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ベクスター。

ベクスターを作ります。

 <<技研内・艦艇設計部>>


 ジェフに頼まれた王族専用機を早速、作ってみた!


「ファーレンハイト」

 3星団内を快適に宿泊もできる中距離用は20万トン級を目指した設計を行い客室は相当余裕がある。300名規模のパーティーが行えるダイニングルーム、作戦行動を支援できる会議室、開放的な空間を誇るラウンジなど、まさに王族が移動する為に作られた船だ。


「アーレイ中尉、この発想はありませんでした」

「ファーレンハイトは乗り心地を重視にしたよ」


 マドックが驚くのは推進システムと船体構造だ。機関部と客室をフローティング構造を用いて完全に切り離すことで、全く揺れない究極の乗り心地を確保。推進装置を前方に4基、後方6基設置する事で完璧な姿勢制御はもちろんの事、どの方向を向いても最大船速が出せる。因みこのコンセプトは後に作る戦艦にも採用され他に類を見ない機動力をもつ事になる。そして常に適正な重力が働くようにアクティブ重力キャンセラーを備え、旋回中5Gくらいまでは地上と同じ1G状態で乗っていられる。


「それにしても流線型が美しい・・・」

「だろ、これは拘ったよ」


 涙型を伸ばした流線形の船体に前後を結ぶ曲線を帯びた2本のフレームが特徴的で、アーレイ曰くどの角度から見ても曲線が映えるデザインを作り出すのには相当苦労したと語る。因みに武装に関しては星団法を順守し、8枚の新型パネル対空砲、撹乱用シーカー、チャフ、フレアを搭載し、艦首艦尾には新設計の高速連射レーザーを装備。特徴的な細い先端は「クイクイ」っとフレキシブルに動きエゲツない数のビームを撃ち、対艦ミサイルの飽和攻撃に耐えうる防御力を誇る。


「ベクトランは近距離移動専用機ですか」

「そうだよ、近距離を快適に過ごすために作ってみた」


「ベクトラン」

 ファーレンハイトに5機搭載出来るベクトランは最大14名が乗れる言わばプライベートジェットだ。SH−150をベースに用いて俊敏性を確保すると共に容積率を上げ、機内は木材を多用したコンパクトな空港ラウンジ風に仕上げた。


「ベクスターってこれもう戦闘機ですよね(笑」

「逃げ足は一級品だよ~」


「べクスター」

 乗員数は最大10名と少なめで、緊急脱出に対応する戦闘機に近いコンセプトで作ってみた。スクランブル対応の起動性、曲芸飛行が出来る高い運動性、コンテナサイズまで小さくなるカーゴモードを備えた小型機だ。全体のシルエットを他機で表すなら、マ〇ロスに出て来たS〇-51γの雰囲気を残したプライベートジェットと例えるのが分かりやすいだろう。大きな違いは細く長い主翼の浮力を得るためにV字で2枚であること、運動性能を上げるために尾翼が4枚とカナード翼を装備。またエンジンを主翼の付け根に配置することで狭いながら客室を得ている。


「小型強力だからといって戦闘機のエンジンですか」

「それしか思いつかん!」


 芸術性を求めたベクスターは他に類を見ない美しさと高い運動性能、快適な空間を得ているものの、大型化に伴い小型高出力の推進機が必要になる。思いついたのが1式用のエンジンで、それを4基採用したことで戦闘機の運動性と機動性を兼ね備えた超高性能プライベートジェットが出来上がった。


「室内は可動式を採用したのですね」

「まあこれはおまけみたいなもんだ」


 室内に関しては狭く簡易的ではあるけれど、ラウンジモード、ベッドルーム、座席モードの3種類がスイッチ一つで選べ、多様性に優れている作りになっている。武装に関しては速射レーザーを前後に2門と主翼に強力なレーザー砲を2門を装備。


「外装はすべて業火と同じ素材を採用したのですね」

「強度を確保できるからね、けどベクスターだけ何故か白色になったよ」


 そして素案を出し無事通過したので製造にとりかかるが、複雑な機体と今まで作ったことの無い涙型は、急ぎで作っても半年以上必要と言われてしまう。


「仕方ないよ全部ワンオフだからね」


 ーー


 <<展示会場>>


 少し暇になりキースに一般応募の兵器コンテストを見に行こうと誘われたので行ってみた。まぁ面白かったが星団法に引っかかる物ばかりだったよ。


 <Aiドローン・クラスター爆弾>

 <足を乗せるだけで毒が揮発して即死する暗殺用カーペットとスリッパ>

 <暗殺用、超小型蜘蛛型アンドロイド>

 <拡散レーザー型手榴弾>


 ほんと笑っちゃうけど全て法律に引っ掛かり、実際は仕えないものばかりだった。しかしそんな中、工学系の学生が考案した面白い物を見つける。それは動物の毛が逆立つのを見て考案したそうだ。


「これは電気を通すと硬化する液体金属です」


 デモンストレーションを行う学生はプラスチックトレイに銀色の水銀のような液体注ぎスイッチを入れると、ユラユラと動かしていた液体が音もたてずに瞬時に固まる。指で弾くとコンコンと金属特有の音が響いた。


「それでは電源を落とします」


 スイッチを切ると元の液状に状態に戻り、それを見たアーレイは大喜びをして他に応用した物があれば見せてくれと頼む。


「液体金属を応用したのがこちらの物になります。硬度はチタン並みですが、耐熱温度800度と低いのが欠点です」


 学生が次に持ち出してきたのは風でなびく薄いテープ状の物で、ヒラヒラさせながらスイッチを入れるとあら不思議、靡いた状態で固まり、さっきと同じようなコンコンと硬い金属の音が響く。これは液体を特別な膜に蒸着させて作ったそうだ。


「なるほど、面白いね」

「そう言ってくれる方はたくさんいます、ですがそれだけで終わってしまいます」


 詳しく話を聞いてみると液体金属の方は姿勢制御の分野から声が掛かっているとのことで、一方のテープはアルカリに弱い、通電しっぱなしすると電蝕して劣化するなど弱点が多く採用をためらうそうだ。


「いざ兵器として使う事を考えたらコストが高く、用途が限られ採用してくれないのです」

「ふーん、使い方次第だよね」


 何か閃いたのかアーレイは使用権についての値段交渉に入ると材料費だけでいいと言われ、製造方法や特許も含めすべてお買い上げする事になった。


「アーレイ何に使うんだ?」

「ん?悪戯だよ敵が艦内に侵入した時に使ったら面白いと思ったのさ」


 そして技研に戻ったアーレイは早速、液体金属を蒸着したテープの実験を行うことにした。


 <<技研内・艦艇製造所>>


 アーレイは試作品のテープを大量に作り、製造部に赴き実寸大モックアップの中で実験を始め、壁一面に張り付けたテープを送風機でヒラヒラさせアンドロイドを歩かせてみた。


「ゆっくり歩いて」

「YESマスター」


 ヒラヒラと揺らめくテープの中をアンドロイドが命令通り牛歩で歩く。頃合いを見て電源スイッチを入れてみた。


「動けるなら動いてみてくれないか」

「YESマスター」


 一方向に真っすぐ伸びていたテープはビシっと固まり、アンドロイドは風下にしか動けなくなる。この状態だと一方向にしか動けないから風向き次第では特定の部屋に誘導する事が出来る筈だ。


「マスター、進行方向以外動けません」

「こりゃたまらんな機甲歩兵でも戻るには時間がかかりそうだよ」

「うんうん、実験成功だ!」


 実験に成功したアーレイは敵が強制転送した時に備え、テープを大量に作り業火級の通路に張り付ける指示を出す。もちろん行く先は艦外に放り出す事が出来るエアーロックのハッチだ。


 ーー


 <<数週間後・指令本部>>


 アーレイは新しい戦艦の進捗状況の確認や細かな設計変更を行い、業火級のステルステスト、スキップジャンプの精度を上げる実験やなんやらで休みなく働き続け、長期休暇何それ美味しいの、の状態だった・・。


「アーレイさんお届けものです」

「ありがとう・・来ちゃったよ」


 全てのテストが終わり明日から長期休暇を取るつもりだったが、アンドロイドの試作品が届いてしまう。運び込まれた大きな荷物を見たクリスは「仕事が増えたな」と残念そうな表情をしていたよ。


 「アーレイ中尉、試作機が出来上がりました」

 「終わった、俺の長期休暇はいつ取れるんだ・・」


 休むなアーレイと言わんばかりに次々と試作品が出来上がり、休暇は取れそうにない。先送りしたらしたで結局自分でテストする事は変わらないので、気を取り直し重い腰を上げ取り敢えず駐機場へと向かう。


 <<デルタ国際空港・デルタ軍専用エリア>>


 デルタ宇宙港は首都から数キロ離れた郊外にあった造船所の跡地に作られ、民間の為に半分解放された共用空港で、毎日数万人の人たちが行き来している。駐機場に近づくと1式と10式の雄姿が見えた。


「うん、想像通りカッコいいな」


 ファイ〇スター物語のワン〇ースカッツのように長く伸びた主砲と、マ〇ロスのVF-31〇Xのシルエットを合体させたような1式は見た目からしてかっこよすぎる。10式はウェポンベイの関係で機体が一回り大きく、同じくマク〇スのV〇-171にY字の寝かされた尾翼が追加されたイメージと思って頂けたら分かりやすいだろう。


「それでは有人による最終テストを行います」


 軍専用エリアを訪れたアーレイは観測室に入り最終テストの様子を見る事になる。Aiによる実証実験は終わっているので今回は有人による最終試験だ。ギューンと反重力装置特有の低音を響かせ浮上した1式はタキシングしながら離発着場へと向かう。キューンと甲高いエンジン音を奏でながら飛び上がった。


「結構ふらついているな〜」

「見た目でわかるとなるとパイロットは相当苦戦している筈だぞ」


 左右にフラフラと機体を揺らしながら高度を上げ加速し始めてもその揺れは止まらず、旋回中も常に過敏な反応を見せていた。反重力装置の制御が入り失速する事は無いが見た目であれじゃパイロットは気が休まる暇がないだろう・・。


「フラフラしてるけど運動性能はスゲェ~」


 ベクターノズルと反重力装置の効果であり得ない軌道を描く1式だったが、常に挙動が安定することなくフラフラと揺れ、途中空気の壁に負けて失速してしまい錐揉み状態に陥ったが、重力装置のお陰で立て直し無事に上昇していった・・。


「お疲れさん、どうだった」

「じゃじゃ馬だねこの機体は、過敏に反応しすぎです」


 降りてきたパイロットに話を聞くと、新型のヘルメットは自由自在に飛べて性能をフルに発揮できる。しかし機体が過敏に反応してしまい扱い辛いと言われてしまう。という事は機体本体では無く制御に問題があると考え、急遽設計したマドック達技官を呼び出し話を聞く事にした。


「結論から申しますと、業火級で使用しているフルダイブ機能を使ったのが原因ですね」

「おい!」


 話を聞けば試作機の操作系は業火で使用したフルダイブ機能を使った「脳波反応型」を採用したのがそもそもの原因で、反応速度が速すぎる故に常にふらふらしていたらしい。因みにフルダイブすればこのような事は起きないと追加の説明を頂いたよ。


「なんで作ったのよ」

「有視界飛行が出来ない時でも飛ばせるようにとの指示があったので、この機能を採用したのですが・・」


 アーレイは確かに視界不良の時でも飛ばす方法を考えろとは言った。技官たちは素直に受け取り、業火で培ったフルダイブ機能を使いセンサーを駆使して作り上げたCGを360°アクティブビューモニターに映し出し飛ばすことを思いついた。それもAiのアシスト付きだ。余程の事が無い限り衝突や墜落の心配はない。


「それなら初めからフルダイブ仕様にすれば誰でも飛ばせるし」

「そうですね・・」


 人工知能だけで飛ばすことは星団法で禁止されているが、フルダイブを使用して且つ、Aiがアシストするなら身体適性さえあれば誰でも飛ばせてしまう。少しはパイロット不足に役に立ちそうだ。後日、訓練中のコロンをフルダイブで10式に乗せてみた。そしたら何ら問題なく飛ばせてしまい、いとも簡単に飛ばす姿を見て教官が頭を抱え落ち込んだのは本当です。

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