カルネを目指す前に・・。
カルネ国に入る前に色々動きます。
<<デルタ王宮・客間>>
フローレンスとお茶しろと言われ客間に入ったのは良いが、何故かキースにマドックが神妙な面持ちでテーブル席に座っているし、遅れてクリスとジェフが駆け付けて来る。そしてフローレンスが「お祝いですよアーレイ様」と言いつつ料理が運び込まれ、サーブする侍女頭が「これはフローレンス様の手料理です」と耳打ちをしてくる。
「正面が駄目なら外堀ですか(呆」
「活躍した連中を労うのが王の役目である(ドヤ」
今回の事は極秘事項なので表立って褒美を出す訳にもいかず、かと言ってブレーメンに集まり報告会という名の宴会も憚られ、ジェフ的には労いとフローレンスとの親密さアピールの一石二鳥を狙っているみたいだが、微妙に嚙み合わないこの状況にアーレイはもうすでジト目だ。
「アーレイ、王女様の手料理を頂けるなんて幸せだな~(笑」
「おいキース!」
「お前が先に頂かないと俺らは食えんな(笑」
「こらクリス!」
因みにカルパッチョとムニエルが昼食会のメニューで、密かにアーレイの好みを探って懸命に作ったらしい。治療したであろう人差し指がまだ少し赤い。
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「健気ですね〜」
「そうですね〜」
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相変わらずいらんツッコミをしてくるフェアリーは今日も絶好調だ。余談ではあるがクリスやキースが装着しているAiは間違ってもこんな態度をとることはない。どこの世界でも妖精や精霊は悪戯好きらしい・・。
「さあさあ頂きましょうアーレイ様(喜」
嫁入り前の王女の手料理は超特別らしいが、現役軍人との会食自体はデルタでは珍しく無い。コーネリアもそれにもれず、長年に渡る戦いで軍部の信任を得るためにそうせざるを得なく、話を聞いたアーレイはやるせない気持ちになる。
「どうしたアーレイ、盃を持て」
「すみません」
気持ちが表情に出ていたのだろう。気を取り直したアーレイはみんなを一瞥すると口角を上げ祝杯を上げるのだった。
<<数十分後・・>>
「アーレイ様、本当にありがとうございます」
「お前には期待してるから」
去り際にフローレンスには深く頭を下げられ、ジェフは真剣な顔して肩を叩かれた。なんだかここに来て凄いプレッシャーを感じるアーレイだったとさ・・。
<<アーレイの自室・夜>>
仕事を終え部屋に入ると緊張がとけたのか、ドッと疲れが出たアーレイは食事を手短に済ませ横になると、数分も待たずして寝息をたて始める。
霧さん<アーレイ頼んだわよ貴方の使命だからね。それとねフローレンスは好みでしょ貰いなさいよ>
眠りについた枕元に白い霧が現れ暗示を掛けるかのように呟いていた。今日が初めてでは無いが今回は内容が結構過激だ。
<それとねタイラーは色々と面倒な娘だけど、2人とも貴方が未来を左右するから良く考えて行動してね〜>
とんでもない伏線を張る霧さんは話すだけ話すととっとと消えていく。彼女は一体誰なのか、なぜアーレイに纏わりつくのかは今のところ不明だ・・。
ーー
<<数日後・指令本部>>
ヒャンドの事故のニュースが流れ世間が大騒ぎになりそれが落ち着いた頃、ジャクリーヌからいつもの手紙が届く。反星団から星団側への通信は傍受されているので、暗号化チップを渡すまでは面倒だがアナログな方法でやり取りをするしか無かった。
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拝啓アーレイ様
先日は大変お世話になりました。奴隷解放の詳細がとある偉い方の耳に入り一度お会いしたいそうです。アーヴィンの彼が、連絡先を知っていますので、誠に失礼なお願いとは思いますが、何卒ご検討のほどよろしくお願いします。
ジャクリーヌ
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敵国からの手紙なので検閲を見越して重要人物名は控える内容になっていた。要するに族長のバルターが会いたがっているので、ポコを使いウルフを介して連絡をくれと言うことだ。
「なあ、クリス行っても良いかな?」
手紙をクリスに見せた途端にムスッとして「お前は止めても乗り込んで行きたいんだろ」と顔に書いてあった。見透かされたアーレイは頭をポリポリと掻きながら「相変わらず勘が良いね」と返す。
「手紙を見せるということは一緒に行こうで、肩書利用を使いたいんだろ」
「まあそうだが、バルターの協力が無いと先に進めん」
入国しやすいフェデラリーは中立国とはいえ外交、内政的にもディスティア寄りなので、監視の目が厳しく表立って動き辛い。カルネは入り辛い反面、星団側に協力的なので足掛かりにするには最高だ。アーレイはなるはやでバルターとの会談を済ませ協力を得ようと考えていた。
「ジャクリーヌが協力的でも少し急ぎすぎないか?」
「大将軍になった今がチャンスだ、ゆっくり動けばディスティアに察知される」
先ほどまで笑っていたアーレイが真面目な表情に変わり、本気で星団統一を進めていると感じたクリスは「陛下の許可を取るのが先決だな」と語り「じゃ俺はアーヴィン経由で一足先にいくわ」と言うとポコを呼び出し旅支度の指示を出す。
ーー
<<アーヴィン国際空港>>
「嬉しいポコよ、一緒に旅に行けるナノー!」
「ポコ、任務だからなそのことは忘れるなよ」
「はいナノ」
旅行者に扮したアーレイはヒャンドから高速船に乗りアーヴィン国際空港に降り立つと、目立たぬようにそそくさとエアータクシーに乗り込みウルフの隠れ家を目指す。
<<メレルの隠れ家>>
「犬が歩けば」
「棒!」
いつもの様に合言葉を交わすといつもの様に出迎えてくれる。ポコの事を心配していたウルフは開口一番「助けられたと聞いていたが生きててよかった」と言うと、まるで本当の親のように肩を抱き心配していた。そしてポコは「命を救われたからここに立っていられる、忠犬ナノ」と答え羨望の眼差しをアーレイに向ける。
「アーレイ本当にありがとう」
「礼が遅れて済まない、君のお陰だ」
「気にするな、念願の奴隷解放が実現したんだ礼を言うのは俺のほうだ」
互いに労いの言葉をかけ挨拶が済むと、ポコはお茶を淹れる為にキッチンに向かい、2人はソファーに座り早速本題に入る事に。
「ジャクリーヌのお膳立てでバルターと面会する事になった」
「今のバルターは腰抜けだぞ、喝でも入れるのか」
歴戦の勇者だったが年を取り今は腑抜けと辛辣だ。「それでも会って話を進めなきゃならん」と返すと「まあ仕方がない、だがゆくゆくはジャクリーヌが族長になる筈だ」と内情を良く知るウルフは教えてくれる。その話を聞くと朧げだった星団統一への道筋が、少し見えた気がしたアーレイは「ウルフ、君には当分の間世話になりそうだ」と活躍を期待する言葉を掛けた。
「アーレイ、軍部と諜報部の監視は任せてくれ、きっと役に立つぞ」
ウルフは先読みが早くサクサクと話が進むし、奴隷解放を完遂した事でかなりの信頼を得ていると実感できる。それにアーレイの横で口を挟まず、静かに控えるポコの態度が一変したのも理由のひとつだろう。
「ポコ、悪いが席を外してくれないか」
「分かったナノ」
話が終わりかけの頃、ポコを下がらせたウルフは、途端に意味深げな表情に変わりアーレイをジッと見つめ始め、愛の告白のような雰囲気になるが、それは敬愛の念を込めた黒の精霊に対しての態度だ。
「黒の精霊に名がついたぞ、アレックス・ブラッドフォードだ」
「やはりそうでしたかアーレイ様」
アーレイの正体を見破ったウルフは跪き、服従の構えを見せる。だがここでポコを下がらせた意味がわからない。単刀直入に「何故ポコを下げた」と問うと「知れば求愛しかねませんから」と答え、彼女の性格と現状を理解した上で外したらしい。
「あー、それわかるわ」
「ですよね〜」
解放作戦の後に「命を救われたポコはアーレイ様の僕になった」「一生付き従う忠犬ナノ」とか何とか報告したはずだ。その証拠にウルフは苦笑いを浮かべていたよ。
「ジャクリーヌは黒の事は既に知っている」
「当然でしょう、あの方が全幅の信頼を寄せているのですから」
発言から頻繁に連絡を取り合っていると分かり、隠し事は不要と感じたアーレイは「まだ先だがアーヴィンを最初に落とす」と話すと「デルタ軍を使って占領するおつもりですか」と単純に返されてしまう。
「普通ならそうするよな、それじゃ駄目なんだよ」
「ではどうするおつもりですか」
何か凄い答えを期待したウルフは真剣な眼差しに変わるが「占領は悪手だよ、時間を掛けて戦力のバランスを崩す事が重要だ」と語ると「回りくどいやり方ですね、お力は使わないのですか」と言われてしまう。黒の精霊の力を使いディスティアに乗り込んで、セオドールを倒し占領するのは簡単だ。しかし話はそう簡単では無い。
「植民地や占領政策をするにはそれだけのマンパワーが必要なる」
「成程、カルネのように中途半端になるのですね」
ディスティアは文明が遅れていたカルネを植民地化するつもりだった。しかしアーリーによって知的レベルが人間並になったことで諦める事になる。そもそも人口200億弱の獣人達を全て管理する事は不可能で、現在は友好国として扱い反省団側に組み入れている状況だ。アーレイはその事を分かっているので無闇矢鱈に占領などせずに、戦力放棄と独裁政治を無くし統一を図るつもりだ。
「まだ始まったばかりだ、とりあえずバルターを味方にしないと始まらない」
「わかりました、できる事なら何でも協力致します。ポコ入ってきていいぞ」
ポコを呼ぶと同時に通話用暗号化チップをウルフに渡すと凄く喜んでくれた。高価なこの装置はモジュールに組み込むだけで暗号化通信が可能になる。これでいつでも好きな時に連絡を取れることになった。
「活動資金は足りているか、心細ければ援助するぞ」
「いやいつもギリギリだよ、援助は大変助かる」
レジスタンスに加勢するジャクリーヌが一番のスポンサーだ。けどカルネ軍の予算を使えばディスティアにバレる可能性があり、自分の金を渡しているらしく、台所事情はあまり良くないとウルフは語り申し訳無さそうだ。アーレイは気前よく1千万スカーをウルフの口座に入金すると「いいのか、こんなに貰ったのは初めてだ」と言われるが「色々稼いでいるし対価を支払うのは当然だ」と言い切った。
「それなら遠慮せずもらうよ、また会おう」
奴隷解放が終りを迎えたウルフはアーレイを支えることを決め、その証として別れ際、拳と拳を突きつけ合う。信頼の置ける仲間が増えたアーレイはニヤリと口角を上げ「これからもよろしくなウルフ」と言うとポコを引き連れカルネに向かうのだった。
ーー
<<カルネ国際空港・到着ロビー>>
「キースのお陰だなアーレイ」
「土産でも買って帰らないと悪いな」
アーヴィン経由カルネ行きの便に乗船したアーレイは船内でクリスと合流はせず、入国審査後ロビーで落ち合うことに。すんなりと入国出来たのは偽名を使い旅行者に扮し、更にキースに偽装を施し囮にしたのが功を奏していた。しかしそう何回も訪れることは出来ないので、今回の会談は是が非でも成功を収めなければならない。珍しく緊張した面持ちをするアーレイは気合を入れ直す。
「ウルフが連絡を取ったからもうすぐ来るはずナノ」
指定された駐機場に赴くと突然黒いシャトルが目の前に止まり、後部座席の窓が開くとジャクリーヌの姿が見えた。すると「後続のシャトルにお乗りください」と短く用件だけ伝えると猛スピード走り去り、程なくすると一回り大きなシャトルが現れ、それに乗り込むといきなり屋上へと上がっていく。
「少し揺れますがご勘弁の程を」
パイロットの狼族の男がそう言った途端、屋上から大空へと上がると、そのままジャンプしてシャトルは消えていった。
<<リゾートホテル・アイランド>>
「到着しました」
「小島自体がホテルだな」
数秒後、ジャンプアウトするとそこは南国の楽園の様に透き通る海と空が広がり、眼下の小島には無数の海上コテージが立ち並ぶ高級リゾートホテルが見えた。シャトルは遊覧飛行のようにゆっくりと旋回しながら高度を下げ正面玄関に降り立つ。
「アイランドホテルにようこそ」
派手なバディックのようなシャツを着た獣人達が花びらを撒き花道を作り、正しく南国リゾートあるあるの出迎え方だ。シャトルを降りたアーレイは何ら気にする事なく堂々と進み、クリスは緊張しているのか気難しい顔をしていた。ポコは初めての経験らしく、お上りさんの様にキョロキョロと周りを見渡しながら玄関を潜る。
「アーレイ様オーナーがお待ちです。ご案内いたします」
ここのホテルはジャクリーヌの持ち物なのだろう。支配人らしきキツネ族の男に案内され、チェックインすることなくロビーを素通りすると、最上階に近い部屋に案内される。
<<アイランドホテル・スーペリアルーム>>
「遠い所まで御足労頂きありがとうございます。カルネ軍大将軍のジャクリーヌと申します」
「先日は大変お世話になりましたジャクリーヌ様」
「ありがとナノ」
部屋に入ると予想通りジャクリーヌが待っていた。クリスとポコの前なので平伏す事は無いが、表情が固く緊張しているのが手に取るようにわかる。
「始めましてジャクリーヌ様、クリスと申します」
「お初にお目にかかりますジェフ陛下の懐刀のクリス様ですね。このホテルは私がオーナですので安心してお過ごしください」
カルネ軍のトップであるジャクリーヌがホテルのオーナーだったとは驚きだ。デルタ軍では副業は禁止なのでクリスは「二足の草鞋を履く状態なのですね」と遠回しに問うと「本当は駄目なのですが、とある事情で黙認されています」と答える。実はディティア諜報部が好き勝手にありとあらゆる会議を傍聴、盗聴するので、聞かれたくない内容の場合は機密が保たれるこのホテルを利用するのが主な理由らしい。
「好き勝手にされるカルネも大変ですね」
「クーン精霊女王様に忠誠を誓い全身全霊を持ってディスティアに対抗したいのですが、この状況では如何ともしがたいのですクリス様」
国交が途絶え数百年が経過しているにも拘らず、全ての民はクーン精霊女王に付き従うとの言葉を聞き驚いたクリスは嘘じゃないのかと一瞬思ってしまうが、女王の能力を凌駕する男が隣に立ち黙って聞いているその姿を横目で見ると、何かが動き出しているとしか思えなかった。
「バルターとの会談はいつごろ始められますか」
「諜報部が目を光らせているので、少しお待ち下さい」
監視の目をはぐらかすためにバルターは休暇を取る体でこのホテルを訪れる計画だ。しかし政務の都合で日程が決まらないらしく、慌てても仕方ないと考えたアーレイはポコを連れて海を眺めながらビールを飲みたくなっていたのは内緒です。
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