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ルドルフと知恵比べ。

ルドルフと出逢います。

 <<トレミー星団・外周部>>


「ジャンプアウトするナノ」

「遠距離レーダーに感あり、距離0.8光年先」


 暴虐が次にジャンプした場所はアーレイがルドルフとの交渉中に秘密裏にレーダー角を調べさせ、そこから支援艦の位置を割り出した場所だ。即座に長距離スキャンを行うと予想通り反応が出た。


「それにしてもわっかり易い所にいたね。とりまチャフとシーカー撒いて(笑」

「スキップジャンプするナノ」


 最初にフローレンスがマークした地点の割と近くに支援艦はまどろんでいた。この距離だと早期哨戒レーダーは反応しないので対応が遅れるのは必至だ。それを織り込み済みのアーレイは通信妨害用のチャフとシーカーを飛ばし強襲する指示を出す。おつりで近くにフレッチャーがいればと思いつつショートジャンプをキメる。


 ーー


 <<ディスティア帝国軍・支援艦>>


「約1光年先に暴虐出現しました」

「艦隊に連絡だ、直ぐに連絡を入れるんだ」


 支援艦も長距離レーダーで艦影を捉えてはいたが艦船データーを待っていたので、既に通信妨害が行われた後だった。


「艦長、通信阻害されています」

 Ai「高速で接近・・ジャンプアウト」


 Aiが反応するよりも早く暴虐は支援艦の前方に姿を現す。発見から時間にして10秒も経っておらず、驚く間も無くマットブラックの船体が嫌でも目に入る。


 <ディスティア軍、支援艦艦長に告ぐ其方はブルーシグナルだ降伏せよ、繰り返す降伏せよ>

「シグナルグリーンに変更だ急げ、それとジャンプだ」


 支援艦の艦橋内は突如現れた暴虐の姿を見て慌てふためくが時既に遅しだ。ブルーシグナルを掲げていたので言い訳すらできないだろう。あたふたしている間に暴虐の主砲発射口が真っ赤に染まり始め、画面に映るアーレイはニヤリと笑う。応答が無ければ艦橋を破壊するつもりだ。


 <ジャンプコア起動を確認したら攻撃する。2度は言わんさっさと降伏するんだ>

「わわわ、早く早く逃げろ」


 今の状況はどう見ても四面楚歌だろう。ジャンプ起動レバーを握り締めている操舵手は、これを引いたら終わると理解しているのか、艦長が大声で喚いても決して動かそうとはしない。


「マルヴィン艦長ご決断を、返答しないと終わってしまいます」

「仕方ないか」


 副官に説得されたマルヴィン艦長は嫌々「シグナルグリーンに変更する戦う意思はない」と返答を試みるも、この場から逃れたい願望が駄々洩れでアーレイは思わず苦笑いをしてしまう。このままでは埒が明かないと判断したのか、突入口で待機しているキースに「そろそろ出番だぞ」と連絡をいれた。


 <今更グリーンに移行しても駄目だ、交戦協定に基づき降伏しろ>

「嫌だ~降参なんかしたくない、獣の国には行きたくない(泣」


 悪足掻きをするマルヴィンは本当に情けない。小太りの風体と人を小ばかにするような嫌味な目を持ち、脂ギッシュな顔つきから格下には強く出る小心者だと想像できる。そして面倒になったアーレイはシールド無効化を行い、キースに突入指示を飛ばす。


 <<5分後・・・>>


 マルヴィン「はい、これがジャンプキーになります。お願いだから殺さないで(泣」

 キース「手間ばかりかけさせやがって、ふざけんな!」


 機甲歩兵に艦橋を占拠され完全降伏を受け入れる事になり、マルヴィンはその証として、ジャンプ起動に必要な電子キーを泣きそうな顔をしながら渡す。そして2つ光の粒子が現れアーレイとフローレンスが転送されてくる。


「俺が艦長のアーレイだ。グリーンならこんな事にならなかったのにな、それでフレッチャーはまだ来ないのかな~(笑」

「・・・・(黙」


 間抜けなマルヴィンにフレッチャーの事を話すと、しきりにレーダーモニターを眺め、額には汗が噴き出し、間違いなく助けに(ルドルフ)来ることを望んでいる。逆に考えればフレッチャーは近くにいないという事だ。アーレイは「ルドルフは直ぐには来れないと思うよ、 残念だな」と鎌をかけてみた。


「まさか、おまえが撃破したのか嘘だろ」

「あはは、お話しして戻る途中だ。ほんと馬鹿だな」

「うぐぐ、少佐の癖に言いたい放題言いやがって」


 激おこで茹でタコみたいに真っ赤な顔をするマルヴィンは、マジで小物なのでぶん殴りたくなるが、姫様の前では憚られるので無視して作業の進捗状況を確認する事に。


「精密スキャンが終了しました。普通の輸送艦ですね」


 支援艦の内部はがらんどうの単なる移動用の箱で専用設計のさざなみとは違い、あり物で急遽こさえた船らしい。何の価値もないと判断したアーレイは姫様に今後の対応を聞いてみた。


「追手が来る前に行動不能にして、フレッチャーを探して拿捕」


 順を追いキリッと澄まし顔で行動不能とか拿捕とか淡々と言い放ち、それはそれで恐ろしく感じる。仕上げにマルヴィンを睨みニヤリと口角を上げれば、悪女フローレンスに恐怖してブルルと震えていたよ。


「フローレンスは支援艦を沈めたいの、なら暴虐の全力砲撃するところ見たいよね(笑」

「バーンと散って花火みたいに綺麗ですかね(笑」

「わわわ、やめて〜(泣」


 砲撃や花火と言われ震え上がったマルヴィンは泣きべそ状態になり、追い打ちをかけようと笑いながら「砲撃しないなら通信機と生命維持装置をぶっ壊しましょう」とか言って悪ノリしていた。


「キャーやめて〜死んじゃう〜(泣」

「姫様は冗談も上手いな(笑」

「それほどでも〜(喜」


 悪ノリが好きなアーレイを真似ただけの冗談だとわかり、それに伴ってそろそろお暇しますかの雰囲気を流すと、小物のオッサンはハァ〜とため息を吐いて安堵していたわ。


「フローレンスそろそろ戻ろうか」

「その名はまさか、そしてその紋章はもしかして」

「デルタの王女様だよ。出航の時に公表しているから別に秘密じゃないけどな」

「高貴なお方が戦場なんて考えられん」


 冷静になりフローレンスの身分を知ったマルヴィンは驚愕の表情を浮かべていたよ。アーレイ的には長居は無用なので「じゃ戻るわ」と言って機甲歩兵と共に暴虐へと戻って行くのだった。


 ーー


 <<旗艦ラーハルト・艦橋>>


「引き続き警戒体制を維持する」


 アーレイが去った後、今回の指揮を任されている副官の男は厳戒態勢を取りつつ現状維持の判断をしていた。その姿を見守るルドルフは渋い顔をしてジロリと睨みを効かせている。何故なら先読みをした行動が出来てないからだ。


「俺ならアーレイが何をするか考え指示を出すのだが、まだまだヒヨッコだな」


 今回の出来事を振り返り相手の立場で思考を巡らすルドルフは、強かなアーレイなら支援艦にちょっかいを出すだろうと予測していた。しかし副官の男はその結論に至らないのか、連絡すら取ろうとせず様子見をしたままだ。


「このまま現状維持でどうするんだ。作戦は失敗したんだぞ」

「そうですよね、撤収命令を出します」


 暴虐が姿を消して10分ほど経過していたが、ルドルフ的にはアーレイが支援艦を探し当てるのには、最低でも30分は必要だろうと予測してジッと待っていた。指摘された副官が思い出したように連絡をとり始めると、あまりの馬鹿さ加減に顔を直視すると怒りが湧き上がりそうになる。気を紛らわせる為に艦外カメラの映像を眺めることにした。


「まてよ、アンテナの角度で位置がバレたかもしれない」


 臨戦体制の艦隊は即応するために微速で周回を繰り返す。ルドルフは指向性アンテナが支援艦の方角に対して追従する動きを見て、もしかしたらアーレイは暫定的に位置を掴んだかもしれないと予測する。


 通信士「通信不可能、ジャミングの可能性大」

 ルドルフ「奴のしわざだ!緊急ジャンプを行う座標は支援艦だ」


 脳裏を過ぎる悪い予感が的中したルドルフは皆が反応する前に大声で指示を出す。やっと事の重大さに気がついたのか副官はハッとした表情をすると「位置が分かるなんて信じられない」と呟くだけで精一杯だった。


「君は一々言わないと動けないのか、アーレイの仕業に決まってる」

「すみません司令、反省します」


 15隻の艦隊はシンクロを効かせ旗艦を先頭に順序良く光の粒子に変わりながら、支援艦を救出する為に漆黒の海に消えて行くのだった。


 ーー


 <<暴虐内・艦橋>>


「アーレイ様、このままフレッチャーを待つのでしょうか」

「キースの訓練を兼ねて強襲しただけだし、いないからもういいかな〜」


 これ以上は捕虜を増やしたくないし暴虐に乗せたくないし、撃沈しても戦艦じゃ無いので後味が悪いし、要は近くにフレッチャーがいなかったので、もうどうでもよくなていた。


「実践訓練ですか、それは考えつかないわ~(呆」

「でもね、ルドルフ相手じゃそんなに待てないかな〜(笑」


 ここでアーレイは奴なら確実に気が付いて後を追ってくると考え、支援艦のジャンプキーは返さず手元に置いていた。それをクルクルと回して遊んでいるとフローレンスは何か気が付いたようだ。


「あー、それって足止めの為に手元に残したのですね」

「ご名答、ポコ、ジャンプシーケンス発動、座標はヒャンド中立地帯」

「ナノナノ」


 奴がこの場所に必ず来ると考え逃げる準備を始め、ポコが座標の入力を終えると同時にAiが「高速で接近する艦隊を感知」と知らせてきた。


「やった!やっぱ来た(笑」


 予感が的中したアーレイが無邪気に笑い、戦うより遊んでいると感じたフローレンスは「もう子供みたいですよ」と言い放ち笑っていたよ。


「追いかけごっこは楽しいよね、さぁ逃げようか」


 アイツが率いるディスティア艦隊が到着寸前に、支援艦を放ったらかしにすることを決めたアーレイは暴虐と共に亜空間の海に消えていく。


 <<支援艦ヴォルフ・艦橋>>


 Ai「暴虐ヒャンド方面にジャンプ」

「はぁ〜助かったわ」


 何の前触れも無く暴虐が姿を消し、突然訪れた解放の時を味わうマルヴィンはダラリとキャプテンシートに身を沈め安堵する。だがそれも束の間、高速で接近する艦隊を捉えたAiが警告を鳴らすと、思わずシートから飛び上がり「ルドルフだよな、そうに違いない」と呟きながら艦船データーが表示するまで慄き、ちょっとチビっていたのは内緒です。


 <<ハーラルト・艦橋>>


「支援艦に損害確認されず、暴虐は数秒前にジャンプしました」

「アーレイの奴はこちらの動きを読んで遊んでいるな」


 到着したディスティア艦隊は連絡を取る前に支援艦のリンクシステムを介し、暴虐が数秒前に現場から立ち去った情報を入手していた。無論逃走方向が表示されいま直ぐにでも追いたい所だが、コアの冷却が終わるまで待たなくてはならず、苛つくルドルフの眉間には皺が増えつつあった、


「繋げ、マルヴィン聞こえるか、無事か」

 <到着寸前に逃走しました。ジャンプキーを奪われました>


 ジャンプキーを奪われたアルヴィンはバツが悪いのか、しどろもどろな答え方で今までの経緯を話す。聞いたルドルフは「アーレイの小賢しい奴め」と怒鳴ると直ぐに後を追う指示を出した。


「護衛に戦艦3隻付ける、残りは暴虐を追うぞ」

「司令、コア冷却完了まで残り5分」

「わかった!タイミングは任せる。ヒャンド中立地域に向かえ!」


 暴虐と違い従来の戦艦はジャンプコアの冷却が終わらないと次に向けて飛べない。とりあえずルドルフはフレッチャーに撤収命令を下す。


「君は命拾いをしたな、とりあえず待ってろ」

 <了解しました。有難うございます>


 数分後、ディスティア艦隊はアーレイを追うため2度目のジャンプを行うのだった。


 <<トレミー星団・中立地帯>>


「付近に艦船の感なし干渉波レーダーも同様です」

「残念、あの船は逃げたのですね」


 次にアーレイが向かったのはあのフレッチャーを発見した座位近くだ。ジャンプアウトすると同時に電磁ピンガーや干渉波レーダーを駆使して探すものの、既に索敵範囲から抜け出したらしい。とりあえずフローレンスに意見を聞くと「探す間にあの艦隊と遭遇する可能性が高い」とちゃんと分析して答えを出してくれた。


「そうだね、じゃヒャンド支配地域にジャンプしようか」

「そうですね、キーを持っているので再会すると面倒ですね」


 とりあえず戻って来たものの発見出来なければ逃げるが勝ちだ。ヒャンド恒星圏内に向け、すたこらさっさとジャンプして向かう。


 <<ヒャンド支配地域・外周部>>


 防衛戦の要になるヒャンドの支配地域は、先程の地点と目と鼻の先で敵艦隊が現れたら即座に見つけられる距離だ。ジャンプアウトした暴虐は反対方向にある恒星圏内に向け移動中だ。


「因みにあのままあステルス状態で隠れていたら見つかりますか」

「中立地帯で隠れんぼする事になるよ、あのゾクゾクする緊張感は格別だぞ(笑」


 もしそのまま留まっていたら艦隊に追い回された挙句、中立地域外から電磁ピンガーを打たれ、終わりなき隠れんぼになる。だからここで姿を見せるんだとアーレイが説明するとフローレンスは「わ、わ、私は遠慮したいですですです(汗」と大汗をかいて訂正していたよ。


「暴虐なら沈まないから大丈夫なのに」

「だってアーレイ様がゾクゾクって、私なら絶対気絶します!」

「それならお姫様抱っこで、艦長室まで運んであげようか」

「そのまま私の初めてを貰って頂けるのでしたらお願いします」

「なら放置だな!」

「酷い!」


 姫様は娶られることを夢見ているけど、こうまで積極的だと「俺はレアスキル持ちなのか」と勘違いしてしまう程だ。実はあながち間違いではなく、アーレイが好意を持つと自動的に恋の魔眼と同じ効果が発動する。その事を知ってか知らずしてか姫様を弄っていると、早期哨戒レーダーが反応した。


「ディスティア艦隊ジャンプアウト、数12」

「やっぱりあの准将は切れ者だね〜じゃ帰ろうか」


 暴虐が支配地域に入り姿を見せれば、ルドルフとの追いかけごっこは終わりを迎える。当初の目的だったお話が出来たのであとは寝て待てだ。


「ところでヒャンドには寄って行かないのですか」


 余裕ができたのか姫はあのヒャンドに行きたそうな顔をしたので、話を聞けばまだ訪れた事がないそうだ。なので「フローレンスが降りたらすぐには帰れないよ」と言ってみたが、意味が分からないのかキョトンとしていたよ。


「そうなのですか、まぁ確かに表敬した話は聞きませんね」

「王女様が出向けばゴマスリ大統領がウザいぞー」

「わわわ(汗」


 大統領のセミョーンとは面識はないがクリスから聞いた話だと、施しを受けるのが当たり前だと考えるさもしい奴で「手ぶらで表敬すればねっとり嫌味言われ、おねだりされるぞ」と教えてあげる。


「ひゃー!勘弁してください。帰りましょう、絶対帰ります!」


 貧相なセミョーンが言い寄る姿を想像したのか、フローレンスは真っ青な顔をして帰りたいを連発していたよ。ポコは大笑いしながらジャンプシーケンスを発動した。


 <<中立地域・旗艦ハーラルト>>


「うーん、どうしてこうも先を読めるのかなアーレイの奴は」


 支援艦に撤退命令を出した後、急いで向かった中立地域。ルドルフは到着するなり暴虐が既に支配地域に入り、常に一歩先を立ち回る姿を見て悔しそうだ。


「ジャンプコア起動確認。暴虐ジャンプしました」

「司令、追いかけますか、今なら追えます」

「無駄だデルタに帰った。連絡して我々も引き上げよう」


 嘲笑うかのように暴虐は消えて行き、キーを取られたままの支援艦を巻き込みながら帰る事になり、虚しさだけが残るルドルフは苦虫を噛み潰したような顔をする。そして安否情報が流れ大混乱の最中にセオドールと面会する事が予想され、行き場のない怒りや悩みが混じる怒気が放たれ、艦橋内の空気が凍りついたのは言うまでもないだろう・・。


 ーー


 <<暴虐・艦長室>>


 ジャンプを終えた暴虐はデルタジャンプ阻害地域をデルタ軍港に向け航行中だ。あと数十分もすれば到着するだろう。艦長室では反省会と称して2人はのんびりお茶を嗜んでいた。


「戦艦に横付けした時は生きた心地がしませんでした」

「初陣なのに取り乱さず冷静に対処出来たね。評価するなら満点だ」


 初めての出陣で敵戦艦と至近距離で遭遇なんてあり得ない。取り乱さなかったお姫様は軍人としての素養があるかもしれない。アーレイが褒めると満面の笑みになったよ。


「キャ!補佐官としてバッチリでしたね、けど何で冷静に喋れるのですか」

「言葉が通じるからさ(笑」

「アーレイ様ご冗談も程々に、そんな状況では無かったと思いますけどー」


 敵艦が真横で緊張感全開の状態なのに、アーレイもポコも余裕の表情を浮かべ、対応するその姿を見たフローレンスの素直な感想だろう。アーレイは「余裕が無ければマルヴィンみたいに表情に出るし、相手の策に乗せられるだけだ」と正解を教える。


「恐怖してでも常に冷静であれという事ですね。勉強になります」

「喜んで良いんだぞ、君のお陰で作戦を立てられた。ルドルフが冷静だった事に感謝だね」


 手紙がヒントになった今回の作戦はディスティア時間の昼に発動を迎え、丁度陛下に報告を上げる時と重なるだろう。アーレイは素直に礼を言うと、お姫様は嬉しいのか「悪戯混乱作戦ですよねー」と笑っていた。


「大した費用も必要とせず、内側から揺さぶる作戦だぞ〜(笑」

「アーレイ様、それって悪知恵というのですよ〜(笑」


 クスクスと笑うフローレンスは冗談を交え凄く楽しそうだ。しかし彼女のモジュールを介した中空モニターには帰国後の予定が映し出され、とあるお茶会の参加者を見て心の中に暗い影を落としていた。


「戻ったら忙しくなるな」

「・・・そうですね悪ガキさん」


 一瞬だけ不安に満ちた視線をアーレイに送った彼女は笑いながら目を瞑り、心の中で「早く娶らないといなくなりますわよ」と想い、ゆっくりと目を開けた。心情を読み取って欲しくて取った行動はアーレイに伝わるものの、誠実という名の心のブレーキがかかり「悩んでいるのフローレンス」とは言えず「失礼な策士と言ってくれたまえ」と気にする素振りを見せず答えるのだった。


「ふふ、アーレイ様って面白いですね」「そうだフローレンスに階級を出さないと周りが迷惑するんだよ」

「階級は不要ですよ、このままがいいです」


 補佐になって数日で出撃したのでこれといって弊害はなかったが、見送るクリスに航海中にそのことを頼むと耳打ちされていた。要は位の高い王族が階級なしで存在すると、命令系統に混乱をきたし仕事がやり辛いのだ。


「俺はこんな態度だけど、クリスとか相当やり辛いと思うよ〜」

「はぁ、そうなのですか」


 軍に入って数日なのでわからないのは仕方ない。ご不満なのかブッと頬を膨らませたので質問形式で順を追い説明を始める事にした。というかジェフと同じで掛け合いになってしまう・・。


「軍のトップはだーれ?」

「陛下ですよ」

「君は何番目かな」

「そっか、陛下の下になるからやり辛いですよね!」

「やっと分かったか、このお花畑!」

「ひっどーいお花畑とは何ですか訂正してください!プンプン!」

「ポンコツ姫!」

「キー!ポンコツとは何ですかー!」

「訂正します世間知らずの姫様」

「そ、それはそうですね」

「ふふふ、俺より上になると思うなよ。上官の命令は絶対だからな」

「変なこと命令しないでくださいよね(恥」

「えっ、例えば」

「そ、それは、いやん!(赤面」

「どうした顔が少し赤いぞ、脱げとか想像したでしょ」

「それで階級はどうしますか」

「シカトかよ」


 遠くに惑星デルタが見え始め無事に戻って来たと胸踊るのか、和気藹々とする2人は屈託のない笑顔を見せ、まるで恋人同士みたいな掛け合いの会話をしている。話をぶった斬るフローレンスは近づく本星を眺めながら、アーレイとの心の距離が少しでも詰められればと想い、恋心を焦がしていたのは秘密です。

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