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マテウスの反逆。

マテウス達が・・・。

 <<管理棟付近の農園>>


 元リゾート地は赤土を入れて地盤改良したお陰で作物が育ちやすいが、最新式の害虫、雑草駆除装置などは与えられず。立ってるだけ汗が噴き出す炎天下の下、10数名の下士官が作物の手入れを行っていた。


「おーい、みんな集まってくれ!」


 管理棟を出たルドルフ一行は農地へ赴くと、農作業に従事する下士官達を大声で呼ぶが誰も返事をすることなく、人間の存在に気がついたゾンビのようにのそりのそりと集まり始めた。


「捕虜解放交渉を任されているルドルフだ。貴様らは何をしている」

「デビット中尉です。見ての通り農作業ですよ・・」


 久しぶりに見るディスティアの軍服が目に入っても誰一人驚かず、髭も伸び放題、やせ細り精気の無い表情で敬礼もしない。受け答えをするデビット以外はボンヤリと立ち竦み、パッと見ただけでも健康状態が悪いと分かる。


 事務方A「レティシアと比べると随分違うな。我慢にも程があるだろう」


 ここで作業する下士官は人間至上主義協会、通称HSAの会員と、上昇志向の強い腰巾着連中で、点数稼ぎのために劣悪な環境でも我慢しているだけに過ぎない。知ってか知らずか事務方の1人は憐れむような表情を浮かべていた。


 事務方B「マテウス准将達と比べると明らかに健康状態が悪いな」


 面倒な作業は全て下士官に押し付け上級士官らは食っちゃ寝の生活をしているのが丸わかりだ。状況を確認したルドルフの表情が段々と険しくなりマテウスを睨む。


「おいマテウス、貴様がしたことは絶対に許されないからな」

「・・・」


 苦虫を噛み潰した表情をするマテウスは両手を後ろで縛られ護衛に預けられている。何故かというとルドルフに問い詰められ、数々の服務違反並びに行方不明者を出したにも関わらず、事態を掌握しておらず職務放棄と判断されたためだ。


「デビット中尉、行方不明の10名についての詳しい経緯を知りたいのだが」

「・・・(黙」


 後は自供した内容と齟齬が無ければマテウスを逮捕して、ディスティアに帰還後すぐに軍事法廷で裁きを受けさせる予定だ。流石に目の前で話したく無いのかデビットは俯き黙り込んでしまう。


「こいつの前では喋りたく無いのだな。悪いが向こうで大人しく待ってろ」


 管理棟の中にいた士官達も同じ罪で拘束され護衛3人に見張られている。そこに連れて行かれそうになったマテウスは悪代官のように「喋ったらどうなるか分かっているだろうな」と凄む。すかさずアーレイが「馬鹿だね自分から悪事をしましたと語ったわ」と言い放つと事務方らから失笑が漏れる。


「マテウス手間をかけさせるな、早く行け」

「・・・」


 ジト目のルドルフ、半笑いのアーレイ、呆れ顔の事務方の目線が突き刺さり、分が悪いと感じたマテウスは悔しそうな表情に変わると、黙って踵を返し管理棟へと足を向ける。


「さて邪魔者はいなくなった。それで君たちに何があった話してくれないか」

「ルドルフ准将、今から話す内容をお聞きになりましたら全ての下士官を保護してください」

「ああ勿論だ、わかっている」


 そしてデビットは重い口を開き始め、弱々しい声で語り出す。


 「忠告通り夜間外出は控えていましたが、マテウス准将が斥候を出せと言い始め、海岸付近を5名で偵察中に蝦蛄と蛸の化物に襲われ3人が海に引き摺り込まれ、そのまま行方不明になりました」

「なんだと、勝手にビーチに出て食われたと話していたぞ、残りはどうしたんだ」

「イカダを作って島の周りの偵察を命じられましたが、沖合に出た瞬間に化け物に襲われ5名が行方不明になりました」


 あれほどこの島の夜は危険だと忠告したにも関わらずマテウスは無謀な命令を下し、下士官達の身の安全を保証するどころか逆に危険に晒していた。残りの下士官と上級士官の行方を聞くと、酷い命令に嫌気が差して口論になり壮絶な喧嘩の末、両者共に致命傷を負い、残る2人は熱中症と栄養失調が重なり気がついたら死んでいたそうだ。


「今まで我慢していましたがもう限界です。お願いですどうか助けてください」

「承知した。君らを優先的に送り届けるよう手配する」


 事の顛末を聞いたルドルフは怒りで湯気が出るほど赤ら顔に変わり、今すぐにでもマテウスを蹴り飛ばしてやりたい気持ちになっていた。だが話し終えた途端、何故かアーレイの口角は上がり不敵な笑みを浮かべ始める。


「やっぱり君の護衛はアサシンだよ、お姫様が人質に取られたわ。こりゃお仕置きが必要だな(笑」

「すまないアーレイ少尉、迷惑を掛けてしまったようだ」


 人質が取られても涼しい顔をしているアーレイを見たルドルフは、きっと策ありだと理解すると共に、総統閣下は厄介な事をしてくれたと思いつつ謝罪の為に頭を下げた。


「さすがポコだ。状況判断が素晴らしいな」

「んっ?あっ」


 ボソリと呟いたアーレイが駐機場の方角を指差すとキーンと甲高い音が聞こえ、数秒後、ズドーンと大きな爆音が響き渡ると緊急発進したベクスターとベクトランが勢いよく大空へと舞い上がっていくのが見えた。


 ーー


 <<少し前、探査艦フォウルスター・艦橋>>


「マテウスの評価を類いまれな馬鹿だと評価したアーレイは流石だな」

「クリス司令、フローレンス様が人質ですよ大丈夫でしょうか」


 周回軌道上の探査船フォウルスターではクーンに到着後のアーレイ達の監視活動を行い、管理棟近くで拘束されたフローレンスを発見しても艦長のクリスは余裕の表情を浮かべ、キャプテンシートにだらりと座り1ミリも慌てる様子は無い。副官は王族を人質にすれば国際問題になると考えたのか顔を真っ青にし大慌てだ。


「アーレイの人形(ピンキー)がいるし、奴らが問題行動を起こすのを待っているんだよ」


 不測の事態に対処するためにデルタ宇宙港に入った時点で身元の洗い出しを行い、事務方は直ぐに総統府付と判明したが、護衛4人は諜報部所属らしく一切情報が出てこなかった。アサシンと判断したアーレイはクーン到着後、クリスに指示を出しフローレンス護衛の任務をピンキーに与えていた。


 副官「成るほど、交渉を有利に進めるためですね理解しました」

 クリス「アーレイやっぱり動いたぞ、フローレンス少佐が人質になった」

 アーレイ<まあ目が離れたら動くよな、予定通り機甲歩兵の準備を頼む>


 入国当初から護衛の4人が怪しいのが分かっていたアーレイは、奴らが問題を起こすまで放置していた。もちろん捕虜返還交渉を有利に進めるためで、ピンキーには姫様が人質になったとしても証拠を掴むまで手出し無用、生命と操の危険が生じた場合にのみ救出するとだけ伝えていた。なので銃で脅されマテウスの元に連行されても手出しせず、ステルス状態で静観していたりする。


 <<管理棟付近の農園>>


「ラーとSPは全員を引き連れこの場所を離れてくれ」

「私もアーレイ様と共に戦います」


 人質を取り管理等に立て篭もった情報を得たアーレイはラーに現状を伝え、避難指示を出す。だけど責任感が強い彼女はホルスターからレーザー銃を取り出し戦う構えを見せていた。


「駄目だ人数が多いと守り切れない、心配するなバトルドロイドと機甲歩兵を配置してある」

「そうですか、さすがですね。分かりました」


 既にアーレイの術中と理解したラーは素直に従うのが最良と判断したのか、ぼんやりとしている下士官を手招きして安全地帯へと案内を始める。そして一部始終を黙って見ていたルドルフは、怒りがはち切れんばかりにフルフルと震え始め今にも爆発しそうだ。


「さあ、奴らに罰を与える為に共に戦おうじゃないか」

「ほんと君には敵わんよ、世話になるな」


 避難指示を出したのは勿論混戦を避けるためで、用意周到過ぎるアーレイの態度と戦う言葉を聞いて、怒りが収まったルドルフはニヤリと笑い、2人だけで管理棟へと向かってゆく。その後ろ姿は信頼できる戦友というべきだろうか・・。


 <<管理棟・玄関付近>>


「取り敢えず丸腰で突入だね(笑」

「おいこら随分と余裕だな」


 銃撃されると予想して障害物を使いながらジグザグに進んでいたが、何の妨害も無くすんなりと玄関まで辿り着き拍子抜けしてしまう。想像するにどこかの部屋で待ち構えていると考えた2人は、気合を入れ直すとドアノブに手を掛け内部に侵入する。


 <<大会議室・マテウスの部屋>>


「マテウス准将、君はここで何をしている」


 内部に侵入しても人影が無いので一部屋ずつ調べ回り、一番奥にあるマテウスが利用していた大会議室に入ると、身柄を拘束されていた筈の全員に自由が与えられ、囚われ椅子に座るフローレンスを取り囲む様に立っていた。


「決まっている。ここから逃げるだけだ。抵抗しないでくれるかな、変な事したら女は死ぬよ」


 椅子に座らされたフローレンスに向けられているのは、デリンジャーに似た4連単発式の拳銃だ。組み立て式とは言え発射口から想像するに50口径はあり、命中精度はともかく殺傷能力が高い事だけは理解できる。だがそれで怯むようなアーレイでは無く、不敵な笑みを浮かべニヤリと口角を上げた。


「阿保だな、どうせ俺を殺せと言われているだろうし、人質を取っても帰れる訳ないだろう」

「ふざけるな、さあベクスターとやらを戻してもらおうか」


 この男は状況判断が出来ていないのか人質を取り、ベクスターに乗りさえすればディスティアに帰還できるという甘い夢を抱いているらしい。呆れるアーレイは救いようの無い馬鹿だと内心では笑っていたわ。


「悪いねフローレンス、残念だけど来世は恋人同士なら許してくれるかな」

「アーレイ様!なんて事を言っているのですか!まぁ来世で恋人同士ならそれはそれで良いかも(喜」


 緊張感の欠片も無く、どうでもいい話を語る2人にルドルフは呆れ、マテウスは馬鹿にされたと思ったらしく苦虫を噛み潰した様な顔をする。


「強がりも大概にしてくださいよ、お前を殺した後にたっぷり楽しみますよ」

「彼女に指一本でも触れてみろ、ここにいる全員をぶっ殺してやる」

「キャ!頼もしいな~」


 脅せば何とかなると思い込んでいるマテウスに対し、2人は人質に手出しできないと深読みして完全におちょくっている。もちろんモジュールにはピンキーの存在が示されているので余裕なのだ。だが真面目で何も知らないルドルフは何ともしがたい表情をしていたよ。


「マテウス、貴様の行動と発言は完全に規律違反だ。ディスティアに戻れば軍事裁判だぞ」


 総統からアーレイ抹殺の命令が出ているものの、捕虜解放を無事に終わらせたい思いが強いルドルフは、マテウスの馬鹿な行動に付き合う気など微塵も持ち合わせていない。内心では「こんな事をしなくても少し我慢さえすればディスティアに帰れるのに、なんて馬鹿なんだ」と考えつつ、取り敢えずこの場を収めようとしていた。


「お前はどっちの味方なんだ。さっさとアーレイを始末するんだ」

「そんなことをしたら下士官が全て死刑になってしまうだろ。いい加減茶番を終わらせてくれ」

「ああもう堅物はこれだから使い物にならん、おい小娘の足を撃てどっちが優位か教えないと分からないらしい」


 傲慢なマテウスは下士官の命など取るに足らないと考え、ルドルフの意見など聞く気が無いし、事態を動かすためにフローレンスの足を撃てと言い放つ。命令を受けこめかみ辺りに密着していた銃口が離れた。


「ピンキー出番だ」

「はいなー」


 銃口が逸れたらチャンス到来だ。ブンとレーザーソード特有の音が聞こえた瞬間、何も無い空間から青白い軌跡が現れ拳銃を真ん中から切り裂き、指がポロポロと床に落ちる。護衛の男は目の前で起きた事を理解できず唖然とするが、床にバレルがゴトンと音を立てて落ち、それが気づきになったのか、右手に激痛が走り断末魔の叫び声をあげた。


「クッソ何なんだ、どこから攻撃している」

「おいでフローレンス」


 突然の攻撃で出来た隙を使いフローレンスを呼ぶ。一瞬顔が綻びアーレイの胸に飛び込んで来ると、すかさず抱きしめ彼女を守るために身体を反転させた。


「逃げ場がないのに無駄な事を」


 不意をついた攻撃はフローレンスを逃がすためで、部屋に仕掛けた防衛装置の類だろうと勝手に推測したマテウスは、不敵な笑みを浮かべつつ護衛に向かって手を差し出す。そして直ぐに懐から取り出した予備の銃を受け取るとアーレイに狙いを定めた。


「もうアーレイ様、酷いです」

「隙を作らないとピンキーが攻撃できないんだよ」

「わかっています、プンプン!」


 冗談を言いつつも必死に恐怖と闘っていたのかプンスカと怒り始めるものの、好きな男に抱きしめられると嬉しさが勝ったのか、膨らむ頬と突き出す唇は可愛らしい。しかしそれも束の間パンパンと乾いた音が響いた。


 「グハッ!クッソあの弾か・・」


 奴隷救出作戦の際に喰らったあのシールド無効化弾は更に強化されているのか、シールドは勿論のこと強靭なバトルスーツを物ともせずアーレイの背中に無数の穴をあけ、肝臓を心臓を貫き致命傷を追わせる。


 「いやー、アーレイアーレイ死んじゃいや、ねえ起きてよアーレイ」


 乾いた銃声音、ブルーに輝くシールドと呟きで、身を挺して守ってくれたと理解したフローレンスは心配になりアーレイの表情を伺おうとするが、既に事切れたのか覆い被さるように倒れ込んでくる。必死になって体を起こしたものの、瞳から光が消え去ったあとだった。


 「これでアーレイも処分できた昇進間違いなしだ、おい女を連れてこい」

 「いやー、やめてアーレイ、アーレイ」

 「お前は会長のペットになるんだ。大人しくしないと手荒な事をしますよ」


 脇で控えていた士官達は絶命したアーレイに縋るフローレンスの腕を掴むと、マテウスの前までズルズルと強引に引っ張る。しかしピンキーはステルス状態のまま静観していた。


「ザマァだなアーレイは死んだぞ」

「馬鹿ね逃げられ無いわよ」


 邪魔者が消え去りニヤリと薄気味悪い表情をするマテウスは、品定めをするようにフローレンスを視姦をする。直ぐに別室で楽しみたいところだが、堅物を始末しなければ何かと面倒と考え銃口をルドルフに向けた。


「裏切者のルドルフくん散々偉そうにしやがってお前も死ね」

「マテウス死ぬ前に一つ教えてくれないか、君の護衛はHSAだろ」

「そうだよHSAだよ今更知ったのか」


 HSAの会長だと知っていたが時間稼ぎをして隙を作ろうと企む。しかしマテウスは引き金に指を滑らせ処刑する気満々だ。取り巻きの士官連中は止めるどころか軽蔑の眼差しを向け誰一人声を上げようとはしない。それどころかフローレンスを見てニヤニヤとし始めた。


「おお!こりゃたまらねーな、よく見るといい女じゃねーか」

「うわぁ何て上玉、軍人とは思えないなこりゃ堪らんな」


 士官の1人がフローレンスの品定めをしたくなったのか帽子を強引に剥ぎ取る。するとアップで纏めていた髪が解かれ隠されていた素顔が顕になり。ラインスラストに嫁いだコーネリアを凌ぐと噂されている美顔を拝めば、男達の性欲が爆上がりすること間違いなしだ。


「貴様らその女官に手を出したらただじゃすまないぞ」

「何を言っている戦利品として美味しく楽しむのだよ、その前に邪魔者は消えな」


 手出ししないように断りを入れるが、奴らはもう蹂躙する事しか頭に無いのか完全無視される。マテウスは邪魔だと言わんばかりに無造作にトリガーを引くと、乾いた銃声が部屋に響くのだった。

よろしければブクマ、評価お願いします。


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