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暴虐とお姫様。

さあお待ちかね!フローレンスが戦場に行きます。それとルドルフと初顔合わせだよ。

 <<暴虐・艦橋内>>


「電磁ピンガーにて安全を確認、中立地域内に敵影無し」


  お姫様を乗せた暴虐は哨戒任務のため、トレミー星団内の惑星ヒャンドに程近い中立地域付近を航行中だ。あと数分もすれば、いよいよディスティアの支配地域ギリギリの地点に向かい哨戒活動を行う予定だ。通常は5隻ほどの艦隊を組んで行う、しかし今回は暴虐単独で動き敵の出方を見るという少し特殊な任務が与えられている。


「さて、敵さんが乗ってくれたら万々歳なのだが」


 作戦立案したアーレイは暴虐を単独で動かす事で、敵が探りを入れて来ると予想し、偶然を装い敵艦隊の司令官とコンタクトを取りたいと考えている。無謀な作戦ではあるが、上手く立ち回れば非公式な窓口を作れる絶好のチャンスだと思っていた。敵と正面から向き合う恐ろしさを未だ知らないフローレンスは、艦長席の隣に急遽設けられたキャプテンシートに身を沈め作戦の行末を見守っている。


「出発して1時間かからずにトレミー星団まで来れるのですね。客船とは大違いです」


 真新しい軍服を身に纏うフローレンスは極力目立たないよう長い髪を纏め上げ、士官用の軍帽を深く被り薄化粧も相まって割と地味に見える。初めて戦艦に乗船したと言う割には意外にも落ち着き払っていた。


「民間に軍用ジャンプコア技術は渡せないからな。さてここからが哨戒活動の本番になるぞ」

「いよいよですね、少し緊張してきました」


 右腕上部と左の胸元にある王家の紋章が嫌でも存在感を醸し出し、それを横目で見るアーレイは会敵した場合どのような反応を見せるか興味津々だったりする。一方のフローレンスは軽く緊張しつつも、補佐として役目を理解しているのかシート脇のモニターを弄り現状分析に余念がない。


 <<5分後・・・>>


「アーレイ艦長、これより作戦行動に移ります」

「シグナルグリーンのまま第2戦闘体勢を維持、主砲安全装置解除、火器管制レーダーアイドリング」

「ジャンプコアオンライン、照明変わるナノ!」


 照明が白色から青に切り替わりブリッジ内が薄暗くなる。大型モニターには主砲の照準、近距離、長距離のマップ、両サイドには多種多様な解析情報、船体の状態を表すグラフィックなどが表示され、嫌でも緊張感が高まってしまう。


「君はどこまで補佐したいんだ。内容としては攻撃命令、操船指示などだ」

「いきなりですか、一つ一つが重大ですよね、戦えば人が・・死にますよね」


 ポツリポツリと語るフローレンスは止めどなく増してくる緊張感に押し潰され、必死に耐えてはいるものの表情が固くなり始めた。


「作戦を遂行し勝つのが我々の仕事だ。戦いになれば人が塵のように死んで行く」

「これが、アーレイ様が活躍している世界なんですね・・・」


 戦闘になれば人が死ぬのが当然の世界に勢いで来てみたものの、いざそれが目の前で繰り広げられると考えたフローレンスは今更ながら狂気の世界だと実感してしまう。とは言えまだ会敵すらしていない段階なので取り乱しはしないが、既にメンタルを削られ顔色が優れない。


「もう怖くなったのかな、殺すか殺されるかだけの怖い世界だぞ(笑」

「私たちの平和はアーレイ様達の努力の上にある事を、本当の意味で知りました」


 緊張しないよう笑みを忘れないように話をするがそれが逆に怖く感じたのか、モニターを触る彼女の指先がフルフルと震え始めた。


「ステルス起動、進路そのまま。ポコ少し席を外すぞ」


 みかねたアーレイはフローレンスを落ち着かせるため、艦長室に入るように指示を出し、緊急事態に備えポコに権限を渡し後を追う。


 <<艦長室>>


「フローレンス無理をするな、今なら一旦デルタに戻ってもいいぞ」

「想像以上に凄い世界ですが、まだ会敵すらしていませんのでこのままで構いません」


 艦長室に入りお茶を一口飲んだフローレンスは落ち着きを取り戻したのか、みるみる顔色が良くなってくる。そして自分の使命を思い出したのか、目に力がこもり始めたので「言い方は悪いが温室育ちの君らには荷が重い」と言ってみる。


「はいその通りです。ですがもう迷いません。アーレイ様の右腕として付き従います」


 自分のメンタルの弱さを実感して、これではダメだと悟ったフローレンスは喝を入れ、出直しといったところだろうか、徐に胸に手を置く立ち姿はまるで忠誠を誓っているようだ。前に進む決心をしたのでこの先、多少挫ける事もあるだろうけど、もう大丈夫だろう。


 <艦長、国籍不明の艦影を確認ナノ>

「わかった直ぐにブリッジに向かう、フローレンス本番だぞ」

「はい!」


 持ち直すのを待っていたかの如く敵艦を知らせる連絡が入り、2人は足早に艦橋へと戻っていく。


 <<暴虐・艦橋内>>


「干渉波レーダーに推定7万トン級の小型戦艦が引っかかりました。コースはヒャンド防衛線に沿って航行中」


 レーダー網の網に掛かったのは艦影からすると、どうやらディスティアが真似て作った小型の新型艦らしい。あの戦艦は航続距離が意外に短く支援艦が必要なタイプなので、単独となれば罠と思った方が賢明だ。


「参考までにフローレンスの意見を聞きたいのだが」

「航続距離を考えると敵船は囮りと思って間違い無いでしょう」


 いやはや彼女はいつの間に勉強したのだろう。強制学習装置を使用したにせよ中々の努力家だと思う。付け加えて「業火級が出港する際に情報開示すると、会敵率が上がりそれを鑑みると、かの船の行動は囮で間違いありません」と断言していたわ。


「その可能性は大きいと思う。この後の作戦行動は君ならどうする」

「あの船を攻撃するより、支援艦を探して無力化するのが最善手かと」


 初陣なのに囮に気がつく辺り、中々どうして筋がいい。感心していたアーレイは、実は支援艦を含め囮だと考えていた。


「中々良い判断だけど思うけど、それも含めて罠だよ」

「それでしたら敵艦隊の位置の割り出しですね」


 タブレットを弄りメインモニターの海図に敵艦を中心にジャンプ出来る範囲を丸で囲み、ディスティア側に近いトレミー星団の外周部と交わる部分にマークを入れ、それを線で結んだ。


「その場所が支援艦が潜む暫定ポイントだな」

「はい、この線の真ん中とディスティアを結んだ直線上のどこかに、艦隊が待機中と思われます」


 簡単に二等辺三角形で表すと、左右が不明艦と支援艦の位置で、頂点が艦隊が潜んでいる場所だ。後は駆けつけるのに最適な距離を割り出せば多少の誤差はあるにせよ、接近するのは可能だろう。


「それじゃ艦隊司令官に会いに行くとしよう」

「え゛!どうやって探すのですか」


 大雑把に敵艦隊の位置を割り出してはみたものの、広い宇宙の中を探すのは困難だ。だが敵将とお話しする事が目的のアーレイは解決策があるのかニヤリと笑った。


「スキップしながら行けば良いじゃないか〜」

「ですよね〜」


 既存の戦艦はジャンプすれば再起動に時間を取られる。けどスキップジャンプが得意な暴虐なら御茶のこさいさいなので、宇宙空間をピョンピョン飛んでいくつもりだ。兵法を学んでいたお姫様だったが、この発想は思い浮かばなかったらしく、悔しいのかジト目になる。


「じゃ決まりだな、火器管制はOFFで、シグナルグリーンのまま行こうか」


 敵艦隊の真上か真下かそれとも真横になるか分からない。とりあえず行ってみるしかないだろう。とは言え接触するのが目的なので艦橋内は緊張感の欠片もなく、先ほどまで顔色が悪かった姫様は元気を取り戻していた。


「シグナルグリーンは交戦の意思無しですが、攻撃してきませんか」

「ジャンプアウトするまで船籍は分からないし、支配地域外だから大丈夫だよ」


 星団会議の場で正式に決まったシグナルは凄く便利で無駄な交戦が激減していた。今回はこれを有意義に使い敵司令官に会いに行こうとするアーレイは、フローレンスが描いた線の上にジグザグな航路を描き発進の指示を出す。


「ジャンプシーケンス発動、飛ぶナノ!」


 ジャンプレバーに手を掛けるポコは楽しいのかニンマリ笑顔で、逆にフローレンスは緊張し始めたのかアーレイの手の上に自身の手を重ね合わせる。そして暴虐はディスティア艦隊とコンタクトを取るべく漆黒の海に消えて行った。


 <<スキップジャンプ・5回目>>


「次の座標は会敵する可能性が高い、総員気を抜くなよ」


 スキップジャンプを用いた敵艦隊探しは、星団側に探査される境界ギリギリから始まり、次で5回目だ。アーレイ的には次かその次の地点で勝ち合う可能性が高いと警告を鳴らす。


「そろそろお出ましですか」

「短時間の移動と精密ジャンプを可能にしたいなら、ここら辺りが限界だからね」


 これ以上の遠方だと時間的にも精度的にも強襲は難しくなり、この辺りが最も有力と考えていた。そして5度目のジャンプが終わりを迎え流れる星々が点へと戻る。


「ジャンプアウトするナノ」

 Ai「敵艦隊補足、注意、注意」

「うわぁ艦長、敵艦隊の真下です。数15、シグナルグリーン」


 ジャンプアウトした直後の艦内はワーニングランプの赤色で染め上げられ、それと同時に3Dマップが浮かび上がる。距離にして約1800キロと表示され艦隊戦を行うには少し遠いが、逆に言えば刺激しない都合の良い距離だった。


「ほらね、いたでしょ(笑」

「いましたね、ほんと子供みたい(呆」


 かくれんぼの鬼が、隠れている相手を見つけた子供のように、喜ぶアーレイを見たフローレンスの目は生暖かい。しかしこの先にゾクゾクするような緊張感に包まれるなど、夢にも思って無いようだ。


「デルタ王国軍、アーレイ艦長よりディスティア艦隊司令官に告ぐ、当方攻撃の意思なし、くれぐれもスキャンするなよ(笑」


 そしてお近づきの印としてアーレイはオープン回線を開き、交戦する意思がないことを笑いながら伝え相手の出方を待つ事にする。


 ーー


 <<少し前・ディスティア軍、旗艦ハーラルト艦橋内>>


「ヒャンドに暴虐はまだ現れないのか」

「フレッチャーや支援艦からは何も報告がありません」


 旗艦のキャプテンシートにドッカリと座り顰めっ面で声を荒げるのは、燃えるような真っ赤な髪色を持つあのルドルフ准将だ。いつまで経っても暴虐が囮に食いつかずイラついていた。


 Ai「ヒャンド方面より高速移動する艦船感知、間も無くジャンプアウト」

 副官「司令、5秒後にジャンプアウトします」

 ルドルフ「なんだと、まさかバレたのか」


 突然の接近を知らせるアラートが鳴り響き、艦橋内は蜂の巣を突いたように慌ただしくなり始めた。ルドルフは逆に冷静になり、識別信号が映るレーダーパネルを凝視しつつ次の一手を考え始め、Aiが<デルタ王国軍・暴虐>と船籍を告げれば自然と眉間に皺がよる。


「ぼ、暴虐が直下に現れました。シグナルグリーンです」

「くっそレッドだ!いや駄目だグリーンのままだ」


 悪名高い暴虐が単騎で現れ反射的にレッドと言い放ったルドルフだったが、瞬時に挑発してはならないと判断した。直ぐに頭に血が昇り戦いに邁進する他の士官とは一味違って様子見を決めたようだ。


「艦長、これは精密スキャンできる絶好のチャンスです」


 功名心が強い副官の男は宣戦布告と捉えられてもおかしくない、精密スキャンを実施すると言い出し、ルドルフは渋い顔に変わる。何故ならあの空母打撃群を襲い多大な損害を与えた暴虐と戦えば、無傷では済まない事を理解しているからだ。


「やめとけ、船底を見せたまま戦えば3隻以上が沈むぞ、君は何人死なせるつもりなんだ」

「それでも、スキャンして秘密を暴露した方が帝国のためになります」

「この前の空母の一件を忘れたのか、それに業火級が現れたら詰むぞ」


 士官の気持ちは痛いほどわかるが、隠密行動を行うために艦船数を減らした艦隊では優位な位置で無ければ戦いを挑むのは無謀だろう。この体制で突入すれば一瞬で数百名もの命が無駄に散ると判断したルドルフは悔しい思いをしていた。


 副長「ですが!このまま指を咥えて見ていいのですか」

 通信士「艦長、オープンチャンネルで呼びかけています」


 混乱中のディスティア軍を嘲笑うように、デルタ軍からのオープンチャンネル要請が入り、ルドルフを含め全員がモニターを凝視した。


 <デルタ王国軍、アーレイ艦長よりディスティア艦隊司令官に告ぐ、当方攻撃の意思なし、くれぐれもスキャンするなよ(笑>


 攻撃の意思がなくスキャンするなと言われ強行すればたちまち攻撃されてしまうだろう。真意を突かれた副官は黙り込み、ルドルフは厳しい表情へと変わり、戦いになるやもしれないと思いつつアーレイの姿を凝視する。


「こちらはディスティア軍、ハーラルト艦長ルドルフ准将。速やかに立ち去れよ、繰り返す速やかに立ち去れよ」

 <了解した。すまんね様子を見にきただけだからすぐ帰るわ(笑>


 モニターに映るアーレイは口角を上げニヤリと笑い、ルドルフはそのふざけた態度が気に食わないのか、ピキピキとこめかみに青筋が沸き立ってしまう。


 ーー


 <<暴虐・艦橋内>>


「帰る前にお話ししたいから、そうだな旗艦の隣に付けてやれ」

「それ楽しいかもナノ、ピッタリくっつくナノ(喜」


 一旦通信を切ったアーレイは悪戯では無いが、旗艦に接近すればたまらず連絡してくると考え指示を出す。ポコは喜びながら座標を入力すると直ぐにジャンプシーケンスを発動する。


「ア、アーレイ様、接近するって、ご、ご冗談でしょ(大汗」

「超接近しても、何もしなきゃ問題ないよ(笑」


 まさかの行動にフローレンスは血の気が引き顔が青ざめ、余裕のアーレイが何を言っても駄目らしい。肘掛けに置いた手がカタカタ、肩はフルフルと震え始めてしまう。


「アウトナノ、距離10メートルナノ(笑」

「こ、この状況は流石に・・こ、怖い、怖いですよ〜(半泣」

「そりゃ敵戦艦が真横にいるからね〜」


 この距離をジャンプすれば一瞬星が流れたと思ったらもうラーハルトの真横で、それも超至近距離だったりする。観測窓を覗けば敵の乗務員がはっきりと見え、今頃、あちらは緊急対応に追われている筈だ。その証拠にオープンチャンネル受信を知らせるタグが現れた。


 <こちらルドルフ、アーレイ少佐は少々おふざけが過ぎないか>


 怖がっているフローレンスを半笑いで見ていると、モニターには激オコなルドルフが映し出され、髪の毛もさることながら真っ赤な顔の赤鬼に変わっていたよ。


「それはお互い様って事で、撒いた毒餌には食い付かんよ(笑」

 <流石にマズ飯だったか>


 両人とも少し鋭い据わった視線を送りながら隠語を使いつつ、頭の中では互いの出方を探っている状態だ。それとは別にアーレイはモジュールを使い、ポコや通信士にとある命令を飛ばしていた。


「ルドルフ准将、ちょっと聞きたいことがある。大勢の捕虜を引き渡したいがどうしたらいい」

 <はっ?なんだと、何名だ>


 全く予期せぬリクエストを聞いたルドルフは一瞬ポカンとするが、即座に交渉だと理解すると、眉間の皺が消え去り前のめりになる。当然食い付くと予想していたアーレイはニヤリと笑い、あまりの太々しさにその表情を見たフローレンスはジト目に早変わりだ。


「400名以上だ、中立区域の観測船じゃ乗り切れないだろ、マジ困ってんだ」

 <その数だと正式に交渉団を立てて、賠償金を用意しないと駄目だろうな>


 人数を聞いたルドルフは凄く真面目な表情へと変わり、もう既に解放に向け思考を巡らせ始めていた。とは言え400名ともなれば本当かどうか疑いたくなるのか少し目を細める。


「そちらと正式な窓口が無いし、もう手狭だし引き取って頂けると助かる」

 <成程、交渉に入りたいのだな。過去の事例からすると上級士官が先と言ったところか>


 過去数百年の間に数回、例外的に捕虜交換が行われた事があり、その事例に習って交渉を始めたいらしい。アーレイとしてはマテウスらを一番先に返そうなどという考えは微塵も持ち合わせていない。なので「バグナー大尉には色々世話になっているから先に下士官を返したい。マテウスくんは馬鹿すぎて後回しだ」と言い放ち、ルドルフがどう反応するか様子見をする。


 <ふははは!貴官は面白いな、そうかマテウスか>

「最近よく言われるよ(笑」


 特務艦の士官で且つ横暴なマテウスの事を知っているのか、アーレイの言いように怒ろうとはせず逆に面白いといわれ、同僚にも嫌われている事が良く分かる。名前を出したことで捕虜解放が現実味を帯びてきたのか「士官が先でなければ閣下が認め無いかもしれない」といきなり本音で話してきた。


「それは理解できる。要するにセオドール閣下を動かす理由が必要ということですよね」

 <難しいと思うがその通りだ。とりあえずジェフ陛下に書簡を出すきっかけが欲しい>


 安否不明とされた特務艦の乗組員の生存者が明らかになり、なぜ今更と文句の一言を言いたくなるものの、そんな些細な事で仲違いするより仲間が生還できる方が重要と判断したのか、先に進む発言をしてくれた。


「話がわかる敵将で助かったよ」

「ディスティアにも頭の柔らかい奴はいるさ」


 乗務員の安全を第一に考える敵将で助かったと遠回しで表現すると、意味が通じたのか口角が上がり、ほんの少しだけ友好的な雰囲気が流れはじめ、今ならあの件を話してもルドルフは理解してくれると判断する。


「准将が戻る頃にはディスティアは大騒ぎになる。それが理由になると思うぞ(笑」

「なんだと、何かやったのか(驚」


 観光協会の掲示板を使い下士官の安否情報を流すと伝えると、ルドルフは驚愕の表情を浮かべつつ「そんな事を画策していたのか、信じられない」と言われてしまう。アーレイは真剣な表情で「嘘は言わん、書簡を出すには十分だろ」と啖呵を切ってみた。


「混乱はすると思うが、下士官を先にする理由には十分だな」

「ルドルフ准将ありがとう。素直に礼を言わせて貰う」


 今回の交渉は懐の深いルドルフでなければ実現しなかっただろう。そう思うアーレイは素直に頭を下げ、彼との出会いに感謝を表す。


「お互い様だ。だがとっとと帰りやがれ、あと俺が責任を持って書簡は出す」


 真面目な奴だとクリスに聞いていたし「俺が責任を」の一言で信頼するに値する敵将だと判断したアーレイは、デルタ式の敬礼をしつつ口角を上げ、画面から消え去る。


 「ポコ、それじゃジグザグジャンプして探しに行こう」

 「はいナノ!」


 刺激しないようにゆっくりと動き出した暴虐は、そのまま旋回を終えると超高速亜空間へと消えていく。


 ーー


 <<旗艦ラーハルト・艦橋内>>


「アイツが噂のアーレイか、中々の武人だな・・」


 光の粒子に変わりながら消えゆく暴虐を眺めていたルドルフは、副官や諜報部員に聞こえないようボソッと呟く。巷の噂とは違い聡明で誠実な奴だと感じ、この男は敵将だが信用に値するかも知れないと思わずにはいられなかった。


「バグナー大尉の名前を調べましたら、階級が一致しました」

「奴なら嘘はつかないだろうよ、名前を出されると真実味が違うな」

「先程の話を信用するのですか」


 下士官の名前が一致するだろうと予想していたルドルフは、奴と交渉したら面白くなりそうだと考えていた。だが副官は初めから眉唾と物と考えていたのか訝しげな表情を浮かべる。まあアーレイのあの太々しい態度だけを見ればそう感じるのは仕方ない。


「わざわざ俺に会いに来たのが答えだ。君には分からんか」

「Aiは無謀としか答えませんし、アーレイは馬鹿なのでしょうか」


 副官の頼りない発言を聞くと同時に頭を抱えたルドルフは「またAiを頼りやがって自分の頭で考えろ」と言いそうになっていた。さらに「何故居場所が判明したのでしょうか」とアホな問いをしてくれば赤鬼に早変わりだ。


「ゴラァ副長!貴様の作戦が完全に読まれていたんだ。猛省せんか馬鹿者(オコ」

「申し訳ありません(汗」


 作戦立案した副官をどやしつける激オコなルドルフはアーレイと出合い、彼もまた黒の精霊の影響を受け未来の分岐点が分かれた事など知る由もないだろう。

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