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超反則・熱核兵器。

なりふり構わないディスティアが核の熱を使う兵器を開発・・。

 <<ジェフの執務室>>


「陛下、ディスティアは星団法を無視した兵器を開発し、既に星団側の輸送船に被害が出ております」

「なんと!」


 朝食を終え執務室に入った途端に嫌な報告を聞くことになり、詳しく聞けば星団法で禁止されている核と思われる兵器を使い、輸送艦を攻撃したとの情報だ。


「炸薬自体に核を使用するなどもっての外だ」

「取り急ぎ緊急議案として星団会議で問い詰めましたが・・」


 デルタ時間の深夜に輸送艦が攻撃を受け、その証拠映像を用いて未明に行われた星団会議の緊急議題としてディスティアを問いただすものの「こんな映像で決めつけるな」「これは爆発してないように見える」などと絶対に認めない姿勢を貫いたらしい。


「図々しい連中だからな、それで会議はどうなった」

「認めないどころか、業火の外装は星団法違反だと逆ギレする始末です」


 フロストを沈めた業火級を脅威と捉え、新たに開発した新型兵器で攻撃する正当性を訴えたいのだろう。


「だがこれは放って置く訳にはいかない」


 証拠として出された映像を確認したジェフは真っ赤な顔をして、直ぐさまクリスを呼び出す。


 ーー


 <<指令本部>>


 同じ頃、作戦本部では就航したばかりの新型戦艦の話題で持ち切りだ。性能表を示すタブレットを持ったクリスがアーレイと話し込んでいた。


「ディスティアの7万トン級軽戦艦が艦船認証を受けたぞ」

「これは間違いなく業火級の真似だろうな」


 業火級に脅威を感じたディスティアは2隻の戦艦を急ピッチで建造してきた。探査艦が送ってきた映像を確認すると、駆逐艦をベースに、戦艦の素粒子砲を前方に4門無理やり載せて作った代物だ。7万トン級と中途半端になったのは間違いなく居住区、整備スペースやエネルギーバイパスなどが収まらなかったのだろう。


「これじゃ業火と違って重量配分が悪くて旋回し辛いはずだ」


 エンジンもギリギリの入る大きさの物を採用したのか、船体後部が異様に膨らんでいた。実際の映像を確認すると旋回を始めて回り込むのにタイムラグを感じ、業火とは違い軽快とは言えない。とは言えフルスペックではないのでこれ以上は想像でしか無いが、第二次世界大戦末期のアメリカ軍の戦闘機のように、一撃離脱の戦法を取るとアーレイは予想していた。


「クリス少佐、ジェフ陛下から緊急の呼び出しが入りました」


 議論も終りを迎える頃、クリスの秘書が出頭要請を伝えに来る。しかし用件を言わないことから間違いなく良くない知らせだろうと察しがつく。


「なんか嫌な予感しかしないな」

「まあ、なるようにしかならんから」


 アーレイは何があろうとも対処するから大丈夫だの態度で踵を返すクリスを見送るのだった。


 ーー


 <<ジェフの執務室>>


「クリスとりあえずこの映像を見よ、ディスティアが業火対策に乗り出してきた」


 執務室に通されるとジェフが手招きしてデスクの上にあるモニターを指さす。そして攻撃された時の様子が流され、映像を確認したクリスは愕然とした表情へと変わる。


「何ですかこの壊れ方は、超高熱に晒されていませんか(驚」


 その映像は銀色の球体が艦橋に接近し衝突寸前に一瞬、真っ白な光が発せられ画面全体がホワイトアウトすると同時にノイズが走りよく見えなくなる。閃光が止むと船体表面がドロドロに溶け内部フレームが露わになっていた。


「この攻撃で艦橋の乗務員3名が灰になったそうだ」


 いつもならこの後にドヤ顔をしてクリスに命令を下すところだが、先程呼び出した時と違い、ジェフの表情は厳しくなっていた。再度映像を見て問題解決の難しさを再認識したらしい。


「奴らは手ぐすねを引いて待っているだろう、今回は慎重にことを進めろ」

「承知しましたアーレイに知恵を借ります」


 超高熱を相手に戦わなくてはいけなくなったクリスは、解決策を求めアーレイの元に急ぎ戻る。


 ーー


 <<司令本部>>


「アーレイ今回は難題だぞ、これを見てくれ」


 あの映像を見せながら事の顛末を語ると、アーレイは直ぐさま星団法の本を開き武器使用に関する規制について調べ始める。


 <ジャンプコアやゲートを使った攻撃は禁止>

 <ミサイルにジャンプコア搭載禁止>

 <ジャンプを利用して艦船の体当たり攻撃の禁止>

 <軍用に搭載するジャンプコアはシングルに限る>

 <劣化ウラン弾など核廃棄物を利用した兵器製造の禁止>


 読み進めると先人達の努力の甲斐あって規制を掛けてきたことが分る。逆にそうしなければ甚大な被害が出ていただろう。つぎにアーレイは核に関する条文を調べ始めると、とある一文に目が留まる。それは<()()()を利用した武器使用禁止>だ。


「今回、ディスティアは星団法の隙をついてきたな」

「アーレイ、核を使えば違反だろ」


 映像を確認したアーレイは爆発してその威力を利用するのではなく、高熱を発するように調整された、いわゆる熱を利用した攻撃だと気がつく。そして放たれる前の映像を確認する事に・・。


「これって核反応を利用した熱による攻撃で爆発はしてないし・・」

「見方を変えれば熱源は核だが、高熱を発するだけの兵器と言い訳できるのか」


 攻撃直後では無くその数十秒前まで遡り、数機の爆撃機が輸送艦近くにジャンプアウトして、その中の1機が急接近をすると球体を放ち旋回して離脱。そして僚機に巻き込まれながらジャンプして消えていく様子が捉えられていた。


「ミサイル代わりに艦載機を使っているので、この攻撃方法だと星団法にギリギリ抵触しないぞ」

「君ならどう対処する、これは結構難題だぞ」


 業火ならパネル砲で撃墜すればいいが、数十機の飽和攻撃に晒されれば撃ち漏らしがでて被害が及ぶだろう。そこでアーレイは攻撃に耐える方法を先に考える方が得策と思ったのか「詳細なデータが欲しい、特に熱に関しての情報だ」と語る。


「アーレイ、技研に行って調べて貰った方がいいな」

「ああ俺もそう考えていたよ、早速行こう」


 熱問題に対処するにあたって詳細な情報を求め、2人は技研に足を運ぶことになる。回りくどいが今回も地道に調べながら対処方法を探すしかないだろう・・。


 ーー


 <<技研・特殊武器開発課>>


 「核分裂を制御して高熱を発する事に特化した兵器ですね、瞬間的に4000度は達すると思います」


 武器開発課に出向き技官に同じ映像を見せ分析を頼むと、攻撃時の温度、破壊された船体などを参考に、この武器が放つ大体の温度が判明する。しかしこの4000度の高熱は殆どの金属を溶かしてしまい、わずか数秒とはいえダメージが通ってしまう。


「宇宙空間だと急冷されるから爆発直後の実測値は3000度前後かな」


 業火の外郭はアルミの耐熱温度よりは高いが、流石にその温度だと耐えきれない可能性がある。諦めの悪いアーレイはなにか対策がある筈だと考え、スローモーションの映像を見て糸口を見つけようとしていた。


「この球体を射出した時点で熱暴走が始まり、接触寸前に高熱を発しています」

「ミサイルの衝撃波と同じ理論だな、表面温度を低くすれば何とかなりそうだな」


 要は熱を下げれば良いわけで、アーレイは「宇宙空間なので回転させれば急冷される」と技官に説明すると「恒星がなければ絶対零度ですから大丈夫です」と答え、突飛な考えにクリスは唖然としていたよ。


「他の輸送艦の映像が届きました」


 船団を組んでいたので違う輸送艦の艦外カメラ映像が届いた。内容は同じだけど出現から撤退まで俯瞰見で見る事ができたので、2人はとある重大なことに事に気がつく。


「アーレイ、どう考えてもダブルコアだろ」

「攻撃しない爆撃機に搭載してる筈だ、巻き込みジャンプは目を逸らすためだな」


 間違いなく兵器を先に作って運用方法を無理やり考えたに違いない。まあ再起動の時間が短すぎる、ジャンプコアを2つ搭載していると文句をつけても、映像だけなので認めることは無いだろう。アーレイはそれよりも空母を出してきたのかが気になっていた。


「ディスティアの支配地域に近いから空母を出してきたのか」

「情報だと旗艦の代わりに使用しているらしいぞ」


 フロストが轟沈したヴァル海戦で多大な損害を出したディスティア軍は、虎の子である大型空母を支配地域内の警戒航路で訓練を兼ねた哨戒活動を行っていた。アーレイは何か閃いたのかクリスに出港時期の割り出しを頼み、襲撃位置と航路を見比べていたよ。


「アーレイ、業火を誘い出して飽和攻撃しか考えられないけど君の意見は」

「まあ俺ならそうするよ、多方面から球体をバラ撒くだけだしこれなら星団法に引っかからない」

「そうなると船体を回しても熱に晒されるぞ」

「残りはジャンプしかないね、巻き込みの事を聞いてくるわ」


 ジャンプ阻害は攻撃方法を見れば使わないと予測しつつ、最悪な状況に追い込まれたと想定して、あの武器ごと巻き込んで逃げた場合の事を聞きに技術開発部へと向かう。


 <<転送技術開発部>>


「アーレイ大尉久しぶりだな」

「ケルヴィン機関長お久しぶりです」


 部屋に入ると実験艦アドベントで苦楽を共にした、機関長のケルヴィンが待ち構えていた。エンジン開発部でアーレイが来ると聞いて待っていたらしい。


「君と開発したジャンプな、問い合わせが凄すぎて仕事にならん」

「そうなの、まあそうか」


 ヴァル海戦で大戦果を上げた業火級が話題にならないわけが無く、開発者の名前は伏せられているものの、亜空間航行実験船アドベントの責任者はケルヴィンと誰もが知っているので問い合わせが殺到したらしい。しかし秘密保持契約の関係で何も喋れず苦労したと話してくれた。


「幸い俺の所には来ないけど、制御方法をブラックボックス化した方が良いと思うぞ」

「大丈夫だ既に仕様変更してある」


 ショートスキップジャンプに関しては取り扱いが物凄く厳重で、ケヴィンは一番重要な制御基盤類を一新してブラックボックス化していた。アーレイは艦隊司令官のひとりなので細かい報告が回らず知らなかったらしい。取り敢えず黒塗りしたお陰で情報漏洩のリスクは低くなりホッとする。


「ところで、今日は何をしに来たんだ」

「巻き込みジャンプが及ぼす影響と範囲を知りたい」


 巻き込みジャンプとは周囲の物質を巻き込む性質を利用して、行動不能になった僚艦を助けるために発案された。通常は2、3隻で取り囲みシンクロさせてジャンプする。アーレイはその際に起こる現象を利用して、あの武器の威力を無効化できないかと思い質問したのだ。


「強制学習外だし、誰も気にも留めないからな」


 そしてケヴィンが詳しく説明してくれる。僚艦の場合は取り囲んでシンクロするので大きくズレる事は無いが、ミサイルなどがその範囲に入ったり、爆風が押し寄せてきた場合は置き去りにされ数千メートルは離れるとのこと。更に時限装置のたぐいはシールド外だと時空の歪みの影響でジャンプ中は時間が止まると言われ驚いてしまう。


「時間が止まるのか知らんかったわ、亜空間の歪みか・・」

「何を巻き混むのかは知らないが、範囲を大きくすると燃料を爆食いするからな」


 戦いの最中に何かを巻き込む事は流石にわかるらしく、先読みをしてデメリットを教えてくれる。デルタで1番の技術者は伊達じゃないなと思ったアーレイは実験する時は宜しくと返す。


「また何か面白そうな物思いついたんだな」

「まあね、じゃまた連絡するよ」

「おう!待ってるからな」


 ケヴィンは実験を心待ちにしているのか見送るときはニコニコ笑顔のままで、きっと想像もつかない実験になると考えているのだろう。だがクリスは終始ジト目で半笑いしっぱなしだったわ。


 <<司令本部>>


「なあアーレイ、巻き込むってあの熱核爆弾のことだろ」

「飽和攻撃を仕掛けてくるから、やりようによっちゃアレでやり返す事が出来る」

「はい?」


 発想が違いすぎて理解できないらしく「編隊の近くでアウトしたら大惨事でしょ」と話すと「その攻撃は中々スレスレだぞ」と返されたよ。真面目なクリスには不評だった。


 <<翌日・司令本部作戦司令所>>


 作戦指令所はデルタ支配地域のカラミティ星団は勿論のこと、トレミー星団内も監視下に置かれ、全ての船舶の動きがリアルタイムで超特大モニターに映し出され常に敵が攻めてくることを想定し監視している。その広大なこの空間に敵が侵入しても占拠されないよう区画ごとに脱出できる構造になっていて、まるで戦艦の艦橋のような構造物が3つも並んでいる。


「ここの所在地は提督クラスしか知ることは出来ないそんな場所だ」

「ふーん」


 作戦指令書の所在地は秘密とされ、司令本部の中にある転送装置を使わないとアクセス出来ない。今日はディスティアの超大型空母レオンハルトに動きがあり急遽この場所に出向いたのだ。


「さてアーレイ、君が望んでいた空母レオンハルトの出航予定が判明したぞ」

「意外に早かったね、それで詳細は」


 口にはまだ出さないがアーレイは空母の無力化を本気で考えている。準備が整ってないので今からは無理だが、行動パターンを掴むにはうってつけなので取り敢えず偵察隊を送るつもりだ。そして艦隊編成を聞く事になり予想を遥かに超える艦船数だった・・。


「空母ラインハルトは本日未明、戦艦20隻、哨戒艦6隻、巡洋艦32隻を率いて出港が確認されました」

「スゲェな大艦隊だな、旗艦の替わりにしちゃ大げさだな」


 空母打撃群にしては護衛戦艦の数が多すぎて余りの大艦隊っぷりにアーレイが苦笑をすると、何か情報でも持っているのかクリスの口角が上がる。


「それってお前のせいだろ(笑」

「まあそうか、そうだよな」


 ディスティアは旗艦を失った事が思いのほか内政に響き支持率がジワリと落ち始め、威厳を保つために普段表に絶対出さない空母を出撃させ信頼回復に努めていた。周回軌道上の低い位置に降りてくれば昼間でも肉眼でも確認できるのでそれなりの効果があるという。


「雄姿を見せて盛り上げるなんて、やっぱ戦争大好き国家なんだな」

「それに新型旗艦を作るにあたって相当苦労しているぞ(笑」


 話を聞くと、アーレイが強固な可変シールドを近距離攻撃で撃破したことで、効率の良かった可変が通用しないと分り、大幅に強化する事が決定されるもシールド、主砲、ジャンプなどエネルギー分配で揉めに揉めて建造が遅れている。


「馬鹿だね、従来の考えに縛られるから答えが出なくなる」

「アーレイ、お前の感覚というか発想が異常なんだよ」


 新たな発想を求められデルタに来たが凄く理不尽な態度で、更に異常呼ばわりされてしまう。だがめげないアーレイは「ありがとう」と嫌味で返すと「褒めてねーし」と返され、周りの連中は階級無視で冗談を飛ばし合う2人を生暖かい目で眺めていたよ。


「よし!空母を沈めよう。だがその前にレーダーの開発だな」

「はっ?」


 相変わらずの斜め上行くアーレイは、着々と星団統一に向けて準備を進めるのだった。

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