新型戦艦設計。
アーレイ独自の発想で船を設計します。
<<アーレイの私室>>
以前、ディスティアの暗殺者が押し寄せたアパートを出たアーレイは、王宮近くの下士官用の官舎に寝床を移していた。狭い単身者用にも関わらず私物が殆どない部屋は、広々としてとても快適な住み心地だ。
「さて、設計図を送るとしよう」
昼休憩の合間に戻りパソコン画面と睨めっこをしている理由は、以前制作していた新型艦の設計図を技研に送るためで、まあクラウド化してあるので本部でも作業は出来るが、夜はタイラーとの食事があるので私服を取りに戻っていた。
<<技研・艦艇設計部>>
「このデザインは見た事ないな、未完成なのかな」
「ああこれはアーレイ少佐が設計図した船ですよ」
送られてきた拡張子を開くと突起物が殆どない凄くシンプルな戦艦が映し出され、イメージするならイージス艦の突起を取り払い船底に砲台がくついている宇宙船と想像するのが一番わかりやすいだろう。技術主任の男はマドックに言われるまで未完成と勘違いしていた。
「駆逐艦も戦艦も凄くシンプルですね」
「ホント面白い設計をするな〜来たら聞いてみよう」
彼らが眺めているのは俊敏性と素早い攻撃に特化した駆逐艦と、通常型20万トン級の戦艦の外観だ。両艦共にあの素材を用いて突起物を極力排除し防御力を高め、業火級程ではないが強固な外殻を持つ船になるだろう。
「この船が正式採用されたら勝てる気がする」
「そうですね、頑張って設計しましょう」
新たなコンセプトで作られる戦艦は、第9艦隊で実証実験が行われた後、有用性が確認されれば、コンセプトを踏襲した新型艦を設計部が建造する事になっている。だが認証を取るためには数々の試験をクリアする必要があり、全てを作り上げるには最低でも数年は必要だ。
「さて、設計図との現物合わせだな、へっ?こんな場所に設置するの」
デザインやコンセプト、内部構造などをアーレイが大まかに描き、マドック達は多種多様な装置をバランス良く配置するのが主な仕事だ。先ず初めに1番大きなエンジンから取り掛かるのが定石で、3DCADを動かし早速作業に取り掛かり内部構造を確認すると、あり得ない位置に指定されたエンジンの区画を見て首を傾げてしまう・・。
<<武器製造部・主砲開発課>>
実弾が使用禁止になり開発部は縮小の波に飲み込まれる予定だったが、アーレイが新たに考えた新砲撃システムは技術的ハードルが異様に高く、総出で開発する事になり免れていた。
「チィース、お邪魔するね〜」
「あっ!アーレイ少佐じゃ無いですか」
軽い返事と共にアーレイが訪れると、一目見た瞬間に技官達があれよあれよと集まり始め、矢継ぎ早に次は何を開発するのですかと問われ大人気だ。
「レーザーとレーダー阻害のスモークミサイルを開発して欲しいんだ」
広域艦隊戦を予想しているアーレイはディスティア本星攻撃の際に必要になると考え、早めに開発しようと考えていた。しかし「広域に阻害粒子をばら撒いたら自分も使えませんよ」と当たり前の事を指摘されてしまう。
「構わないよ、それ使う時は突撃する時だし」
「ああ、そうだった常識が通用しないんだった(汗」
業火級と暴虐は戦闘機同様、近距離攻撃が持ち味だ。しかしジャンプ阻害されれば敵船まで通常エンジンで接近する必要があり、被弾しないために使うつもりだ。
「相変わらず常識外れですね。他の部署の人がいつも頭抱えている理由がわかります」
「ありがとよ、VSL発射管から射出するので多弾頭の高速タイプを作ってくれ」
矢継ぎ早にリクエストを伝えたアーレイは、次にレーダー開発部へと向かってゆく。
<<技研・レーダー開発部>>
「アーレイ少佐じゃないですか、干渉波レーダーが凄く活躍しています」
あの干渉波レーダーは密輸業者摘発に大いに活躍したそうで、熱烈歓迎を受けほぼ全員からお礼を言われる。
「あれは安いし、高性能だからいいでしょ」
「防衛隊からアーレイ少佐にお礼を伝えて貰いたいと言われました」
防衛隊とは接点が余りないけど、向こうには開発者として名前が通っているのだろう。ディスティア攻略前には間違いなく世話になるので、今のうちに得点を稼ぐのはよき事だ。技官は将来的には星団内全てをカバーするとか何とか言っていたよ。次にアーレイはレーダ開発部と通信部合同でとあるものを作って欲しいと依頼する。
「極超短波を使った通信装置なんだけど、無線封鎖している時に使いたい」
「ええ、常識から考えて100%電波を受け止められる受信部が作れませんよ」
極短波を発砲すると受信する際に微量だが跳ね返りそれが敵に探知されやすく、無線封鎖中は出力の弱い赤外線通信以外は使えないのが常識だ。そこでアーレイはパネル砲に敷き詰められた大量の半導体レーザ素子を、受信部として使う事を思いついたのだ。
「パネル砲の素子を使えば反射する事は無いと思うが」
「新しい試みですね、早速通信部と連携して試してみます」
余談だがこのシステムが正式に採用されれば売り上げの3%がパテント料として入り、ますます資産が増えるのであった・・。
ーー
<<特殊艦船開発局>>
「アーレイ少佐、ファーレンハイトありがとうございます。陛下に大変気に入って頂けました」
次に向かったのはファーレンハイト建造の際にお世話になった開発局だ。船体は艦艇設計部だが特殊フローティング構造と多軸推進装置を担当して貰い、それが評価されたと言われ、他の部署同様に入室すると皆で褒めたたえてくれる。そしてアーレイはディスティア攻略に向けた新たな船に関する相談をする事にしたが・・。
「特殊潜入用ステルス艦を作りたい」
乗務員は数名で武器はなくステルスに特化した潜入専用の小型艦を作りたいと話す。技官は「作れますがその船は自力で戻れますか」と質問された。なので慣性航行に重きをおいて無駄な燃料は極力積ま無い設計だと返す。
「戻る燃料を積んで無いので自爆攻撃と判断され、星団法違反になります」
「じゃ違うコンセプトで再設計するわ」
睡眠学習で得た知識を思い出そうとしたが思い出せず技官に問うと、それは特殊武器関係なので知らなくて当然ですと言われてしまう。結局苦労して引いた設計図を見せず、開発部を後にするアーレイは最後、艦艇設計部へと足を運ぶ。
<<艦艇設計部>>
主任「少佐これなんですか、奇抜なデザインですね」
マドック「エンジンの位置がおかしくないですか、それとメインノズルが見当たらない」
アーレイ「ちょっと待って、順番に説明するから(汗」
艦船設計部の部屋に入るや否や技官たちが詰め寄り嬉々として質問を浴びせて来た。対応を迫られたアーレイは、取り敢えず新型戦艦についてのコンセプトを初めから説明する事になってしまう。
「この4隻は空母護衛に特化したので防衛力に重きを置いて、艦橋が高いのは各種レーダーを詰め込むためだ」
空母打撃群専用の護衛艦はなるべく接合部分を減らした、業火級と同じシームレス構造を採用して艦尾以外は継ぎ目が殆どない。上部と船底に搭載する合計8門の砲台には、強力な素粒子砲を2門だけ搭載して確実に仕留める事に特化した。もちろん拡散も出来るし、パネル砲を24枚も搭載しているのでミサイル飽和攻撃にも耐えられるだろう。
「少佐、全ての船にメインノズルが見当たらないのですが」
「ファーレンハイトと同じで巨大なノズルは無いよ、エンジンの推進力はこのバイパスを伝って放出される」
従来の艦船のように艦尾に大型噴射口を備えるのではなく、計8カ所の可変ノズルを採用して機動性を高めつつ、船体の向きに関わらず最大作戦速度を出せると説明する。マドックは「エンジンを中心に設置するのはこのためですか」と聞いて来たので「マスの集中化で運動性能も上がるよね」と答えると余りの常識破りな作りにジト目になり「そーうですねー」と棒読みを頂いてしまう。
「センターに置いてバイパス方式にしたから素粒子砲の威力が増したよ(笑」
「うわぁ~このバイパスを外周通路と勘違いして、敵が歩兵を送り込んだら焼け死ぬわ(呆」
メインエンジンをセンター化した事でエネルギーロスが5%ほど無くなり、威力が増したと笑って伝えると、次にマドックは砲台を指さし「コレは単なる発射管ですよね」とアーレイが新たに採用したシステムの秘密に気が付き、惚けてみると詰め寄って来て「船首の形状も変です」と連続で指摘されてしまう。
「他にも色々仕掛けがあるのよ~因みに反則技じゃないからね」
「そうですねー(棒」
惚けるのも大概にして技術的な事をマドックに伝えると「その発想は無かったと」と苦笑いされ、技術主任には「何故そう考えられる」と呆れられたわ。その後も色々聞かれ結構な時間が過ぎた頃、中空モニターに1通のメッセージが流れて来る。
<アーレイちょっとお茶したいから1人で執務室に来なさい。Byジェフ>
1人で来いという事はクリスを連れて来るなという事だ。おまけに執務室と指定されれば何かの頼み事と想像するのは容易い。行きたくない気持ち全開だけど流石にお茶と言われれば行くしか無い、重い腰を上げ王宮へと足を向けるのだった。
<<デルタ王宮・ジェフ執務室>>
「来週、フローレンスとフリップを連れてアデール女王に挨拶と精霊降臨の儀を受けさせてくれ」
「護衛任務ですね承知しました(呆」
まあなんだ、お茶を一口飲み終えるとジェフは妙な依頼を押し付けて来た。建前はクーンとの繋がりが強いアーレイだから頼んだつもりなのだろうけど、どう見ても策略ありきとしか読み取れない。疑いの目でジッと見るといつもの掛け合いが始まってしまう。
「アデールには言ってあるから”一泊”して適当に施設の見学でもしてくれ」
「宿泊ですか、嫌な予感しかしないわ」
「何か言ったか、君にしか頼めないだぞ(棒」
「それで護衛は何人ですか」
「もちろん君だけだ!」
「速攻で帰ってやる」
「まあそう嫌な顔せずゆっくりと楽しんで来い、休暇みたいなものだろ」
「マジで嫌な予感しかしない」
「マジでじゃ無いだろ、はそこはハイだろ」
「はーい畏まりましたーしつれーしまーす(棒」
ジェフの企みを直ぐに読み取ったアーレイは、棒読みで返事しつつ立ち上がり踵を返す。すると嬉々としたフェアリーがモニターの中を飛び回っていたよ。
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「クーンなら日帰りですよね~」
「そだねー」
「流石の私でもわかります」
「まーねー、よし速攻でアデールに押し付けよう!」
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繋がりを求める為に画策したジェフだったがその行為が意外な方向へと進み、それがフローレンスの一生を左右する分岐点だとアーレイは後から知るのだった・・。
宜しければブクマ、評価宜しくナノ。




