タイラーの願い。
タイラーにロックオンされたアーレイ・・。
<<指令本部>>
<勤務上がりました。無国籍料理ムーンライトでお待ちしています>
「わかった、俺も今から向かうね」
王宮から戻るとほぼ同時にモジュールにタイラーから連絡が入る。クリスにちょっと出かけるわと言うと「SPの準備に20分必要だ」と言われてしまい、着替えを済ませ裏口へと移動して待つことに。
「アーレイ少佐、目的地はムーンライトですね」
「悪いね2時間ほど付き合ってくれ」
スリムパンツとニットの組み合わせに着替え裏玄関で待つこと数分、重厚な装甲車を先導に防弾耐爆仕様のVIP専用シャトルが2台到着すると、瞬時に6名のSPが飛び出しアーレイの周りを固める。
「すごく重装備なシャトルだね」
「陛下から勅命が下り、絶対守り抜けと申し付けられました」
厳重な警備体制を敷くと言う事は、それだけジェフにとって重要度が高いということの現れだ。しかし外出の度にこの規模だと考えると、太々しいアーレイと言えども控えようと思ってしまう。そしてシャトルは隊列を組み動き出す。
<<デルタ繁華街>>
「なんだなんだ」
「なんかスゲェな、芸能人か?」
繁華街の目抜通りをアーレイが乗るシャトルは突き進み、SPに守られ降りてくれば嫌でも注目を浴びるだろう。好奇心から「偉いやつ現れた」などとSNSに動画がアップされる始末だ。これなら偽装して1人で動いた方がましだと思ったのは内緒ね。
<<無国籍料理店・ムーンライト>>
「お客様は、ア、アーレイ様でしたか、お連れ様がお待ちです(汗」
店主の男は星団会議を見てアーレイの事は知っていたが、先行するSPにボディチェックを受け急に動くなと言われたのか、出来の悪いロボットの様にぎこちない動きで案内されてしまう。
「今晩はアーレイ様」
「昼間とは随分と雰囲気が違うね」
エルフ族は控えめと一般的に知られているが、タイラーは胸元が少し開いたドレスを羽織り、溢れんばかりのアレが存在感が強めで目のやり場に困る。普段偽装している尖った耳と相まってアーレイは思わず可愛いなと思ってしまい、それを知ってか知らずしてかエヘヘと笑っていたよ。
「ふふ、この耳どうですか以前は少し見せただけでしたね」
「いいね〜全然雰囲気変わるね、タイラーはほんとに可愛いよ」
社交辞令で容姿を誉めてみたが、もうその言葉で脳内分泌物が出ているのか「いやーん、もう〜♡」とクネクネとし始め、チョット失敗したと思ってしまう。
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「早速、何かが出ていますね〜」
「なぜこのタイミングで喜び出てくる」
「そりゃ汁が溢れでれば警告しますって(喜」
「知っとるわ!」
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空気を読めないAiは呼んでもいないのに嬉々として姿を現し、うざいくらいに飛び回りやがる。まあリセットと考えたら急に大人しくなったのでとりま放置だ。
「もういきなり恥ずかしいですけど〜、けど強面さんがいると雰囲気出ませんねー」
「そりゃそうだ」
とりあえずの乾杯を終え食事がスタートする。この店は少量多品種で安価な料理が多いが、何故かロシアンルーレットのように味付けに当たり外れがあって、見た目と味が全く違っていたり、甘いと思いきや辛い味付けだったりと、それはそれで面白い。もちろん美味しいので成り立つのだけれど、これで不味かったら誰しも怒ってしまうだろう。
「どうですか~ここの料理って面白いでしょ」
「メニューの情報量をわざと少なくして、それはそれで楽しいな」
意外性が売りらしいのでそれはそれでアリなので良しとしよう。タイラーはダンケの時と同様に、モリモリと肉を頬張り美味しそうに食べていたわ。
「今回は任せて悪かったね、だが何故いきなり食事に誘ったの」
「サフロン様に「今が一番チャンスの時よ親睦を深めなさい」て言われて勇気を出してお誘いしました」
暗殺命令が出たとはいえまだ準備段階の筈だしSPも増員され、この先おいそれと外出できないなと考えていた矢先に食事に誘われた。預言者はこれが最後のチャンスだと知っていたのだろうか、他愛のない話をしつつそう考えていると、黒いチート野郎が話しかけてきた。
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「アーレイ、今夜は彼女の未来を決める分岐点のはずだ」
「あのな、それってフラグって言うんだよ、何か知ってるのか」
「まあ何だ、楽しいではないかアハハ(汗」
「ふ〜ん」
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突っ込みを入れると急に声がうわずり、絶対何か知っていると感じたアーレイは心の中でジト目だ。とは言え問いたとしても話すことは無いし、その時が来るまで待つしかないと思い、食事に集中することにしたよ。
<<1時間後・・>>
「アーレイ様、いつしか訪れたバーでカクテルを飲みに行きたいです」
「タイラーやめておけ、この前の事をもう忘れたのか」
食事は進み、今は仕上げのフルーツチョコパフェを美味しそうに食べながら、デートはまだまだ続くよという体でこの前のバーを所望してくる。預言者じゃ無くてもこの先の展開が想像できるので断固拒否するしか無いだろう。
「あのね、正式にこの前の続きをしたいの」
自分の欲望に素直なタイラーは隙あれば望みを叶えようと攻めてくる。この強メンタルは素なのか天然なのかと思いつつキッパリとお断りを入れる。
「わかりました、いつまでもお待ちしていますからね!忘れないでくださいよ〜」
エルフ族は執念深く1度ロックオンすると執拗に追い続けるらしい。チョット天然で面白く、美人で巨乳となれば断る理由など見当たらない。けど手を出せばサフロン経由でジェフの耳に入り、碌でもない未来が想像できるので、何とかタイラーを説得して支払いを済ませているとフェアリーが急に現れた。
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「爆発物を乗せたシャトルが付近に止まっていますよ」
「フェは無駄に性能がいいな、まあ頑張ってくれたまえ」
「なんかムカつく」
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探知されるようにわざと正面側に配置したのだろう。なので罠と見抜いたアーレイはタイラーを個室に押し戻しつつSPに状況を知らせる。しかし指摘されて動く彼らをみて「俺のモジュールだけ何で感知するんだよ」と疑問が湧くが、取り憑いた精霊の力とは知らないので、逃げる事を優先にして思考を切り替えることに。
「ディスティアから狙われるって凄く人気者なのですね」
「そこじゃ無いと思うのだが(呆」
自分も巻き添えを食ってしまうかもしれない時に、狼狽える事なく余裕を見せるタイラーはまるで歴戦の戦士みたいだ。魔法部隊が現実になったら隊長クラスは間違いないだろうと予想しつつ、アーレイはこの場から逃げる策としてベクスターをリモートモードで動かし始める。
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「ベクスターまもなく到着します、ステルスモードですよ」
「サンキュー」
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「ベクスターで逃げるわ、一緒に来てくれ」
数分後、ベクスターは店の上空に現れ、外に残るSPには悪いが爆弾処理と暗殺者を任せ一足先に逃げるつもりだ。
「了解しましたアーレイ少佐、後処理は任せてください」
「悪いね、たのんだよ」
SPはプロなので撤退命令が下されれば、敵の出方を見つつ速やかにその場を離れるだろう。アーレイと数名のSPがベクスターに転送され姿が見えなくなると、装甲車は爆破物が積んであると思われるシャトルに向けてミニガンの照準を合わせた。
<<ベクスター・機内>>
「さて、離れる前に少し観察して帰りますか」
「参考にするのでそうして下さい」
コックピットに滑り込んだアーレイはホバーリングしつつガンカメラを起動させ、コパイ席に座ったタイラーに指示を出すと、ジョイスティックを操作して物陰に隠れている敵を捉えていたよ。
「間違いなく正面は囮だな」
「奴らは陽動ですね」
ミニガンで一掃する前に様子を見ていると、遮蔽物に身を潜める奴らははマシンレーザガンを無闇矢鱈に発砲し始めた。避けるように裏口に待機していたシャトルにSPが乗り込むと、物陰から1発の小型のミサイルが向かっていく。
「いやらしい暗殺のやり方だな」
「凄いですね飽和攻撃で足止めして、裏口にはミサイル攻撃ですか」
放たれたミサイルは防弾シャトルの早期警戒システムによって撃ち落とされ、事なきを得る。そして機銃掃射しながら発射地点に向かうが、リモートらしく虚しく雲台だけが放置されていた。
「それにしでもミニガンは強力だね〜」
「50口径ですから木っ端微塵ですね〜」
裏口での爆発を受けそれが合図となり装甲車のミニガンが火を吹き、爆発物を積んだシャトルはものの数秒で木っ端微塵になる。物陰に隠れていた3名の暗殺者たちは逃走を図ろうとするがベクスターのガンカメラによって捕らえられ、遮蔽物ごと攻撃されると肉塊へとその姿を変えるのだった。
ーー
<<タイラーのアパート上空>>
「さぁ到着したよタイラー、自宅まで転送するよ」
現場を離れたベクスターは数分もせずにタイラーの住むアパートの上空まで移動してくる。先程までガンカメラを操っていたタイラーに声を掛けるが、俯きジョイスティックに置かれた手がフルフルと震えていた。
「ごめんなさい私が誘わなければこんな事にならなかったのです、いっぱい死んじゃいました」
「君に責任は無いよ俺の問題に巻き込んでしまった。ごめんねタイラー」
店では狼狽えることは無かったが、自分が操作したガンカメラによって肉塊に変わりゆく人の姿を見て、ショックを受け顔面蒼白になっていた。間接的に自分が殺したのだと考えているらしい。
「ごめんなさいアーレイ様、私がぐずなんです」
「ほらほら泣かないで、もう大丈夫だから」
震える肩に手を置くとタイラーはスッと胸元に顔を埋めてくる。戦闘後遺症になるのは頂けないのでこのまま1人で部屋に放置するのは些かまずいだろう。そう考えていると知らぬ間に両腕が背中に周りギュッと抱きついてきた。
「このままギュッとお願いします。出来るならアーレイ様の部屋に行きたいな〜♡」
「おい、匂いを嗅ぐな、それともう復活してるし(呆」
抱き付いたついでにクンカクンカと匂いを嗅いでいるタイラーは、いつの間にか悲壮感を脱却して脳内麻薬が出たのか悦に浸る表情を見せ、PTSDなにそれ状態だ。おまけにアーレイの部屋に行きたいとか言いだした。
「だって泣いちゃう、ぐすん!」
「わかった、わかった!泣くなタイラー!」
「もっかいギュとして!」
「・・・(汗」
>
「部屋に不審者確認」
「やったー!」
>
助けに船では無いがディスティアの連中が待ち伏せ危険なのは間違いない。なので「君の部屋に転送は止める」とまで話すと、バッと離れてボタンを外し始めてしまい「じゃ、アーレイ様の部屋ですね」と完全に勘違いしていた。
「いきなり脱ぐな、それじゃ無い!!」
先程のSPは後方に下がり見られることは無いがブラが見え隠れして如何ともし難い状況だ。何故にここまで積極的なんだと考えたらチートさんが「黒の効果」と囁き、いらん情報ありがとうと思いつつ赤外線モードで室内の映像を見せた。
「君の部屋に不審者が詰め掛けているぞ」
「ホエェ?」
「彼氏と同棲中か」
「いません!アーレイ様一筋です!」
キッパリと言い切ったタイラーさんは続きをご所望の顔をするが、アーレイが司令本部の座標を入れると流石に空気を読んだのか諦めていたよ。
<<指令本部・駐機場>>
「せっかくの食事が最後に台無しになりましたね」
「そんなことは無いよ楽しかったよ」
ベクスターを降りて歩きながら話すタイラーは凄く残念そうだ。しかし問題はこの後もまだまだ続く。
「次回はアーレイ様の部屋に呼んで下さいね!」
「きっとアサシンが大挙して押し寄せて来るぞ(笑」
諦めの悪いタイラーは全く遠慮がなく、プッと頬を膨らませ不満を露わにするもののその姿は意外に可愛らしかったりする。
「もう遅いから仮眠室に行きなさい」
「わかりました、おやすみなさーい」
タイラーは名残惜しそうに女性仮眠室へと向かい、アーレイはベクスターに戻って行くが、その途中フェが喜び現れ「く〜る、きっとくる〜♪」と五月蠅かったよ。
<<ベクスター内>>
「ンッー美味い!」
ベクスターにはアーレイのお気に入りの酒が常備してあり、それをグラスに注ぎ琥珀色を揺らしながら今日1日を振り返り、最後はアレだけど充実していたなと思考を巡らせていた。
>
「来た!早速来ましたよ」
「はあ、しかたないな後ろのハッチを降ろして」
>
シャワーを浴びて身を清めたのだろうか、時間にして1時間も経たないうちにタイラーがベクスターに戻って来た。追い返したいところだけど駐機場を彷徨かれても困るので機内へと入れる。
「1人だと怖いので一緒に寝かせてください」
「添い寝は遠慮します、どうせすぐに脱ぎだすだろ」
「何でわかるのですか、既成事実を積み上げて行かないと」
話を聞かない系は無理にでも既成事実を積み上げて婚姻と言う名のゴールへの切符を手に入れたいのだろう。しかしそんな事は想定済みのアーレイはソファーとの間にスタンシールドの幕を生成して近づけないようにしてみた。
「スタンシールドですか、わかりました大人しく寝ますね」
「そうしてくれ」
青く光るスタンシールドは護送用に取り付けた装置で、少しでも触れれば痺れてしまう。効果を知るタイラーは諦めて素直にベッドに横になるが、不満顔をしつつ「なんで抱いてくれないの、アーレイ様の意気地無し」とか言われてしまう。
「うわぁ直球攻撃が来たよ」
>
「モテモテ」
「灰にするぞ!」
「すんません」
>
前回に引き続き微妙な状態で何ら進展が無いまま一夜を共にするのだった。
ーー
<<翌朝・指令本部>>
「おはようアーレイ、タイラーも大変だったね」
「クリス、擬装しないと街には繰り出せないわないわ」
昨晩の出来事はクリスには逐一報告され、実は自宅から諜報部に指示を出しアーレイをバックアップしていた。お礼を言いつつタイラー宅に侵入したアサシンの事を聞くと、激しく抵抗され説得虚しく全員服毒自殺をしてお亡くなりになったそうだ。
「タイラーは余熱が覚めるまで表には出ないほうがいいだろう。それとサフロン様から色々通達があったぞ、知り合いなのか」
昨晩の出来事はサフロンの耳にも逐一報告が入りタイラーの身元引受人として色々要望を出したらしく、事情を知らないクリスは困惑した表情を浮かべていた。なので「説明した方がいいだろう」とアーレイが割り込む。
「サフロン様には幼少期の頃からお世話になっています」
孤児院の事は言わず「縁があって小さい頃から親代わりとして育てられた」と話すと、王族に関して余計な詮索は禁物なので「そういうことでしたか」と無理やり納得してくれた。因みにアーレイは全てを知っているが「そうだったんだ〜(棒」としらを切ると”お前は全て知っているだろ”の目で睨まれたよ。
「お手間を取らせてすみません、受付で働きながらサフロン様の元で暮らします」
「ごめんねタイラー、俺の事で迷惑をかけて」
技研と王宮との間には定期便が運航しているので移動に関しては問題が無い。しかし敵国に狙われ自由に動けなくなったタイラーに対し申し訳ないと思いアーレイは頭を下げる。弱り目に祟り目ではないけど「気にしませんよ、未来の旦那様ですから♡」とアグレッシブに攻めて来た。
「なにそれ予知夢でも見たのか」
「未来は切り開くものなのです」
普通の女子なら昨晩の出来事だけでも恐れをなして逃げ出すのが普通だろう。黒の精霊の加護が影響しているとはいえ、執着心全開で何故自分を欲してくるのかは謎だ。ブラッドに聞きたいところだけど奴は聞かれたくないのか抜け出し不在だった。
「タイラーとアーレイは引っ越し確定だな(ニヤ」
すんごくニヤニヤとしているクリスは既に手を打っているのだろう。タイラーにはSPを付けるから今からアパートに行ってこいと言い放ち、姿が見えなくなると同時にアーレイにタブレットを見せたよ。
「今度は上級士官用宿舎だと、たしか空きが無かったはずだが」
「そりゃ陛下が一声かけりゃ出るわな、明後日から通勤時間は3分だぞ(笑」
>
「ブラックデルタ軍ですね、Aiの私でもそう理解しました」
「そだねー」
>
引っ越して数ヶ月も経って無いのにアーレイは新しい塒に移動する事になり、それも出勤時間がほぼない官舎になってしまい、画策したジェフの顔を思い出しちょっと不機嫌になったのは内緒ね。けど新しく移り住んだことで運命の扉が開いたとはいま時点では誰一人知らない・・。
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