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威力偵察2。

威力偵察を行いますよ〜

 <<空母レオンハルト>>


 ディスティア帝国は2隻の空母を保有している。1隻は45万トン級空母マルグリートと言い70数年前に就航した老旧艦だ。近代改修を行うも放射能汚染が許容値を超え退役待ちとなり、現在は離発着訓練艦として運用され艦船登録からは抹消されている。もう1隻のレオンハルトは2段式飛行甲板を持ち、艦載数は350機を誇る最新鋭100万トン級超大型空母だ。2重シールドを採用して鉄壁の守りだと噂されるが、一度も艦隊戦に遭遇したことがなく性能は未知数だった。


 ーー


 <<旋回直前の戦艦シェフィールド艦橋>>


 操舵手「次のターンでディスティアに帰れるぞ」

 レーダー手「敵影反応なし味方機の反応のみ、こんな所に敵なんかいないだろ」


 ラインハルトを中心に空母打撃群を組み、支配地域内の警戒活動はもう5回目を迎え、同じ航路、同じ訓練でそろそろパターンを変えた方が良いと進言したくなるほど緊張感の欠片も無く平和そのものだ。作戦用のモニターには哨戒活動中の攻撃機の反応が映し出されていた。


 Ai「警告まもなく旋回します。警告まもなく旋回します」

 艦長「まったく平和なアナウンスだな、船速そのまま面舵15度」


 Aiが警告を出すと戦闘機にエスコートされるように先頭の駆逐艦がゆっくりと進路を変え、操舵手が命令に従い船速そのまま面舵15度と復唱すると、戦艦シェフィールドは軽く船体を傾けながら旋回を始める。


「ああやっと帰れるな」

「あと6時間の辛抱だな」


 平和なやり取りはこの船だけでは無く僚艦も同じ状況で緊張感が無く、この数十分後の熾烈の砲撃によって大混乱に陥るとは夢にも思っていないだろう・・。


 <<旋回前の空母レオンハルト・艦橋>>


 ヘルムート「チッ、何度言ったら分るんだ外側の護衛艦はもっと速力を上げろ、隊列が乱れた」


 アロイスが戦死後、すぐさま艦隊総司令官に任命されたこのヘルムートと言う男は、切れ長の鋭い眼光を持ち群青色の髪の毛と相まって冷たい雰囲気を放っている。第2艦隊司令官時代には勝機とみなすと一気に攻め込む機転の速さが売りで、総崩れになった敵に対し執拗に追撃の指示を出す非道な一面を持ち合わせる有能で厄介な指揮官のひとりだ。


 通信士「哨戒機より報告、小さなシーカーのような物を発見との事です」

 ヘルムート「何だそのような物とは、排除していらん物にしろ」


 旗艦としての役割を担ったレオンハルトの艦橋内は気の緩んだ僚艦とは違い、艦隊総司令官のヘルムートがピリピリとした怒気を放ち、何とも言えない緊張感が漂っていた。


 Ai)「警告、まもなく旋回しますご注意下さい。警告、まもなく旋回しますご注意ください」

 乗務員「このターンが終われば帰港に向けて一直線だな」

 ヘルムート「私語は慎め職務に邁進しろ、敵が潜んでいる可能性があるんだぞ」


 司令官の間では業火級の存在を脅威に感じ危機感は半端ない。しかし下士官はまだその恐ろしさを知らないのか、はたまたこの地域で攻撃されないと高を括っているのかつい呟いてしまう。しかし鬼の形相のヘルムートに叱咤され、慌ててモニターに向き合うのだった・・。


「ヘルムート司令官、気合を入れる為にシグナルブルーで行きましょう」

「グリーンだと緊張感を持てないならブルーでも保てんだろ」


 お怒りモードを鎮める為にシグナルをブルーに変更するが、ラインハルトの艦橋以外で緊張感は増すことは無かった。


 ーー


<<旋回後・第2飛行甲板・第3区画>>


 レオンハルトは2段式の甲板を持ち、第1は発艦、第2は着艦用として使われ、その間には巨大な格納庫があり通常整備や弾薬補給などに使われる。因みに第1甲板は宇宙空間なので専用のエレベーターで移動してそのまま発艦出来る作りだ。第2着艦用開口部は前後合わせて4箇所あり、シールド技術を応用した特殊な膜によって空気が漏れ出ることはない。


「交代のスクランブル要員は下りてきたか」

「いや、まだだ」


 周辺警戒を終えた艦載機が戻ってくる。この機体は次のパイロットに引き渡され、上部格納庫内にある第1甲板に上がる高速エレベーター内で待機しなければならない。交代要員の姿が見えず疲れているのか少し苛ついていた。


「わるいわるい、宇宙服にエラーが出て手間取ってしまったよ」


 遅れてきた交代要員の男はバツが悪いのか言い訳をしながら機体に近づいてくる。「お漏らし採取パットだろ」と冗談を飛ばすと股間に両手を置きながら腰を引き「漏れたから着替えないと」と言いつつふざけていた。


「えっ?なんだ」


 笑いながらハーネスを外しているとバーンと耳を劈くような爆音が鳴り響き、目の前が真っ赤な火炎に包まれてしまう。それは熾烈が放った素粒子砲が直撃した瞬間だった。船体に大きな穴が空き、灰になったパイロットはもちろん残骸に変わり果てた艦載機は無情にも暗黒の宇宙に吸い込まれてしまう。


「誰か助けて〜」

「隔壁シールドはまだか」


 直撃を受けた付近は真っ赤な灼熱地獄の状態で、開口部分が大きすぎて未だ緊急隔壁シールドを展開出来ていない。そのため抜け出る空気は人々を簡単に艦外へと押しやり、工具ケースやはしごの類が宙を舞い、必死に手すりに捕まっていた女性整備士の頭にそれが直撃すると気を失い、無情にも艦外に放り出される。やっと隔壁シールドが展開され落着きを取り戻すが、僅か1分弱の間に多くの人々が真空の宇宙に放りだされ、甚大な被害を被ってしまう。


 <<第2甲板・第2区画>>


「急げ急げ、スクランブル発進だ」


 ラインハルトの第2甲板は4箇所の区画があり、被害を免れた所ではスクランブル発進の要請が入り、鉄火場のように混乱していた。


「上がれー!上がれー!ホバリングしてタキシングしろ!」


 通常、ホバリングして移動することはないが今は緊急事態だ。艦載機は宙を浮き高速エレベータに向かって移動し始める。しかし熾烈の砲撃で安全回路が働き、いつまでたっても扉が開く事は無かった。


 管制官「高速エレベータは使用不能だ、着陸口から発艦されたし」

 パイロット<了解>


 被害を免れた30数機の攻撃機は来た道を戻り、着陸口から発艦すると熾烈へと向かってゆく。


 ーー


 <<少し前の空母レオンハルト・艦橋>>


「艦長、9時の方向に高エネルギー反応、密集陣形に移行します」

「進路そのまま戦艦2隻を向かわせろ」


 ほぼ真横の位置に熾烈が姿を現した時の状況だ。シグナルサインと登録データ受信前にもかかわらず即座に対応をしている。ヘルムートが気合を入れたお陰で早く動けたのだろう。事実、指示を出すものの戦艦2隻の動きは怠慢そのものだった。


 Ai「ロックオン信号確認、危険です」

「撃ってきます。耐衝撃警報発令」


 熾烈の120%まで威力を溜めに溜めた主砲が火を噴き、真っ赤なビームが一直線にラインハルトの左舷中央に吸い込まれていくと、物凄い衝撃がガツーンと伝わり「何だこの強烈な衝撃は」と驚愕の表情をするヘルムートは、キャプテンシートから転がり落ちそうになり必死にしがみついていた。


「敵データきました業火級”熾烈”単独」

「第2甲板被弾!エアロック間に合わず数十名艦外に放出されました」


 続々と嫌な報告が報告が上がるが、喉から手が出るほど業火級を欲しているヘルムートはガン無視して「ありとあらゆる攻撃をしてでも熾烈を拿捕をするんだ」と言い放ち、更に熱核兵器を使って構わないと付け加え何としてでも捕らえようとしていた。


 ーー


 <<熾烈砲撃直後の暴虐・艦橋>>


「おお、シールドを抜けたぞ、敵さんは完全に気を抜いていたのかな」

「あのエアーの漏れ具合だと中破程度と思われます」


 噂に聞いていた2重シールドは思ったより弱いと感じていたが、実はこれには訳があって着艦時に弾いてしまうので威力を弱めていた。とはいえ熾烈の全力砲撃で大破しなかったのはそれだけ強固と言えるだろう。


「艦載機発艦を確認、30機ほどが追っています」

「前方にジャンプして挟むつもりだろうな」


 発艦した攻撃機は急旋回、急加速すると執拗に熾烈を追い始め、戦艦は味方が射線に入らないように予想射撃を繰り返していた。そしてアーレイが言う通り後発の攻撃機が進路上に姿を現す。


「ドリフトする戦艦を始めてみました」

「流石ポコだね、あれじゃ攻撃する暇ないわ」


 熾烈の動きはもはや戦艦では無い、行く手を阻むように現れた敵に対しドリフト状態で機銃掃射しつつ回り込み、追って来た敵と交差すると放たれた熱核兵器を右に左に巧みな操船で避けていた。


「凄い、攻撃機とあの兵器をガンガン落としてますよ」

「だが砲撃が出来てないな、あれかECMだなちょっと早いが援護しよう」


 派手に動き回っているものの砲撃が出来ないのはECM攻撃の対処で精一杯と考え、熾烈に注意が向いているこの時がチャンスと判断すると、ステルス解除と同時にショートジャンプの指示を出した。


 <<空母レオンハルト・艦橋>>


 Ai「ロックオン信号確認、危険です」

 「や、ヤバい、指令、新型艦の暴虐です」

 「慌てるな、戦艦に攻撃の指示を出せ」


 業火級熾烈拿捕に全力を注いでいる時にいきなり現れた暴虐。慌てる艦長はモニターとヘルムートを交互に見るが、彼は最初から1隻だけだと思っていなかったらしく、冷静に砲撃の指示を出し、そして素粒子砲が放たれた。


「き、消えました」

「来る!総員備えよ」


 対応の遅さをあざ笑うかのように暴虐は忽然と姿を消し、ヘルムートの脳裏にはフロスト攻撃と同じように超接近戦で来ると直感で感じ、警告を発するものの時すでに遅く、第1甲板を真っ赤な素粒子砲が染め上げてゆく。


Ai「近距離接近警報、高出力エネルギー確認」

「第1甲板被弾!待機中の40機消失」

「何としても拿捕するんだ、多少の犠牲は構わん」


 ラインハルトの斜め前にジャンプアウトした暴虐は即座に素粒子砲を放ち、艦橋に向かって動き出した。


 ーー


 <<暴虐出現前・熾烈>>


Ai「ECM警報、危険です危険です」

「空母に砲撃出来ないナノ!直線で飛べないナノ!」


 艦載機による執拗な攻撃は続き更に複数隻による電子攻撃に晒され、艦橋内は警告音がピーピーと煩く鳴り響いていた。普通の戦艦だったら既にハッキングされ行動不能に陥っていることだろう。


「敵も必死だからね撹乱するだけで十分よ」

「暴虐予定より早く出現しました」

「良いタイミングで出たナノ〜」


今しか無いでしょのタイミングで現れた暴虐はリタの口角を上げ、ポコはECM攻撃が一瞬止まりニヒヒと笑いながら主砲のトリガーを引く。


ーー


<<空母レオンハルト・艦橋>>


「戦艦シェフィールド轟沈、ECMアンテナ破壊されました」

「なん・だと」


 熾烈の放った素粒子砲は先頭付近を走る戦艦の右舷機関部に命中すると、可変シールドが間に合わなかったのか簡単に撃ち抜かれ、艦橋の後ろ半分が吹き飛んでしまう。息のあった攻撃によって空母打撃群は混乱のドン底に陥ろうとしていた。そして追い打ちをかけるように暴虐が艦橋に向かって突進してくる。


<<突進中の暴虐>>


「駆逐艦が割り込んで来ますこのまま突撃しますか」

「レオンハルトの艦橋の鼻っ面を掠めてそのまま突撃でいい、これが本来の使い方だ」


 本来の使い方をしたくて仕方ないアーレイは突撃の指示をだし、それに従い暴虐はレオンハルトを掠めながら駆逐艦の艦橋に体当たりを敢行する。


「急速反転、そのままレオンハルトに砲撃だ」


 駆逐艦との排水量の違いは高高数万トン程だ。艦橋を狙って体当たりすれば大型トラックが軽自動車に追突するほどの質量差があり、暴虐内にバキバキと嫌な音が響くものの大した衝撃もなく、駆逐艦の上部をめちゃくちゃに破壊しながら通過する。そして急反転を行いラインハルトに急接近するのだった。


「主砲充填度85%ですが」

「構わん機関部に向けて放て」


 エネルギー充填はまだ済んでいなかったが、少し威力の落ちた主砲を発砲すると機関部に命中する。しかし2重シールドが効いていたのか青い光が威力を削ぎ大穴は空くものの熾烈の時のように激しい火炎は吹き出さない。


「熾烈の砲撃来ます」

「一旦戦列を離れるショートジャンプ」


 混乱したディスティア軍が隙を見せ始めたのだろう。そのチャンスを逃がすまいと熾烈の砲撃がラインハルトの後方格納庫部分に着弾すると、先程暴虐の砲撃の直後でシールドが弱くなっていたのか初弾と同じく大きな火柱が上がり、真っ白い霧のような空気が漏れ出るのだった・・。

宜しければブクマ、評価、感想、お願いナノ!

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