを聞いていた。冷静沈着でのんびりとした受け答えは俺と一緒で、だいぶ斜め上になって来たなと思わずにはいられない。
「とりま待機中の第6艦隊を動かしたいので指揮官に繋いでくれ」
<承知した。俺は陛下に挨拶したら命令を発動しつつ9に向かうよ>
事前に話してあるとはいえ、やはり有能なクリスには無駄がない。後詰頼んだぞと考えていると第6艦隊のジョナスと繋がった。
<おはようアーレイ君、とりあえず顔を見せなさい>
「おはようございますジョナス准将、少々お待ちください」
超短髪の深紫色の髪色をもつ彼は仏頂面がよく似合う俗に言う昔の人なので、どうも顔を見ながら喋らないと気が済まないらしい。
ヤッバ、見られたら最悪だわ。
徐にモニターに向き合ったアーレイはオンラインになる前に、何故か後方のベッドが見えないような角度に調整する。
「お分かりと思いますが敵が動き出しました」
<貴様の指示書はシンプル過ぎる、本当に大丈夫だろうな>
訝しげな表情をするジョナスはジロリと睨み、何か言いたそうだ。アーレイが指示書に「重要インフラに対して有効な武器は各自の判断で使用すること」と丸投げしたのが悪かったのだろう。
新参者があれやこれや言っても仕方ないし、彼なら任せても大丈夫だろう。
全ての武器に精通している訳では無いし、階級が下で新参者のアーレイが細かく指示したところで、古参兵は素直には受け取らない。それどころか文句をつけそうなので、長年の経験を持つ彼なら任せた方がより良い戦果を齎すと判断したのだ。なので「発電所と軍港を完膚なきまで破壊してください」とだけ付け加える。
<アーヴィン艦隊の稼働率を落とすのが本命だろ、ちょっと物足りないけどな(笑>
星団統一が最終目的のアーレイはディスティア攻略までの道のりを、信頼をおける者にしか口にした事はない。しかし老兵は長年の勘から今回の奇襲はその足掛かりだと理解していたらしく笑みを溢し、メレルから聞いた最新情報を話すと勝機が舞い込んできたと判断したのか、ニヤリと口角を上げる。
<アハハ今回は楽勝だな、攻撃座標は全てインプットしてあるからボタンを押して帰ってくるよ(笑>
「流石ですねジョナス准将、吉報をお待ちしています」
画面から姿が消える間際のジョナスは何故かとても楽しそうな表情をしていた。内心ではアーレイはこの先、途方も無い事をしでかすと期待しての事だろう。
俺の考えを見透かす辺りは流石老兵と言ったところか。あのオッサンは預言者か(笑
補給路が遠過ぎるアーヴィンを占領しても失敗すると長年の議論で答えが出てるし、Aiに問いても同じだ。だが傷病者を集め、獣人を飼い慣らす手腕、誰も考え付かなかった方法で強力な戦艦を作り上げたアーレイに、実は格段の期待をしていた。
さて、最後はポコに連絡だな、その前に・・。
寝起きにも関わらず矢継ぎ早に指示を出したアーレイは、頭を落ち着かせるためフードディスペンサーからコーヒーを取りだす。空腹感を感じ始めた胃袋に流しこむと、腹の底からしんみりと温かみが伝わり一息つけた。
「ふぅ・・ポコ、聞こえるか熾烈出撃だ!」
仕切り直しのコーヒーを飲みつつ返答があるまで現状を振り返る。第6と第9艦隊は敵の諜報部に察知されない為に防衛ラインの外側で待機中、熾烈は新装備を取り付ける為に軍港の整備ドッグに留め置かれ、既にポコはそこに向かいつつ乗組員と連絡をとっている最中だろう。
<おっはーナノ、もう上がっていいナノ?>
「熾烈は既にデコイに化けているから、受け取ったらジャンプポイントで落ち合おう」
<はいナノ、わかったナノ!>
もう一つの作戦であるヒャンド防衛はポコの動きひとつで勝敗が決まると言っても過言ではない。彼女には「敵艦隊が現れたら先陣を切って大暴れしてくれ」とだけ命令してある。沈む心配のない熾烈を操り度肝を抜かす様な働きをしてくれる筈だ。
「無理はするなよ、帰ってくるまでが作戦だからな」
<わかったナノ、切り込みはまかせろナノ!>
先陣を切ることに臆する事なく力強く返事を返すポコは、間違いなく多大なる戦果を上げる筈だ。アーレイはそれぞれがベストを尽くせば必ず勝てる、いや、アーヴィン無力化作戦は是是非でも成功させなければならないと強い決心をする。ここで普通なら闘志が湧き上がり、高鳴る鼓動を押さえながら部屋を飛び出すが、しかし・・。
足手纏いになるとは言えないな、さてどうするのかな・・。
机に寄りかかり、まだ湯気が立ち上るコーヒーをすするアーレイは遠い目をしてベッドを眺めていた。
ギシ
誰もいない筈のベッドが軋み、微かな衣擦れと長い髪が擦れる音にならない音が静かな部屋に流れ、ゆっくりと細身の人影が起き上がる。シーツを纏いよく見えないがそれが半裸の女であれば、まごうことなく交わった結果と想像するのは容易いだろう。
「おはようございますアーレイ様、昨晩は優しく抱いて頂きありがとうございます(恥」
起き上がったフローレンスはモジモジしつつ顔を赤らめ、大人の階段を登ったような雰囲気を醸し出している。アーレイはジト目に早変わりすると、どうしたもんやらというような表情になり口を開く。
「こら!誰も聞いていないからと言って、勘違いするような表現をするな(汗」
「だって、同じベッド上で交わったのですよ」
あくまでも関係があったみたいな表現に拘るフローレンスの格好はというと、ナイトガウンならまだしも真新しい軍服を患者着の上に羽織り、どう見ても病院から抜け出した体だ。
「交わるの表現方法が違いますよ〜あれは添い寝って言うんです〜(棒」
「もう分かってますわよ〜けど人肌って心落ち着かせる良薬って実感しました。すごく良かったです」
和やかに喋る彼女をよく見れば目が腫れ少しクマが出来ていて、想像しなくても昨晩泣きじゃくった事は言わずしてもわかる。何故そのような状態になったのかというと・・。
<<昨晩23:30・作戦本部>>
<アーレイもう耐えられない、助けて・・(泣>
「直ぐに行くから大人しく待ってるんだぞ」
深夜に差し掛かろうとする時間帯、任務を終え本部に戻ってきたアーレイの元に、突然フローレンスからヘルプコールが舞い込み、何かに怯えているのか声が震えていた。
>
「外傷はありませんが、精神が凄く不安定な状態です」
「惨状を目の当たりにすればそうなるよ、やはりショック症状が出てしまったか」
>
暴虐乗船中にフローレンスが迎賓館の渡り廊下で銃撃を受け、軽く負傷したが命に別条はないとクリスから連絡があった。哨戒任務を放り出す訳にはいかず「何かあったら連絡してくれ」とメッセージを送り、それが悪い現実となって現れたらしい・・。
目の前で人が爆ぜるように死ぬのを見れば、さぞ辛いだろうよ。
王女銃撃のニュースは瞬く間に流れ、哨戒活動中にそれを横目で見つつ、クリスによって齎された悲惨な現場映像を見たアーレイは、昔戦地にいた時のことを思い出さずにはいられなかった。
俺が浴びた無効化弾とは比べ物にならないパワーだな、これは酷い・・。
通常の大口径ライフル弾ですら、腕を掠るだけで心臓が爆発してしまうほどの威力だ。凶悪なあの弾が顔面に当たれば風船が割れるように跡形も無くなってしまうだろう。その事を知るアーレイは今の彼女に必要なのは、近くで寄り添い慰めることだと思い、病室へと急ぎ向かう。
<レンのことは頼みましたよ>
移動中、女狐から短いメッセージが入り、心配するジェフを宥めているという事だろう。それにしてもこちらの動きを察知して丸投げするあたり、否が応でも娶らせたいとの思惑が透けて見えるし、わざとひとりにしたのかと邪推するほど手際がいい。
放置は出来ないし、いま寄り添えば彼女の想いは強くなるか、女狐め。
中身40過ぎのオッサンは手を出す事に躊躇しているが、若い姿のアーレイに入れ込むフローレンスはそんな事お構いなしだ。女狐はこの状況で逢えば恋心が更に加速すると読み、メッセージを送ったと思わずにはいられなかった。
<<アーレイの私室>>
「我儘を聞いてくれてありがとうございますアーレイ様」
退院する体で病院を抜けだした途端「王宮には戻りたくない、一緒に居てくれませんか」と懇願され、断る理由がないアーレイはカタカタと震える肩を抱き、士官宿舎に逃げ込むように入る。幸い人気がなく誰にも目撃されなかった事が唯一の救いだ。
「辛かったんだね、落ち着くまでここに居ていいよ」
ドアを閉めると同時に無言で抱き付かれ、喚きはしないけどシクシクと泣き続け、早速にっちもさっちも行かない状況に追い込まれてしまい、気が済むまで抱擁を続けるしかなかった。
「私のために皆んな死んでしまいました(泣」
十数分もの間ずっと抱きしめられ流石に落ち着きを取り戻した彼女は、無表情に銃撃を受けた様子を語る。撃たれて死んだと簡素に表現するものの、実際に見た光景は目の前で人が爆ぜ無惨な肉塊と変わり果てていた。
「助かったのだから亡くなった方の分まで生きればいいよ」
「うん、けど仲の良かった侍女がバラバラに・・(泣」
病室でひとり静かに過ごしていると、あの凶弾に晒された侍女の肢体がバラバラになる惨状が蘇り、殺された原因は自分だと自責の念が湧き上がる、心的外傷後ストレス障害、俗にいうPTSDに苦しめられていた。
「きつい言い方だけど、俺と一緒にいたいなら乗り越えるしかない」
「うん、けど今日は、今日だけは泣かせて・・」
泣いて死者を弔う訳では無いけど、今の彼女は涙を流すことで自分を保とうとしていたし、好きな男に抱きしめられ安堵することで立ち直るチャンスを得ようとしていた・・。
<<そして現在>>
「昨晩よりだいぶマシになったな、もう大丈夫そうだね」
「えへへ、すみませんアーレイ様を抱き枕にしちゃいました」
寝てる間ずっと想い人をギュッと抱きしめ肌を合わせたことで、暗く落ち込んだ心の中に少しずつ光が差し込み、立ち直った。因みにアーレイは密着する双丘の弾力が気になって気になって仕方なく、煩悩を捨て去るのに大変だったけどな。
>
「やっぱすけべで、気があるね」
「・・・」
>
嬉々として飛び回るフェアリーは終始静かだったが、悶々としている時に耐えられなくなったのかツッコミを入れてきた。勿論相手をしたくないので放置プレイだ。
立ち上がりの良さはやはり王族ということか・・。
短時間で立ち直るのは矢張り王族たる所以で、それだけ自分の感情をコントロールするのに長けているということだろう。とはいえ優しそうな瞳の奥にはまだ少し悲壮感が潜んでいる。なので「今日は休日だからゆっくり療養すればいいよ」と語りかけてみた。
「発動したのでもう直ぐに出立ですよね、辛いけどやっぱり私はお供したいと思います。ここで甘えたらダメなのです」
「流石に今回は無理することはない、やっと笑顔が出来るようになったのだから」
王族であるフローレンスは戦場に赴く義務はないが、一緒の時間をより多く得たいと考え補佐役を志願した手前、断ることは悪手だと無理して判断したのだろう。数時間前までボロボロに泣き崩れていたことを思うと、強気のアーレでも優しい言葉をかけるのが精一杯だ。
「いいえ、凄く不安ですけど行かなければならないのです」
ベッドから降りるとゆっくりとした歩調で近づき決意を秘めた目を向け、徐にアーレイの胸の辺りに頭を置いた。行くと言葉にしたものの心の中では不安に埋め尽くされ、葛藤を繰り返していると丸わかりだ。
昨晩みたいに、抱きしめてください・・。
君のことを抱きしめてあげたいけど・・。
不安で押し潰されそうなフローレンスは心の中で抱擁を求めていた。しかし抱きしめてしまえば友人と恋人の間の関係に昇華してしまうと、それがわからないアーレイではない。彼もまた心の中で葛藤を繰り返すけど・・。
「あっ・・」
自分を奮い立たせ不安と戦う姿が見え隠れするフローレンスの事を、守ってあげたいという気持ちが湧き上がり、駄目だと分かっていても、今日だけだよと断りを入れつつ彼女を抱きしめた。
「うふふ落ち着きますね、早く私を恋人にしてくださいもう抱きあう仲ですよ(嬉」
「今日は親友の体で君の心のケアをしているんだよ(棒」
「もう往生際が悪いです。乙女をこんなに弄んで!もっとギュッとお願いします」
実は精霊の加護を持つ者同士は惹かれ合うのは当然なので、言われるがまま強く抱きしめれば必然的に心の距離は接近してしまう。
心ときめく感覚は久しぶりだな、もうと終わったと思っていたが・・。
恋愛対象としてできる限り意識しないようにしていたが、心を許した事でアーレイの中に特別な感情が生まれつつあったとは当然言えません。
「嗚呼、苦しくて切ない気持ちは小説の世界だけと思ってましたが、いま凄く実感しています」
「フローレンス、僕は無責任な事をしたくないんだ」
トクントクンと高鳴る鼓動を互いが知れば、フローレンスは一歩進んだと想い、アーレイは初々しいうなじを見てその若さに気がつき我に返っていた。
「わかっています。それでも構わないのです。けどもう暫定恋人ですよ」
「政治家みたいな言い方ですねー(棒」
「もう!この状況を陛下に見られたら泣いて喜びます!」
「よし、窓から投げ捨てよう!」
「えええー、こんなに可愛くて華奢でスタイル抜群の姫を投げ捨てると?」
言葉遊びに勤しむフローレンスはもうすっかり立ち直ったらしく、笑顔が戻っていた。アーレイに向ける真差しは吸い込まれそうなくらいキラキラと輝き、否が応でもこの先の関係を望んでいるのが分かってしまう。
「あのな君も斜め上すぎやしないか?」
「ねえ、何でアーレイ様をこんなに好きになったのかな」
「一緒にいて苦にならないとか性格が合うんじゃないのかな、冷静で行動的、頑張り屋、だけど僕の前じゃ甘えん坊の泣き虫だけど情熱的だよね」
「貴方と一緒にいると素の自分が出てくるのは確かです。けど面と向かって言われるとものすごく恥ずいよ(恥」
抱き締め合えば作戦の事が脳裏から離れ、恋バナではないけど心情的に2人の関係性の話に流れてしまうのは当然だろう。自分の心の位置を再認識したフローレンスは心情を語り、無碍に出来ないアーレイは自ずと寄り添うような答えを出してしまう。
「自分と向き合って気持ちを吐露する潔さというか、そのさっぱりしたところは好きだよ」
「えっ・・いま、いま好きって言いましたよね!ね!」
「だって以前から好みだって言ってるじゃない、けど訳ありだからと説明したぞ」
「ッン、ンン」
不安を解消するための抱擁は言葉遊びからその意義が変わり、認めて貰ってはないけど擬似的に愛し合っていると脳が勝手に判断していた。そもそももっと先の関係を持ちたいと願っていたので飛び出た好きの言葉がトリガーになり、火傷をしているかの如く身体に熱がこもり始める。もちろんその熱量は密着しているので直に伝わってしまう・・。
「ど、ど、どうしたフローレンス(汗」
「ああもうダメ、クラクラしてきちゃった、いま胸のあたりがゾワゾワしていますの」
「こ、こら欲情するな、早く我に返ってくれ(大汗」
「ねえアーレイ様、なんだか下半身がキュンキュンし始めたの・・」
恋愛小説を読み胸の内が苦しくなったり、ときめくことはあれど、めくるめく快感を呼び込む感覚を味わうのは初体験だ。幸せホルモンが多量に分泌されたことで頭はジンジン痺れ、同時に下半身に熱が籠り着々と迎える準備が整ってしまう。
「フ、フローレンス!目が!目がー」
「なぁにアーレイさま・・・あのね愛おしくて仕方ないの(蕩」
色気が増したなんて表現では追いつかないほど、見上げる眼差しはトロンと蕩はじめ、甘く優しいスローな語り調でゆっくりと迫ってくる。元々美顔なのでその破壊力は絶大だし、はだけた患者着から覗く双丘は既に薄いピンク色に染まり上がっていた。
「美人に詰め寄られるって男冥利に尽きるわ〜普通の男ならメロメロになること間違いないわ」
「ねえ、そう思うならキスしてよアーレイ」
他人事のように話し敬遠したつもりでも、アイシャ直伝の鈍感力は健在だ。チャンスと捉えたフローレンスはぷっくりとした唇に変化させアーレイを誘い、もう逃さないわよと背中に回っていた腕が知らぬ間に頬の下に伸びて来る。静かに引き寄せ、瞼が閉じればもう後戻りは出来ないだろう・・。
コンコン。
「アーレイ様いますかー、おはポコです緊急事態ナノー」
互いの唇があと僅か数センチの距離まで近づき、後戻りが許されない状況の中、扉をノックする音と元気なポコの声が響く。雰囲気に推され気味だったアーレイはほっと胸を撫で下ろし、邪魔が入ったことで頬を膨らませたフローレンスは「もう」と言いながら離れてくれた。
「緊急事態ということは船のトラブルでしょう。なる早でアーレイ様が対応した方がよろしいかと」
甘いひと時を強制的に断ち切られたものの愚痴の一つ溢さず、そそくさと軍服に袖を通し始め、既に補佐官の顔に戻っていた。なのでアーレイは「流石王族のフローレンスは変わり身が早い」と突っ込みを入れる・・。
「もう!続きは戻ってからにします。次はちゃんとキスしてくださいね!」
抱きしめられた事で心の距離が近くなり、昨日より親密になったと実感したのか恋人の様な言い様だ。弾みが付いた言動を聞いたアーレイはやっぱりこうなるよねと頭を抱える。
「キスするのは決定事項かよ、俺の意見は無視かよ」
「まぁ当然の流れですね、それより私は隠れた方がいいですか?」
「いや、犬族には匂いでバレるぞ」
「流石無駄に犬!略して駄犬!」
「こら!」
人の話は聞かないし、洒落にならん冗談を笑いながら語るフローレンスは席に着くなり、背筋を伸ばし凜とした表情に変わる。
「匂いを消すなこれしか無いよね」
証拠隠滅の為か徐に香水の小瓶を取り出すと、指に滴らせ首筋に滑らしていた。
「あれれフローレンス少佐がいるナノ、香水が臭いナノ」
「そりゃ招集したからね補佐官が来るのは当たり前だろ、それで要件とは」
部屋に入ると先に来ていたことを疑問に思い、鼻をヒクヒクとさせ匂いで状況分析をしようとするが香水が、邪魔をしたらしくムッとした表情を一瞬見せた。
「出発準備していたら熾烈の船体に異常振動が出たナノ」
話を聞くとスクランブル対応の乗務員が先に入り不具合を見つけ、報告を聞いたポコは乗船せずに本部へと向かい問い合わせをする。マドックは「熾烈は元々振動が多く今回はデコイの影響だろう、出撃は問題無い筈だ」と判断してくれたが、不安になりアーレイに直接会いに来たらしい。
「熾烈は元々振動がでていたし、気にするな」
「ごめんなさい、ポコの乗り方が荒いせいかも」
大丈夫と言われても戦艦の調子を悪くしたのは自分だと考え、律儀に謝罪をするために訪れたらしい。忠実な奴だなと思いはするが、とりま早く持ち場に戻って欲しいので「技研が大丈夫と言うなら問題ない、頑張れよ」と言いながら肩をポンポンと軽く叩いた。
「分かったナノ頑張るナノ、けどやっぱり何か変ナノ」
「私たちもそろそろ暴虐に向かいましょう」
野生の勘が鋭いポコは疑念を払拭できないのか鼻をヒクヒクと動かしフローレンスをジッと見るが、全く動じずに笑みを溢され、その余裕の表情は既に私のものですよと言わんばかりだ。
「それじゃポコ、ヒャンドで落ち合おう」
「仕方ないナーノ」
問い詰めたい気持ちが表情に表れたが、時間的に熾烈の方が上がるのに時間がかかるし、やんわりと命令され諦めたポコは後ろ髪を引かれる思いを残し部屋を後にする。
「匂いで分かるのですね、けど冷静に考えたら昨晩の私は駄目な子ですね」
「あの状態なら一緒に居ないと耐えられなかっただろ、こらこらくっつくなよ(汗」
反省の弁を述べながらしれっと腕に絡みつき、グイッと双丘を押し付けニッコリと微笑む。なんともいえない柔らかな弾力に悪い気はしないアーレイだったが、以前より推しが強くなったのは頂けない。心の中で思わず女狐にしてやられたと思うしかなかった。
「気を遣っていただいてありがとうございます。もう暫定恋人ですからまた甘えに行きますね♡」
「昨日は特別だったんです!駄目!絶対」
「ご飯作りに行きますねー(笑」
「全然話聞いてねーよ、アイシャ級だー!」
「そりゃもちろん親子ですから~、雑音戯言の類は聞こえませーん」
困るアーレイの事などお構いなしの姫様はギュッと抱きつき爛々と目を輝かせると、言いたい事だけ言い切ると踵を返し颯爽と部屋を後にした。
>
「既に情人の雰囲気が漂ってますね(喜」
「こらこら、どこでそんな難しい言葉を覚えたんだ」
「高性能Aiですから〜(ドヤ」
「あーね(呆」
>
開口一番「押し倒すのは次ですね(喜」などと毒を吐いたら速攻でリセットすつもりだったが、嬉々として飛び回る言葉選びが上手になったフェを見て、なんで俺の周りはこうも碌でも無い奴ばかりが集まるのだと思わずには居られなかった・・・。
よろしければブクマ、感想お願いします。




