バルターとの密約。
バルターとの出会い。
<<早朝・ジャクリーヌの私室>>
「無事に議会が閉会したので明日にはバルターに会えます」
「そうですか待った甲斐がありました〜(棒」
ここに来て4日目、やっとバルターが政務から逃れやってくるそうだ。しかしあと数センチ近づけばキス出来る程の至近距離で、和かに語られても嬉しくも何ともない。それも朝の情事を始めませんかと言わんばかりに巨大な双丘を押し付けられる。
「ウフフ、ブラッド様はいつも素敵ですわね♡」
「そーなんですね〜(棒」
なぜアーレイがジャクリーヌのベッドの上で寝ているのかは、お分かりとは思いますが、連チャンで行くなよと釘を差したので2日目の夜は2人とも大人しくしていた。けど3日目の夜、アーレイが寝息を立て始めた途端にブラッドは抜け出し部屋へと向かい、事を済ませたのだ。それにジャクリーヌは来ることを期待して過激な下着を穿いて準備していたらしく、散乱するランジェリーを見ると床の木目が見えるほどスケスケだったよ・・。
<<アイランドホテル・ロビー>>
朝の遅い時間、孔雀程の大きさのカラフルな鳥が、ギャーギャーと喚きながら玄関の前を右往左往していた。程なくすると10数台のシャトルがズドドと重低音を響かせ着陸をする。ジャクリーヌがドアの前に立つとスライドドアが開き、防弾の重厚な作りのシャトルからバルターが降りて来た。見た目60前くらいの虎族の彼は古傷が痛むのかステッキをつきながら玄関を抜けていく。
「一癖も二癖もありそうだな」
「腑抜けらしいが族長らしい威厳を感じるよ」
入場してくるバルターを一目見ようとカフェの傍らで観察しているアーレイ達は、腑抜けと呼ばれている割には凄みがあり、もう少しヨボヨボを期待していたので拍子抜けをしてしまう。
「やっぱカルネは未だに脳筋なんだな」
「ジャクリーヌ様がメッチャ強いから誰も歯向かわないナノ」
「はっ?彼女格闘家なんだ」
今更ながらアーレイはとある事に気がつく。要するにバルターが族長で君臨出来るのはジャクリーヌが部下として睨みを効かせているお陰だと。だがポコが言うには手駒が弱すぎて上に立つのはまだ無理らしい。
「レジスタンスに手駒を割いた影響だな」
「そうナノ、出来る部下の大半はレジなの」
星団解放の為にレジスタンスを組織するジャクリーヌは、ホテル事業の利益や人材を惜しみなく投入している。そのお陰で出会えたのだが族長になるには更なる人材が必要と分かり、ウルフのことを思い出したアーレイは交代は直ぐには起こらないだろうと予想するのだった・・。
ーー
<<バー・トロピカルアイランド>>
早速会談を行いたい所だったが、就寝するまでマスコミが付かず離れずの状態で叶わず。皆が寝静まった深夜に執り行う事になる。
「バルター様が入ります」
あの個室で2時間ほど待たされたアーレイとクリスは、やっと来たかと不満を漏らしつつ、襟を正しバルターが入ってくるのを待っていた。
「待たせたな、私が族長のバルターだ」
ラフな格好で現れると思いきや、真っ白な生地に幾何学模様の刺繍が施された、バディクみたいなカルネの正装を身に纏っていた。となると格下相手と見下し舐めた態度は取らないと言う事だろう。バルターも同じ考えだったのか儀礼服を見ると少し目を細める。
「初めましてバルター様、デルタ軍アーレイ大尉と申します」
「其方がデルタのアーレイか、ジャクリーヌが世話になったなありがとう」
初見ではこれと言って横暴な態度を取ることなく順調だ。次にクリスが挨拶を行うと「ジェフ陛下の右腕と言われるクリス君か」と笑顔を溢しながら返し、これまた友好的だ。一瞬話が早く進むのかなと思うが、ここはひとつ慎重に行く事にして獣人開放の話から始める事にする。
「ジャクリーヌ将軍が救援に来て頂き大変助かりました。心より礼を言わせてもらいます」
「奴隷解放は偉業だぞ。それでジャクリーヌはデルタと戦わないと申しておるのだが実際はどうなのだ」
カルネ軍と交戦するのは極力控え偶発的に会敵したとしても可能な限り戦わない。その為に不戦協定を是が非でも結びたいと宣言すると、バルターは急に困った顔をするなり大きなため息をつき「この事が帝国に知れ渡ればたちまち植民地化され搾取されるだろう。余りにも危険だ」と言い始めてしまう。
「表立った協定は不要です、有事の時に協力出来る良好な関係を築くことが重要かと」
「君たちと会っている事自体が危険なのだ」
腑抜けと表現していた理由が良く分かった瞬間だった。慎重にならざる得ないのは理解出来るが、この場の対応としては「その時が来たのであれば全力で協力する」と言えばいいのにその一言が出てこない。アーレイは「寝返る準備だけして頂ければ大丈夫」と説明しても「それはディスティアを降伏させた時か」とか「それはかなり危険な賭けだな」などと弱気な発言が続いてしまう。
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<アーレイやはり弱気になったなどうする>
<心配するな策を考えてある>
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弱気なバルターを見て心配したクリスがモジュールを使いコンタクトを取って来るが、想定済みのアーレイは余裕の表情だ。当たり前だが秘密裏に協定を結んだとしても、直ぐに星団統一出来る訳も無いし、今回は族長の確約が欲しいだけなので「表立って動きませんし、それより穀物の生産量を上げ貰えませんか」と話の論点を違う方向にずらす。
「穀物の要求は年々高まっているが、慢性的な人手不足なんだよ」
「機械化は進んでいませんよね、増産の余地は十分にあります」
国自体が農業国家のようなカルネに住む獣人達は、贅沢を余り好まない性格も相まって近代化が進んでいなかった。アーレイは作業の効率化を目指し高品質で安価な穀物の輸出量を増やしてほしい、その為に技術者を派遣するとまで言い切る。
「だが、儲け過ぎはよくないな貿易黒字が続くと睨まれるぞ」
弱気になると対応策もろくに浮かばないのだろう、アーレイは均衡を得るために高価な哨戒機や伝送装置、ミサイルなどを購入すれば軍事産業が盛り上がるので大丈夫だと説得する。しかしバルターはまだ不安に思うのか顔色が優れない。
「ディスティアは強大で残忍だ。不機嫌にならない様に立ち回る自信が無い」
「心配はご無用ですよバルター様、黒の精霊が味方していますので万が一の時は助けてくれるでしょう」
黒の精霊に関しての話題が出てこなかったことに疑問を感じていたアーレイは敢えて言葉に出してみると「なんだと、その話は本当だったのだな」と語ったので、ジャクリーヌは詳細を伝えていないと分り「私はこの目で黒の精霊様を見ました」と答えると当たり前だが「君は何か知っているのか」と言われ、途端に訝しげな表情に変わってしまう。
「私が仲介人ですし、今回の事は彼の意志でもあります」
「そうか分かった、君の提案を受け入れよう。後はジャクリーヌに任せる」
族長に上り詰めると頭を下げる事がほぼ無くなり、その高いプライドから平伏すのは嫌だと思ったのか、それともただただ面倒だから会いたくないのは分からないが、黒の精霊の話が出ると一変して容認する言葉を吐き出す。アーレイとしては言質が取れたので欲張りせず、逃げるように去り行くバルターの背中を見送る事にした。
ーー
「アーレイ様を見ていると本当に恐ろしく感じます」
バルターが退出後、そのまま居残り反省会という名の飲み会を始めていた。ジャクリーヌは涼しい顔のまま黒の精霊の力を使う事無く、言質を頂いた手腕に驚く。しかしアーレイは「なに、魅力的じゃなくて恐怖を感じると」と冗談を言うと、緊張しっぱなしだったクリスが「ゴラァ!大将軍相手になんてこと言うんだ」と言いながら右フックを放つ。もちろん本気では無く軽くだ。
「ふん!いきなり殴るとは何事だクリス」
「ムカつく、ピリピリしてんだよ」
「あらあら、階級は関係ないのかしら(笑」
殴り返すアーレイを見て仲がいいと思ったジャクリーヌは、驚きもせずにケラケラと笑っていた。その余裕の表情からするとやはり格闘家だと理解できるが、豊満な美顔からは想像だに出来ない。
「もう終わっただろクリス」
「クリスさん、私はアレですからお気遣いなく」
顔には出さないがクリスは結構緊張していたらしく、ジャクリーヌが宥めるとやっと気を抜いたのか肩が下がり「そうでしたね」と言いつつ苦笑いしていた。すかさずアーレイが「明日は帰るだけだから飲むぞ」と宣言する。
「ポコも混ぜるナノ~」
「今日はお祝いですね、みんなで飲みましょうね」
グラスを手に持ったと同時にポコが乱入してくる。彼女も心配してバーで動向を観察していたらしい。しかしどことなく不機嫌そうな顔をしていた・・。
「ポコは飲めるんだ」
「大丈夫ナノ」
「お子ちゃまは飲むと寝るからな(笑」
「ガルゥ!寝ても台車で運ぶなナノ(オコ」
バーテンダーから台車で運ばれた事を聞いたらしく「寝るな」の言葉に反応する。たぶんお姫様抱っこで運ばれたと想像していたらしく、やはりアーレイの判断は間違ってなかったようだ。そんな事を知らないジャクリーヌは「ポコは可愛がって貰えていますね」と言いつつ「身も心も捧げていますわね」と爆弾を投げ込む。
「アーレイまさか」
「いや、子供に興味はない」
「酷いナノ、もう15だから大人ナノー」
「え?嘘だー発育不良だな」
「あらら、残念娘だな」
「ギャウギャウ!」
とまあ、馬鹿話で盛り上がり閉店の時間の26時になりお開きとなるが、酔っぱらったジャクリーヌはジト目でアーレイを凝視していた・・。
「楽しいひと時はあっという間に過ぎますねアーレイ様、今宵お待ちしてますわよ」
「こら、爆弾投げ込むな」
「おほほ冗談ですわ。それではおやすみなさい」
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「ちっ!」
「こらブラッド!早速かよ」
「・・・」
「まるで盛りの付いた犬だな」
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どうやらブラッドは今宵も抜けだして相瀬するつもりだったが、アーレイに咎められやむなく諦める事に。因みにポコは酔いつぶれて寝てしまい、クリスは舟を漕いでいて2人の会話を聞いてなかったよ。その事を分かって爆弾を投げ込むジャクリーヌは意外に悪戯好きだと判明した夜でした。
ーー
<<翌日・デルタ王宮謁見の間>>
デルタに戻ったアーレイ達はその足で陛下の元に報告に向かい、そして報告書を真剣に読み込むジェフは驚きより呆れていたわ。
「両人共ご苦労だったな、相変わらず手際がいいな」
「言質は取れましたが、バルターは弱腰で何ともしがたい状態でした」
クリスが感じたまま報告するとジェフは凄く協力的で「ジャクリーヌに権力を集中させ実権を握らせるように諜報部に動いてもらう」とやる気十分だ。アーレイは今はカルネよりアーヴィンのレジスタンスの方に力を注ぐべきだと語り「資金援助をお願いします」と頭を下げた。
「今日は素直だな、奴隷解放の協力もあったし多めに出そう」
「ありがとうございます陛下、取り敢えず1億スカーほどお願いします」
「そう来たか」
想像より一桁多かったのかジェフは眉を吊り上げるが、アーレイの活躍はプライスレスだと笑いながら承諾するのだった。
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