威力偵察完。
威力偵察の話は終わりです。
<<少し前のラインハルト・艦橋内>>
艦長「うわああ、何なんだあの船は化け物か」
ヘルムート「ボヤボヤしてないでマーカー射出」
トラクタービームは動きが早すぎて僚艦は近すぎて砲撃できず、手も足も出来ない状況を嘲笑うかのように、暴虐はラインハルトの艦橋の脇を通過するとジャンプして消えて行く。駆逐艦の艦橋をいとも簡単に破壊する様を間近で目撃した艦長は驚き慄き、そんな間抜けなオッサンを軽蔑の眼差しでヘルムートは見る。
Ai「衝撃注意」
「うわ!」
「クッソ」
動き回るポコは目標をロックせず目測で且つ反射的に砲撃を行ったのだろう。Aiが警告する前に熾烈が放った素粒子砲が着弾すると、ドンと強い衝撃が走り不意をつかれたヘルムートは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「業火シリーズにECM攻撃は」
「早くて捕まりません」
「マーカーを撃て逃すな」
素早く指示を出せない艦長に取って代わったヘルムートは矢継ぎ早に指示を出していたが、格納庫で火災発生中、駆逐艦ミラマー漂流中、など現状報告が次々に上がって来ると鬼の形相に変化してしまう。
「戦艦アヴァロンより報告、特攻機甲歩兵2機を暴虐に強制転送成功、業火級戦線離脱」
「追跡用戦艦を出して追撃だ。ただでは済まさない」
僅か15分にも満たなかった威力偵察は予想より甚大な被害を齎し、第1甲板はガタガタ、第2甲板の第3区画は全損、機関室半壊、戦闘爆撃機40数機、戦闘機65機、安否不明を含む戦死者は250名を超えていた。
「2隻でこれだけの被害だと!それも余裕で撤退だデルタは何がしたかったんだ」
「この戦い方は威力偵察だ、手を抜かれていたが威力偵察に間違いない」
最後に艦橋に突撃すること無くあざ笑うように消え去った事で、何らかの意図があると考えたヘルムートは難しい顔をして考え始めたが怒りが収まらず、アーレイの策略が見出せなかった。
ーー
<<ジャンプ直後の暴虐>>
「ジャンプアウトします」
艦隊の射程圏外まで離れた所にジャンプアウトした暴虐。アーレイは熾烈の状況を確かめるためにモニターを注視しながら、熱核兵器の証拠映像の確認をしていたが・・。
Ai「艦内に機甲歩兵侵入、生体反応ありません」
「ヤッバ、艦外に緊急転送するんだ」
緊急と判断したAiは艦内に送り込まれた2体の機動歩兵の姿を作戦モニターに映し出す。グランは咄嗟に転送装置を弄ろうとするが、バーチャル世界で活動中のレーダー手が先にロックオンを済ませ既に艦外に放りだしていた。
「あの通路が役に立ったわ、設置しといて良かった〜」
いつしか発表会の時に買った電気を流すと固くなる金属を侵入者対策用に設置していた。現れた場所は艦首付近で自爆の効果を得ようと中心に向かって動き出すものの、なびくテープが刃のアレに変化して行手を阻まれ動けなくなり、自爆までの猶予ができたお陰で大惨事を免れることに。
「起爆装置起動しました。艦外に出して正解ですね」
「中身はアンドロイドだろうな、証拠を残そう爆薬を分離」
起動装置が作動した事でもう人間だろうが機械だろうが、攻撃を受けた事実は変わりなく正当防衛が認められる。このまま破壊しても良かったが、強かなアーレイは証拠を残せば何かしらの役に立つと考え分離の指示を下す。
「起爆装置は上半身だな転送で飛ばそう」
胸部にある爆発物を避けながらパネル砲で下腹部を狙撃すると、真っ二つになりながら上半身だけがまだウネウネと動いていた。それを見たグランはジト目で「間違いなく星団法違反ですよね」とつぶやく。
「アンドロイドを使用した自爆攻撃は違反だな」
そして自爆アンドロイドは距離にして数キロ程先に飛ばされると、時を経たずしてパッと閃光が走り大爆発を起こす。下半身を回収して一段落ついたところで時計をみると戦闘を始めて15分が過ぎようとしていた。ディスティアはそろそろ対策を練って来る頃だと考えアーレイはリタに連絡を入れる。
「リタ、聞こえるか、まだやるのか」
<まだ、お楽しみの最中なんですが>
リタに連絡するとピーピーと警告音に混じって、興奮しているのかワオ〜ンとポコの雄叫びも聞こえ「熾烈の中は熾烈だな」と親父ギャグを連想したのは内緒。
「お客さんが乗り込んできたぞ、潮時だ引き揚げないとヤバいぞ」
<わかりました、中立地域近くにて合流しましょう>
通信が終わると熾烈は大きく旋回しながら最後に素粒子砲をぶっ放しジャンプして消え、暴虐は放たれた主砲が戦艦の艦橋に着弾したのを確認すると、漆黒の闇に向かって急加速して行くのだった。
<<ディスティア支配地域内・中立地域付近>>
<もう、やっと追いつきました!>
「リタ艦長お疲れさん」
暴虐だと1回のジャンプで合流場所まで到達したが、足の短い熾烈は2回ほどジャンプしたのか数分遅れで姿を現す。ここで一旦追跡の確認を済ませた後に、フェデラリー共和国の恒星圏外で翠雨と合流することになる。
<ECM攻撃がめちゃくちゃ凄かったですわ>
「こっちはECM攻撃はなかったが、土産は自爆アンドロイドだったよ」
<うわぁ〜酷い置き土産ですね>
<凄いナノ>
この地域で長居は無用だが追跡者が来ることを想定して5分ほど今回の戦いの振り返りを行い時間を潰していた。もちろん意味をわかっているレーダー手は長距離センサーを先程迄戦っていた方角に向け重点的に監視している。
「高速で接近してくる戦艦を感知」
「やっぱ悪い予感が的中したな、リタどこかにマーカーが張り付いているから先に翠雨に戻って排除してくれ」
<了解しました。それではお先です>
アーレイが言い放った悪い予感とは、接近した際にマーカーを取り付け逃走を図り、気を抜いた時を狙って追撃すると逆の立場で考えていたためだ。そして狙ったように戦艦2隻がジャンプアウトをして目の前に現れる。
<テイセンヲヨウキュウスル、タダチニコウフクセヨ>
「なんだかな〜もう少しマシなマシンボイス使えよ〜(呆」
全く緊張感の無いアーレイがボヤく理由は、モニターを見ても艦船登録の表示が出ないし、見た目から判断すると2世代前の戦艦で全く脅威ではない。それにマシンボイスなのでさっきの自爆アンドロイドに毛が生えた程度だと見切りをつけ「主砲発射用意、エンジンコアを狙って無力化をする」と笑いながら指示をだした。
「ディスティアの戦艦に告ぐ降伏せよ5秒間だけ待つぞー(笑」
「古い型の戦艦ですがスキャン阻害が働いています」
オープン回線を使い警告を出すと<テキトーミーナス>と変な発音で返してきたので、爆笑しつつ次の展開がわかったアーレイはお腹を抱えながら「とりま撃っていいよ」と命令を下す。因みに敵艦の砲撃を始めたものの全て弾き返し全く意味をなしていなかった。
「エンジンコアに向け主砲発射します」
そして2隻はエンジンを撃ち抜かれ沈黙。そのまま精密スキャンを行うことになるが生体反応が微弱で誰も乗っていなくてもう訳が分からない。アーレイ的には嫌な予感しかせず詳しい結果を聞くと人間は乗船していないとわかり頭を抱える。
「これは厄介だな、証拠になるような物があるなら外に転送しろ」
「待ってください艦橋から微弱な生体反応が出ています」
恐ろしく弱い戦艦なので何かしらラップが仕掛けてあるだろうと考え、偵察用シーカーを飛ばし内部の様子を探ることにした。それと何かあれば速攻でジャンプできるように加えて指示を出す。
「おかしいな空気が漏れないな、それではシーカーを侵入させて探検だ(笑」
「それではシーカー侵入します」
シールドが霧散した船体はパネル砲で簡単に穴が空き、何ら問題なく内部に侵入を果たし、急いで内部探査を始める。艦橋内部は薄暗く、艦長席の後方だけが煌々と輝き3個の大きなガラスケースが嫌でも目に入る。
「なんだこれは、高等生物のやつだろ」
モニターに映し出されたのは脳と脳幹など頭蓋骨に守られ収められてなければならない筈の物だ。それには小さな電極が何十本も取り付けられ、この戦艦をコントロールしていると一発で理解できる。
Ai「真ん中は成人の人間、左右は脳幹に特徴がある獣人の子供。一致率は98パーセント」
医療用Aiは無情にも結果を出してくる。このようにAiが進歩する前の時代に死刑囚の脳などを使った自立型戦艦の開発を、ディスティアが行っていた事をアーレイは強制学習で知っていた。星団法で厳しく規制され長らくその存在は禁忌とされていたが、目の前に浮かぶそれは絶対あってはならない物だ。非道な行いに対し悲しみと怒りが入り交じる何とも言えない表情を浮かべるアーレイは、何としてでも証拠を持ち帰り星団会議の場で糾弾してやると心に決める。
「ハッキングはできるか?」
「はい、出来ますが何か妙ですコネクトゲートが開いたままで、これ罠じゃないですかね」
ECM攻撃などでハッキングを行う際は有線通信網に特定の電波を当てて割り込む。今は艦橋内なのでアクセスゲートと呼ばれる通信網の入口から侵入するのが一般的だ。もちろん暗号化されているのでそう簡単には入れないが、今の状況は繋いでくれと言わんばかりだ。疑問に思ったアーレイは先に爆発物などを調べる指示を出す。
Ai「少量の爆発物以外は感知できません」
自爆を考えるならトン単位の高性能爆薬が必要になるのは当然だろう。しかしそれらは見つかること無く良くわからない状況だ。だが攻撃を行うなら何らかの方法でダメージを与えなければならない。少し悩んだアーレイはこの戦艦の心臓部を調べ始める。
Ai「この戦艦のエンジンは核融合炉を使用したタイプです」
「燃料の搭載量が多すぎるな」
旧型艦は核融合炉とわかり燃料搭載量を聞くとあり得ないほど積んでいた。アーレイは間違いなく暴走させて爆発させると考えハッキングをしない指示を出す。するとその脳は異変に気がついたのかECMレーダーのアンテナを動かし始めた。
「んっいまアンテナが動いたぞ。ジャンプだ、ここから離れろ」
Ai「予備の核融合炉の起動確認」
「は、はい。ジャンプします」
そして緊急ジャンプを行い100キロほど離れ様子見をすることに。艦内に残されたシーカーの映像を見ていると、いきなりカウントダウンの文字が艦橋内のコンソールに現れた。
Ai「核融合炉が暴走します」
Aiが異常を知らせ、間も無くするとパッと閃光が走り、同時に機関部を中心に真っ白い大きな球体が出現するとそれは光の輪と共に巨大化して消えていく。
「凄いな、熱核融合ナパームかあれ?」
「間違いないかと、凄い放射能量と中性子量が観測されました」
通常なら核融合は暴走などしない、しかし太陽が燃えるようにひたすら燃料を与え続け超高熱になった時点で探査で見つかった火薬を使い核燃料を爆縮させるものだろう。0.5メガトンほどの核爆発を発生させその威力を使い超高温を撒き散らしていた。
「ECM攻撃して足止めをした後に燃やし尽くすつもりだったのか」
余りにも非道な兵器を作りそれを躊躇なく実戦投入してきたディスティアは、業火級を本気で潰しに来たと嫌でも理解させられるのだった・・。
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