戦果。
デルタとディスティアのお話です。
暴虐と熾烈はフェデラリー共和国の恒星圏外に程近い、中立地域に待機していた翠雨に格納され、一路デルタを目指しクロウ星団を後にする。
<今回も活躍したな、着いてそうそう悪いがはよ来い(喜>
デルタ宇宙港に戻ると、いつもの様に待ち切れないジェフからの直電が入り、アーレイとリタは報告のために謁見の間に向かうことに。
<<デルタ王宮・謁見の間>>
「ラインハルトを攻撃した時の映像です」
「相変わらず映画を見ているようだな」
熾烈砲撃から始まる交戦映像は見た人を1発で魅了するくらい刺激的だ。それの更に上に行くのは、もちろん駆逐艦をぶっ壊す暴虐の常識破りの戦い方で、傍で見ていたファルコナーはビックリ仰天するし、突撃のコンセプトを分かっていたクリスは苦笑いをしていたよ。
「2重シールドは厄介だ、しかしなぜ艦橋を狙わなかった」
「艦橋は2重シールドを強化していると判断し甲板を狙いました」
宿敵ディスティアのラインハルトを是非とも撃沈して欲しくて苦言を放ったのだろう。なぜアーレイが艦橋を狙わなかったのか疑問が湧くと思うが、それはECMアンテナ攻撃の際、台座から下は2重シールドの範囲らしく全くダメージが通らない事に気付き、急遽甲板狙いに変更したのだった。
「そうか、わかった」
よくよく考えてみればアーレイは多忙を極める艦長謙パイロットで、咄嗟の判断をしたとした筈だと思い直したジェフは、その判断を信じ厳しい表情はするも、それ以上は問うことはなかった。
「そう落ち込まないで下さい、吉報もあります」
今回の偵察では業火級のステルス性能が予想以上に高い事が判明した。潜んでいた距離を伝え、偵察用シーカーに探知されなかったと伝えると、ニンマリと顔が綻び「第9艦隊の試作艦が楽しみだな」と期待する言葉を頂き、これで大手を振って開発できることになる。まあクリスはジト目だが自分の理想とする艦隊を作りたいアーレイは気にも留めない。
「陛下これが熱核兵器の全容です」
次に艦載機から放たれたアレが爆発するまでの映像が流れ、同時に測定値を示すと「これは証拠になるな、次の星団会議に出席しなさい」と軽くアーレイに無理難題を押し付ける。
「休暇!」
「会議後な、じゃ次!」
今日はフローレンスがいないので強権乱発気味だ。リタにはクスクスと笑われジト目になりつつ、自爆型アンドロイドの映像を流し始める。
「艦内に侵入したアンドロイドは自爆型で、これも星団法違反です」
「業火の為に作ったのか」
映像は通路で自由に動けなくなった所から始まり、宇宙空間に放り出され遠方で爆発するシーンだけを流す。 アーレイは何故か宇宙空間で回収した下半身のパーツは無かった事にして澄まし顔で次の説明に入り、心の中では星団会議で一泡吹かしてやると決めた瞬間だった。
「次は凄く衝撃的なので王女様が不在で助かります」
「そうなのか、とりあえず見せて貰おうか」
フローレンスが同席していないので、艦橋内部のあのガラスケースに収められた衝撃的な映像を一時停止にして説明を始める。パッと見でとんでもない代物と分かったのかアーレイ以外表情が青ざめる。
「鹵獲する前に自爆してしまい少し残念です」
自爆兵器を証拠として持ち帰るのは困難だし、会議の場で映像だけを流しても転送履歴が残る自爆型アンドロイドの件とは違い言い逃れをされてしまうだろう。しかしジェフェは苦い顔はせずご機嫌で「良い良い、十分な成果で戦果だよアーレイ少佐」と言い放ち、またまた強権発動だ。
「なんすか、その雨後の筍のように上がる階級って」
「知らんのか君は昇進したんだ、他は固辞するだろ」
「そーですねー」
そしてジェフは呆れ顔のアーレイを無視して「俺としては君の血をデルタに残したい」と皆の前で爆弾発言をする。
「へ、陛下、その発言は流石に」
フォルコナーは驚き。
「え゛?」
異星人と知らないリタは虚を突かれ。
「マジっすか」
クリスは思わず普段言葉がでてしまう。そしてフローレンスを暗に娶れと言われたアーレイは・・。
「星団統一が本当に実現するやもしれん、だから頼んどるのだよ」
「地球に連れて帰れないし、悲しませることになるので固辞しているのです」
星団統一を目指すアーレイに報いたい気持ちと、未来永劫残って欲しいという願望が入り混じった発言だ。それを聞いてありがたいと思う反面、異世界転生者と違って最終的には家族が待っている地球に戻りたいという気持ちがある以上、悲しませる結果が見えてしまい躊躇していたのだ。
「俺は本気だからな、まあ期待しないで待っているよ」
「承知しました」
凄くセンシティブな話を外野の御三方は固唾を飲んで静かに見守り、一段落するとフゥと溜息が聞こえ緊張していたのが丸わかりだ。しかしこの事はジェフが言わずとも極秘事項なので、安堵するのもつかの間キリリとした面持ちに変化する。
「そうだアーレイ、これから作る戦艦の船体と対空砲は君のアイデアを参考にさせて貰う」
防御力に優れる業火級は今の所誰1人戦死してないし怪我人も皆無だ。そして戦果は大満足となれば、次に作る戦艦は自ずとアーレイが開発した素材を選択するのは当然の結果だろう。「わかりました」と短く返答すると「それを含めての昇進で、ついでに空母の設計を頼めるか」と笑いながらいきなり返された。
「ありがとうございます、陛下これをご覧ください」
アーレイは自分のタブレットを開き、以前作成した空母のイメージ図を見せる。それは内部骨格の一部と着陸専用の特殊甲板だ。一目見たジェフは「もう作ったのか」と呆れ「ステーションの発着に使えますし」と返すと苦笑いされてしまう。
「食えん男だよ君は」
「気が早いですが次期旗艦の設計も終わっています」
チラッと見えた旗艦のデザインを見てクリスは「あっ!」と声を上げる。それは以前アーレイが隙間時間に作業している時に見た艦影で、イージス艦を更にシンプルにした造形だったので精々駆逐艦程度だろうと考えていたので思わず声に出したのだろう。
ジェフ「とりあえず空母のコンセプトを聞こうじゃないか」
ファルコナー「君が作る船は斬新だからな早く見たい」
少し緊張した面持ちで説明を始めたアーレイは、手始めに現存する空母とは一線を画した新たなコンセプトで作り上げると言い放つ。すると興味アリアリのファルコナーは前のめりで物凄く食いついて来た。
「空母のコンセプトは機動力と堅牢な船体、それに抜群の破壊力を兼ね備えています」
「え゛?」
「主砲を搭載するのか、いやはや斬新だなアーレイ」
空母の造形は翠雨と同じく凄くシンプルで、例えるなら拍子木の様に長四角だ。艦橋は戦艦と同じ後方寄りに作るつもりだが、被弾しないようにかなり低めに作られている。そして2人が驚いたのはあの素粒子砲を搭載していることだ。
「開口部を狙われる恐れがあるので、使用するときだけ砲身を露出する仕様になっています」
砲撃時には艦首の一部が4方向に開き主砲を発射できるような仕組みになっている。これは艦隊戦を想定した作りで、斬新なデザインを見たファルコナーは唖然としていたよ。
「星団法に違反してなければ良い、ところでどうやって攻撃機を飛ばすのだ」
「発艦は内部から自動射出します。着艦はシールドを応用した減速システムを採用して速やかに着陸できます」
発艦は20箇所の射出口から釣り下げ式電磁カタパルトを使用して毎分40機が発艦可能だ。着陸時には甲板が地下扉のように斜めに開き高速で艦内に入ったとしても、シールドを用いた技術を使い、ワイヤー方式と同じく急減速させる事ができる。開口部は計6カ所、1分間に18機着艦可能。因みに艦内に入った機体は即座にハンガーに吊り下げられ、格納庫まで自動で運ばれる仕様だ。
「アーレイ、このエンジンは旗艦用の超強力型だよな(呆」
「ええ、機動性を保つ為に無理やり搭載しました(笑」
旗艦用のエンジンを4基採用して暴虐よりやや劣るくらいの巡航速度を叩き出し、艦首近くには業火と同じエンジンをスラスター代わりに使用するので抜群の回頭性能を保持している。堅牢な外殻をもつこの空母は守られる側では無く、戦艦と一緒になって攻撃する、今までにない発想の元作られた砲撃型空母だ。
「空母が艦砲射撃だと(呆」
「フォフォ、こりゃたまげたぞアーレイ」
空母のコンセプト発表だけでお腹いっぱいになったのか、旗艦に関してはまた次回という事になり解散となった。
ーー
<<ディスティア帝国総統府・セオドールの執務室>>
「閣下!哨戒活動中の部隊が襲撃に合いました」
「なんだと、ラインハルトが襲われただと(驚」
空母打撃群がデルタ軍の威力偵察によって大打撃を受けた情報は直ぐさまセオドールに伝わり、聞いた瞬間、沸騰するように顔が真赤になり総司令官であるヘルムートを緊急呼び出しをするのだった。
「申し訳ございませんセオドール総統閣下」
そして1時間後、呼び出されたヘルムートは帰還すると即座に総統府に向かい、ドアを開けるなり頭を深く下げ謝罪の言葉を口にする。そして「何なりと処分をお願いします」と覚悟を決めセオドールと向き合った。
「君はベストを尽くしたのだろ、ベストを尽くしていないならこの場で死ね」
「はい、今すぐに死にます」
自決する心構えが既にできていたのだろう。ヘルムートはホルスターに手を掛け歯を食いしばり拳銃を取り出そうとする。セオドールはあまりにも軽く返答したことで驚きつつ目をギョッと見開き思わず手を伸ばす。間違いなく勢いで死ねと言っただけでまさか自害するとは思ってなかったらしい。
「まて、またんか」
「私の不徳の致すところであります」
「だから待てっちゅーの」
「私のプライドがぁ許しません、このまま死なせてください」
「だーかーらー許すって!」
試したつもりで死ねと言い放ったセオドールは慌てて止めに入るが、死ぬつもりのヘルムートは血走った目で今にも自決しそうな勢いだ。何度か押し問答が続きやっとホルスターから手を離す。
「あのな、悪いのはデルタであって君じゃない。さっさと報告したまえ」
「畏まりました」
その後、威力偵察の詳細が語られ統括に入るがなかなか結論には至らず、Aiに尋ねても「即応能力を試した」「業火級の存在価値を高める行為」「内政に貢献するため」などイマイチピンとこない回答しか吐き出さないので、痺れを切らしたセオドールは気晴らしに飲んでいたグラスを壁にぶち当て叩き割り、激オコ状態でルドルフを呼びつけた。
「熱核兵器の証拠を掴むのが一番の目的で、ラインハルト襲撃は2重シールドの強度を試しただけかと」
とまあ、冷静沈着で真面目なこの男はアーレイの狙いをさらりと答え、結局自分たちが熱核兵器を使ったことが元で今回の威力偵察に繋がり、なんとも言えない気分のまま終りを迎えることになる。とは言え業火級の情報は喉から手が出るほど欲しいセオドールはこの場で進捗状況を聞くことになるが・・。
「業火級に関する内偵はどうなっておる」
「デルタ議会に送り込んだ議員に情報公開請求させましたが、ジェフに一蹴され逆に目をつけられました」
長年戦争をしていると自国の国王に不満を持つ連中が出てくるのは当然だろうし、それを利用して権力の座から引きずり下ろしたいと考える輩も出てきてしまう。ディスティアから密かに支援を受けていた議員の1人は、軍事バランスが急激に動くのは良くないと難癖をつけて業火級のことを議題にした。しかし重要性を理解しているジェフに「お前は馬鹿か」と一蹴されてしまい、逆に監視される自体に陥ってしまう。
「それはまずいな」
「乗務員も情報を漏らすと死刑なので、誰も喋りたがりません」
業火級の情報もさることながら、喫緊の課題は星団会議だ。間違いなく熱核兵器や自爆型アンドロイドの事を議題にすると予想され、先読みをするルドルフは「対策を練らないとこちらが不利になります」とセオドールに助言をする。
「特務艦は試験艦が暴走、アンドロイドは証拠が無いからシカトでいけ、熱核兵器は業火級の対策だと強弁しろ」
「承知しました」
星団会議を適当な理由で逃れようと考えているセオドールだったが、次回の会議の場にはアーレイがオブザーバーとして参加することが決まっている。運悪く当事者が出席するので追い込まれることになるだろう。そんなことは露とも知らない我儘総統閣下は、ひと息付くために琥珀色の液体をグラスに注ぐのだった。
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