間抜けなヤリス。一匹狼ポコ少尉。
商業連合のヤリスがちょっかいを出します。
<<指令本部>>
「アーレイ、サフロン様が呼んでいたぞ」
休暇明け、指令本部に出向くとサフロンから面会の申し出があり、クリスが訝しげな表情を浮かべ「よく呼ばれるな」と呟くが、アハハと笑って誤魔化した。まあ実力者との面会を短期間に数回行い、毎回アーレイだけと指定されれば何かしらあると勘ぐりたくもなるだろう。
「結果が出たのかな、じゃ」
周りの評価など気にしないアーレイは踵を返しさっさと離れに向かって行く。
<<王宮・離れ>>
「サフロン入るよ」
いつもと同じようにノックした瞬間に部屋に入ると「相変わらず遠慮ないわね」と言いつつ一瞬手先が青く光っていた。このオバさんCQBが得意そうだと思いながら、クーン南方特産フルーツ詰め合わせを渡す。
「まぁ嬉しいわ、ありがとうねアーレイくん」
「もう”くん”付けかよ(呆」
サフロンとはあれから何度も会っていてそれは密会じゃなくて今後の相談だ。この前は中尉と呼んでいたけど大尉に変わり面倒なのか”くん”付けに変わっていたよ。
「当分帰れないって言ったけどどのくらい」
「詳しく見てみたけど、なんて言ったら良いのかな、少なくても5年はこのままね」
アーレイの未来を覗いたサフロンは何とも言えない表情を浮かべていた。詳細は語らないが熾烈な世界が待っているとひと目で理解できる。取り敢えず一番気になるのはアデールの寿命の事で「俺とアデールの死は関係あるのか」と聞くと「間違いないわね関係あるわ」と答えるとため息をついた。
「そうか、それじゃ本腰を据えて頑張るとしよう、ありがとうサフロン」
「そうね、それが良いわ」
ジェフやクリスには言わないがアーレイは既に任期延長はもちろんのこと、星団統一という前代未聞の難題に挑戦しようと決心していた。これも未来を見渡せるサフロンが「きっと貴方は運命の法則に従って呼ばれたのよ」と話してくれたことが大きく影響していた。
「大丈夫かサフロン」
いつもの水晶玉を取りに行こうとして立ち上がったサフロンは、操り人形の糸が切れたように崩れ去り、床にぺったん座りをしてしまう。レティは原因が分かっているのか、冷静に医療用カプセルの準備を始めますと言い残し寝室に消えていった。
「アーレイくんは星団を変える力があると思って少し無理したの」
「1億スカーくらいの予知したのかな」
「あはは、お代は星団統一でいいわ、レティお願い」
腰が抜けた様な状態のサフロンをレティが抱えるわけにも行かず、アーレイがお姫様抱っこすると「あら何年振りかしら」と喜んでいたよ。色々想像してしまいジト目に早変わりだ。
「アーレイくん頼んだわよ(落」
「わかった、ゆっくり休んでくれ」
カプセルに入ったサフロンは一声かけると眠ってしまいレティに話を聞くと、限界まで魔力を使い果たした影響で、数週間はカプセルの中で寝続けると言われた。自分の為に体力ギリギリまで予知をしてくれた彼女には感謝の言葉しか出ない。しかし落ちる寸前にクッと口角が上がり、直感で何か重大な事を隠してると思わずにはいられなかった。
ーー
<<指令本部>>
眠りについたサフロンを見送り本部に戻る途中、小走りのクリスとすれ違い「5番艦の艦名を付けたら上で落ち合おう」と喋りながら駐機場に消えていった。また小競り合いだろうなと思いながら部屋へと入る。
「アーレイ大尉、惑星バルディ近くで商業連合同士の小競り合いが起きています」
予想通りまた商業連合同士の小競り合いだ。アーレイは端末を開き艦船登録のページを開くと、仕上がったばかりの業火級5番艦の艦名を「熾烈」と入力した。
「登録を済ませた、今回は俺が艦長で出るわ」
「了解しました」
急遽ジョアンをパイロットに任命した後、直接造船ドッグから出撃すると宇宙港を目指し、後方支援役のクリスが乗るエルフォードと合流する。今回は業火、烈火、熾烈の3隻が直接任務を行うことにした。
<<惑星バルディ・中立地帯付近>>
向かう先はクロウ星団内に存在する惑星バルディに程近い中立地帯の近くだ。ジャンプアウトした業火級3隻は、熾烈を先頭に3角編隊を組み現場に急行する。
「何か様子がおかしいですね、小競り合いというか遊んでいませんか?」
「そうだね、本気で戦っていないね」
微妙な距離で50隻ほどの旧旧型戦艦が向き合っているものの、威力を落としているのかどちらにも大したダメージが入らず、動きも画一的で1人で遠隔操作をしているみたいだ。とは言え交戦協定に基づき改革派の船長に連絡を入れることに。
「こちらはデルタ宇宙軍アーレイ大尉だ状況を報告せよ」
「こちらは艦長のヤリスです。惑星スレントを出て航行していたところ、いきなり襲われました」
作戦用モニターに映し出されたのはThe商人風の男で、赤黒いローブを羽織り、いかにもセコそうな面持ちだ。それにフェデラリー共和国からこの地域までの航路より大幅に外れ、まるで目立たない様に戦っているみたいだ。
「どうやったらこんな所まで流される、艦隊戦じゃあり得んわ」
「えっ、いや戦っているうちにここまで流されました(汗」
商人はポーカーフェイスが上手いと聞くがアーレイが一喝すると、一瞬目が見開き額には汗が吹き出て悪巧みがバレバレだ。
「な、長い間戦っていて」
「お前軍人舐めてんのか、あー」
戦闘中の艦橋内は各種報告が飛び交い、ノイズキャンセルをしたとしても喧騒は漏れ聞こえる。その静寂に気がついたアーレイは話をぶった斬り、モジュールを使い各艦に戦闘体制の指示を飛ばす。微妙な表情を浮かべていたヤリスはバレたと悟ったのか、徐々に悪人面に変わり目が据わり始めた。
「アーレイ大尉、今なら降伏をして頂ければ悪いようにはしませんが」
「はいはいヤリス君、宣戦布告と捉えたよ、各艦に告ぐ自由砲撃開始」
悪人のテンプレ的セリフを言い放つと全ての戦艦の砲台が動き出し、業火に狙いを定めようとしていた。アーレイは「こいつマジで軍人舐めてんのか」と思いつつ、宣戦布告受理したとして交信を切り攻撃の指示を出す。業火級3隻は編隊を組んだまま高速移動を行い射線を外れると、主砲を発射しつつヤリスの艦隊に突っ込んでいった。
「次弾砲撃後、急速離脱」
<了解>
Ai「ジャンプコア起動確認」
1回の砲撃で4隻を沈黙させ次の砲撃に向けて旋回中、40数隻の戦艦は突如ジャンプして消えて行った。アーレイは手際の良さに最初から逃走ありきで作戦を組んだに違いないと考え「ヤリスを追うが罠の可能性があるので、散会して対応するように」と指示を出した。
<アーレイ、星団の端の方にアウトしたぞ>
「トレースしてヤリスを追うぞ、緊急ジャンプ」
いきなり逃走を計るヤリスは何かしら仕掛けて来るはずだ。アーレイは監視していたクリスの情報を貰い、用心しながらジャンプの指示を出すと、3隻はシンクロを聞かせ漆黒の海へと消えていく。
<<クロウ星団・最端部>>
「三方で挟み撃ちをするぞ」
バラバラの座標にジャンプアウトした3隻の業火級は、ヤリスが乗っているであろう戦艦を包囲しつつ、アーレイの熾烈は艦橋に突撃を行い、ギギギと嫌な音を立てて艦橋にめり込んで行く。
「来た来た、会頭の言う通りだ突っ込んで来た」
戦艦を艦橋に突撃させて身柄を拘束すると予想していたのだろう。ヤリスは既に救命艇の中にいて、ポチッと赤い自爆スイッチのボタンを押すと、操縦桿を握り締め艦外に射出される。
Ai「危険ですエンジンコアが暴走します。熱核反応感知」
「まぁそんな事だろうと思っていたよ」
アーレイは逃げるヤリスの退路方向に向けてジャンプの指示を出すと、艦橋に刺さっていた熾烈は周りを巻き込みながらその場から消え去り、残された戦艦にはポッカリと丸い穴が空いていた・・。
「ジャンプアウト」
「ギャー」
逃走する進行方向に3隻の戦艦が通せんぼする形で行く手を塞ぎ、衝突寸前に緊急回避した救命艇は方向転換するものの、パネル砲の餌食になり敢え無く漂い始めた。
「ヤリス、何でこんな事をする素直に話せ」
「嫌だね、絶対喋らない」
「あっそ、じゃ帰るわ」
あっさりとヤリスとの交渉を終えたアーレイは「さあデルタに帰ろう」と言い放ちジョアンが「本当によろしいのですか?」と訪ねると「じゃ砲撃訓練してから帰ろう」と締めくくる。
「プップ、わかりました」
アーレイは戦艦を再利用させたくないので、砲撃訓練の指示を出し全て破壊しつくして帰路につく。その一部始終を見ていたヤリスは「クッソ」と悔しがりながらコンソールをバシバシ殴っていたが、彼は通常エンジンを使い数週間かけて連絡できる位置まで向かわなければならなかった・・。
「結局何だったんでしょうか?」
「コンドラトに言われてやったんだろ、証拠ないけど」
杜撰な作戦でアーレイの首を取ろうとしたヤリスは、間抜けな姿を晒すだけだった。
ーー
訓練中のポコは順調に戦闘機のライセンスを取得した後、飛行学校を首席で卒業すると共に少尉に昇進を果たし、精鋭部隊の特別訓練を追加で受講していた。
<ポコの成績表>
運行に必要な知識 A
計画性・判断能力 A
状況認識能力 A
規則の厳守 B
低速飛行 S
低空飛行技術 S
急旋回 S
失速時における回復操作 S
近接戦闘 S
精密爆撃・射撃 S
仮想撃墜数歴代1位
デルタ航空隊の中でも数十年に1人出るかどうかの、とんでもない成績を残したポコは、トップガン認定書を片手に航空隊に配属されることになる。
<<数週間後デルタ軍・航空課>>
「お前僚機のこと考えろよ、はぐれたら集中的に狙われるだろ」
宇宙軍との合同訓練の後、ポコは司令官に呼ばれ説教されている。その内容とはもちろん単独行動が過ぎて怒られていた。
「ついて来れないのが悪いナノ」
「コロンの腕は認めるよ、けど僚機と一緒に行動しないとそいつの命が危なくなる」
「んー、考えて飛ぶナノ」
「よろしくな」
ポコは戦闘機乗りとしての才能があり誰も敵わない凄腕クラスだけど、1匹狼タイプで僚機と連携が全く取れない。そのため「規則の厳守」の評価だけがBだ。1対1は最強だけど今の時代そんな乱戦はほぼ無い。と言う訳で戦闘機を降ろされるかもしれないそんな状態だった。
<<3日後>>
「コロン少尉、哨戒機か輸送機を選べ。もう戦闘機には乗せないどっちだ?」
「ふん、辞めるナノ」
「そうか残念だ」
ポコ的には頑張って僚機に被害が及ばない程度に単独行動をしていた。結局連携が取れないと判断され戦闘機を降ろされる。司令官的にはお灸を据えたつもりで、短期間だけ違う任務に変更しようとするが、もう嫌気が指していたらしく除隊してしまった。
「カルネで戦闘機の傭兵でもやるナノ、何かしら稼がないとナノ」
「何だと」
「ポコに落とされないように、バイバイナノ〜」
元々この司令官とは反りが合わないのかポコは最後喧嘩腰だ。まあ飼い主はアーレイと心に決めているのでそう簡単には心開かないだろう。しかし敵国に行くと言えば激怒するのは当たり前だ。顔を真っ赤にして怒り狂い始めてしまい「貴様それでもデルタの軍人か、俺の鉄拳を受けてみよ」と言い堪忍袋の緒が切れた。
「辞めたので一般人ナノ。関係ないナノ、じゃーねナノ」
「クッソ!」
動体視力が抜群にいいポコにオッサンのパンチが届くことはなく。ひらりひらりと躱しながら司令官室を飛び出していくのだった・・。
<<司令本部>>
「アーレイ様、辞めたナノ」
啖呵を切って飛び出したポコだったが、結局行く宛がなくアーレイの所を訪れ事情を説明することに。そして呆れたアーレイは詳しい話しを聞くことになるが、聞けば聞くほど呆れる内容だった。
「それでどうするの?」
「行くとこないナノ」
除隊届を提出したので一歩でも本部の外に出れば戻ってくることは不可能だ。よくよく考えてみればポコには帰る家がなくアーレイは頭を抱えてしまう。なので「司令官に謝ってちゃんと乗れ」と言えば「無理ナノ、あいつ嫌いナノ、喧嘩別れしたナノ」と反省すらしてない。極め付けに「アーレイ様と一緒にいたいナノ、忠犬ナノー」と言う始末だ。
「こりゃ飼い主の責任だな」
「・・・」
仕方なく総務部に連絡をいれたアーレイは除隊届を無効にすると、新たに宇宙軍第9艦隊所属に変更した。因みに総務部長から「デルタの人気者、アーレイ大尉のお願いですからこんなの簡単にできます」と言われ、自分の人気が知らないところで爆上がりしていることを初めて知ってしまう。
「出来たナノー、ありがとナノー」
新たな階級章と事務手続きを済ませたポコは、晴れやかな表情を浮かべ元気に戻って来た。そして配属先は未定なので希望を聞くことにすると「我儘は言わないナノ」と答えたので「業火級のライセンスを取れ」と言うと、目に涙を浮かべ「ありがとうナノナノ」と言いながら甘えるように抱きつかれてしまう。
「流石飼い主、戦艦を準備しているとは」
「煩いわ!元々熾烈に乗せるつもりだ、頑張りたまえポコ」
「はいナノ、ちゃんとやるナノ」
これで忠犬ポコはピンキーに引き続き、アーレイと共に3星団を駆け巡ることになるのだった・・。
ブクマ、評価お願いしますナノ




