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威力偵察。

威力偵察にお出かけです。

 <<支援艦翠雨内・熾烈>>


 熾烈は支援艦翠雨に暴虐と共に格納されメンテナンスなどが常に行われている。今日もまた異常振動を感知したため機関部を中心に整備中だ。


「業火より振動が多いナノ」


 5番艦である熾烈はマドック達ベテラン勢が暴虐建造に駆り出され、代わりに経験を積むために若い技術者連中が組んでいた。しかし詰めが甘いのか細かい振動が頻発する症状に見舞われ、パイロットのポコは作戦を前に不満気味だ。


 <<翠雨内・ミーティングルーム>>


「熾烈と暴虐の乗組員は揃ったか、傷病者の健康状態はどうだ」

 <アーレイ大尉、健康状態は極めて良好です!>


 司令本部のミーティングルームに集められた2隻の乗組員たち。会議室にはリタとポコ、暴虐の副官グランだけしかいない。残りの十数人は医療用カプセルに入ったままなので翠雨内にある医療施設からの参加にとなり、大型モニターには暑く苦しいオッサンがたくさん映っていたよ。


「それでは良く聞いてくれ。哨戒活動中のディスティア空母艦隊に向け威力偵察を行う」

 <おおお>

 <マジですか>

「ナノナノ」


 作戦内容を開示すると予想すらしてなかったラインハルトへの威力偵察と聞き、俄然やる気を出していた。これなら今回志願兵を募ることなく参加表明をしてくれるだろう。しかしアーレイはリタの子供がまだ幼く、気になっていたので志願するか聞いてみた。


「上を目指すには危険を顧みず信頼を勝ち取るしかありません。なので参加する所存であります」


 まあ何とも勇ましいお言葉を頂いたアーレイは内心で戦闘狂の素質があるなと思い、そのうち作るつもりの超大型空母の艦長を任せてみたいと思ったのは内緒です。


「大艦隊相手なのでかなり危険を伴う。なので最低限の人数で作戦を遂行する」

 <私は乗ります。戦う機会を与えて貰っているのに拒否する理由がありません>


 アーレイが作戦の危険性を再度説明すると、独特な電子音で喋る殆ど機械で覆われたサイボーグのような機関士が志願してくる。彼は数年前、敵の砲撃によって機関室が爆発してしまい、全身火傷を負い機械化することで九死に一生を得た。しかし肢体不自由になりすごく落ち込んでいたところ、アーレイが引き抜き業火級に乗船できると知るや否や、まるで別人のようにやる気に満ちていた。


 アーレイ「わかった、だが死んでも知らんぞ」

 機関士<勿論です>

 レーダー手<アーレイ大尉、私も乗ります!>

 通信士<私も乗るのであります!>

 リタ「・・・(悩」


 暴虐の乗組員も含め全員が志願することになり事なきを得る。ここでリタが腕を組み何やら考え始め、顔を上げるとアーレイをジッと見つめてくる。愛の告白にしてはこの場所は憚れるし、そもそも人妻なのでお断りだが、彼女の言わんとしていることが手に取るようにわかるので「暴虐のパイロットは俺だ」と答える。


「え゛?アーレイ大尉、まさか艦長謙パイロットでしょうか(呆」

「だって暴虐動かせるパイロット俺しかいないし(笑」


 普通の戦艦の操舵手だと業火を自由自在に飛ばすことはとても難しく、暴虐はさらに大変だ。どちらかと言えば戦闘機のパイロットが適している。しかし現在のデルタでは空母の運用を諦めるほど人材が不足しているのと、ポコを熾烈に乗せるので適任者が誰もいない。もう半年もすればライセンス保持者が増えこの問題は解決することにはなるが、この好機を逃がしたく無いアーレイは自ら飛ぶことを決めた。


「これ見るナノ、適正評価表はオールAナノ」

「はっ?アーレイ大尉の評価って凄くないですか(呆」


 暇があれば仮想訓練装置で訓練や、ベクスターを乗り回しているアーレイはゲーム好きが相まって高得点を叩きだし、成績表を見たリタは呆れていたよ。


「今回はマジでヤバイぞ、だから皆で力を合わせて成功させような」

「この船に乗れた時点でいつ死んでも悔いはありませんし、一致団結して戦うのは当然であります!」

「ふん!この馬鹿どもが、ありがとう」

「最高の褒め言葉です!」

「ナノナノー!!」


 業火級の乗組員たちは腕は立つ連中ばかりのベテラン揃いだ。戦いたくても乗れないことで燻っていた傷病者時代とは打って変わってやる気に満ちていた。


 ーー


 <<翌日・司令本部>>


 警戒航路にて哨戒活動する空母ラインハルトの行動パターンが掴めたと連絡が入り、アーレイは指令本部でその報告書を読み漁っていた。


「近いうちにディスティア空母艦隊に威力偵察を行って、あの兵器の証拠を掴んで来るわ」

「威力偵察って本気かアーレイ、マジで危険な任務になるぞ」


 真剣な眼差しで報告書を読んでいたアーレイを見て何かしら作戦を立案すると考えていたが、想像すらしていなかった威力偵察に行くと言いだし、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。だが一度決めたら結果を出すまで頑張る男が、凄く真面目な表情をしていたので説得は無駄だなと判断。ヤレヤレの表情を浮かべるクリスは「ところで誰と行くんだ」と聞いてきた。


「暴虐と熾烈で行くつもりだ。もうポコには話してある」

「そうか、ポコでも大艦隊相手だと死ぬかもよ」


 暴虐より熾烈の方が先に沈むと考えたのか険しい表情になったクリスは、メンバーを見て選んだ理由を考え始めた。それを見たアーレイは「危険すぎるからポコを選んだだけだ」と言うと、最悪の事態を想定して他の艦長を選ばなかったと分り「そう言うことか、こりゃ極上のご褒美が必要だな」と苦笑いしながら返してくる。


「あいつが欲しい物でも買ってやるさ」

「さすが飼い主!」

「飼ってないし、育ててもいないぞ(笑」


 厳しい条件の戦いに挑むアーレイは逆に、そのプレッシャーが心地いのかニコリと笑い、送り出し役のクリスは命を張って星団統一に突き進む雄姿を見て、コイツはヤッパ何かが違うなと感じ、最後に「死ぬことは許さないからな」と自分の気持ちを表すのだった。


 <<数日後・指令本部ミーティングルーム>>


 作戦当日、ミーティングルームに集まった艦長達に作戦指示書を見せる。アランとバートンは選ばれなかった理由を察したのか「ちゃんとご主人様に仕えるんだぞ」とか「流石アーレイの忠犬はひと味違うな」とか微妙な誉め言葉を発していた。


 「頑張るしかないナノ~昇進間違いないナノ~次は中尉ナノ~」

 「え゛マジ」


 因みにポコは15歳になったばかりだが、少尉の階級はアーレイが航空隊に編入したのが原因でバグっているとしか言いようがない。このまま活躍していけば数年後、アランは抜かされる可能性が見えて来たのかジト目に変わったよ。


「それではいまから作戦を説明する」


 単独で出港すると哨戒活動を途中で変更する可能性があり、防ぐために第9艦隊はクーン防衛隊と共同軍事演習を行い、暴虐と熾烈は囮役として別行動になる。作戦の目的は熱核兵器使用の証拠を掴み、空母レオンハルトに多大な損害を与えることが重要だ。しかし支配地域内で長時間待ち伏せするので危険度は高いと説明した。


 <40時間も支配領域で待機ですか>

「ほとんどの時間は支援艦の中で待機で実際は20時間ほどだ」


 説明は続き、レオンハルトは警戒航路を進み支配領域の端に差し掛かると、艦載機を飛ばし周囲を警戒した後、ディスティアに向け大きく旋回する。アーレイはこの直後が最も緊張感が緩み、本国との距離が遠く強襲するにはうってつけだと語り、裏付けとして旋回後、隊列が乱れた映像をスクリーンに出した。


「強襲を始めて援軍が来るまでの時間はどれくらいなのかしら、10分ほどかしら」

「2隻で強襲するので直ぐには要請しないと踏んでいる。注意するのはECM()攻撃だけだ」


 最後に強襲する地点の座標を示しつつ、行動予定表を開示して作戦説明は終了を迎えた。


 ※=ECM攻撃とは、電子攻撃の略称で指向性の強い電波を使用し、対象の船の戦術コンピューターに侵入後、コントロールを奪うハッキング攻撃。対策としては防疫ソフトを駆使て侵入を阻むか、長時間電波に晒されないように動き回るかの2択になる。


 ーー


 第9艦隊は定刻通りデルタ宇宙港を出港すると惑星クーンを目指しジャンプ阻害エリアを航行中だ。恒星圏内を抜けると同時に熾烈と暴虐は隊列を離れステルス化を行い単独行動を開始する。間もなくしてジャンプ可能エリアに差し掛かると翠雨に格納され、一路トレミー星団を目指し商船の影に隠れクロウ星団へと向かった。


 <<20時間後クロウ星団・ディスティア支配地域>>


「アーレイ司令、翠雨は予定通りトレミー星団に戻っていきます」

「いよいよだな、それではかくれんぼを始めよう(笑」


 艦隊戦なら早期警戒レーダーに察知されようが一秒でも早く到着すればいい、しかし今回は待ち伏せを含む偵察任務なので、クロウ星団に入るにはどうしても経済速度で走る商業航路を使わざる得ない。ヒャンド発フェデラリー行きの定期船の影に隠れ無事侵入を果たした翠雨は2隻を放つと来た道を戻っていった。


「無線封鎖地域に入るぞ、赤外線通信は大して飛ばないから暴虐から離れるなよ」

 <わかったナノ、ギリギリ接近するナノ>


 3星団では艦船の大型化が進み隊列の間隔が広がった事で通信距離が短い赤外線通信は使い勝手が悪く、ステルス航行中はシュノーケルを使い超短波の通信装置を使っている。敵も同じ様な状況なので哨戒活動を行う際はその周波数帯を調べるのが常だ。なので暴虐と翠雨はありえないほど密着しながら待ち伏せを行う座標へと向かうことに。


 ーー


 <<数十時間後・空母ラインハルト旋回予定座標>>


「ラインハルトから多数の艦載機の発艦を確認しました」


 距離にして数万キロ先、左手から右手に向かい航行するラインハルト空母打撃群は、数時間後に行う大旋回に向けて艦載機を発艦させ周囲の警戒を強める。現在の暴虐と熾烈が潜んでいる位置は旋回後に通過する場所だ。


「情報が正しければ5時間後に会敵だな。俺は少し休むとするか」

「そうしてください、司令は一度も仮眠を取っていませんから」


 翠雨を離れこの場所に到着して15時間ほど経過している。その間アーレイは乗務員の休憩を優先して全く休んでいない。休憩上がりのグランは少し心配そうな顔をしていた。


「敵の動きに変化はないよな、それじゃ頼んだ」


 時折、障害物に砲撃を行いピカピカと閃光が走るモニターを眺めていたアーレイは急に眠気が襲ってきたのか、仮眠を取るために監視をグランに任せ艦長室へと向かうのだった。


 <<暴虐・艦長室>>


 艦長室と言っても簡易ベッドと2人掛けのテーブルセットが置いてあるだけの狭い部屋だ。居住スペースを極端に減らすコンセプトで作ったので致し方ない。取り敢えず仮眠するために寝っ転がると久しぶりにあいつが実体化して出てきてしまう。


「なんだブラッド珍しいな実体化して出てくるなんて」

「アーレイ、力は必要か今から大勢の人間が死ぬのだろ?」


 自由気ままなブラッドは相変わらず好き勝手にアーレイの体を出入りしている。最近は実像化する時に違和感を感じるようになっていたが気にも留めることなく「とりま力は使わん、それに好きで戦争しているわけじゃない」とキレ気味で答えてやった。


「勘違いするな魂を浄化してやるのだ。ディスティアの民の魂は汚れている事が多いからな」


 なんかブラッドの言いようにマテウスを思い出してしまい、確かに士官連中は感じが悪い印象だった。逆に下士官はそれほどでもなかったが、権力を持つと変わるのはどこの世界でも同じということだろう。


「そうなのか?」

「精霊を信じないし思想が偏って邪念しか感じない」

「なんとなく分かる気がするわ、まあ頑張ってくれ」


 なぜ出てきたのか理由がイマイチわからないが、きっと彼には成すべきことがあるのだろう。ブラッドは黒い霧となって忽然と姿を消す。


 ーー


 <<作戦発動1時間前・暴虐艦橋>>


「巡航速度変わらず。残り55分後に会敵予定、5分後にオプティカルスコープで視認可」

「それでは熾烈と暴虐は消音モードに移行」


 仮眠を取ったアーレイが艦橋に戻ると、先程まで凄く遠い位置を走っていたディスティア艦隊がもう目の前まで迫ろうとしていたがまだ数千キロ先だ。なので限りなく省電力に努め強襲する瞬間まで息を潜めることになる。


 ーー


 <<作戦発動まで残り5分>>


「空母レオンハルト確認、出港時と艦船数変化無しシグナルブルー」


 大旋回が終わり艦載機は全てラインハルトに着艦を行い周囲を警戒しているのは偵察用シーカーだけだが、熾烈と暴虐を感知できず過ぎ去ってしまう。


 <熾烈、攻撃態勢に入ります>

「それじゃリタ初弾は横っ腹にぶち当ててやれ」

 <もちろんですとも、出力120%で砲撃しますわ(笑」


 偵察用シーカーが過ぎ去ると、やる気満々のリタは熾烈を移動させ攻撃準備に入り、アーレイは暴虐をジャンプしやすい位置に移動して様子見だ。


「まもなく先頭が通過、探査レーダーに探知されていないと思われます」

「艦長とポコの腕の見せ所だな頑張れよ」


 数分後、突如姿を現した熾烈は間髪入れずに主砲を放つと、駆逐艦の鼻先を抜けラインハルトの横っ腹に命中しする。シールドが反応して青く光り被弾しないと思われたが、船体には大きな弾痕が残り火炎と共に白い霧が噴き出していた。

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