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王族の予言者サフロン。

サフロンとレティとの出会いです。

 <<夕方・指令本部>>


「アーレイ、飲み行こ!」


 勤務を終えたキースは奥様が出張に出掛け不在なのを良い事に、アーレイを飲みへと誘う。最近クリスと仲良くなり必然的にこの男とも遊ぶ機会が増え、同僚の域を超え友達と言っても構わないだろう。


「よし行こう!」


 と言う訳でいつものブレーメンに向かう事になり、私服に着替えた2人は仕事の後のシュワシュワを楽しむため足早に指令本部を出るのだった。


 ーー


 <<デルタ王宮・離れ>>


 王宮の奥にある離れは特別な許可が無いと立ち入る事が出来ない。そんな人知れず静かな場所に1人の中年女性が住んでいた。


「出掛けたわチャンスの日よ、どんな男か品定めお願いね」

「畏まりましたサフロン様」


 ここに住んでいるらしいサフロンと言う女性は、長い金髪を持ちフローレンスに似た顔立ちの40過ぎだろうか、とても品がよさそうなお姉さまだ。そして何やら水晶玉を優しく触り眺めながら若い侍女に指示を出していた・・。


 ーー


 <<2時間後・ブレーメン>>


 今日は石窯で焼いた肉料理がお勧めという事で、たんぱく質大好きキースはムシャムシャと肉を喰い、それをゴクゴクとシュワシュワで流し込み、腹が溜まれば強い酒を楽しみ丁度いいくらいに出来上がっていた・・。


「私はレティ、この子はバルバラよ」

「俺はキース、こいつはアーレイだ」


 街中を1人で歩くと女性達に声を掛けられることがよくあるアーレイさんは、隣に座った美人さん2人組に「お酒強いのですね〜」と話しかけられ、そして自己紹介の流れになるが・・。


 >

「暗器持っていますよ」

「だろうな、さてどうしたもんやら」

 >


 最近ディスティア諜報部が暗躍しているので注意しろとのお達しが出ていた。なのでスキャンしてみると案の定と言うか、太腿に小型の暗器が仕込まれている事が分かり、この後どう対象しようかとモジュールを使いキースと相談する事にした。


「キース、顔認証で検索したら”美姫(びき)の侍女”って有名人だわ(汗」

 

 暗器を持つレティさんを調べたら、王族に負けじと劣らない「美姫の侍女」として、王族追っかけブロガーの間では有名人だ。目鼻立ちがしっかりした清楚系の顔立ち、スラリとした立ち姿、それとダークオレンジ色のボブカットと相まってパッと見、王女と言っても差し支えない程の美貌の持ち主だ。


<彼女は王族直属の侍女だよ。お前は陛下に狙われているから差し金だろうな>


 ここまでの美顔の持ち主なら軍人より貴族を選ぶだろう。という事は何かしらの目的を持って送り込まれた筈だ。


「色仕掛けで延長入りまーすってやつだね」

 <だろうな、任期が10ヶ月切ったろ>

「とりま誘いに乗って聞き出しますか」

 <自己責任で!>

「はいはい」


 キースは奥さんが不在なので遊びたいのか分からんが、結構乗り気だったりする。アーレイはジェフの差し金かどうか判別する為に、相手の出方を見るつもりだ。


「キースさんお願いね」

「それじゃぁな、アーレイ」


 一緒に店を出るとバルバラは夜道は怖いから送って欲しいとキースに頼み、レティもお願い出来るかしらと、アーレイに寄り添うように距離を詰めて来る。


「少し寄っていこうか」

「うん」


 それぞれ違う方向へと歩き、ホテル街のネオンがチラホラ見える辺りに来ると、レティは自らスッと腕を絡め、少し蕩けた表情を浮かべつつ見上げて来た。そして縺れるようにホテルへと入る。


「ねえアーレイ、初めてだから優しくしてね♡」


 人目を避けるようにそそくさと部屋へと向かい、先に入ったレティが振り向くと恥ずかしそうにお願いねと念を押されアーレイは引き寄せるように抱きしめ、耳元で「その前に目的を聞こうか?」と呟くと「そんなこと女の子に言わせないでよ」としらを切られる。


「暗器は外してくれないかな、美姫の侍女レティさん」

「はいはい、サフロン様の命令よ」


 既に正体と目的がバレていると瞬時に悟ったレティは、贖うこと無く素直に誰の差し金か白状する。黙秘を貫き通してもサフロン専属侍女と分かるのは時間の問題だと判断したのだろう。諦め口調で最後は恨めしそうにアーレイを見上げる。


「アイシャ様の親戚だよね、俺を探りに来たの」

「色仕掛けで落とせって」

「マジ?」

「冗談よ、人となりを探ってこいって」


 確かにサフロンは《《品定め》》だと言っていたが、《《親密》》になれとは言ってない、白状してもアーレイから離れようとはせず逆に美脚を露わに絡めてきた。


「こらこらレティさん、人となりでしょ」

「いい男だからここまで付いて来たのよ、ねえキスしてよ」


 デルタの女性は積極的だから気を付けろの言葉を思い出し、蕩け始めたレティに対しどう断ろうかと思案していると、中空モニターが勝手に起動してフェアリーが出て来る。


 >

「お楽しみ中すみません、ドア外に不審者発見」

「あらま、助かったわサンキュー」

 >


 間違いなくディスティアの諜報部員だ。危険な賭けだが助けに船と考え、レティ説得の材料として使うと決めた。


「期待させて悪かったねレティ、だが扉の外に待たせてある”影”と複数で楽しむ趣味なのか」

「えっ、応援は呼んでないわよ!」


 素で反応したという事はディスティアの諜報部員確定だ。アーレイは安全の為に(シールド範囲内)レティの腰に手を回し密着すると「いきなりは駄目」と言われるが、構わずドアに向かって腕を伸ばしスタンを放つ。


「ギャ!」

「えっ、冗談じゃなくて本当にいたのね(汗」


 どうやら会話を盗み聞きするために耳を押し当て密着したのが悪かったのか、扉を開けると死んだヒキガエルのように仰向けでオッサンが倒れていた。アーレイはバインドで手足を縛りあげ部屋に引きずり込むと、レティは「仲間(諜報部)じゃ無いわ」と即座に拒否する。


 >

「フェ、スキャンして」

「登録はフェデラリー共和国の旅行者、認識票、自決用の毒はありません」

 >


 一瞬フェデラリーが何故と思ったが反省団寄りと思い出し、こいつはディスティア諜報部員で間違いないだろう。気付け薬の替わりに弱めのスタンを放ち叩き起こすと男は飛び上がり目覚めたが、自由が効かないので芋虫みたいにウネウネと動いていたよ。


「さて自己紹介をしてくれてもいいぞ」

「・・・・・(黙」


 最初から素直に話す事など無いだろう。なので「目的を話せば解放してやる。喋らなければ諜報部で記憶を覗か(※1)れて馬鹿になれ」と脅すと男は諦めたのか「自分はディスティアの諜報部員」だと答え「知ってるわ」と返すと続けて「目的を話したら解放するのか」と言われたアーレイはバインドを切って自由にさせてやった。


 ※1=記憶を映像化する事が出来る装置のこと。長時間行うと記憶障害が出てしまう。


「噂の小型戦艦を調べていた。君は頻繁に技研に出入りしてるから尾行しただけだ」


 ヴァル海戦で第9艦隊が狙い撃ちされ諜報部が嗅ぎ回っているとなれば、間違いなく業火の事を調べ回っているのだろう。それにこの男曰く、手がかりが掴めず尾行しただけだと話し諦めた表情を浮かべていた。


「残念だな見当違いだよ、俺の専門は自慢の”大砲”で女を喜ばせることだ」

「プッ!」

「・・・(呆」


 探りを入れる為に冗談を言ってみたが笑えないのかムスッとしていた。「そこ笑う所だぞ」と突っ込みを入れるとアーレイの思惑通り「じゃあなんで頻繁に出入りする」と返し、いい流れいなっていたので「受付のお姉さん巨乳で可愛いだろ」と助平男を演じて業火級の関係者無いアピールをしてみた。


「あれか、確かにあの子はデカイよな」


 技研の受付には背が低めだけど巨乳で凄く可愛らしい女の子が座っているのは事実だ。この男も掌握をしていたので「けど実は難攻不落なんだわ」と返し重ねてナンパ男を演じてみる。


「そ、そうなんだ・・」

「じゃ帰れオッサン、解放する約束だし、俺は今からこの子と楽しむからさ(ドヤ」

「良い所を邪魔して悪かったな失礼するよ(汗」


 男はアーレイの言う通り素直に部屋を出て行く。逃がしたのはもちろん泳がせるためで速攻でキースを呼ぶことに。


 <何だアーレイ、振られたのか?>

「ブレーメンの近くのホテルからオッサンが1人で出ていく、ディスティアの影だ追ってくれ」


 キースにディスティア諜報部が嗅ぎ回っていると伝えると「泳がせてアジトを見つければいいんだな」と即座に意味を理解してくれた。取り敢えず任せて大丈夫だろう。因みにキースと一緒だった女の子は1人でエアータクシーに乗ってさっさと帰ったそうな・・。


「それじゃレティさん、今日はこれにて終了でいいよね」

「いやよ、もう!その気になってんだからさ!」


 トラブルに見舞われ白けた雰囲気にも関わらず、レティさんはアーレイと是非ともつながりたいのか再燃焼中で、艶めかしい表情を浮かべ何と言うかいい匂いが鼻腔を刺激する。


 >

「多量のフェニルエチルアミン(恋愛ホルモン)を出しています!止まりませんな~」

「マジヤバいわ~(汗」

 >


 状況を報告するだけで解決策を述べてくれないムカつくフェアリーを、一旦リセットしてやろうかと思ったがそんな暇はない。蕩けるレティに「これから尾行するので無理だ」と伝えると、影の彼女は意味を理解したのか「もう、仕方ないわね」と諦めてくれた。けどまだ離れたくない様子で最後にギュッと抱きついて来る。


「ねえ、次いつ会える?」

「俺に関わると碌な事がないし王族絡みは遠慮したい。その気持ちだけで十分だ」


 引き留めの為にフローレンスを娶れとか言い出している手前、王族に近い彼女と一夜を過ごせば口止めしたところで噂になるに決まっている。ジェフの耳に入れば「こりゃたまげた任期延長じゃな」なんて言い出しかねない。地球に帰りたいアーレイはやんわりと断りを入れた。


「わたし影だけど、本当に真剣なんだからね」


 移住者フェデラリーである両親の影響《諜報部》を受けたレティは10代前半の時から影として活動し始め、気が付けば「美麗な死神」の二つ名を持つ凄腕の暗殺者と恐れられていた。多忙な彼女はサフロンの護衛になるまで男性経験は無く、更に自分の手が血で汚れ真っ当な人生は送れないと実は恋愛を諦めていた。しかし《《積極的な女》》を演じ始めて男性に抱きしめられ、燻っていた恋心に火がついてしまったらしい。


「タクシー乗り場まで送るよ」

「うん」


 ホテルに入る時はイケイケで前を歩いていたレティさん、自分の気持ちを吐露した後はアーレイの1歩後ろを歩き、実は慎ましい女性だと判明するのだった・・。


 >

「好みでしょ」

「煩いわ!」

 >


 フェのいう通り美人でお淑やかな彼女は悪くはない。けど手を出せばカオスが待っているので素直に見送りました。


 ーー


 <<翌朝・指令本部>>


 諜報部員を尾行していたキースは根城にしているホテルを見つけ「情報を流したから帰宅する」と連絡が入り、アーレイは万が一を想定して作戦本部の仮眠室で朝を迎えた。


「サフロン様から呼び出しが来ているぞ、おばさん相手になんかやったのか」

「それがね専属侍女の色仕掛けにあってね、クリスの忠告守っているから安心しろ」


 裏の実力者(魔導士)サフロンが動いていたと知り驚きを隠せないクリスは、去り行くアーレイの背中を見て「大変な人に興味を持たれたな」と呟くのだった。


 >

「アーレイ久しぶりだな」

「呼ばないから寂しかったかブラッド」

 >


 取り憑いていたブラッドは常に憑依するわけではなく。精霊たちの世話をするためなのか、好き勝手に出入りするのが実情だ。普段入れない「離れ」に入ることになったのでどうやら現れたらしい。


「離れは結界があってな、憑依しないと入れないのだ」

「ふーん、そうなんですね〜」


 嫌な予感しかしないが、とりあえず離れに向かうアーレイだった・・。


 <<王宮・離れ>>


「アーレイ入りまーす」


 探りを入れられムカついているアーレイは、扉をノックした直後に部屋の中に入り不機嫌を表現してみた。


「アーレイくん遠慮ないわね」

「面識の無い奴に探りを入れられるのは嫌いでね」


 あからさまに不機嫌な顔をしても動じないサフロンは、作り笑顔はするものの目は全く笑ってない。流石王族だけあって一癖も二癖もありそうだ。


「ジェフが話していた通りはっきり言うわね、けどその加護は見過ごせない」

「はて、何のことでしょう」


 サフロンは3星団の中でも指折りの高位術者で魔法適性は攻撃と予言だ。それとは別の探査能力を使い加護を見抜き「私には黒のオーラが見えているわよ」と念を押されてしまう。既にに詰んでいる状態と考えたアーレイは、とりまブラッドに聞いてみた。


 >

「おいブラッド、お前バレてるぞ」

「なんだ魔法部隊のサフロンか諦めろ」

「使えないね黒ちゃん」

「それ言うな!」

 >


 サフロンは今は無きデルタ王宮魔法部隊を退役した後、離れに住んでいたのを知らなかったそうだ。しかしブラッドの正体が明らかになり、白ばっくれても印象が悪くなるだけだと考え「確かに守護は黒の精霊だ」と正直に話す。後は野となれ山となれだ。


「心配しないで、別に陛下には言わないわよ」

「それは俺も望んでいないし、この力を頼りたくない」


 黒の精霊の想像を絶する凄さを知るサフロンはアーレイが力を誇示すること無く、逆に力を使いたくないと聞くと拍子抜けした表情を浮かべた。秘密を暴けば何かしらの脅しを掛けてくるだろうと予想していたらしい。


「ウフフ面白い人ね、けど未来は苦難が待ち受けているわよ」

「それも面白そうだよ」


 預言者は確実な未来がはっきり見えるわけではなく、断片的に枝分かれする未来が朧げに見える。だが苦難が待ち受けていると断言するからには茨の道ということだ。しかしアーレイはきっとその先には明るい未来が待ち受けていると考えたのかニヤリと笑う。


「それならもう少し詳しく聞きたいでしょ」

「霊感商法にしちゃ手の込んだ冗談だ(笑」

「もう失礼しちゃうわね、普通は数百万スカー(※1)は取るんだからね」


 ※1=1スカーは日本円に換算して約10円 

 3星団は数百年前、共通通貨に統一されs|tar cluster currency《3星団通貨》を略しScar(スカー)と呼び名が決められていた。


「ちょっと何言っているかわからない」

「はいはい、始めるわよ」


 サフロンは手元にある水晶玉に手をかざすと指先がほんのりと光り始め、中心部に雲のようなものが現れる。きっとそれが未来を映しているのだろうけれどその能力が無いので何も見えない。因みにアーレイの身体はクローンの影響で魔力が殆ど溜まらず、魔法が使えるけど使えない状態だったりする。


「敵国の仲間ができるし凄く大きな戦いもあるわね。結構大変ね貴方」

「苦難の先には明るい未来が見えるのか」

「うーん、今の時点では枝分かれしすぎて何とも言えないわ」


 色々な未来が見えていてその中で確実なものだけ話したらしい。アーレイは何と言うか狐に包まれた気分になってしまう。あと術式を終えたサフロンの表情が冴えない、なにか悪い未来でも見たのだろうか不安が過ぎり、思わず「悪い未来でも見たのか」と聞いてみる。


「あのね、いい辛い事なんだけどあの子(レティ)の願いを叶えてあげてくれないかしら」

「それは未来が暗いってことか」


 アーレイの未来を覗いている途中にあの美人侍女は原因はわからないが不幸が訪れると暗に語り、昨晩の事も既に知っているらしく真剣な表情を浮かべていた。


「詳しい日はわからないけどその時は近いわ」

「結果を教えるだけかよ君は最低だな。だが彼女を放っておけない俺が助ける」

「私の能力は理解できなくてもいい、けどどうやって助けるのよ」


 いきなり難問にぶち当たったアーレイは真剣な眼差しでサフロンを睨み「自分の能力は出来る限り使わない、だが全力で助ける」と言い放つと「撃たれそうになったらどうするのよ」と返されるが「俺は死なないらしいから盾になればいい」と素直に答えた。


「優しいのねアーレイくん、入って来なさいレティ彼は合格よ」


 姿を現したレティは紺色の清楚なメイドに身を包み、白いカチューシャが凄く似合っていた。そして「私の見立て通り正義感の強い方でしたか」とサフロンに聞くと「まあ訳ありな男ね、けど未来が変わるから」と続け本人はアーレイの未来を喋るつもりはないらしい。


「なるほど黒が憑依したから試したのか」

「そりゃ死の騎士だよ、独裁者だったら大変だもの」

「へっ!食えない奴」

「君は良い奴」


 未来を知る預言者はアーレイに期待しているのか「頑張りなさいね、未来は貴方の頑張りでどうとでもなるわと」語り、見合った2人はあははと笑う。


「よろしくなサフロン」

「こちらこそアーレイ」


 握手をすると王族には珍しく死線をくぐり抜けた戦士のように眼光が強くなり、特有の香りが漂っていた。間違いなく前線で戦ったと想像ができたアーレイは信頼できる女性だと認識して、それはサフロンも同じだろう。2人同時にニヤリと口角が上がる。


「じゃあレティ、昨日の続きはどうする(笑」

「ンッ!(赤」


 冗談と分かっていても昨晩の記憶が鮮明に蘇ったのか、即座に顔が真っ赤に変わりキッと睨んでくる。


「嘘だよ、任務の時と違って可愛らしいね」

「もう、ばか!」


 この”可愛らしい”の一言がアーレイ一筋になる決め手となったのか、過ぎ去る背中を羨望の眼差しでレティは見つめていた。


「あらあら、レティ」

「もう、心を読まないでください!」


 あの一夜の出来事で1人の女性の未来が大きく変わろうとしていた・・。

ブクマ、感想、評価お願いしますナノ!

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