星団会議。議題、熱核ミサイル。
星団会議でアーレイが活躍します。
フェデラリー共和国で開かれている星団会議では、ディスティア空母打撃群威力偵察の際に使われた自爆型戦艦が星団法違反として審問会が開かれている。証拠として自爆するまでの映像が流されたが、何故か内部の様子は公開されることは無かった。
<<フェデラリー共和国・星団会議議場>>
「ふざけるな、安全装置が無いわけないだろう」
ラインスラストの代理人は元技術屋らしく「試験中の戦艦が暴走した」と苦しい言い訳をするディスティアに対しキレていた。そしてその言葉は共感を呼び各国からやんややんやと非難の声が上がる。
「物証が無い以上、映像だけで認めるなんて馬鹿だろ」
「ディスティア代理人、今の発言は取り消し下さい」
場が荒れ始め議長が発言の撤回を求めると「はいはい」と渋々嫌々了承すると同時に「違法素材を使う業火級の方が星団法違法と考えております」と論点をずらしてくる。腹を据えかねたデルタ代理人は「業火のどこがどのように違反なのでしょう。ちょっと意味が解りません」と速攻で反論してきた。
「外殻は違法素材だ、そうに違いない、きっと放射能汚染とか酷いはずだ」
「代理人、それは些か無理筋ですぞ」
憶測で批判を行い自分達に向けられている批判を少しでも和らげようと必死だ。議長に嗜められるがどこ吹く風で「ディスティアとしては違法と捉えている」と傲慢な態度でまくしたてる。
「筋が違いすぎて話にならん」
「論点ずらしだ!」
各国から非難され理論破綻は承知しているが「業火の違法性を訴え論点をずらし、流れを変えろ」とセオドールに言われた代理人は従うしか無い。不毛なやり取りが続き終わりが見えない中、ひとりの代理人が挙手をする。
「暴走したと言われていますので実在はするでしょうが、物証がなければ追い詰めるのは無理でしょう」
クーンの代理人がポツリと呟くようにディスティア擁護とも取れる発言をしてしまう。まあ映像のみで物証が無ければ罪に問えないのはどこの国とて同じだ。自爆して消滅したとはいえ暴走したことは認めているので星団側は静観している。
「仰る通り物証が必要ですね、それなら業火は調べたら分かりますね」
チャンスと踏んだディスティアの代理人は息を吹き返したように業火の案件を蒸し返し、ドヤ顔を決めるとデルタ側を指差し挑発的な態度を取ってくる。
「デルタは作れるのですから、ディスティアも作ればいいじゃないですか」
何とかアントワネットと似たような口ぶりで小馬鹿にする物言いをしたデルタの代理人は、語り終えると少し困惑した表情を浮かべていた。きっと悪戯好きな奴が裏で指示を出しているに違いない。着座すると目が泳いでいたよ。
「なっ!何を言っている意味がわからない」
「それはこっちの台詞だ。結局は技術の問題ですよね、議長、先に戦艦の総括をお願いします」
論点をずらすならもう少し共感を得るようにすればいいのにと思いながら、バッサリと技術問題だと切り捨て即座に総論を求めた。あまりの速さに呆れているディスティアの代理人をよそに、議長はガンガンとガベルを鳴らす。
「証拠不十分の為、厳重注意処分とします。これより一旦休憩に入りたいと思います」
議長が処分を言い渡すとディスティア側は大した実害が無いと判断したのか、反対の挙手を上げようとはしない。星団側はこれ以上の重い処分は無理と考えたのか、苦い顔こそするが決定に従っていた。しかしこれは序曲に過ぎず「物証が必要ですね」の言質を頂いた事で、控室のモニターを眺める黒髪の男はニヤリと口角を上げていたよ。
<<デルタ王国・控室>>
各国に割り当てられている控室は盗聴盗撮防止が施されセキュリティーは万全だ。そして議場から戻って来た代理人は精神的に疲れたのか、部屋に入るなり大きな溜息をついていた。
「お疲れ様、悪いね指示に従って貰って」
星団会議に出席しろとジェフに言われたアーレイは、オブザーバーとして参加することになっていたが、未だ参加登録することなく控え室にて各国の代理人と連絡を取り合い、先ほどのクーン代理人や小馬鹿にした発言などはアーレイが指示を出していた。
「アーレイ少佐、あの言い回しで良かったのでしょうか」
「物証があれば良いと相手の言質を頂くのが重要だからね(笑」
午後に再開される会議では熱核兵器の違法性を追求するのが主な議案だ。自爆戦艦の時とは違い両軍共に激戦を繰り広げ、戦闘データや残骸も回収されていることから言い逃れはできないだろう。だがそれだけでは不十分と考えたアーレイは、あの証拠品を使い更なる鉄槌を下そうと企んでいた。
<<星団会議・午後の部>>
「星団側より緊急議案が提出され、それを先に審議します」
「なん・だと」
休憩時間の間に緊急議題として自爆型アンドロイドに関する審議の要望書をデルタが提出すると、事態を重くみた議長は規則に則り先に審議する事を決め各国のタブレットには資料が表示される。一目見たディスティア側はこの展開は予想外らしく狼狽え始め、多分セオドールに連絡を入れているのだろう慌ただしく動き始めた。
「それでは審議を始めます。代理人の発言を許します」
「自爆型アンドロイドが戦艦内に転送されましたが、間一髪で難を逃れることが出来ました」
デルタの代理人はアンドロイドが暴虐内に侵入して爆発するまでの映像を流し、これは星団法違反ですと強く批判をする。一方のディスティアは映像しか無いことから論点をずらせば回避できると考えたのか、狼狽えた先程とは違って急にしたり顔に変化した。
「映像だけですとちと証拠としては弱いですな、これは捏造して貶める策略か何かですか」
「ご冗談を、今回は証人をご用意しております。議長、出廷の許可を願います」
そして議長が許可を出すと数名の警備員に守られたデルタの軍人が入ってくる。軍帽を深くかぶり俯いているので顔はよく見えないが、襟足を見れば黒髪であることだけは分かる。そしてゆっくりと着座すると顔を上げ帽子を脱いだアーレイは、ディスティア代理人を見るとニヤリと笑う。その顔はまるでいたずらっ子のように目が爛々と輝いていた。
「あいつアーレイじゃないか(驚」
「議長、質問の許可を頂きたいと思います」
驚いて当然だろう。星団会議の場には余程のことがない限り当事者が登場することはない。それに諜報部に追われている奴が堂々と大勢の前で姿を現したのだから尚更だ。
「それではアーレイ少佐、発言を許します」
「アンドロイドは全て管理していますよね、まさか行方不明などはありませんよね」
星団内で使用する汎用型アンドロイドは全て登録しなければならないので、管理されているかと問われれば「はいそうです」としか言いようが無い。ディスティアの代理人は当たり前のようにそう答えるしか無かった。
「位置情報を調べましたが齟齬はありません。ですが私が持つ証拠品がなんと総統府で働いているんですよ~」
「アーレイ、何を言いたいのだ。齟齬が無ければ使わなかった証明になるだろ。お前の持つ証拠品とは何だ」
誘導尋問とは知らずに「証拠になる」とか言ってしまい、思わずアーレイの口角が上がる。そして「議長、証拠を提示したいと思います」と声高々に宣言すると、回収したあのアンドロイドの下半身を抱えたピンキーが現れ、証言台近くにあるテーブルの上にそっと置いた。
「何なんだその壊れたロボットのパーツは」
「これは暴虐内に転送されたディスティア製、汎用型アンドロイドXRD-582-MarkⅡ、シリアルナンバーは5820066と判明しました」
抜かりが無いアーレイはリアルタイムで稼働している筈の、アンドロイドの座標をモニターに映し出し「総統府で働いていますけど、動いてませんね」と嫌味ぽく言い放ち、代理人をジッと見詰めると「そうだ動いていないだけだ」と苦しい弁明をしていた。
「来年に廃棄予定ですか〜このお手伝いロボは管理してますよね~」
「も、もちろんだ、管理している(汗」
お手伝い系アンドロイドは忙しなく動き回り雑用をこなすのが仕事で、各省庁に配備されそれは星団側とて同じだ。なのでメンテ中を除き止まる事は無い。それを知る星団側の席からは失笑が漏れ、同盟国のアーヴィン王国は苦笑い。因みにカルネ国は吹き出すのを必死に堪えていた。そしてアーレイの反撃が始まりを迎える。
「あれれ〜ここに刻印があるな〜私が調べたのは稼働中ですね〜(笑」
「嘘だ、捏造したんだろ(汗」
あれだけ物証が無いと言ってドヤ顔だったが、それを目の前にすれば拒否するしか手立てがない。周囲からは「諦めろよ」「潔白と言うなら証明すれば」などと囁き声が聞こえ、もう挽回は不可能な域に達していた。
「ライブ映像いいっすか、大切な場所にあるから出来るよね〜」
「ぎ、議長、一旦休憩を要求する!」
もうどうやっても認めるしかない状況に一瞬で追い込まれた代理人は、苦し紛れの休憩を取る事にした。まあ部屋に戻って時間のある限りセオドールと話し合いをするのだろう。
「ふふ、もう今更遅いわ」
確実に言質を取り、数十時間分の履歴を開示して追い込んでいくアーレイはニヤリと笑い、慌てて議場を後にする代理人の背中を見送るのだった。
<<15分後・星団会議議場>>
「それでは会議を再開します。休憩前に引き続きアーレイ少佐の発言を許します」
15分間の休憩時間はあっという間に過ぎ、ディスティアの代理人は息を切らしギリギリに入場してくる。顔を伺えば絶望の文字が見え隠れしていて間違いなくセオドールに問い詰められ、生きた心地はしなかったのだろう。だがこの程度で手を抜くアーレイではない。立ち上がるとディスティアの代理人に向かってビシッと指を差し反撃の狼煙とも取れる態度を見せていた。
「それでは休憩前の要望であるライブ映像を見せて貰えますか」
あれだけ強気で傲慢だった態度は鳴りを潜めまるで借りてきた猫のように静かになり、アーレイの質問にじっと我慢していた。と言うかもう諦めの表情が混じり、いつ両手を上げ降参する頃合いを計っているようにも見える。
「議長、自爆型アンドロイドを使用したことを認めます(諦」
各国の視線が突き刺さる中、弱々しい声で自らの過ちを認めた代理人は言い終えると俯き加減だ。そんな弱々しい態度を見せても知ったこっちゃ無い、さあ罰を受けろと言わんばかりに怒号が飛び交い、逃げ場のない代理人の男はアーレイを恨めしそうに睨むしかなかった。
「これにて討論は打ち切りとし、只今より査問会議へと移行します」
罪を認めた事でさらに詳しい取り調べが行われることになり、チャンスタイム到来と判断したアーレイは批判の声が鳴りやまない中「先ほどの戦艦の件に付け加える重要な事実があります」と大声でまくしたて戦艦の件を蒸し返す。
「その件は厳重注意で終わった案件だ。何を今更」
「試作機をお認めになっていますので、これから流す映像は証拠になりますね(笑」
アーレイはシーカーが読み取った戦艦の識別信号を表示しつつ艦内部にある透明ケースの映像を流す。一目見た各国の代表からは「に、人間の脳だと、酷い、酷すぎる!」「鬼畜の所業だ」などの批判の声が上がり、ディスティアは更に追い込まれることになってしまう。
「なんでだ、なんでこのタイミングで映像を出してくる最悪だ」
ディスティアの悪事を更に悪目立ちさせる為にわざと一番効果が高い時を狙い公表した理由は、この後に開かれる懲罰委員会での交渉を有利に進める為で、アーレイの狙いはラインハルトの2重シールドと首都防衛装置の見学だ。なのでまだまだ手を抜く訳にはいか無いので、証拠映像を元に分析したデーターを表示して追い詰めようとやる気を見せていた。
「これは間違いなく人間または獣人の脳を利用した攻撃特化型サイボーグと思われます」
「もう済んだ事だし、映像ならどうとでもなる」
先程と同じ様な弁明を繰り返し始めたがアーレイは気にすることなく「映像を嘘、捏造と良く言いますが、何故その嘘なぜ暴こうとしないのですか」と問い詰めると同時に議長が「再三話す通りCG加工や編集痕はありません」と援護射撃をしてくれた。
「決まり事さえ守れない後進国だな、総括責任者であるセオドール総統に直接話を聞く必要があります」
そして交渉を有利に運ぶため、厳罰化ではなくセオドールの証人喚問というディスティアとしては絶対認められない超ハードルが高いことを要求する。まさかの展開に代理人はギョッとした表情に変わり汗が吹き出していた。
「そんなこと出来る訳ないだろ、お前らに崇高な総統を会わせるなど不謹慎極まりない」
「困りますね選民主義者は、これだけ証拠があるんだからさっさと認めなさいよ」
嫌味を放ったアーレイは肩を竦め小馬鹿な態度をとると、他国の代理人がガンガンとヤジを飛ばし始め収拾がつかなくなり始める。攻め立てられているディスティアの代理人は逃げたくなったのか「ほ、本国と連絡を取り相談したいので時間を貰えるか」と言い放つと同時に離席していく。
「会議はこれまでとし、明日朝10時に再開とします。本日はこれにて散会」
議長は立ち上がり議場を一瞥すると少しだけ口角が上がり、アーレイの屁理屈が痛快だったらしい。いつもより軽やかな足取りで議場を後にするのだった。
ーー
<<セオドールの執務室>>
「あの狡賢さは何なんだ!ああ頭に来る」
星団会議のライブ映像を見ていたセオドールはワナワナと身体を震わせ、グラスを壁に投げつけ行き場の無い怒りをぶつけていた。
「セオドール閣下、落ち着いてください」
「あの馬鹿な代理人は即刻粛清だ!」
余程、アーレイの攻め方が気に食わなかったらしく、グラスに飽き足らず止めに入る執事を睨み付けていた。独裁者の彼は自分の思い通りに星団会議が進まず、さらに懲罰が確定したことで、代理人に責任をなすりつける為に粛清すると言い出してしまう。
「そ、それは些かやり過ぎかと、反発を招きます」
「じゃあ拷問で勘弁してやる、おい代理人、明日は生死が掛かっているから死ぬ気でやれ」
一部始終執事とのやり取りを見ていた代理人は顔を真っ青にして今にも倒れそうな表情を浮かべ、死ぬ気でやれと命令されると胸に手を置き「セオドール閣下バンザイ」と言い放つのだった。
ーー
<<デルタ王国・控室>>
<アーレイ天晴だ!良くやった。最高のタイミングで証拠品と映像を流したな>
「のらりくらり逃げるのは分かっていまし、今までの仕返しをしただけです」
控室に戻るとリアルタイムで会議を視聴していたジェフから連絡が入り、満面の笑みを浮かべ喜ぶものの「なぜ証拠品を隠し持っていた」と問われる。すると今までニヤけていたアーレイは急に真剣な表情に変わった。
「あの証拠品を隠したのは作戦本部に草が紛れ込んでいるからです」
「えっ、本当なのか」
経緯を話し始めたアーレイは「暴虐を出航中にしたままなのは証拠品を隠すためで、情報漏れを予見して全て隠蔽しました」と語り、ジェフは「そこまで先読みをするとは、だが手段を選ばない君は怖いな」と微妙な褒め言葉を頂いてしまう。
「軍事技術を見るのが最終目的ですから手は抜きたくないです」
「ああそういうことか、となればあの7万トン級戦艦なのか」
業火級を模した戦艦は脅威ではないと一蹴したアーレイは、2重シールドと首都防衛装置視察が本当の目的だと語る。するとジェフはニヤリと笑い「明日は任せるよ」と全幅の信頼を得るのだった。
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