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契約更新とベクスター

新しい話に入りました・・・・。

 <<ジェフの執務室>>


「アーレイの事だが、素直に任期延長してくれるかな(悩」


 アーレイがデルタを訪れて今日で丁度2年の日を迎える。そんな朝にジェフはクリスを呼び出し執務室で何やら話し合いをしていた。勅命という名の強権を発動できる王国なのに、ちゃんと法令順守している真面目な王様は凄く真面目でいい人だと思う。クリスもそれを知ってか包み隠さず自分の意見を述べようとしていた。


「弱気ですね陛下、アイツの性格を考えると正直に話した方が良いと思いますし、浮き足立っていないので大丈夫かと」

「金も名誉も女も欲しがらないし、引き留める材料が全く思い当たらない」


 上昇志向は無比、褒美も金にも目をくれず、引き止める材料が全く思い浮かばないジェフの顔色は暗い。実は目の中に入れても痛くない程に大事にしている娘、フローレンスを断腸の思いで差し出しても、貰わないとアッサリと固辞するし、要は契約更新するにあたっての交渉材料が無く行き詰まっていた。


「一応、欲はありますが凄く限定的ですね」

「あれだろ、休みとか釣りとかだろ(呆」


 ジェフが褒美を出しても「それよりも休みを下さい」と言う奴は世界広しといえどもアーレイただ1人だけだ。それもいつもドヤ顔で遠慮が無いし、例え強権発動しても納得しないと動かない性格を知っているので頭が痛くなるばかりだ。


「アイツは楽しむ時は金を惜しみませんし、羨ましい限りです」


 金を惜しまないの言葉を聞いて「何日も釣船をチャーターして釣りして満足しました」「最高級の部屋の温泉は凄いですね」とか、休暇の過ごし方を聞いた時のことを思い出したジェフは「アーレイってそんなに金持っていたっけ」と単純にクリスに聞くと・・。


「驚かないで下さいアイツの貯蓄残高は20億スカーは下りません」

「はい?なんだその金額は、まさか」


 この2年間だけでアーレイは日本円にして軽く200億を蓄財していた。そこでジェフが思いついたのは、他国に技術を売り渡し不正に金を得たのかと一瞬想像してしまう。しかしクリスは笑いながら「武器のパテント料と料理のレシピ、釣り道具の特許と使用許諾、株式投資などで荒稼ぎしています」と答え唖然としてしまう。


「桁違いだな(呆」


 想定外の金の稼ぎ方をするアーレイの財テクには秘密がある。それは技術発展のためにデルタ軍は特許の個人所有を認めている点だ。パネル砲だけでも数点あって、それだけで毎月7万スカーが入る。釣り道具に関しては数百点に及び、税金対策の為にアーレイワークスと言うルアーメーカーまで立ち上げている始末だ。株に関してはウルフの情報を用いてガンガン稼ぎ、金に全く困らないどころか上級貴族を凌ぐ稼ぎ方をしていた。


「軍人とは思えません、正直羨ましいです」

「どうりで褒美の金を欲しがらない訳だな、しかしそんな大金を地球に持って帰っても意味ないだろう」


 今日で帰りますと言えば星団通貨など地球に持ち帰っても単なる紙くずだ。もしかして二言返事で更新してくれるのかと淡い気持ちが沸き立つが「5億スカーほどダイヤと金に換金して、あとは寄付するって言いました」とクリスが答え「パテントはどうすると聞くと」「私とキースとポコに譲ると」言われてしまう。


「何か対策はあるか?」

「ありません、正直に話すのが一番です」

「クリス〜頭痛いよ〜」


 結局ノープランのままアーレイの契約更新の折衝を行うことになり、最後にフローレンスを呼び出し予想を聞くと「あら心配しても意味ないですよ、あのお方はもう決めてますから」言い放ち「知っているのか」と問うと「女の勘です」とニッコリと微笑みながらはぐらかすのだった。


 <<数分後・ジェフの執務室>>


「あのな、君の任務更新についてなんだが」

「なんでしょう、確か今日でちょうど2年ですよね」

「デルタの為に残ってくれるか?」

「はいわかりました」


 余りにも軽く、軽い返答を聞いたジェフはポカンとした表情になり、クリスは苦笑いするし、フローレンスは星団統一を本気で進めていることを知っているので、ヨッシャと言ってガッツポーズを決めていた。アーレイは涼しい顔のまま期間更新の契約書にスラスラとサインを済ませる。


「なんだよ、朝から悩んだ俺は何だったんだ?」

「悩んだから正直に話したんでしょ陛下、無駄ではありません私の為にありがとうございます」

「ああもう、君には負けるよ・・・」


 呆れ顔するジェフは気を取り直し「欲しいものは無いよな」と小声で呟くと「専用艦が間もなく仕上がりますし、これと言ってないですね」と予想通りの答えが返ってきてしまう。因みにフローレンスはプッと頬を膨らませたけど、見て見ない振りをしました。


「アーレイ王族専用艦に乗ったぞ、アレは優雅で最高だな」


 話題を変えたいのか以前発注した船の事を語り出した。しかし困ったとは少し違う悩むような表情を見せている。


「あっそうでした、引き渡しは終わったのですね」


 頼まれていた王族専用艦の引き渡しはアーレイではなくジェフなので、お任せと言うか作戦中に終わっていたのでマジで知らなかった。感想を聞くとベクトランは気に入ってくれたが、ピーキーな動きをするベクスターの評価は今ひとつだ。


「正直言って良いか、すごくカッコいいし自分で操縦したくなるが、10歳若ければの話だ」

「ベクスターは疲れますか」

「流石にこの年になると疲れる、ベクトランをもう1機たのむ」


 哨戒機ベースのベクトランは安定感がありベクスターはどちらかといえば戦闘機に近い。軍務で常に飛び回るアーレイと城で政務を行うのとでは、そもそも乗り物としての感覚が違いすぎるのだろう。


「ベクスターを改修して安定方向に振ります」

「お前にやるよ、俺からの礼と思ってくれないか」


 ジェフは活躍に対してどうしてもお礼をしたかったのだろう。見たことない柔らかな表情がそれを物語っていた。アーレイは断れば失礼になると思い、礼を受け取るために素直に頭を下げる。


「ありがとうございます陛下、大切に使わせてもらいます」

「気にするな、王族の”紋章”は消してくれよ」


 悩んだ甲斐あってアーレイが残ることになり、安堵するジェフだった。


 ーー


 王族専用スポットは一般人が立ち入れない貨物ターミナルから程近い場所にポツンと存在する。一見ヘリの格納庫のように見える建屋はとてつもなく頑丈で、その中にはベクトランが2機とベクスターが翼を休めている。ここでは乗り降りよりどちらかと言うと整備場の意味合いが強く、そのため簡素な作りになっていた。因みにファーレンハイトは宇宙港を母港にしているので余程のことがない限り地上には降りてこない。


 <<デルタ国際空港・王族専用スポット>>


「とうとうプライベートジェットか、あはは信じられんな」


 ベクスター引き取りのため駐機場に向かったアーレイは、贅の限りを尽くした最高のジェットが手に入る実感が沸かないのか、実機を見るまでは夢を見ているような感覚に見舞われていた。


「アーレイ大尉お待ちしていました、そのまま中にどうぞ」

「ありがとう」


 既に連絡が入っていたのだろうタブレット片手に整備士が待っていたが、何故か妙にニコニコとご機嫌だ。なので「ベクスター弄るの好きなの」と聞くと、満面の笑みを見せながら「戦闘機より機動性が高いって反則でしょ」と語り、アーレイはなんかやらかしたと考えたが、思い当たる節が全くなく理由を聞くことに。


「あの稼働翼は面積が可変ですし、スラスターが強力なので凄い軌道を描きますね」

「もしかして空気中での機動性が高いってことだよね」


 使用権限の変更を行いつつ整備士はニコニコと笑いながら評価をしてくれるが、そもそも地球と違って反重力装置がある3星団の戦闘機は翼が小さく、エアーブレーキやフラップを装備する概念すら無い。アーレイは空気中での揚力を上げようと可変翼と共に採用した事が全く違う形で評価されてしまい思わず笑ってしまう。


「それでは変更します」


 機内に入りモジュールをリンクさせると、モニターに<No Connect>と表示され赤く点滅していた。整備士は手慣れた手つきでタブレットを弄り設定を変更すると、赤色から緑色の表示に切り替わり<Transfer completed master user Arley>と表示される。


「ベクスターのセキュリティは強固ですよね」

「まあな、勝手に飛ばされたらヤバいでしょ」


 王族専用機が盗まれたら洒落にならないので、マスターCOMに登録しなければ火すら入らない設定だ。例えコンソールを開けて直結してもエンジンにも制限が入り絶対動かない。動力装置の殆どを交換しないと盗めないレベルまで強固に仕上げていた。


「これでマスターになりました。今なら追加は可能ですよ」


 早速アーレイはクリス、キース、ポコのIDをベクスターに登録する。後は彼らが承認すれば自由に飛ばす事が出来ると言われたよ。


 <アーレイ様、ベクスターってもしかして王族専用機ナノナノ(喜>


 間髪入れずにポコから連絡が入ると同時に、満面の笑みと千切れんばかりにフリフリする尻尾がベクスターのモニターに映し出される。一瞬、ヤベ最高のご褒美あげちゃったと後悔するアーレイだった。


「そうだよ、ベクスターは俺の専用機になった改装するからその後ね」

 <はいナノ、ありがとナノ>


 設定が終わり次は駐機場の選定と内装の変更だ。忘れてはいけないのは王族専用機を示す紋章を消す作業だ。


「いまから紋章を消しますので午後には改装作業に入ります。格納庫は軍港と民間のどちらにしますか」


 アーレイは民間機ではなく軍用を拝借することにしてランニングコストを下げるつもりだ。普通NGだけど新型艦に搭載予定なのでクリスを説得すればいいだけだ。内装は白を基調としていたので黒に変更するとともに、金属パーツをカーボンに変更して軽量化を図り、更に水圧転写で木目調に変更する指示を出す。


「貰ったのは良いけど維持費が大変だからね。それじゃ改修よろしく」

「了解です!」


 内装の金属をカーボンに変更したので納期は2週間後と言われたよ。登録変更が済んだことで、アーレイは司令本部へと足を向けるのだった。


 ーー


 <<司令本部・ラウンジ>>


「アーレイ、俺も使っても良いのか?」

「ああ、ベッドで変なこと(S◯X)しなきゃな(笑」

「せんわ!」


 司令本部に戻ると早速キースがベクスターの事を聞いてくる。なので燃料代だけでいいよと話すと凄く喜んでくれた。しかしクリスの表情は優れない。なので理由を聞くと、どうやらプライベートジェットは超特別待遇でないと所有は無理らしい。


「クリスも使って良いいからな」

「ありがとうアーレイ、だがベクスターを個人所有にすると貴族から反感を買うぞ」


 話を聞くと移動用シャトルは別だけど、各国を自由に飛べる高速機は密輸などに使われた経緯から、3星団では個人所有出来るのは極限られたVIPだけらしい。殆どはレンタルで入国審査がめちゃくちゃ厳しいぞと言われたよ。


「うわぁ〜嫌味言われそうだな〜、それならベクスターは艦載機として使うわ」

「軍務として使うのか、それなら良いぞ」


 まあ始めから乗せるつもりだったのと、軍務で使えば批判を和らげると考えたアーレイは新型艦に乗せる体で予定通り軍港を使える権利を得ることになる。それに基本整備料は軍が持つことになり財布が傷まずラッキーだ。


「ベクスタークラスだと、かるーく年間1億スカーは必要だからな助かるわ」

「凄いナノ〜」

「あれ?ポコいつの間に」


 しれっとアーレイの傍らに現れたポコは業火級ライセンス取得の証明書を見せてくれる。合格して喜び勇んで飼い主に報告しに来たのだろう。物凄く満面の笑みで褒めてくれと体現していたわ。


「おめでとうポコ、それじゃ新しい新型艦を動かしてみるか」

「頑張るナノ」


 という訳で数日後には試運転が出来る筈の新型業火級のファーストパイロットはポコに決まるのだった。

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