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戦勝祝い。

ポコと食事に行きます。

「ナノー!勝ったナノー!頑張ったナノー」


 <<司令本部・サロン>>


 ジェフに報告が終わり本部のサロンに戻ると、尻尾をはち切れんばかりにフリフリとしているポコが出迎えてくれる。それとモニターにはカプセルの中で戦ってくれた乗務員が映し出され、アーレイを見るなり親指を立ててサムズアップしてたよ。


「さすがだなアーレイ、ポコもよくやった」

「アーレイ少佐、熾烈は最高の船です、本当にありがとうございます」


 謁見室で喜びを分かち合う訳にもいかず、クリスは戻ってくるなり握手を求め今回の苦労を労ってくれる。リタも作戦が大成功を収め昇進と特別報奨金を貰い満面の笑みだ。しかし褒められることに慣れていないアーレイは苦笑いして頭を掻いていた。


「それにしてもポコの活躍が凄かったですわ、自由自在に飛ばして敵を蹂躙していました」

「ちゃんと見てたよ。先読みしながらの攻撃は流石だ」


 2人が褒め称えるとポコはニンマリと口角を上げ超ご機嫌だ。リタは「野生の感には敵いません」と賞賛の言葉を追加で送ると胸を大きく張り「エッヘン!ポコを褒めるべしナノ」とドヤ顔を決める。


「こらポコ!」

「キャン!痛いナノー」


 偉そうな態度にカチンときたのかクリスはするりと前に入ると、思いっきりデコピンを放ち「上官に対する言葉使いじゃない!」と怒鳴り、怒り心頭だ。実力主義の獣人族だけなら威張っても構わないだろうけど、規律を重視するデルタ軍はそうも言ってられないらしい。


「酷いナノ」

「今日くらいいいじゃ無いか、褒めるのも上官の仕事だ」

「でしょ!でしょ!頑張ったナノー」


 おでこを押さえていたポコの頭をナデナデすると、嬉しくて痛みが引いたのかニコニコ笑顔へと変わり、アーレイの手を上から押さえ大きな耳がピコピコと動きご満悦だ。


「特別にご褒美を送るよ、何か欲しい物あるか」

「ポコは忠犬なのナノ、アーレイ様が選ぶならなんでもいいナノー」


 ご褒美の言葉を聞くと祈る様な仕草をしつつ目がキラキラと輝き、アーレイの次の言葉を待つその姿はやっぱ忠犬そのまんまで「それじゃ今から街に出て飯だな」と言うとワオーンと遠吠えを上げる。リタは微笑み、クリスはヤレヤレの表情を浮かべながら「護衛を倍出すよ」と最後は笑っていた。そして防弾シャトルに乗り込み12人ものSPを引き連れ繁華街へと向かう事になる。


 <<デルタ繁華街>>


 敵国のスパイの目が厳しいと予想されていたが、とある理由で暴虐はまだ出航中と偽りの申請をしたのが幸いしたのか、繁華街を練り歩いても邪魔される事はなかった。


「えへへ、アーレイ様とデート出来るなんてポコは幸せナノ」

「お前変わりすぎだよ、部下じゃ無くて配下だな」


 目尻が下がったポコはテレテレとした表情を浮かべながらピッタリと寄り添い歩くが、どちらかと言うと恋人より保護者と娘みたいに見えてしまうのは仕方がないだろう。


「SPが邪魔ナノ、ラブラブ出来ないナノ」

「しなくていいから」


 先行警戒に2人、前後左右6人の黒服に囲まれ残りは店に先回りするなど、大統領クラスの鉄壁な守りで移動すれば、市井の人達の目を引くのは間違いないく「あいつは誰だ、貴族の若造か」「ボンボン将校じゃね」などと嫌味を言われてしまう。


「煩いナノ、邪魔するならぶっ飛ばすナノ」

「コラコラ」


 嫌味で浮かれ気分が吹き飛んだポコは、ガルルとうなり声をあげつつ忠犬アピールに余念がない。アーレイは女としては見れないけど、かけがえのない信頼できる仲間と思うに至るのだった。


 ーー


「デルタ艦隊殲滅作戦を立案するんだ」


 報告が終わったヘルムートは去り際にデルタ艦隊撃破の指示を出され、作戦参謀と共に作戦を練る事になり退出後すぐさま司令本部へと向かう。


 <<ディスティア軍・司令本部>>


 Ai「最終的に残存戦力が少なく、完全降伏を実行するのは不可能です」

 「Aiでは碌なアイデアは出てこないな」


 手始めにヘルムートはAiを利用して殲滅作戦を立案するものの、既存の戦い方の焼き直しを提案するばかりで、結局共倒れになるという結果が出てしまう。原因はヒャンドが絶妙な位置に存在するのと、そもそも戦力が拮抗しているのが原因だ。条件を何度も変え計算させても大差がなかった。


「ヒャンドを潰さない限り艦隊が二分され、デルタの防御ラインを撃破できません」

「そんなことは承知している、何度攻略に失敗したと思っているのだ」


 ディスティアとて手を拱いている訳ではなく何度もヒャンド攻略作戦を実行するも、あと一歩の所で引き分けに終わる事が殆どで、そんな不毛な戦いを300年以上続けていた。だが常識を覆す業火級が現れ間違いなくゲームチェンジャーになり、いつしか反攻作戦が行われと危惧しているヘルムートは「動き(ジャンプ)を制限して攻撃するしか無い、どこか適切な場所はないのか」と、その事を踏まえた作戦立案の指示を出す。


「トレミー星団にある船の墓場にて、待ち伏せなど如何でしょうか」


 過去の作戦指示書を読み漁り侃侃諤諤と議論すること数時間、参謀は思い出したように待ち伏せ作戦は如何ですかと突然語りだした。その船の墓場とは文字通り使われなくなった船が放置され、それも放射能汚染が酷く再利用出来ない旧型戦艦が大量に廃棄されている。


「あの場所は死地の超重力場だそ」


 危険な星雲に囲まれた死地と呼ばれるその場所への侵入経路は限られ、ディスティア側の入り口には数万個にも及ぶ隕石が常に不規則に動き回り危険極まりない。一方のラインスラスト側は巨大恒星の重量場があり、並の船なら引き寄せられ航行不能に陥ってしまう文字通り船の墓場に相応しい場所だ。


「軍艦なら問題なく入れますし、隕石群を有効利用するのです」


 参謀は説明を始め数千個の隕石にジャンプ阻害と推進装置、ECM攻撃装置を取り付け、誘い込んだデルタ艦隊を身動きが取れないようにした後、廃棄された戦艦に紛れ待ち伏せているディスティア艦隊が叩くと熱く語る。


「確か数年前に立案され却下された作戦だな」

「そうです、戦費が嵩み過ぎて見送りました」


 宇宙空間での取り付け作業は困難を極め、完成まで数年は必要となり費用も莫大だ。しかし今回はセオドール直々の命令なので「閣下はアーレイと業火級を葬りたいとのお考えだ。費用は気にしなくていい」と強弁する。


「艦隊を誘い込む為の囮りと圧倒的な火力が必要となります」

「囮は人質でも使えばなんとかなるだろう、戦力に関しては同盟国に協力を要請すればいい」


 ボツにした作戦指示書を見ると、カルネとアーヴィンの協力を得なければ実行できないほど大規模なのは明白だ。しかし参謀はカルネの装備が気になるのか「使い物になるのですか」と訪ねてくる。


「問題ないぞ、最近農業で稼いだ金で近代化に取り組んでいる」

「意外ですね、獣人に頭の切れて稼ぐ奴がいるのですか、それは知らなかった」


 参謀が驚くのは仕方ない。なにせアーレイが入れ知恵をした農作物輸出計画はジャクリーヌが音頭を取り、生産量を増やし多額の利益を得ていた。もちろん不満が出ないように武装の近代化に取り組み、その立ち回り方がまるで商人そのもので、武器商を通じてヘルムートの耳に話しが伝わったらしい。


「ジャクリーヌはまだ若いし切れ物だ。総統に睨まれないようにうまくやっているよ」

「彼らも馬鹿ではないのですね、とは言えこの作戦の準備期間は3年以上必要です」

「ククク、それはかなり大規模な作戦だな、分かっていると思うが超極秘で進めるのだぞ」


 改めてAiに計算させると「挟み撃ちが成功した場合85%の確率で撃破可能」との嬉しい答えが返ってくる。憎き業火を叩き潰せる未来が脳裏に浮かぶヘルムートは、ワクワクとした感覚が湧き上がってきたのか、思わずニヤリと口角を上げた。


 ーー


 <<お食事処・異世界屋>>


「ウマ!この魚も美味しいナノ」


 いまポコが無心に食べているのは日本人なら普通に食べる鯖の醤油煮だ。とはいっても種類が少し違っていて身はサーモンのようにピンク色だったりする。多分デルタの海は甲殻類が豊富で色素が沈着したのだろう。


「ポコはいつからそんなに魚が好きになった」

「カルネに行った時に本物の味を覚えたナノ」


 予約して入った店は、実はずっと以前に見つけていた日本料理店で、いつかは行きたいと思い今回訪れることにした。勿論オーナーは元日本人の技術者でアーレイ同様に呼ばれたが、泣かず飛ばさずで任期を終えると同時にそのまま定住しようと店を開いたらしい。


「これは懐かしい味だな」


 味噌汁を啜ると鰹とは少し違う出汁の風味が口の中に広がり、いい匂いが鼻腔を擽ぐると、家族4人で夕食を頂いた記憶がフラッシュバックのように蘇り、思わず帰りたいと言う気持ちが湧き上がってしまう。


「アーレイ様どうしたナノ?」

「ちょっと故郷を思い出していた、悪いね気にしないで」


 結果が出るまで絶対地球に帰らないと決めていたアーレイだったが、数年ぶりに飲んだ味噌汁の味は故郷を思い出すのには効果てきめんで、チョットだけホームシックに陥り、寂しい表情を浮かべてしまう。まあポコは異星人だと知らないので仕方ないが、困惑した表情を見て不安になったらしい。


「ポコをここまで導いてくれてありがとナノ、いつまで付いていくナノ」


 淋しい顔を見ていつかいなくなってしまうと感じたのだろうか、ポコは感謝の言葉を述べるとともに、死ぬまで付き従いたいと自分の気持を吐露してくる。アーレイ的にはなぜここまでと思うが「君が頑張った結果だ。だがいつでも卒業してもいいぞ」と冗談を言い様子を見ることにする。


「ポコには帰る家が無いナノ、だからこのまま配下でいいナノ、故郷は破壊されて無くなったナノ」


 身寄りが無いのは知っていたが故郷が消滅していたとは初耳だった。帰る場所がなければ確かに付き従う理由になるなと妙に納得したアーレイは「そうか、それなら好きにしろ」と気が済むまで放置することを決める。そしてポコは短く「ありがとナノ」と呟きニコリと笑う。


 ーー


 翌日、指令本部に出向く前に船体設計部に立ち寄ると、空母建設の許可が出たと技官たちが喜んでいた。工程を聞くと内部の構造が極めて複雑なため進水式は2年後、処女航海までの日程は未定だと言われてしまう。さらに「それまでにパイロットを揃えられますか」と頭の痛い事を言われるが、策があるアーレイは「大事だ、問題ない」と言い残し技研を後にする。


<<デルタ軍指令本部>>


「とりま明日はクーンに行って人集め(パイロット)して来るわ」

「相変わらずいきなりだな、とは言え既にアデールには連絡してあるんだろ」


 絶望的なデルタで頑張るよりいっそのこと「第9艦隊はクーンで志願兵を募った方が効率的だよね」と考えたアーレイはアデールに以前要請を出していた。そして「ご用意出来ました」と昨晩連絡が入り捕虜の様子見を兼ねて行くつもりだと話す。


「わかったよ、それとディスティアの暗号解読装置が役に立っている」

「軍関係の連絡事項は筒抜け、クククやっぱ無傷で鹵獲して正解だったわ(笑」


 探索船に戻るマテウスに余計な事したら砲撃するぞと脅し、無傷で暗号装置を手に入れることが出来たアーレイとしては阿呆なアイツに対し、してやったりの気分だ。


「君がフロストぶっ潰したから主要部品の選定に迷いが出てるそうだ」


 手に入れた暗号解析装置を使い通信を傍受すると、新型旗艦建造のそれもエンジンとシールドに関する情報が多数飛び交っていた。諜報部と技術部が共同で解析を行ったところ、主要部品の選定に苦労している事が判明する。


「あれか、シールド強化とエンジン出力のバランスだな」


 100万トン級の旗艦ともなれば全長は1000m以上、主砲30門、VLSのセル数も1200発と重武装で乗組員の数は軽く2000人を超える。アーレイが言うバランスとはその巨大な船体を守る強固なシールドとそれを支える膨大な電力を生み出すジェネレーターのことだ。


「最新の700㎜系主砲を搭載するとなればエンジン選定は相当苦労するはずだ」


 フロスト轟沈を受けて大幅なシールド強化策を打ち出すものの、可変シールドを見越して設計したエンジンでは容量が全く足りず、新設計する時間も無いことから2基追加する事が検討される。しかし巨大な立方体を搭載するにはどこかを削らなければならず隙間を作るのに苦慮していた。


「ザマァだね、居住区とか乗務員をガッツリ減らせばいいのに」

「君の考えは普通じゃない、何故その考えに行き着く」


 業火は小型なのでまだ理解出来るらしいが、巨大旗艦を同じコンセプトで作れると想像出来ないクリスが文句を言うが、アーレイはどこ吹く風で「常識に囚われ過ぎなんだよ」と笑うのだった。

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