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階級と恋愛と大混乱。

フローレンスの手紙とアーレイの作戦が。。。

 <<デルタ王宮・謁見の間>>


「お話が済んだらお呼びくださいねアーレイ様」


 デルタ宇宙港に到着したと同時にジェフから直接呼び出しがあり、シャトルに飛び乗った2人は王宮へと向かうが、アーレイと個別に話したいのかフローレンスは前室で待機を命じられてしまう。しかし自身の評価の事だと分かっていたのか笑顔で見送ってくれた。


「陛下、只今戻りました」

「おおアーレイ、フローレンスはどうだった」


 謁見室に入った途端に手招きをするジェフは凄く嬉しそうだ。隣に座るアイシャも同様に笑顔で「頑張りましたわね」と労いの言葉を掛けてくれた。


「彼女はとても有能ですが、階級を与えてください皆がやり難いです」


 作戦報告よりも先に階級について話をすると「大佐だ」とジェフが言い放ち、アーレイは途端にジト目に変わる。


「なんだ、不服か」


 そしていつもの掛け合いが始まりを迎える・・。


「マジ勘弁してください私は少佐ですよ、間違いなく混乱します」

「ならアーレイが上がればいいだろう」

「それはやめて」

「うーん、なら少佐だ!」

「何故に士官、解せぬ」

「王族の身分は上級士官だからこれ以上は下げれない」

「わかりました、辞令を出してください」

「分かったよ、で詳しい話を聞きたいのだが」

「ディスティア第6艦隊のルドルフ准将から書簡が届くと思いますよ」

「何だと艦隊所属の准将だと、相変わらずの斜めだな」

「ルドルフ准将は理解力のあるいい人でしたので楽でした」

「お前なー、簡単に言うなよー」

「マジ特技ですから」


 階級の件はあっさり終わり、コンタクトの件は艦隊指揮官と話をして来るとは想像してなかったのか、思い切り呆れられてしまい、アーレイとしてはベストを尽くしただけなのにその態度にはちょっと不満だ。


「それで!!」

「書簡が届き次第、交換条件の話し合いになるでしょう」

「なんだそれ、話が早すぎるって(呆」

「だから特技ですって」


 追加で「デルタの捕虜が戻ってくれば内政にも貢献しますね」と言えば、捕虜交換と賠償金については全て任すわと言われる始末で、戦艦の設計など多岐に渡り開発業務に勤しむアーレイは「ブラックだ」と言い返せば「交渉事は強かな奴に限る」と笑って無視された。ムカついたので、黙っていた安否情報の件を話すことを決める。


「観光協会の掲示板に安否情報を流しますので、早めに決着できるかもね〜」

「はっ?なんだとこら、アーレイそんな話し聞いてねーよ」


 珍しく声を荒げ普段言葉のジェフは別段怒っている訳ではない。想定外の事が飛び出てつい素が出たらしく護衛も執事も半笑いしてた。


「コホン」


 小さな咳払いはアイシャからの警告らしく、ピクリとジェフが反応すると途端に表情が威厳のあるピリッとした王様顔に戻る。手綱を操る恐妻家の片鱗が垣間見えた瞬間だ。フローレンスも歳を取れば同じようになるのかなと思わず考えたのは秘密よ。


「げふんげふん、それで」

「新聞社には写真、テレビ局には動画を渡したので、混乱は当分続くと思われます」

「君の策にしては用意周到だな、これもフローレンスが考えたのか」

「ここから先は本人に聞きましょう」


 今回の作戦立案の最大の功労者はフローレンスで間違いない。入室を許された彼女はアーレイの傍らに立つと軽く口角を上げ、ジェフに向き直ると凛とした表情へと変わった。


「喜んで少佐を拝命します」


 挨拶が終わると同時に「少佐で悪いな」と言われたフローレンスは素直に承諾をする。余りのあっさりさ加減にジェフとアーレイは呆気に取られるが、そもそも彼女は側にいるのが目的なので全然気にしてなかった。


「今回の立案者だと聞いたのだが相違ないな」

「アーレイ様との共同作戦の賜物ですわ♡」


 ここぞとばかりに肩が触れ合う程の距離まで近寄り、仲良しと成果の両方をアピールをしつつ、既成事実の積み上げに余念がない。


「もしもしフローレンスさん、元々は貴女が思いついた作戦ですよ」

「報告は正確にするのが一番です。わたくしとアーレイ少佐の、あ、力ですから〜」


 間違いなく「()の力」と言いそうになったフローレンスは何食わぬ顔を、それも余裕の笑顔で切り抜け、アイシャはクスッと笑いジェフには仲が良いなと突っ込まれてしまう。


「いえ、軍人同士の戯れあいです」

「いえ、アーレイ様との共同作業の賜物です!です!です!」


 仲良しアピールに余念がないお姫様は実はタイムリミットが設定されていて、そのことが背中を押すかは知らんけどマジで積極的だ。その姿にジェフは呆気に取られ、アイシャは口火を切りたいのか扇子を口にあてる。因みにフェアリーが嬉しそうに飛び回り何か言いたげだったが、空気を読んだのかニンマリと微笑むだけで正直気持ち悪かったのは内緒よ。


「あらあら、フローレンスはいつからそんなに積極的になったのですか(笑」

「女王様、アーレイ様が色々と教えてくれましたのですよ(笑」

「わたしはなにも教えていませんよー(棒」

「うんうん、仲がいい事は良いことね精進(物に)しなさい」

「女王様、わたくしは鋭意(娶られるよう)努力する所存であります」

「アイシャもフローレンスも聞いてねーよ」


 この2人は裏で密約でも結んでいるのだろうか、取り合えずアイシャは早く物にしなさいと、貴族言葉を駆使してフローレンスにエールを送っている事だけは理解出来るアーレイだった。


 ーー


 <<暴虐出港前・ディスティア帝国>>


 同日早朝、ディスティアのとある出版社を秘密裏に訪れた白金色の髪色を持つショートカットの若い諜報部の女性は、情報収集と交渉に特化した影だ。わざと印象に残らないメイクを施し、黒い洋装と相まってパッと見は地味に見えてしまう。


「さて、簡単なお仕事ですね(笑」


 スラリとした彼女は人目につかないよう裏口から入ると、非常階段を軽やかなステップで3階まで一気に駆け上がり、息も切らす事もなく編集部に行き着く。


「この情報は本物だろうな」

「名簿は本物、それを裏付ける写真です」


 タプレッドには安否情報と農作業を行う複数の捕虜の姿が映し出され、行方不明の特務艦の乗組員だと説明される。しかし編集長は訝しげな表情を浮かべ、頭の中では真偽を見極めている最中だ。


「この男は誰だ」

「名前は存じませんが階級は大尉と聞いております」


 未だ疑心暗鬼なのかバグナーを指さす編集長は目を細め、一方の影は笑みを溢しつつ自信ありげに「お昼に観光協会に出向き真贋を問えばいいのでは」と軽くあしらっていた。次に情報料の交渉に入るものの「流すタイミングを指定できれば不要」と言われ少し困った顔をする。まあなんだマスコミあるあるの編集権とかいうやつで、制限されることを極端に嫌っていた。


「最大限の効果を狙ってますので、情報開示と同時ではダメですか」

「悪く無いタイミングだが、確約はできないぞ」


 ジャーナリストとしての意地で「はいそうですね」とは言えないらしい。影としては写真を記事付きで先に出されるのは困るので、他社と比較すれば了承すると目論見を立てた。


「新聞社には別の物、TV局には動画を提供します。因みに御社が一番最初ですよ」

「トップバッターなら効果抜群だよな、分かった条件を飲もう」


 条件を飲めないなら他社に行くと暗に言われた編集長は、時間指定など取るに足らない問題だと判断したらしい。影は写真の転送を済ませると、それではの言葉を残し風が吹くように消えてゆく。


「さて、難関の社長決済を取らないとな」


 得ダネを得た編集長はこれから剛腕社長の元に出向き、速報を打つタイミングに制限が設けられたことを説得する事になる。困難が予想されるが<守って頂ければ新たな写真を送りますわよ>と影からメッセージが届き、俄然ヤル気を出していた。


 <<デルタ観光協会・ディスティア支部>>


 暴虐出港後、ディスティアの船員会に持ち込まれた安否情報は正午に開示されると昼前に伝えられる。短い時間にどれだけ集まるか予想がつかない中、30分前にも関わらず、デルタ観光協会前には約200名を超える人々が集っていた。


 <11:55>


「ママー、ジューちゅちょーだい」

「はいどうぞ」


 正午が近づく頃、正門前には予想に反して大勢の人々が溢れ、ザッと数えても600名はくだらないだろう。小さな子供の手を引く母親は雑踏を避け、遠巻きからその様子を伺っていた。


 <12:00>


 ガーンゴーンと正午を知らせる鐘が鳴り響いた数秒後、掲示板に生存者リストが映し出された。


「確認したぞ、速報を打ってくれ」


 予告通り画面が切り替わり、名簿を視認した編集長は本社に連絡を入れた。


「生きてた、あなた生きてる」

「やっぱりアイツは生きていた」


 掲示板に群がる人々は探している名を見つけると歓喜の声を上げ、その熱気は増すばかりだ。遺体を引き渡した後の捕虜達は誰も亡くなってないので、当然の結果と言えばそれまでだが、内情を知らぬ人にとっては藁にも縋りたい気持ちなのだろう。


「同じ物を紙に印刷しました、皆様どうぞ」

「おお、こっちに回してくれ」

「こっちにもちょうだい!」


 小さな掲示板に人々が押しかければ大混乱を始めるのは必至、そんな事など予想していた職員らは印刷した紙を一斉に配りはじめる。


「アーロンは生きてた、生きてた!」


 規則正しく並んだ細かい文字の中から探し人を見つけた先程の若い母親は、涙を流しながら我が子を抱きしめ喜びを分かち合っていた。


「なんなんだこれは、治安維持部隊を召集するんだ」


 騒ぎが大きくなり始め、誰かが通報したのか警官が駆けつけて来るものの、野次馬や報道関係者などが加わり、観光協会の前の道路は大勢の人々で埋め尽くされ身動きが取れない状態になっていた。騒乱を抑えるために拡声器で呼びかけるが誰も見向きもしない。


 「デルタの怪情報に惑わされないで速やかに解散してください」

 「馬鹿野郎、さっさと捕虜を取り戻せよ」

 「早く救出に行けよ、この税金泥棒め!」


 生存が確認され落ち着きを取り戻せば無性に逢いたくなるのが人の情というもので、安否情報を嘘つき呼ばわりされれば反発心が湧きあがってもおかしくない。怒りの矛先が警官らに向けられ熱気から殺気へと変わり始めてしまう。


 <<同刻・ディスティア総統府内>>


「そ、総統閣下、これをを見てください大変な騒ぎになっています」

「なんだ!これは」


 いつもなら「食事のお時間です」と執事が呼びに来て本日のメニューの説明を受ける時間帯だ。しかし慌てる彼は部屋に入るなりモニターの電源を入れる。


 >>>>>

 「デルタ大使館前です。本日正午ごろ先々月から行方が分からなくなった、80名もの死者を出した特務艦の乗組員が生きているとの情報が、デルタ観光協会から発表されました」


 「繰り返しお伝えします。本日正午ごろ行方不明だった450人の安否に関する情報がデルタ観光協会から発表されました」

 >>>>>


 映し出されたのは勿論大騒ぎになっている観光協会前のライブ映像だ。それを一目見たセオドールは怒り狂い即刻封鎖しろと命令を出すが‥。


「参加者の殆どが下士官の家族でして手を出せないのです」

「なんだと軍の家族だと」


 反戦活動家連中なら精々10名程逮捕すればいつもの流れというか、デモは即座に沈静化して釈放までの数ヶ月は大人しくなる。しかし今回は軍関係者なので手荒な真似をすれば反発を招くのは必至だ。


「ですから揉めると、あの件が燻っていて猛反発が予想されます」

「嗚呼忌々しい、俺はただ見ているしか出来ないのか」


 執事が遠回しに語るのはフロストの件で軍部の求心力が削がれ、クーデターに発展するかもしれないと暗示している。言われなくても理解しているセオドールのはらわたは煮えくり返るが、手を出す事は憚られ苦虫を嚙みつぶしたような表情をするのが精一杯だった。


 ーー


 <<12:10・デルタ観光協会前>>


 警官が放った余計な一言のおかげで安否情報が行き渡っても尚、騒乱の熱が冷めず、歓喜と熱気と殺意が入り混じり混沌とする中、緊急速報を知らせるスマホのアラームが鳴り響く。


 <ディスティアジャーナル速報・不明の乗組員450名生存が確認される>


 流れてきた速報は文字情報とクワを片手に麦わら帽子をかぶった笑顔の捕虜たちが農作業をしている写真だ。それを見た人達は虚を突かれたように画面に食い入り静寂の時が流れた。


「ふざけるな、やっぱり情報は本物じゃないか、早く助けにいけよ(怒」

「皆さん落ち着いてください(汗」


 我に帰った人々の怒りの矛先は警官達に向けられ、騒乱がまたぶり返してしまう。悪い事に戦争反対と書かれたプラカードを持った連中が間に割って来てしまった。


「戦争はんたーい」


 帝国なのに反戦団体が活動できる理由は実はガス抜きの為に存在しているに過ぎず裏で繋がっていたりする。とはいえ熱意ある活動家が存在するのも事実で、ここぞとばかりに乗り込んできたのだ。


「ウフフ思惑通りね、さてと次の仕込みをしなくちゃ(笑」


 ステルスモードで観察していた影はフッと口角を上げると、その場からまた風が吹くように消え去る。ジャストタイムでのTV中継、ちょうどいい塩梅で訪れる警官達、雪崩れ込んできた反戦協会などは、全て彼女が仕込んでいたのは言うまでもない。


 ーー


 <<同刻・ジェフの私室>>


「フォフォフォ、アーレイ余興にしては面白いな」

「更に混乱を巻き起こす動画が後ほど流れますし、当分の間は収まらないでしょう」


 謁見室から場所を移し、今はジェフの私室でアイシャを含む4人で現地の中継映像をお茶を嗜みながら観戦中だ。ディスティアとの時差の関係であと数時間遅ければティーカップではなく盃に変わっていただろう。


「ほんと、アーレイ様の悪知恵は凄いですね〜」

「何を言っている政治的に不安定にすることが目的の作戦だぞ~(笑」

「目が笑っていますよ、説得力ゼロです!」


 物事を進めるには手段を選ばないアーレイのやり方を客観的に見れば、狡賢い武器商人のように見えてしまうだろう。しかし金品も名誉も女も不要と言い放つ無欲な奴は笑みを溢しながらまるで楽しんでいるように見える。それが分かっているフローレンスも笑いながら冗談を返すのだった。



 <<数時間後・ディスティア総統府内>>


 夕方近くになると流石に観光協会前は静けさを取り戻し、抗議していた関係者の姿はまばらになっていた。だがアーレイと影の策略によってそれはテレビの前に場所を移しただけで、新たに追加された写真や動画が流れ、沸々とした怒りは見えない所でマグマのように溜まっていた。


「これは武力では無く、情報の波状攻撃だ」


 ギリギリと歯ぎしりをしながら悔しそうな顔をするセオドールは、次から次へと流れる捕虜の姿を見て不機嫌が加速していた。そんな時に執事が「全員の集合写真ですね、これを用いれば顔認証で安否がわかります」と空気を読めない発言をしてしまう。


「ふざけるな、言われなくとも分かっておる、粛清するぞ」

「わわ、すみません総統閣下」


 逆鱗に触れてしまった執事は粛清の言葉を聞くと膝を突き命乞いを始める。しかし腹の虫がおさまらないセオドールは抜剣すると大きく振りかぶり、首を落とす構えを見せた。


「総統、お忙しい所すみません帰還したルドルフ准将がお会いしたいとの事」

「いま忙しい、後にしろこいつを切らねばならぬ」


 戻ってきたルドルフはニュースを見て慌ててアポを取り、連絡を受けた秘書官は重大な事を知っていると言われ急いで取り次ぐために部屋を訪れたらしい。だが激昂している閣下は顔を真っ赤にして今にも剣を振り下ろしそうだ。


「閣下、ルドルフは安否情報を流した首謀者を知っているとのこと」

「なんだと、ルドルフを呼べ、早くしろ」


 あと数秒遅れれば首が床に転がる筈だった執事は、紙一重で命拾いをする事になり、後に訪れるルドルフは運命の悪戯によってとんでもない事に巻き込まれていくのだった。

よろしければブクマ、評価お願いします。

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