視察終了。
フローレンスは・・。
<<大会議室・マテウスの部屋>>
マテウス「それにしてもシールド無効化弾は良く効くな」
フローレンス「酷い、仲間を殺すなんて・・」
腹に2、3発喰らったルドルフは糸が切れた操り人形のように倒れ、既に虫の息だ。床に広がる血を見れば今すぐに緊急処置をしないと数分で帰らぬ人になるだろう。
邪魔者が消えたとマテウスはニヤリと笑い、仲間を殺し何とも思わない連中を見たフローレンスは、身震いするほどの嫌悪感に襲われていた。
「さて、ベクスターとやらを呼び戻して貰おうか、そうすれば手出しはしない」
「アーレイ少佐の命令しか受け付けませんよ、権限を渡すのでお好きにどうぞ」
破れかぶれでモジュールの通信権限をマテウスに渡しているわけではない。以前アーレイが「余裕が無ければ相手の策に乗せられるだけだ」の言葉を思い出して冷静になり、そして不都合しか感じていなかった。
クリスは上だし、キースも近くで待機しているのに何故なの?
みすみすアーレイを見殺しにしたとは到底思えず。モジュールに表記されているピンキーの命令はWaitのままで、オフラインになってない。なので生きていると直感で確信していた。
「おい犬、1分だけ待ってやるさっさと降りて来るんだ。さも無いと女は死ぬぞ」
<・・・>
通信権限を渡されたマテウスは慌てて連絡を取り始め、フローレンスを殺すと脅してみるが、アーレイの忠犬ポコが敵の命令を聞くわけも無く、当たり前だが返答など無い。
「アーレイを抹殺するならAiはこの作戦しかないと判断したのだが、何故思うように進まないのだ」
管理棟に入り自由になったマテウスは借りたモジュールを使い、Aiに脱出と暗殺の2面作戦を問いたらしい。確かに目の前にアーレイがいれば殺したくなるのは理解できる。だが・・。
この男、頭悪すぎ・・。
それを耳にしたフローレンスはこいつ絶対バカだと思い速攻でジト目に早替わりする。逃走しつつ暗殺作戦を遂行すること自体が無理ゲーで、人質を取る場合は最低でも逃げ道を確保しなければ直ぐに行き詰まるし、殺して仕舞えば詰む事になる。そんな簡単な事が分からないのかと苦笑いをしてしまう。
「本当にアンタたち士官のくせに馬鹿だよね、逃げられる訳ないし」
「なんだとこのくそ女、お前が人質だから無闇に手を出せんだろ」
「ここはデルタの支配地域よ、立場が逆ならどうするのよ」
「・・・」
士官達は立場を変えて考え始め、いかに自分達が逃げる事だけを考え、悪手を選択したと理解すると、バツが悪いのか急に無口になる。しかし口が曲がり苦い顔をし始め、どう見ても悪い方に方向転換しそうな勢いだ。
「ああもうどうでもいい、それならお前をたっぷり味わって死ねればいいよ」
「ほんと最低!そういう考えがゲスの極みって言うのよ、襲ってきたら舌噛んで死んでやる」
普段から温和で優しさ溢れるフローレンスの耳が真っ赤に染まるほど怒り、言葉使いも荒くなっている。いつの間にか立ち上がると腰に手を当て仁王立ちしていたわ。
「こいつ、気の強い女だな、今すぐ押し倒してやろうか」
「ふん!だから何よ、デルタ王女を舐めないで頂けますか!」
王族たる所以の責任感の強さが言葉に現れ、立ち姿と相まって誰もが羨む美貌を再認識せざるを得ない。だが反面、高貴な出のそれが、男を知らぬ純潔だと分かると、抜群の性的関心を引いてしまう。
「おめえ王族なのかよ、ガハハ更に楽しみが増えたわ」
「いや、やめて」
ニタニタと鼻の下を伸ばした男達が、か弱い少女に襲い掛かろうと取り囲み、ゆっくりと手を伸ばし距離を詰め、あと僅かで双丘に手が届きそうになる。反射的に身を翻すが逃げ場はない。
「となれば処女か、俺が男を教えてやるよ」
「やだ、触るなケダモノ」
序列的な暗黙の了解があるのか、一歩前に出たマテウスはフローレンスの顎を無造作に掴み、そのまま唇を奪おうと顔を近づけ、操の危機が迫ろうとしていた。
「静かに聞いていれば、ほんとお前ら下劣だな〜、俺の軍服に穴を開けやがってどうしてくれるんだよ」
そろそろルドルフの処置をしないと死んでしまうし、なによりフローレンスを操の危機から救わなければならない。倒れていた筈のアーレイが気付けば少し斜めに立ち、余裕の表情を浮かべていた。
「えっ、あっ、やっぱり生きてた」
「お前は死んだはず・・・」
屍になった男の声が聞こえ、振り向いた全員が驚愕の表情を浮かべる。先程より状況が悪くなっているのにも関わらず、予感が当たったフローレンスは嬉しくて破顔していたわ。
そして潮時と判断したアーレイはパチンと指を鳴らす。
「ピンキー殲滅だ!行動不能にしろ」
「はいはいなー」
何も無い空間からマシンボイスの返事が聞こえた途端、取り囲んでいた連中はズドンと鈍い音と共に、腹の底から漏れ出る「ンッ゛ー」と声にならない呻き声を上げ、次々に宙を舞う。まあ金属の脚で股間を強打されたら叫ぶ暇はないだろうし、何名かは”漢”にジョブチェンジした筈だ。
キース<1人で大丈夫そうだな、オッサンヤバいぞ、死なせないんだろ>
アーレイ「ああ、救護班を先に頼むよ」
屋外で待機中のキースはルドルフのバイタルサインが微弱になり始め、慌てて連絡を入れてくる。確認すると確かに大量出血で昏睡状態に陥り、マジで絶命寸前だけど、死んだらブラッドの力を借りればいいかなと考えていた。
ブラッド「お前はほんと回りくどいやり方が好きだな」
アーレイ「単純にマテウスを殺す理由が欲しいのさ」
頼るかもしれないと考えた途端、力を使って欲しい黒ちゃんが脳内で話しかけてくる。考えて見れば久しぶりの登場なので、理由を話したら小躍りして喜んでいたよ。
「チビ助足止めなう」
「了解マスター」
ピンキー支援用の暗殺用小型ドロイドが姿を現し、腰に収めたナイフを取り出すとファイティングポーズを決める。退路を開けば後は武器の無力化だろう。
「ピンキーがんばる」
フローレンスの素顔を拝んだことで気が緩み、銃をズボンに刺したのは頂けない。慌てて抜こうとする護衛の腹の辺りを、ステルスピンキーの青い閃光が横一文字に通り抜けた。
「わわわ、バトルドロイドだと」
すとんと下着ごと足首までズボンがずり下がると、股間に手を当て情けないポーズになりつつ銃を探すが、無惨にも弾倉から真っ二つの状態で床に転がっていた。そしてまだ息子が無事な士官たちは、ステルス解除したピンキーと小型ドロイドを見て恐怖が湧いたのか頬が引き攣っている。
「あははこのドロイドは初公開、ピンキーは影と戦ったけどな」
「イ゛ーこれがあのドロイドだ、逃げろー」
デルタで諜報部員がピンキーによって惨殺されたことを知っているのか、途端に浮足立つ。更なる恐怖心を煽るために暗殺用バトルドロイドは、シャキーンと音を響かせナイフを構え直した。
「行動不能なう」
身長1Mにも満たないチビ助は、目にも止まらぬ速さで足元を縫うように通り抜け、すかさずフローレンスの足元まで移動して来る。逃げ出した連中は途中、パタリパタリと床に倒れ、何とも情けない格好を晒しつつ、時間差で襲ってきた激痛に身を捩り、声にならない断末魔の叫びをあげていた。
<<管理棟内・廊下>>
「ま、待ってくれ、殺さないでくれ、謝るから許して」
「くびちょんぱか?」
命令を発して僅か十数秒で無力化され、廊下まで逃げおおせたのはマテウス1人だけだ。だが既にレーザーソードと超音波ブレードソードの二振りが行く手を阻み、ピンキーの冗談を真に受けてプルプルと震えていた。
「悪いが君は死んで貰わないとダメなんだよ、まあ正確には半死状態だけどさ」
「えっアーレイ様、まさか殺すのですか」
後を追ってきたフローレンスはマテウスを殺すと聞き青ざめている。しかしアーレイは気にする事なく腕を伸ばし、脳内で「ブラッド、廃人にしてくれ」と頼む。
「任せろアーレイ、闇に塗れたコイツは木偶にする」
手先が一瞬光ったと思った瞬間、手のひらから黒い霧がとめどなく吐き出され、一瞬にしてマテウスの全身を包み込む。ブラッドは薄汚れた魂を持つ者を許せないらしい。
「く、苦しい、なんなんだこの全身を駆け巡る不快感は・・」
ブラッドが施したこの術は黒の粒子が根毛や汗腺、いわゆる皮膚から染み込み、血管に入ると瞬く間に全身を駆け巡る。脳内に達すると記憶を司るシナプスに攻撃を行い、ゆっくりと自分の名前は勿論のこと、記憶や言語能力も何もかも消し去ってしまう。
「知らないなら教えてやるよ、俺は死の騎士って言ってな、触らなくても殺す事が出来るんだよ」
「た、助けてくれー、あひゃーひゃぁぁ。。。」
記憶領域を消されたマテウスは段々と無表情に変化すると共に瞳は空を切り、時折ウヒャヒャと訳のわからない奇声を上げながら、同じ場所をクルクルと回り始める。試しに名前を呼んでも言語能力自体が消失しているので反応することは無い。
「ア、アーレイ、あ、あ、あなたは、あなたは一体」
「後でな・・」
人間離れした能力でマテウスを木偶する一部始終を目撃したフローレンスは、驚愕の表情を浮かべたままアーレイをジッと見詰め答えを求める。だが作戦が実行されクリスやキースとの会話が忙しく、今は無理とハンドサインを送られ無視されてしまう。
キース<士官達は城の留置場で大人しくしている>
アーレイ<仕事が早いねー、引き続き監視任務を任せるわ、それとこいつも頼む>
廊下でブラッドの術が炸裂する頃、機甲歩兵が大会議室に転送され、その途端、怒号が飛び交い数秒後には鎮圧され静寂が訪れる。
簡易処理を終えた士官達は光の粒子へと変わりフォウルスター経由でクーン城に送られ、責任者であるルドルフが回復すれば尋問が行われることになるだろう。
ラー<アーレイ様、下士官達はレティシアにて盛大に食事中です(笑>
アーレイ「ありがとうラー、落ち着いたら城に来てくれ」
ラーと共に隠れていた下士官達はアーレイと別れた後、強襲艇に回収されそのままレティシアへと向かう。入所後、風呂に入れられ、久しぶりの旨い飯にありつけたのか、通話の後ろでお替わりの声が飛んでいた。
<<クーン城・客間>>
アデール「貴方たちは事の顛末を見届けなさい(怒」
事務方「騒ぎを起こしてしまい大変申し訳ありませんでした(汗」
事務方は移動中にクーン城の客間に転送されると、報告を聞いたアデールに超怒られてしまい、交渉役から記録係にジョブチェンジする事になってしまう。因みに冒頭、不服を申し立て拒否すると、威圧に晒されヒキガエルになったのは言うまでも無いだろう。
<<管理棟内・廊下>>
クリス<ルドルフは一命を取り留めた、一旦上がってくるか>
アーレイ「彼に色々やって貰わないといけないから、もう少ししたら上がるよ」
昏睡状態のルドルフは即座にフォウルスターの医務室に送られ、今は医療用カプセルの中で治療中で、意識が回復すれば当然責任者として働いて貰うつもりだ。
さて彼女は俺の秘密を知ったらどう判断するのかな。
指示と連絡を終えたアーレイはゆっくりと踵を返し大会議室へと足を向ける。無言で後ろを付いてくるフローレンスに自分の秘密を打ち明け、本気度を試そうと考えていた。
<<管理棟・大会議室>>
「やっと全て終わったな」
先程まで怒号が飛び交っていた会議室に入ると、ツンと血の匂い特有の鉄臭さが鼻につく。周囲を見渡すと人影は見当たらず、機甲歩兵とピンキーは既に撤収した後だった。背後に感じていたフローレンスの気配はアーレイを追い越し視界に入ってくる。
「アーレイ様、私にも理解できるように説明してください」
悲しみと困惑が入り混じった難しい顔をするフローレンスは、今までに感じた不都合を説明しなさいと詰め寄ってきた。
「マテウスはHSAの会長だから、廃人になってもらう必要があったんだ」
視察の際に何かしらの問題行動を起こすと予想したアーレイは、混乱に乗じてマテウスを再起不可能な木偶してしまえば会長選が行われ、隅々まで連絡が行き渡り、全体を掌握するチャンスだとフローレンスに説明をする。
「それは星団統一に向けて必要だということですか」
「HASは終戦後、必ず障害になりえるし、星団戦争の元凶だ」
説明を受けたフローレンスは納得できない顔をしている。そりゃ疑問が湧くまで最愛のアーレイが死んだと思っていたし、マテウスらに屈辱を受けた事や、一歩間違えたら自分の命を落とす危険性があった為だ。
利用されたの、うんん違う、作戦としてはまだ生易しい方だと思う。
デルタ軍の監視下の元、2体のドロイドが張り付き、十分過ぎるくらい守られていたと理解はできる。けど事前に知らせなかったことを不服と感じ、恨み節が心の中で炸裂しまい、ついアーレイを睨んでしまう。
戦闘訓練も受けてないし経験も無い王女なのよ、今回は酷くない、けど弱音を吐いたら・・。
王女なら戦場に出向くのでは無く王宮で帰りを待てばいいと思うかもしれないが、多忙なアーレイが王宮に足繁く通うことなどしない。そうなれば進展しないまま時間だけを浪費してしまい、期日までに振り向かせたいと考えているフローレンスは自分を戒めていた。
「何で最初に教えてくれなかったのですか、心配したじゃない」
プッと頬を膨らませ、プンスカ怒るフローレンスはめちゃくちゃ可愛らしく、アーレイは思わず口角を上げる。
「ごめんねフローレンス、不確定要素が大きすぎたからベクスターで待機を命じたんだ」
元々フローレンスを囮に使う作戦では無い。彼女は様子見するため管理棟に近づき過ぎて拉致され、巻き込まれただけだ。皮肉にもそれがスクランブル発進する余裕を作った事にはなるが、そもそもベクスターに乗っていれば違う結末になったかもしれない。
「あっ」
瞬時に失態に気がつくと、凄くすまなそうな顔をして俯いてしまう。責める気がないアーレイはポンポンと肩を叩いて慰めた。だが彼女の疑問が全て晴れた訳ではなく、顔を上げると真剣な表情に変わりジッと見つめ返してきたよ。
「けど、あの黒い霧は、死の騎士って・・」
「その事については知らないままの方がいい、今日のことは忘れてくれないか、それに・・」
「嫌です、わたくしはちゃんと貴方の事を知りたいのです。既に大切な人なのです。もう覚悟は出来ています」
生命を司る力と獣人達の支配者と知れば、恐怖に慄き慕う気持ちが霧散する事を望んでいたが、話を遮るようにフローレンスは自分の気持ちを吐露してきた。
もしかしたら私は貴方に選ばれる運命なのかも・・。
そっか、彼女は精霊の加護の力に気が付いたんだ・・。
両者とも精霊の加護を持つ選ばれし者だ。フローレンスは待っていた数分間の間に精霊降臨の儀の事を思い出し、アーレイは王様で自分は女王、または側室という構図が頭の中で構築されていた。とはいえ加護の事は話していないし、余りにも現実離れしていたので確信が得られず知りたいと言葉を濁す。
クッソ、肝心な時にブラッドは反応しない・・。
驚愕の事実を受け入れようとしている彼女の想いは本物で、真剣な表情と目を見ればそれを左証とするには十分だ。アーレイは嬉しく思う反面、心の奥底の引っ掛かりが邪魔して、抱き締め容認することを躊躇していた。
「黒の精霊が憑依して事で強大な力を与えられ、生物の生死すら操れる」
「だからアデール様に対しての態度が逆だったんですね」
食堂での会話を聞かれ、いつか秘密を教えなければ成らないと考えていたアーレイは、今がその時だと判断するとフローレンスと正面から向き合う。だが娶る事に関しては極めて消極的だったりする。
「どうやら僕は獣人達の支配者らしい」
「カルネの事が腑に落ちました。けどずっと一緒ですよアーレイ様」
「ああ、良いよフローレンス」
怖い思いをさせて諦めてくれたらラッキーと思っていたが、彼女はブレる事なく付き従う姿勢を見せる。好みだった事もあり、敬意を払って容認する言葉を口にすると、ニコリと笑顔を零しアーレイにそっと寄り添ってくる。
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「いま、軽く了承しませんでした?」
「何のことだ?」
「何でもありませーん(棒」
「だってー、好みなんだもん!」
「もちもちお巡りさん!ここにスケベーがいます〜」
「・・・・」
>
画面の隅っこでウズウズしていたフェアリーは黙っていられなくなり、盛大にツッコミを入れてくる。勿論、中空モニターの中をグルグルと嬉しそうに飛び回っていた。
「さて、そろそろフォウルスターに上るとするか」
誰もいなくなった大会議室を俯瞰見していると静寂が流れ、撤収の雰囲気が流れ始める。だがフローレンスはまた何か不都合を見つけたのか、ジト目になりアーレイに文句を言いたげだ。
「この大量の血痕と銃弾は何かおかしくないですか、普通立っていられませんよね(ジト目」
「あははそうだっけ(汗」
バトルスーツが致命傷を防ぎ死んだふりをしていたと思っていた。しかしあり得ない量の血痕と皮膚の一部が張り付いている銃弾を見て、普通じゃ無いし死んでいてもおかしく無いと客観的に思ったらしい。
「傷口が治っているって、もしかして不死なの?」
疑いの目を向けられ、アーレイはなんて勘の良い子なのだろうと考えずにはいられなかった。これ以上誤魔化しは無理だと思い「特典みたいだね」と笑いながら話す。
そっか、私も不死になれるんだっけ・・。
自分の5精霊の加護の特典を思い出したフローレンスは、心の中で結ばれる運命の筈なので、いつかは振り向かせてみせると固く心に誓うのだった・・。
ーー
<<管理棟脇・広場>>
「警戒行動終了ナノ」
作戦が終了すると同時にベクスターが管理棟脇に着陸してくる。ポコは、タラップを踏む事なく機外に飛び降りると、一目散に飼い主の元に走って行った。
「アーレイ様が撃たれているアーレイ様が死んじゃうナノ(泣」
「俺は大丈夫だ、ほら生きているだろ」
血塗れ姿の主を見て大けがをしていると思ったポコは半泣き状態で駆け寄ってくる。このまま抱きしめられそうな勢いなので手をかざすが・・。
「心配ナノー!」
「グフォ・・いてて、落ち着けポコ、傷口がまだ痛む」
身長差があり抱きしめられると銃撃された辺りをギュッとしてしまう。不死とはいえ傷口の中は絶賛再生中でビリビリと痛みが伝わり、流石のアーレイも涙目になっていた。
「ポコちゃんもう大丈夫よ」
「ガルゥ!(超オコ」
拉致されたとの報告がクリスとキースから寄せられ、慌ててスクランブル体制を取ったポコは機器を操作しながら、簡単に囚われたフローレンスに対し怒っていたのだ。それに主のアーレイが撃たれ痛がり、反対に無傷だったのが気に食わないらしく犬歯を見せて威嚇していた。
「ポコちゃんごめんなさい、心配なのよね」
「ガルゥ(オコ」
無事とはいえフローレンスの髪は乱れ、アーレイの血が髪の毛や服にベッタリと残り、よく見ればドロイドが振るったナイフの飛び血が顔に付着していて、言われなくても壮絶な状況だったことは理解できる。だがポコは納得できないのか敵意を向けたままだった。
「憔悴している彼女を見ればわかるだろ、一生懸命だったんだよ」
「わかったナノ」
「アーレイ様、ポコちゃんを労ってください」
実際に現場にいなかった以上、フローレンスに対し敵意を向けるのは筋違いと理解したのか怒りの矛先を収める。アーレイに頭を撫でられ「ポコの頑張りが良い結果を招いたんだ」と、あの時の評価を褒めると尻尾をフリフリさせて笑顔に変わるのだった・・。
よろしければブクマ、評価お願いします。




