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プロポーズは姫様から。

騒乱後とフローレンス主体の話です

 <<デルタ王宮・ジェフの私室>>


「陛下、ただいま戻りました」

「クリスから聞いたぞ危なかったらしいじゃ無いか、どういう事だアーレイ」


 デルタに戻ったアーレイは謁見室へと向かうと執事から人払いをすると言われ、私室へと場所を移し挨拶もそこそこにジェフに問い詰められていた。クーンで巻き起こった騒動は死傷者こそ出なかったが、由々しき事態と判断されたので当然の結果だろう。一緒に戻って来たルドルフは駐機場に足を付けた時点で諜報部に呼ばれ、事務方と共に事情を聴かれている最中だ。


「陛下、その件につきましては私の浅はかな行動が原因ですので、お気遣いは不要です」


 クーンの時とは打って変わってアーレイの評価が下がらないようにと、自身の未熟さが招いたと語るフローレンスは使い分けが非常に上手だ。次女がそつないのはどこの世界でも同じらしい・・。


「結論から言えば確かにそうだが・・」「指示に従わなかったのが原因なので私にも責任があります」


 謁見前にクーンの映像を確認していたジェフはアーレイに苦言を言い放ち、戦地に向かわせないようにしようと考えていた。しかし責任の所在は自分にもあると断言され、どうやって覆そうかと思案していると、今は居ないアイシャの顔が目に浮かび意気消沈してしまう。


「もうよいフローレンス、だがアイシャが公務に忙殺されているので、義務を果たしなさい」


 第1王女のコーネリアが数年前に嫁いだ今、公務に参加できる子息子女はフローレンスだけで、アーレイと共に出来るだけ行動させたいと考えているアイシャが代理を務めている。手立てが思い当たらないジェフは牽制の意味を込めて義務を課す。


「承知しました」


 公務の大半を免除されていることを承知しているフローレンスは流石に拒否する訳にもいかず、この発言以降、士官と王女の掛け持ちになり超多忙な毎日を送る事になってしまう。


 ジェフ:アーレイ頼むよ、早く娶って安心させてくれよ。

 アーレイ:ジェフの気持ちは分かるが、俺にも都合ってもんがあるんだよ。


 言葉には出さず目線で語り合う2人の交差する想いを解決するには、アーレイが決断するしか無い。だが地球に残した奥様(翔子)の顔が浮かび、裏切(浮気)りたく無いアーレイはどうしても前に進む気にはなれない。


 水の妖精:そろそろ出番だよね。

 火の妖精:アーレイは困ってるしね。


 心の中で葛藤を繰り返しているとフェアリーが嬉々とした表情で現れたので、とっとと話題を変える事にした。もうお分かりだと思うけどAiに妖精たちが割り込んで悪戯をしていた・・。


「陛下、閲覧不能の捕虜交換に関する情報を教えてください」


 帰りの機内でルドルフに「金額に関して当たりを付けて欲しい」と頼まれフェアリーを使い検索するも、ジェフ直轄の案件らしく情報が得られず直接聞いてみる事にした。


「極秘事項だがお前には見せよう」


 普段から施しを速攻で拒否するアーレイが珍しく教えを乞う顔をすると、ジェフは余程嬉しいのか口角が上がり交渉に使った資料や、条件に関する取り決めが明記されている極秘文章などを気軽に送って来た。


 主力戦艦の乗務員が基準となっているのか・・。


 簡単に説明すると標準型戦艦の乗組員を1とすると、旗艦の場合1.2倍、逆に輸送艦や駆逐艦などは0.8や0.75といった具合に艦船毎に細かくランク分けされていた。もちろん将校や下士官にも係数が決められ、交換の際に釣り合いが取れない場合はそれに見合った金額を相談するらしい。


「金額設定も細かいのですね。とても参考になります」

「フォフォ、ルドルフに聞かれたんだろ。恒星圏内での拿捕だから吹っ掛けていいぞ(笑」


 久しぶりにマウントが取れたのが余程嬉しいのか、ジェフは髭を弄りながらドヤ顔を決めている。


「それでは失礼しまーす(笑」


 大人気ないと感じたフローレンスは生暖かい目で見ていたので、潮時だと思ったアーレイはお暇するために立ち上がると、肩をポンポンと叩き踵を返した。


「ゴラァアーレイちょっと待て!(笑」

「クスクス(笑」

「用事は済みましたが何か」

「今晩ルドルフを食事に招待する、お前も出席しろ!」

「絶対嫌です面倒くさいです」

「何だと、ルドルフ1人だと可哀そうだろう、ほれ勅命であるぞ!」

「えー、いつもの乱発かよ」

「だから!ちょ・く・め・い!」

「はーい、わかりましたよ陛下」

「フォフォ、今日は物分かりが良いではないか、美味いもの食わせるから楽しみにしてなさい」


 そしていつもの掛け合いが始まればジェフの口角が上がり、フローレンスはニコニコ笑顔に変わる。ルドルフとの会食の予定は執事に聞いていたのでアーレイは分かった上で遊んでいたが、クリスが同席していれば卒倒したに違いない・・・。


 ーー


 <<ホテルデルタ>>


 VIP専用とまで言われるホテルデルタはその名の通り超高級ホテルだ。広大な敷地を利用したエントランス、宿泊棟、会議棟はテロ対策を考え全て別棟の作りになっていて、許可がない者はエントランスにしか入れない。因みに一泊のお値段は一番下のクラスで2万(20万円)スカーと超高額だったりする。


 事務方「本当にこのような所に泊っても良いのでしょうか(汗」

 ルドルフ「アーレイが言った通り滅茶苦茶いい部屋だな(汗」


 取り調べを終えたルドルフ一行はアーレイが用意したホテルに連れて来られるものの、全員が一堂に泊まれる200平米を超える広さと豪華さにびびっていた。護衛がいなくなったので尚更そう感じるのだろう。


「この美術品は争わないというメッセージと考えても良いのでしょうか」

「まぁそういう事だろう、多分アーレイの入知恵だな」


 次に皆の目を引いたのは飾ってある高価な絵画や美術品の類なのだが、デルタとディスティアの有名な作品をきっちり同数用意してある。要はノーサイドとアーレイは表現したかったのだろう。理解したルドルフはニヤリと笑った。


 <<数分後・・>


「アーレイ少佐が面会を希望しています」

「問題ない、通してくれないか」


 謁見を終えたアーレイは頃合いを見計らい、事前協議をする為にルドルフの元を訪れた。帰国を明日に控え早めに事を進めるつもりだ。


「到着早々大変だったけど、取り調べは大したことなかっただろう」

「ああ撃たれたからな、事実確認だけで済んだよ」


 互いに知れた仲と言うか、ルドルフにしてみれば命の恩人なのでタメ口で話しても全く気にしてない様子だ。良い雰囲気と判断したアーレイは交渉人を呼び出し、そのまま捕虜交換に関する話を進めることにする。


 交渉人「恒星圏内での拿捕なので高額になりますが、そもそも騒動を起こしたことが金額に響いています」

 ルドルフ「問題を起こした連中の賠償金に関しては、そちらの要求を飲むしかないな」


 恒星圏内で拿捕されたとは言えそれほど難しい案件ではなかったが、フローレンスに乱暴を働いた士官、武器を持ち込みアーレイを撃った護衛らが問題で賠償金が跳ね上がっていた。


 交渉人「下士官に関しては一律で構いません」

 アーレイ「死者が出ているしそれが妥当だな」

 ルドルフ「すまないアーレイ少佐、情けなくて本当に腹が立つ」


 情けで士官に帯同していた下士官らはレティシアの連中と同じ扱いになり、通常より少し高い1人1000万スカーと決まる。悪事を働いた者たちは5倍以上の値が提示され1人あたり2億スカーと、超高額過ぎてルドルフは苦い顔をして頭を抱えてしまう。


「後はセオドール閣下が悩めばいいだけですので、もう忘れて今晩は会食を楽しんで下さい(笑」

「話は聞いているが本当にいいのか、俺は敵国の将校だぞ、重要だからもう一度聞くが本当にいいのか(汗」


 事前に聞いていたとは言え陛下と同席することが現実味を帯びて来ると、ルドルフは躊躇するような素振りを見せた。アーレイは「事務方が来ないなら俺が同席するよ、それならいいだろ」ともっともらしい事を言うと、気が休まったのか表情が緩んだ。


「嫌いな食べ物があるのであれば事前に教えて下さい」

「大丈夫だ、強いて言えば甘い物は嫌いではないが一口くらいしか駄目だ」


 ベクスターで一杯引っ掛けたので酒飲みと分かっていたが、甘い物も食べる食いしん坊らしい。好みが似ているアーレイは「酒呑みは星団共通なんだな」と言い放ち笑った。


「君も酒飲みだな、機内で頂いたのは美味かったよ」

「あはは、同志ですね」


 機内で出した酒の味わいを日本の蒸留酒に例えるなら辛口の軽めの飲み口で芳醇なイチローズモルトと表現するのが適切だろう。ルドルフは「芳香と後味が素晴らしい」と気に入ったらしく銘柄を聞いてきたので、教えつつ酒談義に花を咲かせていると、仕事モードのすまし顔でフェアリーがポコンと現れる。


 >

「フローレンス様から連絡が入りましたよ、お茶のお誘いですね」

「わかった、行くと返事してくれ」

「もう返信しました」

「読まれている・・・」

「当然(ドヤ」

 >


 交渉中だと知るフローレンスは直接通話ではなく、メッセージを送って来てくる辺りさすが王族だ。感心しつつ主人の断りもなく返信するAiは如何なものかと考えながら、アーレイは王宮に逆戻りすることになる。


 <<王宮内・客間>>


「顔色が悪いよ、会食までちゃんと休んだ方が良いよ」

「少し昼寝をしたので元気になりましたよ」


 王宮の玄関で別れた時より疲れた表情をするフローレンスはどちらかというと、身体的疲れとは違う精神的な疲労が表に出ていた。会食まで休憩を取ります、と話していた事を思い出したアーレイは中途半端な時間に呼び出されたことに疑問を感じ始める。


 「急を要する案件だよね、だから人払いをしたんでしょ」


 いつも生暖かい視線を送ってくれるグリゼルの姿が無い事に気が付き、余り知られたく無い内容だと見抜かれたフローレンスは思い詰めた表情に変わる。


「先ほど影からの報告がありまして、2人に暗殺命令が出たそうです」


 嫌な予感ほどよく当たるとはこの事だ。疲労困憊の原因はディスティアの影から齎された情報によるもので、明日から公務が多くなる彼女は常に狙われるリスクが高くなり、その事を憂いているのだろう。次にフローレンスは1通の報告書を見せてくれた。


 「賞金首とは恐れ入った。国が率先してやる事じゃないだろ(呆」


 報告書には軍事会社を使い、ディスティア政府が関与しないように偽装して各国の傭兵団や裏社会に対し、アーレイとフローレンスを殺害すれば賞金を支払うという内容が記されていた。事の発端は「アーレイの補佐がデルタの王女」との報告を受けたセオドールが、アーレイ憎しで指示を出したらしい。


「出来れば出たくないのですがそうも言ってられないので、護衛とシールドを増やして対応するしかありません」


 一応、星団法で国家元首に対し暗殺やテロなどで殺害した場合、惑星破壊ミサイルの使用許可が下りる決まりがあり、長らく争ってはいるものの今までこのような事態に陥る事は無かった。


 クッソ、子息子女は範囲外なんだ。


 悔しがる理由はセオドールは法の抜け穴を利用して指示を出したらしい。公務の予定が既に入っているフローレンスはそれを理由に欠席する訳にもいかずに悩んでいたのだ。


「それは大変だね、悪いね巻き込んでしまって」

「責任とってください!!」


 ジッと目力強くアーレイを見るフローレンス。言いたいことが何となくわかったアーレイは、他人事のように言葉を返すと、途端に頬を膨らませ腰に手を置き、決めなさいと態度で示し始め、そして・・。


「わかった、君の専属護衛になろう」

「その意味がわかりません。2人同時に狙われるだけです」

「そりゃそうだな」

「アーレイ様は死にませんけど。私は簡単に死んでしまいます」

「おーい、俺も一応人間だぞ〜」

「どーだか、だって不死でしょ不死は反則です!」

「ごめん、それに関しては何も言えない」

「ですよね!ですから責任とってください。簡単な事です。恋する病にかかっている私を開放してください!」


 理詰めで推してくるフローレンスは恋愛は不要と教育を受けている事もあり、順序をすっ飛ばしても一向に構わないメンタルの持ち主なので強気だ・・。


 奴は言わないが加護持ちが原因だろうな。


 初めてお茶して知り合いになり1年ちょっと、共に行動し始めて1ヵ月弱で自ら求婚するなど普通では考えられない。なりふり構わず突き進むのは勿論、精霊の加護も原因だったりする。


「その責任とやらは聞きたくないな~この展開先が見えるわーここから全力で逃げたいわ」


 席を立ち逃げる素振りを見せた途端、アーレイの傍にスッと移動して来たフローレンスは切羽詰まった顔をしたと思ったら、下から見上げウルウルとした甘える子犬ような目をして迫ってきた。


「もの凄く真剣なのですよ、私と結婚してください!」


 王女で美人でスタイル抜群で性格も良く、高位貴族ですら速攻で跪き右手を差し伸べるのが礼儀というものだろう。しかしアーレイはブレることは無い目をしてジッと見つめ返す。


「だが断る!」


 あろう事か勇気を振り絞ったフローレンスの告白を速攻で拒否した。しかし想定内なのかたじろう事なく凛とした表情をする。諦めるつもりは毛頭無いらしく「他に良い方法があるとでも思ってますの」と逆に詰め寄ってきた。


「だよね~選択肢これしかないもんね〜」

「そうでしょうそうでしょう。重要ですからもう一度言いましょうか」

「フローレンス何故そこまで頑張る」

「だって結婚したら私は公務を殆ど免除されます!」

「女性からプロポーズってありですか?」

「アリです!」

「全拒否します!」

「ひっどーい、乙女を弄んで捨てるなんて」

「弄んでも無いし捨ててないから」

「暗殺対象に巻き込みました!」

「おまゆう?」


 掛け合いがアーレイの一言でピタリと止まる。志願したのは彼女なので言い返す言葉に詰まったのだ。


「拒否されました!捨てたと同義語です!」


 時間にして2秒程だろうか、咄嗟に話しを巻き戻してきた。だがここでアーレイは折れる訳にはいかない。目と鼻の先まで近づいて来たフローレンスの肩に手を置き近すぎる間を離す。


「だからー、この前話した通り婚姻は無理なんだよ」

「大丈夫です、元の星に戻らなければ良いのです」

「こら!それはダメ」

「アーレイ様は無責任です」

「フローレンス、取り敢えず様子を見ないか?」

「酷い!時間を作ってその間に私が邪魔だから、(やまい)かなんかに見せかけて殺害してそして賞金ガッポですね」


 掛け合いの最中に現状ではアーレイは絶対認めないと判断したのか、話題を変える為に冗談を混ぜ込んでくる。だがこの転換点が彼女の運命を左右するなどこの時点で知る由もない・・。


「なあフローレンスいま病っていったよな、そうだ危なくなったら君を病気にしてしまえばいいのか」

「えぇぇ〜殺さないでよー。けど、好きな人に殺されるのもイイかな」

「いや勘違いしないで、狙われ続けて状況が最悪になった時の話さ」


 暗殺対象になってしまった以上、何かしらの対策をと、話をしながら考えていたアーレイは、追い詰められ逃げ場を失った際に難病で伏せて表舞台から消えるという提案をする。


「えーと、現在の医療じゃ治せないから、治せるまでコールドスリープで寝てるって事ですか」


 科学技術が進んでいるデルタであっても死は避けられないし、医療用カプセルで治療できない病気は存在する。現に医療技術が確立するまでコールドスリープで時を待つ延命処置は現存するが、肉体的劣化は避けられないのと高額な費用が仇となって余程の金持ちでは無いと使えないのが現状だ。


「あくまでも案だからね。その間に団統一が完了すれば狙われる事もなくなる。目覚めた時はもう安全って事さ」

「それ良い案ですが周りの時は進むのですよね、目覚めた時にもしアーレイ様が死んでいたら私はどうすれば良いの(悲」


 狙われている以上、指を咥えて待つのではなく対策を、二の手を考えるのは必然だが、もしコールドスリープを使いやり過ごすとしても目覚めの確約が無ければ不安にもなる。現実味を帯びた話は恐怖心を芽生えさせ、悲しい表情にさせてしまう。不安にさせた代償としてフローレンスの頬に手を置いたアーレイは、優しく微笑みながら最後に「俺は不死だ.。いつまでも待っている」の言葉を溢す。


「うん、アーレイありがとう♡」


 少しだけ、ほんの少しだけ受け入れてくれたと感じ、笑みで返すのだった・・。


 ーー


 <<デルタ王宮内・迎賓館>>


「陛下、本当に良いのですか私は敵国の将校ですよ」

「なにも気にするな。君は客人だぞ持て成すのが礼儀だ。敵味方は関係ない」

「ありがたいお言葉です」


 数百年ぶりにディスティアの士官が正式にデルタに訪れた事もあり、歓迎の意味をこめてルドルフとの会食は迎賓館で執り行われることになる。しかし捕虜交換が主な目的のためメディアには公開せず、招かれた客はアーレイとフローレンスだけで、こじんまりとした個室で行われることになった。


「さあこれで全員揃ったな、グラスを持ったか、それではより良き未来に向けて乾杯」


 乾杯を行い食事会がスタートすると、乾杯を終えたのにもかかわらず緊張しているルドルフの強面は緩くなることは無い。ちょっとだけ喉を湿らせたシャンパンを再度口に運ぶとゴクゴクと飲み干し、ふぅと小さな溜息をついた。


「彼のアペリティフは年代物のアレを」

「畏まりました」


 このままだと正面に鎮座する強面が緊張し続けると怒気が発生しそうな勢いなので、執事に頼み食前酒は極上の琥珀色の鎮静剤を投下して暖和しようと企む。広口のグラスに注がれたアレがスッと目の前に現れると、んんっと訝しげな表情をするが意味がわかったのかククっと一口で飲み干した。


「ほんと良く相手の気持を読みますね」

「口が滑らなになってくれんと楽しくないだろ」


 乾杯の後のアペタイザーを食べ終わるまでの少しの間に実行された高アルコール攻撃が功を奏したのか、緊張していたルドルフの表情が少しだけ和らいでくる。準備は上々とアーレイがニヤリすればフローレンスは悟られないよう口を手で隠し、クククと空気を揺らす。


「色々アーレイから聞いておる、君ら馬が合いそうだな」

「ジェフ陛下は良い部下をお持ちですね、アーレイ少佐は私の艦隊に是非とも迎え入れたいほど有能です」

「第9に来てくれてもいいんだぞ、高待遇を約束しよう(笑」


 威厳ある王は一連のやり取りを静かに見守り、アーレイの細やかな配慮を親交と受け取ったのだろう。受けた本人もたった数日で心を許せる相手がこともあろうに敵将に存在するとは思ってもみなかったらしく素直に褒めていた。


「アーレイ少佐つかぬことをお聞きしますが隣の女性は何方でしょうか」


 話が弾めば今まで視界に入っても認識しなかった人物がやっと見え始めるということでもあり、アーレイの隣に座る女性が格式高いドレスを身にまとった絶世の美女だと気が付き、ギョッと目を凝らしていた。ちなみに頭の中では「奥様か、いや独身だよな」などと頓珍漢な答えが駆け巡っていたりする。


「何を行っているのですかフローレンスですよ~」

「えっ本当に!マジで違いすぎませんか、失礼しました」

「うふふ、ルドルフ准将、今は王女の顔ですわよ今まで気づきませんでしたの?(笑」


 兵士姿の時は目立たぬよう悪く言えばブスっ子のようなメイクを施し、パッと見は普通の女性に化けていた。まぁ近距離で見てしまえば美人だと分かるが、そもそもルドルフは美麗だと意識していなかったらしく完全武装した王女様をフローレンスと認識できなかったのだろう。


「これは絶世の美女と言っても過言ではない、今日からはじっくりと拝見することにします」

「ふふ、明日は少佐フローレンスになりますわよ、けど恥ずかしいからおやめくださいね(笑」


 背筋をピンと伸ばし扇子で口元を隠しながら会話するその姿は、凛とした表情も相まって王族そのものであろう。見違えるその姿に見惚れているルドルフの鼻の下が伸びてきた。


「フローレンスさんが凄すぎてルドルフが見惚れているよ~(棒」

「もうアーレイ様、これが本来の私ですわよ」

「そうれはどうかな、敵の前でプンスカ怒る気の強さが本当の姿でしょ」

「もう意地悪ね」

「いてぇ」


 美人だろうがなんだろうがお構いなしの言い様に切れたフローレンスはグイッとアーレイの脇腹を掴む。ジェフとルドルフはその様子を見て微笑み、グリゼルはいつもの生暖かい目で見ていたよ。

宜しければ、ブクマ、評価お願いします。

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