親睦と疑心。
ルドルフと親交が深まります。
<<ホテルデルタ内・バー>>
陛下との会食は恙なく終わりを迎え、ルドルフをホテルに送り届けたのだけれど、別れ際に目を合わせた2人はまだ語り尽くしてないと同時に考えたのだろう。引き込まれる様にバーへと入りグラスを傾けていた・・。
「監視役を帰してもいいのか、俺は敵国の人間だぞ」
監視役を下がらせた事に驚くとアーレイは笑いながら「無粋なこと言うなよ旅人と大して変わらん」と言い放ち聞く耳を持たない。まぁルドルフは真面目だと知っているし、そもそも本音で語りたいのでそうしたのだ。
彼の意図する事は何だろう・・。
命を救ってくれた事には感謝しているし、懇意にしてくれるのは正直嬉しいのだけれど、アーレイの意図が見えないルドルフは少し難しい顔をする。捕虜交換をスムーズに進めるためだとは理解できるが、必要以上に仲良くなる理由が見当たらなかった。
「そう悩むなよ、気が合う奴と話したいだけで敵味方は関係ない」
酒の席で懐柔しても真面目なルドルフが早々に寝返るとは思ってもいない。なので不粋な裏口作りなどはせず、他愛のない話で親睦を深めるつもりだ。しかし投げかけられた言葉が余りにも斜め上を行ったせいか、暫し沈黙が訪れてしまう。
「・・・」
沈黙は時間にして数分だろうか、終止符を打つようにカランと氷が鳴り、徐に琥珀色の液体をコクコクと流し込んだルドルフは、焼けるような感覚が喉から湧き上がり、それを勢いに剣呑な眼差しをアーレイに向ける。
「陛下が仰った事には何か意味があるのか、急な申し出でどうしようか迷っている」
会食が終わりに近づいた頃、ジェフは手土産が必要だろうと捕虜50名を、それも無条件で開放しても良いと述べる。突然の計らいに面喰らったルドルフは驚き「持ち帰り協議します」と断るものの、明日には結論を出さなければならず、今の雰囲気ならと思ったのか愚直に聞いて来た。
「陛下に他意は無い、素直に受け取ればいいだけだ」
「悪い話ではないと信じていいのか」
そもそも囚われているデルタ軍の捕虜の数が少なく、ざっくり計算して50名も返せば交換条件に合致する。この話しはアーレイが「マスコミに情報が漏洩する前に、電撃帰還させた方が内政に貢献する」と進言した結果だった。
まぁ俺の狙いはそこじゃないけどな。
支持率が落ちたセオドールは捕虜を帰還させることで支持率が上がると考え、織り込み済みのアーレイは、ポンコツ士官の非道な行いを特ダネとして流す事で、その効果を打ち消し政治不安を加速させようと考えていた。勿論そんな秘策をルドルフには打ち明けないのが普通なのだが・・。
「遅くても早くても結局セオドールは追い込まれるぞ(笑」
「なん・だと」
驚くルドルフを無視してアーレイは「腹のさぐりあいは嫌いだから俺の考えを教える」と言い出し、早ければ秘策が炸裂して地獄、遅ければ無能と焚きつけ支持率は下がると明言した。
「悔しいが君の悪巧みと予想は的を得てるよ、しかしなんだか腹立たしいわ」
言われてみればそうだよな、としか言えないルドルフは相変わらずの強かさに舌を巻き、怒りと言うより呆れていた。まぁフレンドリーな雰囲気がそうさせるのだろうけど、宿敵と思うと何とも言えない不思議な感覚が身を包む。
「尻に火がつくが早いほうが火傷は少ないだろうよ、今回は何もしないと約束するから連れて帰ってくれ」
「それは貸しという事か、借りてばっかだな、だがどうして攻め立てない」
ふと困った表情を見たアーレイは作戦を実行すれば、失態を招いたとしてルドルフは責任を取らされ次回参加できないと考え、言われた本人は拍子抜けして鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしていた。
「ご乱心して君が来れなくなる方が痛手だからな(笑」
「クッ、それは買い被りすぎだぞ」
独裁者の性格を見抜いた上での言いようを理解したのか、謙遜しつつルドルフは厳しい目つきに変わる。笑っていたアーレイはそれに呼吸するように静かに眼光が鋭くなり、異変を感じ訳を聞くと淡々と暗殺の事を語り始め、目を合わせはしないが横顔から沸々と湧きあがる怒りを感じとり、セオドールは余計なことをしたもんだと頭を抱えた。
「解放前に王女の首に賞金とは恐れ入るよ、彼はやはり傲慢だな」
「俺に出来ることはあるか」
敵とはいえ曲がりなりにも借りを返したいのだろう。しかし首を横に振るアーレイは「デルタの犬呼ばわりされて確実に君の立場が危うくなる」と言い切り「独裁者は取り下げる事はない。元の原因は俺だから尚更だ」と付け加える。
「俺も彼女が殺されるのは嫌だな」
「じゃ応援してくれ」
「はは、そうするよ」
敵同士ながら今宵はいがみ合う事なく、忌憚ない意見を交わしながら親睦を深めるのだった。
ーー
<<翌朝・レティシア捕虜収容所>>
「ジェフ陛下より恩赦が与えられ、今回特別に50名を先行して帰還することになった。公平を期するためくじ引きで決める」
翌朝、広場の演台に立つルドルフは内心連れて帰る事が嬉しくて仕方ない。だが選抜しなければならず、ワーワーと歓喜の声が響く中、厳しい表情のままだ。
「自分は最後まで見届ける義務があります」
統括責任者としてバグナーはクジを引く事を辞退すると、何名か賛同する奴が出て来て、持病持ちや若い奴を優先してくれと言い放つ。一部始終その行いを黙って見ていたルドルフは胸が熱くなったのか、握りしめている拳が少し震えていた。
<<20分後・・>>
「ルドルフ准将、持病を持つ3人を除く47人が決まりました」
「承知した。直ぐにここを離れる。各自荷物をまとめシャトルに乗船するように」
選ばれた50名に命令が降るとそそくさとその場を離れ宿舎へと入り、稼いだ金で買った酒や身の回りの物を手に取る。1年にも満たない捕虜生活とは言え、手に入れた品々に思い入れがあるのか一品一品確かめるようにバッグに収めていた。
「農作業も悪くなかったし、ちゃんと接してくれたアーレイ少佐に感謝しないとな」
「・・・」
何名かは荷物を詰め込みながら口々にアーレイの評価を並べていたが、中には同意出来ないらしく口を尖らせたまま黙々と手を動かしている奴もいる。とはいえ帰れるとなれば嬉しいのか、表立って恨み節を口にすることはない。
「さあディスティアに帰ろう」
「皆に悪いからニヤニヤするなよ」
荷物をまとめたバッグを軽快に肩に掛け、ニヤケ顔を引き締めながら部屋を見渡し、もうここには2度と戻って来ることはないだろうと思いつつ扉を開け、軽快な足取りで広場へと向かってゆく。
ーー
<<惑星デルタタリア周回軌道上・ディスティア探査艦スターゲイザー>>
「艦長、ルドルフ准将が間も無く到着するそうです」
「ゲッ、暴虐と業火が現れたぞ、くれぐれも探査レーダーを発砲するなよ」
丁度デルタのジャンプ阻害エリアにベクスターが到着したのだろう。隠れて警戒任務を行なっていた暴虐と業火が惑星の影から姿を表す。悪い事は何ひとつせず大人しく待っていたのだが、悪名高い戦艦が顔を出せば艦橋内に緊張感が走るのは致し方無い。
Ai「警告、艦後方にデルタ船籍フォウルスター出現」
ピリピリとした雰囲気が流れる中、敵国のど真ん中にいる艦長は不安に駆られ一刻も早く帰りたいのか、艦船識別モニターや艦外モニターを落ち着きなく交互に見ていると、突然Aiが警告を鳴らし赤い文字が映し出された。
「やっぱり張り付いていたか、もしかしたらデルタの方が上かもな・・」
帰還者とルドルフ一行を収容さえすればとっととディスティアに戻るだけなので、警戒中の探査艦フォウルスターは姿を現したのだろう。しかし近距離センサーが全く反応しなかったのがショックなのか、艦長は眉を片方吊り上げ、恨めしそうにモニターに写る艦影を眺めていた。少し経つとベクスターと帰還者を乗せたシャトルのアイコンが表示される。
<こちらベクスター、あと数分で着陸体制に入るナノ>
「こちら探査艦スターゲイザー、ベクスターは誘導灯に従い着艦せよ」
<<スターゲイザー・後部格納庫>>
後部格納庫の大きな開口部が開くと、点にしか見えなかったベクスターがあっという間に大きくなり、底面を見せればクイっと曲がったベクターノズルとスラスターを全開にして滑らかに減速を終え、横斜め45度に機体を傾け後部格納庫へと吸い込まれるように入ってくる。
「無茶苦茶パイロットの腕がいい、良すぎるわ(呆」
進入してきたベクスターは横2列で整列して待つ出迎えに対し、機首を向けたまま着艦を決める。通常なら横向きで構わないが、帰還者と向き合う形で整列させるのでそうしたのだろう。それにしても初めて入った狭い格納庫内を器用に向きを変えるポコの腕前に皆が驚いていた。
「滑らかな流線型が美しい機体だな・・」
真っ白な流線型の機体には4枚の長い可変翼、複雑な形の尾翼が備わっており、それはまさに芸術品と言っても過言では無い。アーレイが拘りを持って作り上げたベクスターは、誰が見てもカッコいいと感じるのは星団共通らしく、皆ポカンと口を開け食い入るように眺めていた。
「ルドルフ准将に敬礼!」
続いて入ってきたシャトルから降りてきた帰還者が整列すると、悠然とした態度のルドルフがベクスターから降りてくる。出迎えた乗組員の一糸乱れぬ敬礼はお帰りなさいと言っているみたいだ。
「アッ、奴は・・」
後に続くデルタの制服が目に入ると、どよめきこそ起きはしないが、すっとんきょんな声が響き渡り皆の視線を一気に集める。
「デルタ軍アーレイ少佐に敬礼!」
「うわぁマジかやっぱアーレイじゃないか」
「今回の交渉役はあいつだったんだ」
カンカンとタラップを鳴らし颯爽と降りてきたアーレイは、戯言などなど気にする事なく平然とルドルフの隣に立ち、眼光鋭く返礼を返す。少し遅れて反応したのが面白いのか、口角が上がりその姿はどう見ても悪戯っ子みたいだ。ちなみにフローレンスは暗殺命令が出たので急遽参加をとりやめていた。
「アーレイ少佐ありがとう、短い間だが君と会えて本当に良かった。また来るからその時も頼む」
「勿論だ次回も頼むぞ、また会おう」
引き渡しの確認のために降りてきたアーレイは軽く帰還者達を一瞥した後、がっちりと握手を交わし再会の約束をすると、颯爽と踵を返しベクスターに乗り込んでゆく。
またなアーレイ、次回も楽しみにしているよ。
帰還者の乗せていたシャトルが重低音を響かせ次々に発艦していく中、ベクスターはキーンと戦闘機特有の甲高いエンジン音を響かせ、漆黒の海へと消えていく。少し寂しさを感じたルドルフはジッと見つめていたが、去り行く小さな点が急に進路を変えた。
「あはは、アーレイらしいや・・」
じゃあなと言わんばかりにベクスターは超高速で後部格納庫脇をすり抜けていく・・。
ーー
<<ディスティア帝国・総統府>>
「セオドール閣下、只今戻りました」
デルタを出発したスターゲイザーは中立地域にて戦艦と合流することなくジャンプ阻害地域を抜けると、一直線にディスティアへと向かう。ルドルフは総統府に出向き、帰還者はメディカルチェックを受けるため病院に送られていた。
「ご苦労だったなルドルフ、無事50名を連れ帰た事を感謝する」
先に電文で50名の捕虜を連れて帰ると報告をしたのがよほど嬉しいのか、挨拶早々労いの言葉を掛けてくる。だが真面目なルドルフは自分の手柄ではなく、ジェフの心遣いだと正直に話す。
「なんだと、小賢しい事を」
ピクンと眉が吊り上がったセオドールは不機嫌な顔をしたまま、口を横一文字に結んでしまう。
秘書「ルドルフ准将が連れ帰った人数は、デルタの捕虜の返すのには十分過ぎます」
押し黙って数分後、なんとも言い難い嫌な雰囲気が流れ、それを打破しようと秘書が条件と照らし合わせた結果を進言してしまう。
秘書だもの、しかたないじゃん仕事だし。
事務連絡とはいえ不機嫌な今は明らかに逆効果と思うが、これしか言いようが無かったのだろう。じろりと強面のルドルフに睨まれた秘書は、目線を合わせず見えない振りをする。
ルドルフ 「閣下、賠償金の準備出来次第、下士官を帰還させたいのですが宜しいでしょうか」
話しを進めない事には始まらないと思い勇気を放り絞り進言するも、総統の機嫌が治ることはない。何故なら戻ってきた捕虜の数が上回っているのが癪に障るのだ。だが真剣な目で見詰められれば応えるしかなく、閉じていた口が開き「ああ」と唸るように呟いた。
「予算成立したばかりで賠償金の準備に時間がかかる、悪いが少し待ってってくれ」
「戦費が嵩むのは理解しますが、何故そんなに無いのですか」
大きな出費として轟沈した旗艦の建造費、大破したラインハルトの修理費用などが挙げられるが、その程度の予算で苦しむようなディスティアでは無い。内情を知るルドルフは困惑した表情をすると、答えを求めセオドールをジッと見詰める。
「詳しくは言えないが次の作戦で金が必要なのだ。まぁカルネに戦艦を売り付けて費用を捻出する」
「もしかして数ヶ月前に配備した問題だらけのアダマン級ですか」
定期的に戦艦の入れ替えを行うのはデルタも同じで、ディスティアは数ヶ月前、20隻の新造艦を配備したものの業火級対策の為、直前に交換した新型ジャンプジェネレーターと新型メインエンジンの炉に不具合が頻発してしまう。改善するにも船体を割って全交換するしか無く、費用もさることながら修理ドックが埋まっている現状では、新造した方が手っ取り早いと考えたらしい。
「あのシリーズはもうだめだ、全部処分する。農業で儲けているし1200億は取れるだろう」
「新艦建造費の10分の1ですか(呆」
「改装に金が掛かるからアイツらといえども無理は言えん。だがこれで士官も一緒に連れて帰れるだろう」
戦艦をカルネに売り払う事で賠償金問題が無くなり、士官も纏めて帰れると考えたのかセオドールは満更でも無い顔をする。
「閣下、デルタが提出した提案書を見てください」
そしてこのタイミングでアーレイの悪戯じみた策が炸裂するとは思いもよらなかっただろう。差し出されたタブレットには星団会議の素案が記され、表題を見れば血圧が急上昇する事は間違いなしだ。
<星団法における捕虜の取り扱いに関しての再確認、並びに人種差別根絶についての提案>
何処の国とは名指しこそしていないものの、冒頭「全ての捕虜は現場責任者の命令には絶対従わなければならない。当然士官は見本を示すべきだ」と記載され、例文としてレティシアで起きた騒動の一幕が詳細に記述してあった。要するにディスティア士官の駄目出しだ。
「誰の提案だ、まさかアーレイじゃないよな」
「はい、デルタ軍クリス大佐提出と記載されています」
奴の策だと一瞬で分かったルドルフは必死になって笑いを堪え、プルプルと震えているが真顔でも脅迫しているような強面なので、怒りを体現していると見えなくも無い。だが不審に感じたセオドールは不機嫌な顔をしつつ疑いに満ちた濁った眼差しを向けた。
「んっクリスだと、アーレイが担当だったよなルドルフよ」
疑いの目を向けたものの秘密裏に進めていた暗殺は失敗に終わり、ルドルフは味方に撃たれ重傷を負い散々な目に遭っている。流石に将校を前にして批判する事は憚られ、セオドールは怪訝な目で睨むだけにした。
「はい、確かにそうですが(汗」
実は会食に伺う際、事務方には取り調べだと嘘をついていたので、口が裂けても会っていたなどとは到底言えない。冷や汗を掻きそうなのを必死に堪えつつ、ジッとセオドールを見詰める。その真剣な表情が功を奏したのか「本当にアイツはロクな事しない、マジで死んでほしいよな」と言い放ち目線を逸らされた。
「総統は何故王女の暗殺命令を出したのですか、あれは逆効果だと考えます」
「ふん、アーレイにダメージを与えられるなら殺しても構わない、美人なら尚更だろ」
単にアーレイと共に行動している理由だけで、暗殺対象とする狂犬的考えは流石に引いてしまい、ルドルフを含め全員が何とも言い難い表情に変わる。当然場の雰囲気が悪くなり始めたが、独裁者は気にすることなくフンと鼻を鳴らし顎を突き出す。
「何か言いたそうだな、チャンスがあるなら始末して来いよ、さぁ終わりだ終わりだ」
あくまでも自分の失敗を認めたくないセオドールは、追い払うように手をヒラヒラとさせ、将校たちを退出させた。扉が閉まると同時に超絶不機嫌な顔のまま執事に向かって「諜報部に繋げ」と言い放ち、椅子に座ると足を机に放り乗せモニターを斜めに見る。
<<数分後・・>>
「閣下、どのようなご用件でしょうか(汗」
ディスティア諜報部のロゴが画面に現れ次に姿を現したのは、一度見ただけでは忘れてしまいそうな諜報部特有の顔立ちと眠たい目を持つおっさんだ。突然の呼び出しに急いで対応したのか額には汗が浮かび上がりラテでも飲んでいたのだろう、口髭に白い泡が付着していた。
「ルドルフを監視しろ、それと次の交渉にも影を紛れ込ませ、引き続きアーレイを狙え」
事務方の報告書を読んでいたセオドールは背筋を伸ばし誠実に対応する姿を一瞥することなく、横向きのまま命令を下し最後にじろりと睨む。この態度を見れば性格の悪い独裁者だと誰でも思うだろうが、常日頃からそのような態度なので気にする事はないがしかし・・。
<畏まりました。しかし閣下、ルドルフが裏切るとお考えですか>
流石に士官であるルドルフ監視の命を受け驚き、瞑っているように見える目が見開き、鋭い視線で次の言葉を待っている。
「事務方が直接50名開放の話を聞いていない、間違いなくアーレイと個別に会ったのだろう」
「それでしたら24時間の監視体制を敷くと致しましょう」
事務方の報告に目を通した際に「ルドルフから聞いた」との一文だけで、アーレイと個別に会ったと判断するその洞察力は中々のものだ。まぁ真面目だからこそ正面で向き合った結果なのだが、猜疑心が強いセオドールは裏切るのではないかと疑い始めてしまう。
「聞かれたくない話だヘルムートを出頭させよ、戦の準備と伝えろ」
諜報部に指示を出すと、次に艦隊司令官のヘルムートを呼び出し何やらきな臭いことを言い出す。間違いなく交渉中のアーレイが不在の時を狙い戦いを仕掛けるつもりだ。
<<5分後・・>>
「お呼びでしょうかセオドール閣下、相手はデルタですよね」
呼び出されたヘルムートは戦と聞き、凄くやる気を出し生き生きとした表情だ。それを見たセオドールはニンマリとしながら机から足を下ろし、大型モニターに惑星ヒャンドの恒星圏内の地図を映し出し指差す。
「アーレイが交渉中にヒャンド防衛線を叩く!」
ヒャンド防衛線はディスティアが星団側を侵攻する際はどうしても通過しなけばならず、遠回りをすれば挟み撃ちにされ、最悪手薄になった本星を攻撃される恐れがある。なので是が非でもアーレイが出撃しない間に攻め落としたいのだ。
ヘルムート:第9艦隊さえ出てこなければ勝機はある筈だ。それに・・。
業火級に痛い目に合わされているディスティアとしては、忌々しい戦艦が増える前に決着を付けなければ侵攻自体が夢物語に終わる。そう遠く無い未来を予想しているヘルムートは俄然やる気を出していた。
「ヒャンドのデルタ即応部隊は整備の為数を減らしているので、またと無いチャンスと考えます」
「出来る限り戦力を削ぐことを第一の目標にするんだ」
運が良い事にデルタヒャンド防衛艦隊は整備のため普段より数を減らし、数十年に一度のまたと無いチャンスが訪れていた。数百年もの間、攻略出来なかったヒャンド攻略に道筋が見えたセオドールとヘルムートは自信に溢れた表情をするのだった。
ーー
<<数時間後・カルネ共和国参謀本部>>
「ジャクリーヌ様、ディスティアが新型戦艦を売ってくれるとお聞きしましたが、本当でしょうか」
配備したての新型戦艦を作り過ぎた為安く払い下げると連絡が入り、いままで旧旧艦しか与えられていなかった本部は色めき立っていた。だが内通者によって齎された情報を知るジャクリーヌは怪訝な表情に変わる。
「あれは欠陥品で、最新装備は無いし改装するにも金がかかるの」
「そうでしたか、ですが主砲が745ミリですので少しはましになるかもしれません」
カルネ軍の主力戦艦はあの自爆攻撃で使用したものより更に古く、主砲の素粒子砲は600m台と貧弱だ。しかし司令官の虎族の男は今の戦艦よりはまともだと言って喜んでいる。ジャクリーヌはムスッとした表情のまま、押し売りされる戦艦のスペック表を示しながら問題だらけのジャンプユニットを指さした。
「ああもう、まともにジャンプ出来ないポンコツ戦艦など本星防衛隊にしか使えないのよ(オコ」
恒星圏内での防衛任務しか使えず、ジャンプ出来ない戦艦なんてはっきり言って的と変わらない。激オコジャクリーヌの頭からは湯気が出そうだ。
司令官:あの方の支援が必要だ。
改修しようにもディスティアが匙を投げたユニットなどカルネの技術者ではどうにもならない。解決策を考えていた司令官は何か閃いたのかジャクリーヌに目線を合わせ「彼ならば」と小さな声で呟く。勿論盗聴をされている事を想定しているので声を大にして言えないのだ。
ジャクリーヌ:うふふ、ブラッド様に会えるチャンスだわ♡
ポンコツ戦艦の事を知ったアーレイは必ずイタズラ級の悪巧みを考え実行するためカルネに来るだろう。ブラッドを待ち焦がれるジャクリーヌは近い将来再会できると妄想したのか、目にはハートマークが現れるのだった・・。
宜しければブクマ評価お願いします。




