救出作戦終了!
アーレイの運命は・・・。
<<コンドラトの城・城外>>
城の上空には人間ほどの大きさの黒い蝙蝠のような無数の黒い影が急降下してくる。それは地上に激突する寸前に向きを変え散らばりながら着地をすると、正面玄関に向けて「GO・GO・GO」と掛け声を発し、時折「手を挙げろ」「無駄な抵抗はするな」と叫びながら急接近していた。
「ンッ?」
屈強な獣人の兵士特有の野太い声が聞こえ、闇に落ちていたアーレイは明るい世界に引き戻されようとしていた。
「彼を早く彼に応急処置を」
戦場には似つかわしく無い若い女性の声が耳に入り目を開けると、先程まで自分を殺そうとしていた黒服の男は、額に赤い小さな光の粒が当てられ両腕を天高く伸ばしていた。それを確認したアーレイは安堵したのか、また闇の世界に逆戻りをしてしまう。
「制圧完了、3小隊は逃亡者の確保」
「救急班はこちらの方を優先しろ」
暗めの緑色がベースの迷彩服に身を包んだ兵士が、飛行カイトを使い続々とコンドラトの城に降りたって来る。程なくするとキーンと耳を擘く激しいエンジン音が響き渡り。数台の強襲艇が広場に着陸をした。
「意識混濁、脈拍微弱、血圧低下、酸素飽和度低下中」
薄緑の服を纏い白地に赤いストライプの腕章を付けた救護班が駆け付けてくる。すぐさまトリコーダーを使いアーレイの診断を下していた。
「は、早くナノ、早く助けてナノ」
「デルタ軍女性兵士保護」
頭を抱えうつ伏せで防御体制を取っていたコロンは、起き上がると血塗れのアーレイを見て救護班に助けを求め、既に涙腺が緩み泣いていた。
「回収した、急げ!」
「良かった。間に合いましたねポコ」
「ジャクリーヌ様ナノ?」
アーレイはエアストレッチャーに載せられ強襲艇の中に運び込まれ、一緒に入ろうとして引き留めらたポコの背後にジャクリーヌが姿を現し、一目見ると信じられない表情を浮かべる。
「手を後ろに、そのまま跪け!」
兵士の大声が響き渡る中、黒服達は次々に逮捕され広場に集められていた。この手際の良さはカルネ第1空挺師団の精鋭達だ。ジャクリーヌはアーヴィンに戻る最中に出撃命令を発令すると、惑星アーウェイン静止軌道上でほぼ同着。そしてコンドラトの城を目指し緊急降下の指示を出し、今に至る。
「ジャクリーヌ様、何故ナノ到着は明日の筈ナノ」
「決まっているじゃないお手伝いよ」
ポコは周りを見渡し生き残った事を実感すると共に、それはアーレイが身を挺してくれたお陰だと再認識する。急に胸の辺りがザワザワとし始め、居ても立っても居られない気持ちが迫り出して来た。
「ジャクリーヌ様、お乗りください戦艦に向かいます」
迎えに来たシャトルに向かいながらジャクリーヌは飛び立ってゆく強襲艇を指さしながら「彼がアーレイよね、命拾いしたわねポコ」と語ると「はいナノ、命を助けて貰ったナノ」と申し訳なさそうな表情を浮かべ、いつの間にか語尾全てに”ナノ”が付いていた。きっとこれが本来の喋り方なのだろう。見た目からすると良く似合っていたわ。
「コンドラトは逃げたようね、残念だわこの機会に殺したかった」
「ナノ~」
離陸したシャトルは戦艦へと向かい機首を上げ、晴れやかな大空へと消えて行った。
ーー
<<真っ白な世界>>
何もない、ただただ真っ白な空間に2人の男が顔を合わせ立っている。アーレイは撃たれる前の奇麗な軍服姿、ブラッドは全身真っ黒コーデで子供服から脱却したらしい・・。
「アーレイ何故我の力を使わん」
「ブラッドか、死んだのか俺は?」
「あはは、図太いお前が死ぬわけないだろう」
「そりゃそうか」
この世界はブラッドが作り出した異空間の世界の中だ。アーレイの意識を呼び今この場で話をしている。
「もう一度聞くぞ、何故俺の力を使わん」
「そりゃ面白くないし、有り余る力は自分をダメにするからだよ」
「その為に理性があるのでは?」
そしてアーレイは淡々と理性とは自分が勝手に線引きしたり、周りの反応を見て躊躇する心理的な事だと言い切り、有り余る力は頼れば頼るほど理性を失っていくし、付き従うものを恐怖で支配し始めそれは碌でもない事だと語った。
「力に溺れ始めたら理性じゃ制御できないだろ。ヤバい時がきたら使うさ」
「わかった、犬が泣いているぞ、慰めてやれ」
ブラッドはそう言い放つと、急に周りが暗くなり意識が落ちてしまう。
ーー
<<戦艦内・医務室>>
「起きてよアーレイ様起きてよ、起きてくださいナノ、グスン(泣」
コロンは傍に突っ伏して、泣きながら目覚めぬアーレイの名前を呼び覚醒を心待ちにしていた。その姿はまるで主人を待つ忠犬のようだ。
「なんだコロン」
名を呼ばれ真っ黒い世界の中に一筋の光が見えそれを望むと瞼が開き、目覚めたアーレイは泣き顔のポコを見るなり頭を優しく撫でそれに答える。すると「ごめんなさい、ごめんなさいナノ、ポコが悪かったナノ」と何度も謝り、自分の命を救ってくれた事に感謝の意を表していた。
「いいよ気にするな、ここは?」
「カルネの戦艦の中ナノ」
見慣れぬ医務室をみて船の中だとは気付いていたが、まさか敵国であるカルネの戦艦とは想像もつかなかった。ポコはジャクリーヌがいきなり現れ助けてくれたと語り、少し混乱していたアーレイはアデールに伝言したことを思い出していた。
「念のため呼んで正解だったな・・」
「そうだ、ジャクリーヌ様を呼ばないとナノ」
泣き顔のままのポコはトボトボと部屋を出ていき数分後、ジャクリーヌが現れる事になるが・・。
「アーレイ様、ジャクリーヌと申します。この度はありがとうございます(汗」
「ジャクリーヌ様、こちらこそ助かりました(驚」
事前に動画で知っていたがジャクリーヌ本人を目の前で伺うと、凄くエネルギッシュなオーラが伝わり嫌でも実力者と一発で理解する。一方彼女は背後に纏わりつく黒いオーラを見て冷や汗が出ていた。とは言え両者とも大人の対応を行い、表面的には冷静を装っている。
「アーレイ様、なんとお礼を言って良いのやら。本当ならわたくしが行わなければいけないのに」
「好きでやっていますから、気にしないでください」
「皆様、少し席を外していただけますか?」
そして本題に入りたいのか人払いを行い、医者とポコが席を外しスライドドアがしまった途端、ジャクリーヌの顔に緊張が走るとそのまま跪いてしまう。この展開になると予想していたアーレイは事前に「ブラッドお前が対処しろ」と言っていたので後は放置だ。
「黒の騎士様、お初にお目にかかります」
「ジャクリーヌ楽にせよ、姿はアーレイだが間違いなく黒の精霊だ」
「承知しております、私にはちゃんと黒いオーラが見えております。本当にアーレイ様と同化されたのですね」
「そうだ、こいつは面白いからな」
そして話しは次期クーン精霊女王の事に触れ「次期女王は」と尋ねられブラッドは既に見つけていると話すと、ジャクリーヌはホッとした表情を浮かべ「それなら安心で御座います。早う見とうございます」と返した。
「まだ当分先になるだろう、それまでアーレイを支えてやってくれ」
「畏まりました。アーレイ様が一声かけて頂ければカルネ共和国は全身全霊を持って協力いたします」
ブラッドに向かい忠誠を誓うジャクリーヌは何ら疑うことなくアーレイに協力すると言い放ち、これによって大きな味方を得ることになる。因みに聞いていたアーレイは「俺、なんか外堀を埋められている様な気がする」と危惧するも、既に時遅しで、任期延長が確定した瞬間でも合った・・。
「我に名がついた、アレックス・ブラッドフォードだ」
「なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「ブラッドで良いぞ」
「ブラッド、ブラッド様ですね、畏まりました、そうお呼びいたしますわ♡」
ジャクリーヌは全身黒尽くめのブラッドを見て凄く好意的な態度を示していた。強い男に強い女は惹かれるのだろうか、謎は深まってしまう。
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「お前さあ、俺を追い込んでいないか?俺は適当に遊んで帰りたいんだけど」
「そう申すな我と相性が良いではないか。楽しもうぞ」
「はあー、変な奴が取り憑いたよ、何だかジェフみたいだな」
「まだまだ帰さんぞ!だが比べるでない!」
「似たもの同士だよ」
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何かしらの秘密を知るブラッドは笑って誤魔化し、妙に楽しげな様子を見たアーレイは、まあなるようにしかならんわと今は楽天的だった。
<<カルネの戦艦・転送室>>
「カルネに是非いらっしゃって下さいね」
「頃合いを見て伺います」
「はい♡」
カルネの戦艦に長居するのは些かマズいので、粗方治療が終わった段階でアーレイとポコはホテルに転送される。別れ際の背中を見送るジャクリーヌが一瞬だけ羨望の眼差しに変化したのは秘密です!
<<ホテルアルデ・セミスイートルーム>>
「アーレイ様、アーレイ様、今日から私は僕になりますナノー」
部屋に戻るなり、躾の行き届いたワンコの様に絶妙な距離で片時も離れずアーレイに付き従っていた。
「コロン、頭打った?口調も変わったよ」
「本気ナノ、ポコとお呼びくださいナノー、これが普通ナノー。敵対していたから喋り方が変だったナノー」
命を救って貰ったことで人間嫌いが治った所の話では無い。無理難題を押し付けたとしても「はいナノ」の一言で何でもアーレイの命令を実行する勢いで、余りにも懐くので「ポコ離れろ、暑い」と言えば「嫌いナノか?」という始末だ。
「忠犬コロンだな」
「クリス!」
「よっ愛犬家」
「ガルゥ!キース殺す(オコ」
とまあ、余りの替わり様にクリスとキースは呆れを通り越して冗談を言う始末だ。これ以上ふざけていても仕方ないし、保護した奴隷たちがどうなったのか心配したアーレイが顛末を聞くと、カルネ出身者は戦艦に送り届けたと言われ一安心を得る事に。
「フォーレスト出身の姉妹がいた筈だが」
「中立地帯の探査船に運び込んだよ、それと性奴隷の女の子2人は同意を取って記憶消去した」
地下室で保護したハーフエルフの2人は事情聴取を行った後、虐待の記憶を消し医療用カプセルに入り出来る限り修復を済ませ、ミリアとユリアはアーレイを心待ちにしていると聞いたので、探査船へと向かいクリスと共にフォーレスト王国に立ち寄る事になった。
ーー
<<夕刻・ミリアの自宅前>>
ミリアの家は首都から遠く離れた地方都市の農村部で、牧歌的な雰囲気があり俗にいう田舎だ。
「さぁ行こうか!俺がついているから大丈夫だ」
「はい!」
ユリアとミリアは緊張した面持ちで家に入りアーレイは背後からステルス化して様子見だ。そして「お母さんただいま」と少し小さめの声で母親を呼ぶと。台所で夕食の準備をしていたのだろう、エプロン姿の母親が突然帰って来た2人を見た瞬間、抱きしめそのまま泣き崩れてしまう。
「あなた達戻ってきたのね。ごめんなさい私がいない時にあいつが勝手に売り払ったの」
「お母さん泣かないで、もうちゃんと戻ってきたから」
無事を確かめ合い子供を抱きしめ安堵する母親は涙して謝っていた。そんな感動の再会を快く思わない屑なオヤジは酒瓶片手にのっそりと姿を現した。
「あー、ガキが戻ってきただとー。おいお前らなんで戻ってきた」
「あんた、自分の子供なのよなんてこと言うのよ」
「うるせー」
酒乱の無職親父は母親を殴ろうと振り被るが、上げた手は降ろされる事なく宙に浮いたままピクリとも動かない。
「グフォ」
そしてアーレイがステルスを解除するとそのまま往復ビンタを喰らわし、戦意を喪失させると一枚の紙を顔面に押し付けた。
「おい無職馬鹿オヤジ、これやるよ女王直筆の召喚状だ」
「なん・だと」
面倒なウィン女王に対しての説明や召喚状制作は全てクリスに任していた。晩御飯を奢ることになってしまうがアーレイが会えば黒の件もあって丸投げしていた・・。
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「ウンベルト・ラッリは家庭内暴力、幼児虐待、誘拐、奴隷売買の疑いにより告訴、父親の親権は破棄とし家族とは絶縁とする。直ちにフォーレスト検察庁に出頭せよ」
「ウィン・アブ・モルダー・フォーレスト女王」
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「マジィ?」
「良かったなこれで死刑確定だ。さあみんな最後のお別れだ好きやっていいぞ」
そして長年の恨みを晴らす時を迎え、逃げげ出そうとするウンベルトをバインドで身動きが取れないようにすると、「ウフフ」と不敵な笑みを浮かべるミリアはアーレイに借りた作業用ハンドアームを装着して更に鬼の金棒のような武器を携え、スタスタと目の前に立つとゴルフのスイングのように股間に向かって振り上げた。
「ギャー」
「ザマァ」
有り余る威力によって股間を強打したウンベルトは天井を突き抜け、小屋梁に衝突すると今度は自由落下によって床にたたきつけられる。ミリアの一発で既に満身創痍状態で且つ「漢」に変身だ。しかしこれで終わる訳も無く股間を押さえ蹲る物体を、まるで汚物のように眺めていたユリアが目の前に立ち「私の胸を触った罰を追加するわ」と言い放つとサッカーボールをシュートをするように思い切り横蹴りを決めた。
「グフォ」
「飛んでけ~」
ユリアが装着しているのは電磁加速ブーツだ。それも軍用なので威力は一般の物と比べても数倍だ。蹴られたウンベルトはまるで弾丸のような速さで壁を突き破り家を飛び出すと放物線を描きながら星の彼方に消えていく。そして娘が目の前で見せた蹂躙劇の一部始終を黙って見ていた母親は「ああこれで逃れられる」と安堵の表情を浮かべていた。
「お母さん、あのね男作ったら死刑だって」
「え゛!」
ブーツを脱いだユリアは腰に手を置きご立腹のポーズを作ると「ちゃんと成人まで育てなさい」と表情で訴えると共に、アーレイは1枚の紙をヒラヒラさせながら「成人するまで男にうつつを抜かしたら速攻で縛り首になるぞ」と女王直筆のサイン入りの命令書を見せた。
「ウィン女王には定期的に見守りするように申し付けてある。約束を反故にしたら俺が直々に殺してやる」
「わ、わかりましたー!(大汗」
こうしてミリアとの約束を守ったアーレイは「何かあったら俺に連絡していいぞ」と約束して家を後にするのだった。
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<<エルフ繁華街・エルフ食堂>>
ミリアの一件を終えたアーレイは城から戻って来たクリスと合流すると、飯を食って帰ろうという事になり彼が良く知る食堂へと入る。その店はエルフ族に限らず獣人達にも好評なお店だ。一見古くて汚く見えるけど細かい所まで清掃が行き届き、地元に愛される繁盛店の雰囲気が漂っている。
「最近のエルフ族は肉も食べるんだな」
「動物系タンパク質を摂取した方が品祖にならないとフォーチューブがバズったのが原因らしいよ」
※=You〇ubeと同じ動画系サイト。
アーレイはこの店の名物である野菜や肉がゴロゴロ入ったブラウンシチューのような汁物を楽しみ、クリスは最近エルフ族の女性に人気の肉野菜炒め定食を頂いている。2品とも味付けはシンプルだけど旨味たっぷりで凄く美味しく、流石地元に愛されている店だと感心していた。
<アーレイどこにいる出頭せよ!BYジェフ>
食事も終わりかけの頃、いきなりジェフから電文が入ってきた。2人ともデルタの回線を遮断していたので緊急回線を使用して送って来たらしい・・。
「いきなり陛下に呼ばれたよ、絶対アーヴィンの件だよね〜」
「ほらいくぞ、もう食ったろ」
「わかったよ」
息つく暇もないアーレイだった・・・。
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