捕虜と魔獣。
想定外の大量の捕虜達は・・・。
<<デルタ諜報部>>
探査艦の捕虜を全員デルタに送り諜報部が上級士官を中心に尋問する事になった。
マテウス「業火を調べるに決まってる」
そして予想通り業火級の秘密を追っていた事が判明した翌日、アーレイはジェフに呼ばれ拿捕した連中の処遇について聞かれることとなる。
<<翌日・ジェフの執務室>>
「相変わらず手際が良いのあいつが褒めていたぞ」
「新型レーダーのお陰ですよ陛下(笑」
立ち上がったジェフは「今回もありがとうなアーレイ」と語りながら琥珀色の液体をグラスに注ぎ手渡す。それを見た執事はギョッとした表情を浮かべていた。そりゃ陛下自ら酒を渡せば信頼している相手であり、友人に限りなく近い存在と認めたのと同じだからだ。
「ところでアーレイ、俺的には全員死刑で構わないのだが、何か妙案でもあるか」
「死刑などご冗談を、デルタは手狭なのでクーンに送ります」
惑星デルタリア領域にて逮捕された全てのディスティア軍兵士は、スパイ防止法が適用され全員死刑の危機を迎えていた。クリスなら「仰せのままに」と言うのが分かっていたのでアーレイを呼んだのだろう。ジェフは何か期待しているのかニヤニヤと笑っていた。
「まあ確かにデルタで600人弱は無理だな、ちょっと士官でも減らして送るとするか」
積年の恨みが積もり積もってどうしても死刑にしたくて仕方ないらしい。だがアーレイは「屍は反発を産み下士官に責任は無い、捕虜は未来の駒として使いたい」と答えると「うむ、そこまで先読みをするのか任せた」と全権委任の言質を頂くのだった。
ーー
<<クーン精霊王国・農業都市レティシア>>
首都クーンから遠く離れたレティシアは大昔から農業が盛んな地域で、街の中心部にある大きな噴水を囲むようにドーナッツ型の大型木造施設が聳え立ち、それを中心に街並みが放射状に広がっている。郊外には50万トン級の大型輸送船が停泊できる巨大な空港や、大規模な卸売り市場、保管倉庫が立ち並び、クーンの食料を担う中核都市だ。
<<レティシア捕虜収容所>>
「全員整列!」
街の中心部から数キロほど離れた広大な畑の真ん中に、レティシア捕虜収容所は存在する。600名もの捕虜を収容する事はクーンでも不可能だったが、アーレイの要請を受けたアデールは使われなくなった職業訓練学校の再利用を思いつき、この場所を提供してくれたのだ。
「責任者であるアーレイ大尉からお話がある、全員気をつけ!」
グランドにディスティア軍の捕虜600名弱が集められると、士官と下士官に別れ整列をするものの隊列は乱れ、一言で言うなら統率の取れていないだらしがない軍隊だ。大型スタンガンを構えた屈強な警備兵が周りを取り囲んでいるので、嫌々指示に従っているだけに過ぎなかった。
「君らは当分の間ここで暮らす事になる。最初に話しておくが俺が死刑を回避した」
死刑回避と言われ、あるものは不満な顔を、あるものは助かったと胸を撫で下ろしていた。反発する代表格は言わなくても分かるマテウスだ。苦い顔をしてアーレイを睨み返す。
「ここで犬猫と一緒にか暮らせというのか」
「今から注意点を挙げるからよく聞けよ~」
文句を言い放つマテウスを無視したアーレイは「人間のお前らは逃げても直ぐに捕まるぞ」「森に入ったら魔獣の餌食になる」など数々の注意点を述べる。ちゃんと聞いていた奴は顔が青ざめながらウンウンと頷いていた。たぶん家族持ちで是が非でも帰りたいのだろう。それと対象的なのは士官連中で反抗的な目付きで睨んでいた。
「俺は士官だ特別待遇を望む、星団法違反だぞアーレイ」
「死刑回避した時点で、お前らの生殺与奪権を持っているのは俺なんだぞ〜」
今回の事案はデルタ領域に入った時点で星団法は除外され、知ってかしらずかは分からないが「環境が劣悪すぎる、改善しろ」などと文句を垂れる。ムカついたアーレイはそれじゃ天国で暮らせと言い放ちマテウスに指を指すと、新設された監視塔から赤いレーザーが放たれロックオンされてしまう。
「ひゃ―、撃たないで撃たないで」
「獣人達と暮らし君ら選民主義者が如何に愚かな考え方かわかる筈だ、くれぐれも見た目で判断するなよ」
「偉そうに、ふざけるな」
赤いレーザーが消えた途端、すぐさま横暴な態度を取るマテウスは本当に救いがたい。呆れたアーレイは懲罰を与えるために施設の責任者であるラー所長を呼ぶことにした。
「ラー所長、この阿保なマテウス君は深い森で生活したいらしい」
「わかりましたアーレイ様、私達がいないと半日で死にますが宜しいですか」
所長のラーは黄金色の長い髪を持つ馬属の女性でまだ20代後半と若く、官帽から飛び出る長い耳がピョコピコと動きとても可愛らしい。しかし軍の教育科では鬼教官と呼ばれているとても厳しい人だ。扱いが難しく我儘と言われるディスティアの兵士に対し、1ミリも譲歩しない強さを期待され抜擢された。
「わわわ」
「森の奥に行くのは決定事項だ。頑張ってな〜それじゃ!」
そしてラーの鋭い眼光が突き刺さったマテウスは震え上がり、オドオドし始め「どうした自力でがんばれよ」とアーレイがエールを送ると、途端にしおらしくなり「話せば分かると」と何度も懇願していた。だが無情にも警備兵に両脇を掴まれズルズルと引きずられていく。
<<近くの森>>
「頼む、置いてかないで!置いて行かないで(泣」
畑の端から広がる深い森に入り、簡易転送装置を使いマテウスを更に深い場所に放置する。間もなくすると黒い影が現れ周りを取り囲まれてしまう。
「ガルゥ」
「ヒッ!」
像ほどの大きさの見た目が狼のような魔獣が姿を表すが、少し様子がおかしい。マテウスに近づくとクンクンと匂いを嗅ぎ、敵意を見せることはなく様子見をしていた。
「や、やめろ」
「フゴォ~!(よっ!」
数匹の魔獣はテイマーにくれぐれも噛みつくな、齧るな、食べるなと命令されていたので、仲間とお話をしつつペロペロと顔を舐め始めた。まあ本人にしてみれば味見か何かと勘違いしたのか、顔面蒼白で今にも逃げ出しそうだ。
「フガフガ!(齧っていい」
「ガウガウ(食べちゃダメ」
「うぎゃー!(失」
恐怖に負けたマテウスが必死になって逃げ始めると、ペシッと前足で踏みつけられ頭を甘噛されると、途端に失神してしまうのだった・・。
<<翌朝・近くの森>>
マテウス「zzz」
テイマーにはくれぐれも殺さないようにとの命令を出しはしたが、イタズラ好きのアーレイは遊んでも構わないと付け加えたので。奴がどうなったか興味津々で様子見に行く。すると小型の肉食魔獣に一晩中追い回され逃げ回ったマテウスは最後、木に登って力尽き果てたらしく、ナマケモノのようにだらりとぶら下がり爆睡していた。
「なぁ、魔獣を襲わせて覚めさせよう(笑」
「わかりました」
狐族のテイマーは即座に支配魔法を発動すると、近くに待機していたあの大型魔獣が姿を現し、マテウスが寝ている付近まで音も立てずによじ登っていく。
「ガォーン(おっはー」
「ぎゃー、腕がー腕がー」
そしてマテウスは魔獣のおはよーの雄叫びに驚き、そのまま木の上から落下して右腕を骨折してしまう。その後、アーレイを恨めしそうに睨んだので改心は無駄だと思い、魔獣が飽きるまで遊ばせていいと鬼畜な指示をだす。
「あ゛ー(廃」
逃げれば捕まり舐められつつカプリと甘噛みされる。そしてまた逃げるを何度も何度も繰り返し、マテウスは涎でベトベトで服は破け悲惨な状態に早変わりだ。
「あらら髪の毛も無くなってるし、哀れだね〜(笑」
長時間恐怖に晒された影響なのか金髪が所々白髪に変わり、見るも無残な姿を曝け出していた。とりま魔獣を使い収容所に運ばせたあと水をぶっかけ、治療を行い囚人服を与え玄関に放置してみた。
<<レティシア捕虜収容所>>
「このおっさん誰っすか?」
「貴様、上官に向かってその口の聞き方はなんだ」
カプセルで治療したお陰で普通の状態に戻ったマテウスだったが、下士官の男が見間違えるほどに風体が変わっていた。なのでアーレイは鏡を見せる事にすると・・。
「ホレ、イイ男に変わったじゃないか(笑」
「ぎゃー!髪が髪が〜(泣」
「ザマァ!」
バーコード頭がぺんぺん草が生えているような短めの髪型へと変わり果て、それを見たマテウスは絶句し、アーレイはお腹を抱えて大笑いしていたそうな。
ーー
<<デルタ恒星圏内・射撃訓練所>>
「狙えー、撃てー!」
戦艦エルフォードの主砲が一斉に火を噴くと、マテウスが乗っていた特殊探査の艦橋が木っ端みじんに砕け散り、その後は1式の飽和攻撃訓練、10式の雷撃訓練を行い曳航出来るギリギリまで破壊の限り尽くしていた。
「クリス指令、完全破壊に成功しました。このまま中立地域に曳航します」
「ディスティアには連絡してあるので丁重にな」
残された探査艦はどうすると聞かれたアーレイは、暗号解析装置など有用な機材を剥がした後に、ぶっ壊してディスティアに引き渡してくれとクリスに頼んだ。そして策があるのかと聞くと「生存者は不明にしたままで、亡骸を丁重に引き渡して」とだけ話すのだった・・。
<<中立地域・戦艦エルフォード>>
「引き渡しに応じて頂き感謝します」
「デルタ領域に侵入したので仕方ありません」
中立地域で観測活動中のディスティア軍の探査艦に連絡したのち、亡くなられた船員の亡骸と探査船の引き渡しを行いたいと連絡する。事前にルドルフから何かしら連絡があると伝えられていたのか、引き取りには素直に要請に応じ、立ち会った艦長は詳細を聞くと納得してくれた。数時間後、数隻の戦艦が現れ残骸を曳航して消えていくのだった。
「アーレイ、お前に言われた通りに生存者不明と言って引き渡したら、素直に帰って行ったぞ」
<ディスティアとしては大事にしたくないからな、発表はどうするって聞かれなかったか>
「何故わかる!」
今回の事件は両国とも表に出したくない事案で、デルタは領域に侵入された責任を問われ、ディスティアは600名弱の戦死者を不明のままにして、極力内政に響かない様にしたかったのだ。両国の思惑が一致した事で静かに終焉を迎える事になる。それよりディスティアのステルス技術と暗号通信の解読装置が手に入りアーレイは喜んでいた・・。
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「酷い人だ・・・」
「当たり前だのクラッカー」
「なんすかそれ?」
「滑った・・」
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映画は知ってるくせに、フェは古典ギャグは知らないらしい。
<<レティシア捕虜収容所>>
「それじゃラー、管理は任せるわ」
「お任せ下さい」
その後、捕虜たちはボロボロになったマテウスの姿を見て恐怖に慄き、取り敢えず脱走を諦めたのか大人しく農作業を始めたので、アーレイは一旦引き上げることにする。
<<デルタ恒星圏内・射撃訓練所>>
「それでは、作戦の説明をする」
クーンを離れたアーレイはデルタに戻るなり熱核兵器対策に乗りだす。発令された命令は着弾寸前にジャンプするという凄くシンプルで、何度か繰り返しデーターを収集して検証する方針だ。
「アーレイ指令、準備が整いました」
「それでは作戦開始!」
ミサイル駆逐艦から放たれる対艦ミサイルの衝撃波の検証も同時に行うため実弾を使用している。安全第一に考えるクリスに大丈夫かと聞かれたが、あの外装じゃ傷一つ付く事は無いと、アーレイは笑いながら質問に答えていた。
「着弾まで5、4、3、2、ジャンプ!」
対艦ミサイルは着弾寸前に爆発を起こし衝撃波が船体を襲いダメージを与える。その信管が作動するかしないかのギリギリのタイミングで業火はジャンプした。そしてアウトをすると予定より遥か後方で閃光が走る。
「うーむ、これは難題だな」
そしてアーレイはミサイルが空になるまで実験を繰り返し、最後は衝撃波を感じてからジャンプしてみた。
「何度やってもタイミングが合わないな、ダメだね使い物にならんわ」
結果、業火級の加速度がチート級に速いため数値が全く定まらず、Aiを使いジャンプトリガーを任せてみても、良好な結果が出ないまま実験は失敗に終わってしまう。因みに最後のジャンプは衝撃波そのものが流れてしまい、観測すること無く終わってしまう。
<<指令本部・サロン>>
「損害が出ないと分かっただけでも良しとしよう。さてポコは空いてるかな」
熱核兵器の威力を再利用する実験は失敗に終わったが、高熱に晒されてもジャンプすれば被害が出ないと判断したアーレイは、武器使用の証拠を掴むためにとある作戦を実行しようとポコを呼び出すことに。
「出頭したでありますナノ(嬉」
「こら、纏わりつくな」
出頭したポコはアーレイを見るなり尻尾をフリフリしつつ、横にピッタリと張り付きキラキラと瞳を輝かせ、お手と言えば素直に右手を差し出す勢いだ。
「なんでも命令していいのナノ」
超危険な任務を頼む前に「こいつにしか頼めないよな」と思いながらポコの頭を撫でると、忠犬の自分が頼られていると感じたのかニッコリと微笑む。アーレイは「物凄く危険な任務になる。俺のために飛んでくれるか」と真剣な眼差しで頼むと、ポコは任務内容を聞くこと無く「はいナノ」と即答してくれた。
「熾烈と暴虐を使いレオンハルトに威力偵察を行う」
「空母艦隊に攻撃は腕が鳴るナノ」
今回は敵の懐に飛び込み暴れ回る「威力偵察」と呼ばれる危険極まりない任務だ。アーレイは強襲することであの熱核兵器を使わせ、同時に空母レオンハルトに深刻なダメージを与えたいと考えていた。
「危険すぎてポコにしか頼めない、もちろん熾烈が壊れても文句は言わないから」
いまだかつて空母打撃群に威力偵察を行うなど、誰も思いもよらなかった前代未聞のこの作戦に対し、全く物怖じせず参加の意思を表すポコは、頼られるのが余程嬉しいのか「頑張るナノ頼りにするナノ」と満面の笑で答えるのだった。
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